数学C / ベクトル

ベクトルの成分表示

要点整理

前のページでは、ベクトルを矢印の図として扱いました。ここでは、座標平面を使ってベクトルを数字の組で表す方法を学びます。数字で表せるようになると、和・差・実数倍といった計算が、図を描かなくても正確にできるようになります。

成分表示とは

座標平面上で、ベクトル $\vec{a}$ の始点を原点 $\mathrm{O}$ に平行移動して描いたとき、その終点の座標が $(a_1, a_2)$ であったとします。このとき、

$\vec{a} = (a_1, a_2)$

と書き、これを $\vec{a}$ の成分表示といいます。$a_1$ を $x$ 成分、$a_2$ を $y$ 成分と呼びます。

ベクトルは平行移動しても同じベクトルとみなす、というルールを前のページで確認しました。そのため、どの点を始点にしても、始点を原点に移したときの終点の座標さえわかれば、そのベクトルを表すことができるのです。

たとえば、点 $\mathrm{A}(1, 2)$ から点 $\mathrm{B}(4, 6)$ へのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ を考えます。$x$ 座標は $1$ から $4$ まで $3$ だけ増え、$y$ 座標は $2$ から $6$ まで $4$ だけ増えています。この「増えた分」がそのままベクトルの成分になります。つまり、

$\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (4 - 1,\ 6 - 2) = (3, 4)$

一般に、$\mathrm{A}(a_1, a_2)$、$\mathrm{B}(b_1, b_2)$ のとき、

$\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (b_1 - a_1,\ b_2 - a_2)$

です。「終点の座標 $-$ 始点の座標」という順番を覚えておきましょう。

ベクトルの大きさ(成分表示)

$\vec{a} = (a_1, a_2)$ の大きさ $|\vec{a}|$ は、三平方の定理を使って求めます。$\vec{a}$ を原点 $\mathrm{O}$ を始点として描くと、終点は $(a_1, a_2)$ です。原点から点 $(a_1, a_2)$ までの距離は、直角をはさむ2辺の長さが $|a_1|$ と $|a_2|$ の直角三角形の斜辺の長さと考えられるので、

$|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2}$

となります。たとえば、先ほどの $\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (3, 4)$ の大きさは、

$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9 + 16} = \sqrt{25} = 5$

です。これは点 $\mathrm{A}(1,2)$ と点 $\mathrm{B}(4,6)$ の間の距離が $5$ であることを意味します。

ベクトルが等しい条件(成分表示)

$\vec{a} = (a_1, a_2)$、$\vec{b} = (b_1, b_2)$ について、

$\vec{a} = \vec{b} \iff a_1 = b_1 \text{ かつ } a_2 = b_2$

です($\iff$ は「同値」、つまり「左が成り立つことと右が成り立つことが常に一致する」という意味の記号です)。成分がすべて等しければベクトルは等しく、逆にベクトルが等しければ成分もすべて等しくなります。

ベクトルの和・差・実数倍(成分表示)

成分表示にすると、ベクトルの計算は成分ごとの数の計算に置きかわります。$\vec{a} = (a_1, a_2)$、$\vec{b} = (b_1, b_2)$、$k$ を実数とするとき、

$\vec{a} + \vec{b} = (a_1 + b_1,\ a_2 + b_2)$

$\vec{a} - \vec{b} = (a_1 - b_1,\ a_2 - b_2)$

$k\vec{a} = (ka_1,\ ka_2)$

です。つまり、和と差は「対応する成分どうしを足し引きする」、実数倍は「すべての成分を $k$ 倍する」だけでよいのです。

基本ベクトル

$x$ 軸方向を向く大きさ $1$ のベクトルを $\vec{e_1} = (1, 0)$、$y$ 軸方向を向く大きさ $1$ のベクトルを $\vec{e_2} = (0, 1)$ とし、これらを基本ベクトルと呼びます。任意のベクトル $\vec{a} = (a_1, a_2)$ は、

$\vec{a} = a_1 \vec{e_1} + a_2 \vec{e_2}$

と表すことができます。成分表示 $(a_1, a_2)$ は、この $a_1$ と $a_2$ を並べて書いたものだと考えることもできます。

平行条件(成分表示)

$\vec{a} = (a_1, a_2) \neq \vec{0}$、$\vec{b} = (b_1, b_2) \neq \vec{0}$ について、$\vec{a} \parallel \vec{b}$ であるための条件は、前のページで学んだ「$\vec{b} = k\vec{a}$ となる実数 $k$ が存在する」でした。これを成分で書くと、$b_1 = ka_1$ かつ $b_2 = ka_2$ となる $k$ が存在する、ということです。この2式から $k$ を消去すると(それぞれの式を掛け合わせる形で整理すると)、次の条件が得られます。

$\vec{a} \parallel \vec{b} \iff a_1 b_2 - a_2 b_1 = 0$

この式は、平行かどうかを一瞬で判定できる、とても便利な道具です。

例題

例題1(基本)

問題

$\vec{a} = (2, -3)$、$\vec{b} = (-1, 4)$ のとき、次のベクトルを成分表示で求めなさい。

(1) $\vec{a} + \vec{b}$ (2) $\vec{a} - \vec{b}$ (3) $2\vec{a} - 3\vec{b}$ (4) $|\vec{a}|$

解答・解説を見る

(1) 対応する成分どうしを足します。$x$ 成分は $2 + (-1)$、$y$ 成分は $-3 + 4$ です。

$\vec{a} + \vec{b} = (2 + (-1),\ -3 + 4) = (1, 1)$

(2) 対応する成分どうしを引きます。$x$ 成分は $2 - (-1)$、$y$ 成分は $-3 - 4$ です。

$\vec{a} - \vec{b} = (2 - (-1),\ -3 - 4) = (3, -7)$

(3) まず $2\vec{a}$ と $3\vec{b}$ をそれぞれ計算します。

$2\vec{a} = (2 \times 2,\ 2 \times (-3)) = (4, -6)$

$3\vec{b} = (3 \times (-1),\ 3 \times 4) = (-3, 12)$

これらの差を計算します。

$2\vec{a} - 3\vec{b} = (4 - (-3),\ -6 - 12) = (7, -18)$

(4) 大きさの公式 $|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2}$ に $a_1 = 2$、$a_2 = -3$ を代入します。

$|\vec{a}| = \sqrt{2^2 + (-3)^2} = \sqrt{4 + 9} = \sqrt{13}$

答え: (1) $(1, 1)$ (2) $(3, -7)$ (3) $(7, -18)$ (4) $\sqrt{13}$

例題2(標準)

問題

$\vec{a} = (3, 1)$、$\vec{b} = (-1, 2)$ とする。$\vec{p} = \vec{a} + t\vec{b}$ の大きさが最小になるような実数 $t$ の値を求めなさい。

解答・解説を見る

まず、$\vec{p}$ を成分表示します。

$\vec{p} = \vec{a} + t\vec{b} = (3, 1) + t(-1, 2) = (3, 1) + (-t, 2t) = (3 - t,\ 1 + 2t)$

$\vec{p}$ の大きさの2乗を考えます。大きさそのものより2乗の方が根号がなく扱いやすく、大きさが最小になる $t$ と大きさの2乗が最小になる $t$ は(大きさが $0$ 以上なので)同じ値になります。

$|\vec{p}|^2 = (3 - t)^2 + (1 + 2t)^2$

それぞれのかっこを展開します。まず $(3-t)^2$ です。

$(3 - t)^2 = 3^2 - 2 \cdot 3 \cdot t + t^2 = 9 - 6t + t^2$

次に $(1 + 2t)^2$ です。

$(1 + 2t)^2 = 1^2 + 2 \cdot 1 \cdot 2t + (2t)^2 = 1 + 4t + 4t^2$

これらを足し合わせます。

$|\vec{p}|^2 = (9 - 6t + t^2) + (1 + 4t + 4t^2) = 5t^2 - 2t + 10$

これは $t$ についての2次関数です。$2$次の係数が $5 > 0$ なので、下に凸の放物線であり、最小値は頂点で取ります。平方完成します。

$5t^2 - 2t + 10 = 5\left(t^2 - \frac{2}{5}t\right) + 10$

$t^2 - \dfrac{2}{5}t$ を平方完成するために、$t$ の係数 $-\dfrac{2}{5}$ の半分の $-\dfrac{1}{5}$ を使います。

$t^2 - \frac{2}{5}t = \left(t - \frac{1}{5}\right)^2 - \left(\frac{1}{5}\right)^2 = \left(t - \frac{1}{5}\right)^2 - \frac{1}{25}$

これを代入します。

$5t^2 - 2t + 10 = 5\left[\left(t - \frac{1}{5}\right)^2 - \frac{1}{25}\right] + 10 = 5\left(t - \frac{1}{5}\right)^2 - \frac{5}{25} + 10$

$= 5\left(t - \frac{1}{5}\right)^2 - \frac{1}{5} + 10 = 5\left(t - \frac{1}{5}\right)^2 + \frac{49}{5}$

$5\left(t - \dfrac{1}{5}\right)^2 \geq 0$ なので、$|\vec{p}|^2$ が最小になるのは $t - \dfrac{1}{5} = 0$、すなわち $t = \dfrac{1}{5}$ のときです。

答え: $t = \dfrac{1}{5}$

例題3(応用)

問題

$\vec{a} = (1, 2)$ に平行で、大きさが $\sqrt{20}$ であるベクトル $\vec{p}$ をすべて求めなさい。

解答・解説を見る

$\vec{p}$ は $\vec{a}$ に平行なので、$\vec{p} = k\vec{a}$ となる実数 $k$ が存在します。

$\vec{p} = k(1, 2) = (k, 2k)$

$\vec{p}$ の大きさを、成分表示の大きさの公式で計算します。

$|\vec{p}| = \sqrt{k^2 + (2k)^2} = \sqrt{k^2 + 4k^2} = \sqrt{5k^2}$

$\sqrt{5k^2} = \sqrt{5} \cdot \sqrt{k^2} = \sqrt{5}\,|k|$ なので、

$|\vec{p}| = \sqrt{5}\,|k|$

これが $\sqrt{20}$ に等しいという方程式を立てます。

$\sqrt{5}\,|k| = \sqrt{20}$

$\sqrt{20}$ を簡単にします。$20 = 4 \times 5$ なので、

$\sqrt{20} = \sqrt{4 \times 5} = \sqrt{4}\sqrt{5} = 2\sqrt{5}$

よって方程式は、

$\sqrt{5}\,|k| = 2\sqrt{5}$

両辺を $\sqrt{5}$ で割ります。

$|k| = 2$

これより $k = 2$ または $k = -2$ です。それぞれを $\vec{p} = (k, 2k)$ に代入します。

$k = 2$ のとき、$\vec{p} = (2, 4)$

$k = -2$ のとき、$\vec{p} = (-2, -4)$

答え: $\vec{p} = (2, 4)$ または $\vec{p} = (-2, -4)$

(検算: $|(2,4)| = \sqrt{4 + 16} = \sqrt{20}$ となり条件を満たします。)

練習問題

問題1

$\mathrm{A}(-2, 3)$、$\mathrm{B}(4, -1)$ のとき、$\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ を成分表示で求め、その大きさを求めなさい。

答え

$\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (6, -4)$、$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = \sqrt{36 + 16} = \sqrt{52} = 2\sqrt{13}$

問題2

$\vec{a} = (4, 2)$ と $\vec{b} = (x, 6)$ が平行であるとき、$x$ の値を求めなさい。

答え

$x = 12$

(解説: 平行条件 $a_1 b_2 - a_2 b_1 = 0$ より $4 \times 6 - 2 \times x = 0$、つまり $24 - 2x = 0$ なので $x = 12$。)

問題3

$\vec{a} = (1, -2)$、$\vec{b} = (3, 1)$ のとき、$\vec{x} + \vec{a} = 2\vec{b}$ を満たすベクトル $\vec{x}$ を成分表示で求めなさい。

答え

$\vec{x} = (5, 4)$

(解説: $\vec{x} = 2\vec{b} - \vec{a} = (6, 2) - (1, -2) = (5, 4)$。)