数学I / データの分析
相関係数
要点整理
前のページ「データの相関と散布図」では、2つの変量(たとえば数学の点数と理科の点数のように、データごとに2つの数値の組になっているもの)について散布図をかき、点の並び方を見て「正の相関がある」「負の相関がある」「相関はほとんどない」といったことを目で見て判断しました。このページでは、その「関係の強さ」を目分量ではなく、たった1つの数値で表す方法を学びます。その数値のことを相関係数と呼びます。
使う記号の確認
$n$個のデータの組 $(x_1, y_1), (x_2, y_2), \ldots, (x_n, y_n)$ があるとします。ここで $n$ はデータの個数を表す文字で、添字の $i$ は「何番目のデータか」を表します(たとえば $x_3$ は3番目の生徒のxの値、という意味です)。
すでに学んだ内容の確認として、平均・偏差・分散・標準偏差の記号を簡単に振り返っておきます。
- $x$ の平均: $\bar{x} = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n} x_i$ (文字の上に線がついた $\bar{x}$ は「xの平均」という意味でした)
- $\Sigma$(シグマ)は「後ろの式に $i=1$ から $i=n$ まで順に代入して、その結果をすべて足し合わせる」という意味の記号でした
- 偏差: $x_i - \bar{x}$ (i番目のデータの値と平均との差)
- $x$ の分散: $s_x^2 = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n}(x_i - \bar{x})^2$、$x$ の標準偏差: $s_x = \sqrt{s_x^2}$
$y$ についても同じように $\bar{y}$, $s_y^2$, $s_y$ が考えられます。ここまでは前のページまでの内容の復習なので、詳しい計算方法は省略します。
新しい道具:共分散
相関係数を作るために、まず共分散という新しい量を用意します。共分散は、記号 $s_{xy}$ で表し、次の式で定義されます。
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(x_i - \bar{x})(y_i - \bar{y}) $
これは「$x$の偏差と$y$の偏差を、同じ番号どうしでかけ算し、それを全部足して個数$n$で割ったもの」という意味です。分散の式が偏差の2乗を平均していたのに対して、共分散は$x$の偏差と$y$の偏差の積を平均している、という違いに注目してください。
なぜこの式で「関係の強さ」が分かるのか、符号の意味を考えてみましょう。
| データの状態 | $x_i - \bar{x}$ の符号 | $y_i - \bar{y}$ の符号 | 積の符号 |
|---|---|---|---|
| xもyも平均より大きい | 正 | 正 | 正 |
| xもyも平均より小さい | 負 | 負 | 正 |
| xは平均より大きく、yは平均より小さい | 正 | 負 | 負 |
| xは平均より小さく、yは平均より大きい | 負 | 正 | 負 |
つまり、「xが大きいときyも大きく、xが小さいときyも小さい」というデータが多ければ積は正になりやすく、その平均である $s_{xy}$ も正の値になります。逆に「xが大きいときyは小さい」というデータが多ければ $s_{xy}$ は負になります。ですから、
- $s_{xy} > 0$ ならば正の相関の傾向がある
- $s_{xy} < 0$ ならば負の相関の傾向がある
- $s_{xy}$ が0に近ければ、はっきりした直線的な関係は見えにくい
ということが分かります。
共分散だけでは困る理由
ここで1つ問題があります。共分散の値は、データの単位や散らばりの大きさによって値の大きさが変わってしまいます。たとえば同じ関係のデータでも、xの値をすべて10倍すれば、共分散もおよそ10倍になってしまいます(偏差が10倍になり、それが積の中に1回入っているためです)。これでは、「共分散が5だから強い相関」「共分散が2だから弱い相関」のように、異なるデータどうしを比べることができません。
そこで、共分散を「単位に左右されない値」に直すために、$x$の標準偏差 $s_x$ と $y$の標準偏差 $s_y$ の積で割ります。こうしてできる値が相関係数で、記号 $r$ で表します。
$ r = \frac{s_{xy}}{s_x s_y} $
標準偏差で割ることで単位がちょうど打ち消し合うため、$r$ にはもとの単位が残らず、どんなデータどうしでも同じ基準で比較できる値になります。
相関係数の値の読み方
相関係数 $r$ には、次の重要な性質があります。
$ -1 \leqq r \leqq 1 $
この性質(なぜ必ずこの範囲におさまるのかという厳密な証明は、この段階では難しいため省略します)を踏まえて、$r$ の値と散布図の様子の対応は次のようになります。
| $r$ の値の目安 | 散布図の様子 |
|---|---|
| $r = 1$ | すべての点が、右上がりの1本の直線上にぴったり並ぶ(完全な正の相関) |
| $0.7$ 程度 〜 $1$ 未満 | 強い正の相関がある |
| $0.4$ 程度 〜 $0.7$ 程度 | やや正の相関がある |
| $0$ に近い | 直線的な関係はほとんど見られない |
| $-0.7$ 程度 〜 $-0.4$ 程度 | やや負の相関がある |
| $-1$ より大きく $-0.7$ 程度 | 強い負の相関がある |
| $r = -1$ | すべての点が、右下がりの1本の直線上にぴったり並ぶ(完全な負の相関) |
上の表の区切りの数値はあくまで目安であり、教科書や問題によって多少の幅があることに注意してください。大切なのは「1に近いほど右上がりの直線に近づき、$-1$に近いほど右下がりの直線に近づき、0に近いほど直線的な関係が見えなくなる」という感覚をつかむことです。
また、相関係数はあくまで「直線的な関係」の強さしか測れません。データが放物線のようにきれいな曲線に並んでいても、その曲線が右上がりでも右下がりでもない形であれば、$r$ は0に近い値になることがあります。相関係数が小さいからといって、必ずしも「$x$と$y$に何の関係もない」とは言えない点に注意しましょう。さらに、相関があるからといって、$x$が原因で$y$が起こる(因果関係がある)とは限りません。この点も忘れないようにしてください。
計算をらくにする別の形の式
共分散の式は、偏差(平均との差)をいちいち計算しなくても、次のように書き直すことができます。これは、$\Sigma x_i, \Sigma y_i, \Sigma x_i y_i$ の値がはじめから分かっている問題で威力を発揮する式です。
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i y_i - \bar{x}\,\bar{y} $
なぜこの式になるのか、定義の式を1ステップずつ展開して確認してみましょう。
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(x_i - \bar{x})(y_i - \bar{y}) $
まず、$(x_i - \bar{x})(y_i - \bar{y})$ の部分を展開します(これは $(a-b)(c-d) = ac - ad - bc + bd$ という、中学校で習った分配法則そのものです)。
$ (x_i - \bar{x})(y_i - \bar{y}) = x_i y_i - x_i \bar{y} - \bar{x} y_i + \bar{x}\bar{y} $
これを $\Sigma$ の中に戻して、$\Sigma$ を4つの項に分けます($\Sigma$は「足し算」なので、足し算のかたまりごとに分けることができます)。
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\left(\sum_{i=1}^{n} x_i y_i \; - \; \sum_{i=1}^{n} x_i \bar{y} \; - \; \sum_{i=1}^{n} \bar{x} y_i \; + \; \sum_{i=1}^{n} \bar{x}\bar{y}\right) $
$\bar{x}$ や $\bar{y}$ はすでに平均が求まった後の「ただの数」なので、$\Sigma$ の外に出すことができます。また、$\bar{x}\bar{y}$ を$n$個分足すと $n\bar{x}\bar{y}$ になります。
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\left(\sum_{i=1}^{n} x_i y_i \; - \; \bar{y}\sum_{i=1}^{n} x_i \; - \; \bar{x}\sum_{i=1}^{n} y_i \; + \; n\bar{x}\bar{y}\right) $
ここで、$\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n} x_i = \bar{x}$、$\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n} y_i = \bar{y}$ であること(平均の定義そのものです)を使うと、全体を$\dfrac{1}{n}$倍したときに
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i y_i \; - \; \bar{y}\bar{x} \; - \; \bar{x}\bar{y} \; + \; \bar{x}\bar{y} $
となります。最後に、$-\bar{y}\bar{x} - \bar{x}\bar{y} + \bar{x}\bar{y} = -\bar{x}\bar{y}$ とまとめられるので、
$ s_{xy} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i y_i - \bar{x}\bar{y} $
が得られます。これで確認できました。分散の式に $s_x^2 = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n} x_i^2 - \bar{x}^2$ という別の形があったのと、まったく同じ考え方です。
例題
例題1(基本)
問題
5人の生徒A〜Eが、2種類の小テストを受けました。xを1回目のテストの得点、yを2回目のテストの得点とすると、結果は次の表の通りでした。相関係数 $r$ を求めなさい。
| 生徒 | A | B | C | D | E |
|---|---|---|---|---|---|
| $x$ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| $y$ | 2 | 4 | 6 | 8 | 10 |
解答・解説を見る
ステップ1:平均を求める
$ \bar{x} = \frac{1+2+3+4+5}{5} = \frac{15}{5} = 3 $
$ \bar{y} = \frac{2+4+6+8+10}{5} = \frac{30}{5} = 6 $
ステップ2:偏差を求める
各データから、それぞれの平均を引きます。
| 生徒 | A | B | C | D | E |
|---|---|---|---|---|---|
| $x_i - \bar{x}$ | $-2$ | $-1$ | $0$ | $1$ | $2$ |
| $y_i - \bar{y}$ | $-4$ | $-2$ | $0$ | $2$ | $4$ |
ステップ3:共分散 $s_{xy}$ を求める
偏差どうしの積を計算します。
$ (-2)\times(-4) = 8,\quad (-1)\times(-2) = 2,\quad 0\times 0 = 0,\quad 1\times 2 = 2,\quad 2\times 4 = 8 $
これらをすべて足すと、
$ 8+2+0+2+8 = 20 $
これを $n=5$ で割って、
$ s_{xy} = \frac{20}{5} = 4 $
ステップ4:$x$の標準偏差 $s_x$ を求める
偏差を2乗すると、$4, 1, 0, 1, 4$ となり、その和は
$ 4+1+0+1+4 = 10 $
よって
$ s_x^2 = \frac{10}{5} = 2, \qquad s_x = \sqrt{2} $
ステップ5:$y$の標準偏差 $s_y$ を求める
偏差を2乗すると、$16, 4, 0, 4, 16$ となり、その和は
$ 16+4+0+4+16 = 40 $
よって
$ s_y^2 = \frac{40}{5} = 8, \qquad s_y = \sqrt{8} = 2\sqrt{2} $
ステップ6:相関係数 $r$ を求める
まず分母の $s_x s_y$ を計算します。
$ s_x s_y = \sqrt{2}\times 2\sqrt{2} = 2\times(\sqrt{2}\times\sqrt{2}) = 2\times 2 = 4 $
したがって、
$ r = \frac{s_{xy}}{s_x s_y} = \frac{4}{4} = 1 $
答え:$r = 1$
実際、このデータは $y = 2x$ という関係をぴったり満たしており、5つの点はすべて1本の右上がりの直線上に並びます。$r=1$(完全な正の相関)という結果は、この様子とちょうど一致しています。
例題2(標準)
問題
別の5人の生徒について、同じように2種類のテストの得点を調べたところ、次のようになりました。相関係数 $r$ を求めなさい。
| 生徒 | A | B | C | D | E |
|---|---|---|---|---|---|
| $x$ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| $y$ | 5 | 3 | 4 | 2 | 1 |
解答・解説を見る
ステップ1:平均を求める
$ \bar{x} = \frac{1+2+3+4+5}{5} = \frac{15}{5} = 3 $
$ \bar{y} = \frac{5+3+4+2+1}{5} = \frac{15}{5} = 3 $
ステップ2:偏差を求める
| 生徒 | A | B | C | D | E |
|---|---|---|---|---|---|
| $x_i - \bar{x}$ | $-2$ | $-1$ | $0$ | $1$ | $2$ |
| $y_i - \bar{y}$ | $2$ | $0$ | $1$ | $-1$ | $-2$ |
ステップ3:共分散 $s_{xy}$ を求める
偏差どうしの積を計算します。
$ (-2)\times 2 = -4,\quad (-1)\times 0 = 0,\quad 0\times 1 = 0,\quad 1\times(-1) = -1,\quad 2\times(-2) = -4 $
これらをすべて足すと、
$ -4+0+0-1-4 = -9 $
$n=5$ で割って、
$ s_{xy} = \frac{-9}{5} = -1.8 $
ステップ4:$x$の標準偏差 $s_x$ を求める
偏差の2乗は $4,1,0,1,4$ で、和は $10$ です。
$ s_x^2 = \frac{10}{5} = 2, \qquad s_x = \sqrt{2} $
ステップ5:$y$の標準偏差 $s_y$ を求める
偏差の2乗は $4,0,1,1,4$ で、和は
$ 4+0+1+1+4 = 10 $
よって
$ s_y^2 = \frac{10}{5} = 2, \qquad s_y = \sqrt{2} $
ステップ6:相関係数 $r$ を求める
$ s_x s_y = \sqrt{2}\times\sqrt{2} = 2 $
$ r = \frac{s_{xy}}{s_x s_y} = \frac{-1.8}{2} = -0.9 $
答え:$r = -0.9$
$r$ が $-1$ にかなり近い値になったので、「xが大きくなるほどyは小さくなる」という、強い負の相関があると読み取れます。実際に表を見ると、xが増えるにつれてyはほぼ減少しており、この結果と一致しています。
例題3(応用)
問題
あるクラスの生徒5人($n=5$)について、2種類のテストの得点をそれぞれ $x_i$, $y_i$ とします。個々のデータは分からなくなってしまいましたが、次の集計結果だけが残っていました。
$ \sum_{i=1}^{5} x_i = 15, \quad \sum_{i=1}^{5} y_i = 25, \quad \sum_{i=1}^{5} x_i^2 = 55, \quad \sum_{i=1}^{5} y_i^2 = 135, \quad \sum_{i=1}^{5} x_i y_i = 83 $
この情報だけから、相関係数 $r$ を求めなさい。
解答・解説を見る
個々のデータの値が分からないので、偏差を1つずつ計算することはできません。そこで、要点整理で確認した「和の情報だけから計算できる形の式」を使います。
ステップ1:平均を求める
$ \bar{x} = \frac{1}{5}\sum_{i=1}^{5} x_i = \frac{15}{5} = 3 $
$ \bar{y} = \frac{1}{5}\sum_{i=1}^{5} y_i = \frac{25}{5} = 5 $
ステップ2:$x$の分散を、和の形の公式で求める
分散の別の形の式 $s_x^2 = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n} x_i^2 - \bar{x}^2$ を使います。
$ s_x^2 = \frac{55}{5} - 3^2 = 11 - 9 = 2 $
$ s_x = \sqrt{2} $
ステップ3:$y$の分散を、和の形の公式で求める
$ s_y^2 = \frac{135}{5} - 5^2 = 27 - 25 = 2 $
$ s_y = \sqrt{2} $
ステップ4:共分散を、和の形の公式で求める
要点整理で導いた $s_{xy} = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n} x_i y_i - \bar{x}\bar{y}$ を使います。
$ s_{xy} = \frac{83}{5} - 3\times 5 = 16.6 - 15 = 1.6 $
ステップ5:相関係数を求める
$ s_x s_y = \sqrt{2}\times\sqrt{2} = 2 $
$ r = \frac{s_{xy}}{s_x s_y} = \frac{1.6}{2} = 0.8 $
答え:$r = 0.8$
このように、生データの表がなくても、$n$, $\Sigma x_i$, $\Sigma y_i$, $\Sigma x_i^2$, $\Sigma y_i^2$, $\Sigma x_i y_i$ という6個の数値さえ分かっていれば、相関係数を計算できます。定期テストや模試では、このように集計値だけを与えて相関係数を求めさせる問題もよく出るので、この解き方に慣れておきましょう。
練習問題
問題
5人の生徒について、2種類のテストの得点 $x$, $y$ を調べたところ、次のようになりました。相関係数 $r$ を求めなさい。
| 生徒 | A | B | C | D | E |
|---|---|---|---|---|---|
| $x$ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| $y$ | 3 | 1 | 4 | 2 | 5 |
答え
$\bar{x}=3$, $\bar{y}=3$。偏差は $x_i-\bar{x} = -2,-1,0,1,2$、$y_i-\bar{y} = 0,-2,1,-1,2$。
偏差の積の和は $0+2+0-1+4=5$ なので $s_{xy} = \dfrac{5}{5} = 1$。
$x$の偏差の2乗の和は $10$ なので $s_x^2=2$、$y$の偏差の2乗の和も $10$ なので $s_y^2=2$。よって $s_x=s_y=\sqrt{2}$。
$ r = \frac{s_{xy}}{s_x s_y} = \frac{1}{\sqrt{2}\times\sqrt{2}} = \frac{1}{2} = 0.5 $
答え:$r = 0.5$(やや正の相関がある)