数学A / 場合の数と確率
確率の加法定理
要点整理
数学A「場合の数と確率」のこのページでは、前のページ「確率の基本性質」で学んだ $P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$(事象Aの確率は、Aに含まれる場合の数を、全部の場合の数で割ったもの)を土台にして、2つの事象「AまたはBが起こる確率」をまとめて求める方法を学びます。
和事象と積事象
まず、2つの事象A、Bについて、次の2つの言葉を覚えましょう。
- 和事象 $A \cup B$:「Aが起こる、またはBが起こる」という事象です(どちらか一方だけが起こる場合も、両方同時に起こる場合も含みます)。
- 積事象 $A \cap B$:「AとBが同時に起こる」という事象です。
たとえば、さいころを1回投げるとき、Aを「出た目が偶数」、Bを「出た目が3の倍数」とすると、
- $A \cup B$ は「出た目が偶数、または3の倍数」という事象
- $A \cap B$ は「出た目が偶数かつ3の倍数」という事象
を表します。
加法定理の導出
$P(A \cup B)$ を、すでに知っている $P(A)$、$P(B)$、$P(A \cap B)$ を使って表す式を考えます。全事象(起こりうるすべての場合の集まり)を $U$ とし、$n(U)$、$n(A)$、$n(B)$、$n(A \cap B)$ をそれぞれの場合の数とします。
$n(A) + n(B)$ を計算すると、Aだけに含まれる場合、Bだけに含まれる場合はそれぞれ1回ずつ数えられますが、AとBの両方に含まれる場合(つまり $A \cap B$ に含まれる場合)は、Aを数えるときに1回、Bを数えるときにもう1回と、合計2回数えられてしまいます。本来 $A \cup B$ の場合の数としては1回だけ数えたいので、重なった分を1回だけ引いて調整します。
$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$
この式の両辺を $n(U)$ で割ります(全部の場合の数 $n(U)$ は0ではない正の数なので、割り算をしても大丈夫です)。
$\frac{n(A \cup B)}{n(U)} = \frac{n(A)}{n(U)} + \frac{n(B)}{n(U)} - \frac{n(A \cap B)}{n(U)}$
ここで、どの事象 $X$ についても $P(X) = \dfrac{n(X)}{n(U)}$ が成り立つ(前のページで学んだ確率の定義)ので、上の式の各項をこの形に置きかえると、次の加法定理が得られます。
$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$
具体例で確認してみましょう。 1から10までの数字が1つずつ書かれた10枚のカードから1枚引くとき、Aを「引いた数が2の倍数」、Bを「引いた数が5の倍数」とします。
- $U = \{1, 2, \ldots, 10\}$ より $n(U) = 10$
- $A = \{2, 4, 6, 8, 10\}$ より $n(A) = 5$、$P(A) = \dfrac{5}{10} = \dfrac{1}{2}$
- $B = \{5, 10\}$ より $n(B) = 2$、$P(B) = \dfrac{2}{10} = \dfrac{1}{5}$
- $A \cap B$ は「2の倍数かつ5の倍数」、つまり10の倍数なので $A \cap B = \{10\}$ より $n(A \cap B) = 1$、$P(A \cap B) = \dfrac{1}{10}$
これらを加法定理に代入します。
$P(A \cup B) = \frac{1}{2} + \frac{1}{5} - \frac{1}{10}$
分母を10にそろえます。$\dfrac{1}{2} = \dfrac{5}{10}$、$\dfrac{1}{5} = \dfrac{2}{10}$ なので、
$P(A \cup B) = \frac{5}{10} + \frac{2}{10} - \frac{1}{10} = \frac{6}{10} = \frac{3}{5}$
実際に $A \cup B = \{2, 4, 5, 6, 8, 10\}$ を数えても6個なので $\dfrac{6}{10} = \dfrac{3}{5}$ となり、一致していますね。
排反事象のときの加法定理
先ほどの例のBを「引いた数が3の倍数」に変えて、Aを「引いた数が2の倍数」のままにするとどうでしょうか。実は、2の倍数と3の倍数は同時に成り立つことがある(たとえば6)ので問題ありませんが、事象によってはAとBが絶対に同時に起こらないという関係になることがあります。このような関係を排反であるといい、AとBは排反事象であるといいます。
排反事象のとき、AとBが同時に起こる場合は1つもないので、
$n(A \cap B) = 0 \quad \text{つまり} \quad P(A \cap B) = 0$
です。これを加法定理 $P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$ に代入すると、最後の項が0になって消えるので、次のシンプルな形になります。
$P(A \cup B) = P(A) + P(B)$
具体例:さいころを1回投げるとき、Aを「出た目が1」、Bを「出た目が6」とします。さいころは1回で1つの目しか出ないので、目が1であると同時に6であることは絶対にありません。つまりAとBは排反です。よって、
$P(A \cup B) = P(A) + P(B) = \frac{1}{6} + \frac{1}{6} = \frac{2}{6} = \frac{1}{3}$
と、単純に足し算するだけで求められます。
問題を解くときは、まず「AとBは同時に起こりうるか」を確認し、同時に起こりえない(排反である)ならシンプルな足し算の式を、同時に起こりうるならAとBが重なる部分を引く一般の加法定理を使う、という判断が大切です。
例題
例題1(基本)
問題
1個のさいころを1回投げる。出た目が3の倍数である事象をA、出た目が2の倍数である事象をBとする。このとき、$P(A \cup B)$ を求めよ。
解答・解説を見る
さいころの目の出方全体を $U$ とすると、$U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ より $n(U) = 6$ です。
まず、事象A、Bをそれぞれ書き出します。
- $A$(3の倍数)$= \{3, 6\}$ より $n(A) = 2$
- $B$(2の倍数)$= \{2, 4, 6\}$ より $n(B) = 3$
それぞれの確率は、
$P(A) = \frac{2}{6} = \frac{1}{3}, \qquad P(B) = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}$
次に、AとBが同時に起こる場合(積事象 $A \cap B$)を考えます。「3の倍数かつ2の倍数」は「6の倍数」のことなので、
$A \cap B = \{6\} \quad \text{より} \quad n(A \cap B) = 1, \qquad P(A \cap B) = \frac{1}{6}$
AとBは同時に起こる場合(目が6のとき)があるので、排反ではありません。したがって、一般の加法定理を使います。
$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$
数値を代入します。
$P(A \cup B) = \frac{1}{3} + \frac{1}{2} - \frac{1}{6}$
分母を6にそろえます。$\dfrac{1}{3} = \dfrac{2}{6}$、$\dfrac{1}{2} = \dfrac{3}{6}$ なので、
$P(A \cup B) = \frac{2}{6} + \frac{3}{6} - \frac{1}{6} = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}$
答え:$P(A \cup B) = \dfrac{2}{3}$
(確認:$A \cup B = \{2, 3, 4, 6\}$ で4通りなので $\dfrac{4}{6} = \dfrac{2}{3}$ となり、一致します。)
例題2(標準)
問題
赤球3個、白球4個、青球5個、合計12個の球が入った袋から球を1個取り出す。取り出した球が赤球である事象をA、白球である事象をBとする。このとき、取り出した球が赤球または白球である確率を求めよ。
解答・解説を見る
全部の球の個数は $3 + 4 + 5 = 12$ 個なので、$n(U) = 12$ です。
事象Aと事象Bの確率を求めます。
$P(A) = \frac{3}{12} = \frac{1}{4}, \qquad P(B) = \frac{4}{12} = \frac{1}{3}$
ここで、AとBが同時に起こりうるかを考えます。1個の球は「赤球であり、かつ白球でもある」ということはあり得ません(1個の球の色は1つに決まっているため)。つまり、AとBは同時には起こらないので、排反事象です。
排反事象のときの加法定理を使います。
$P(A \cup B) = P(A) + P(B)$
数値を代入します。
$P(A \cup B) = \frac{1}{4} + \frac{1}{3}$
分母を12にそろえます。$\dfrac{1}{4} = \dfrac{3}{12}$、$\dfrac{1}{3} = \dfrac{4}{12}$ なので、
$P(A \cup B) = \frac{3}{12} + \frac{4}{12} = \frac{7}{12}$
答え:求める確率は $\dfrac{7}{12}$
例題3(応用)
問題
1から20までの整数が1つずつ書かれた20枚のカードから1枚引く。引いたカードの数が2の倍数である事象をA、3の倍数である事象をBとする。このとき、引いたカードの数が2の倍数でも3の倍数でもない確率を求めよ。
解答・解説を見る
全体の場合の数は $n(U) = 20$ です。
まず、事象A、Bの確率を求めます。
- 2の倍数は $2, 4, 6, \ldots, 20$ の10個なので、$n(A) = 10$、$P(A) = \dfrac{10}{20} = \dfrac{1}{2}$
- 3の倍数は $3, 6, 9, 12, 15, 18$ の6個なので、$n(B) = 6$、$P(B) = \dfrac{6}{20} = \dfrac{3}{10}$
次に $A \cap B$ を考えます。「2の倍数かつ3の倍数」は「6の倍数」のことなので、
$A \cap B = \{6, 12, 18\} \quad \text{より} \quad n(A \cap B) = 3, \qquad P(A \cap B) = \frac{3}{20}$
AとBは同時に起こる場合(6の倍数のとき)があるので排反ではなく、一般の加法定理を使います。
$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$
数値を代入します。
$P(A \cup B) = \frac{1}{2} + \frac{3}{10} - \frac{3}{20}$
分母を20にそろえます。$\dfrac{1}{2} = \dfrac{10}{20}$、$\dfrac{3}{10} = \dfrac{6}{20}$ なので、
$P(A \cup B) = \frac{10}{20} + \frac{6}{20} - \frac{3}{20} = \frac{13}{20}$
ここまでで「2の倍数または3の倍数」である確率が $\dfrac{13}{20}$ とわかりました。しかし、求めたいのは「2の倍数でも3の倍数でもない」確率です。これは事象 $A \cup B$ の余事象(Aが起こらないという事象で、$\overline{A \cup B}$ と表します)にあたります。余事象の確率は、全体から元の事象の確率を引いて求められます。
$P(\overline{A \cup B}) = 1 - P(A \cup B) = 1 - \frac{13}{20} = \frac{20}{20} - \frac{13}{20} = \frac{7}{20}$
答え:求める確率は $\dfrac{7}{20}$
(確認:1〜20のうち2の倍数でも3の倍数でもない数は $1, 5, 7, 11, 13, 17, 19$ の7個なので $\dfrac{7}{20}$ となり、一致します。)
練習問題
問題
白球5個、赤球3個、青球2個、合計10個の球が入った袋から球を1個取り出す。取り出した球が白球または赤球である確率を求めよ。
答え
白球を取り出す事象をA、赤球を取り出す事象をBとすると、1個の球が白球かつ赤球であることはないのでAとBは排反です。
$P(A) = \frac{5}{10} = \frac{1}{2}, \qquad P(B) = \frac{3}{10}$
$P(A \cup B) = P(A) + P(B) = \frac{5}{10} + \frac{3}{10} = \frac{8}{10} = \frac{4}{5}$
答え:$\dfrac{4}{5}$