数学I / 数と式
たすき掛けによる因数分解
要点整理
前のページ「因数分解の基本公式」では、$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$ という形の因数分解を学びました。この公式が使えたのは、$x^2$の係数がちょうど $1$ だったからです。
では、$x^2$の係数が $1$ ではない場合、たとえば
$2x^2+7x+3$
のような式は、どうやって因数分解すればよいでしょうか。この式を因数分解すると $(px+q)(rx+s)$ という形になるはずですが、$x^2$の係数が $1$ のときと違って、$p$ と $r$ の組み合わせにも自由度が出てきます。この自由度がある中で正しい組み合わせを見つける方法が「たすき掛け」です。
展開してみて、何が起きているか確認する
まず、$(px+q)(rx+s)$ という式を展開してみます。ここで $p, q, r, s$ はすべて数(定数)だとします。分配法則(かっこの中のすべての項に、外の項をそれぞれかけるという法則)を使って、1項ずつ順番に展開します。
$(px+q)(rx+s)=px \times rx+px \times s+q \times rx+q \times s$
それぞれの項を整理すると、
$=pr\,x^2+(ps+qr)x+qs$
となります。つまり、$(px+q)(rx+s)$ を展開すると、
- $x^2$ の係数は $pr$($p$ と $r$ の積)
- $x$ の係数は $ps+qr$($p$ と $s$ の積、$q$ と $r$ の積を足したもの)
- 定数項(文字を含まない項)は $qs$($q$ と $s$ の積)
になる、ということです。この3つの関係を逆向きに使えば、$ax^2+bx+c$ という式から $p,q,r,s$ を探し出して、もとの積の形に戻す(=因数分解する)ことができます。
たすき掛けの図の書き方
$ax^2+bx+c$ を因数分解したいとき、次の3つの条件を同時に満たす $p,q,r,s$ を探します。
$pr=a, \quad qs=c, \quad ps+qr=b$
これを手際よく探すために、次のような図を使います。まず $p$ を左上、$q$ を右上、$r$ を左下、$s$ を右下に置くように、2行2列に数を並べて書きます。そして、ナナメに(たすきをかけるように)かけ算をして、その2つの積を足すのです。
具体的には、
- 左上 $p$ と右下 $s$ をかけて $ps$
- 左下 $r$ と右上 $q$ をかけて $qr$
- この2つを足して $ps+qr$ を作り、これが真ん中の項の係数 $b$ と一致するかどうかを確認する
という手順です。左の縦の列($p,r$)をかけると $x^2$ の係数 $a$ になり、右の縦の列($q,s$)をかけると定数項 $c$ になっていることも、同時に確認します。
具体例で実際にやってみる
先ほどの $2x^2+7x+3$ を、たすき掛けで因数分解してみましょう。
ステップ1:$x^2$の係数 $2$ を、かけて $2$ になる2つの数に分けます。
$2=2\times1$ しかないので、縦の左の列は $p=2,\ r=1$ とします。
ステップ2:定数項 $3$ を、かけて $3$ になる2つの数に分けます。
$3=3\times1$ または $3=1\times3$ が考えられます。まず $q=3,\ s=1$ を試してみます。
ステップ3:ナナメにかけて足し、真ん中の項の係数と一致するか確認します。
$p=2,\ r=1,\ q=3,\ s=1$ のとき、
$ps+qr=2\times1+3\times1=2+3=5$
求めたいのは $x$ の係数 $7$ なので、$5$ では一致しません。この組み合わせは不合格です。
ステップ4:別の組み合わせを試します。
今度は $q=1,\ s=3$ にしてみます($p=2,\ r=1$ はそのまま)。
$ps+qr=2\times3+1\times1=6+1=7$
$7$ になりました。真ん中の項の係数 $7$ と一致します。
ステップ5:見つかった $p,q,r,s$ を使って、因数分解の答えを書きます。
$p=2,\ q=1,\ r=1,\ s=3$ だったので、
$2x^2+7x+3=(px+q)(rx+s)=(2x+1)(x+3)$
ステップ6:検算(展開して元の式に戻るか確かめる)します。
$(2x+1)(x+3)=2x\times x+2x\times3+1\times x+1\times3=2x^2+6x+x+3=2x^2+7x+3$
元の式と一致したので、この因数分解は正しいと確認できました。因数分解の問題では、このように最後に展開して検算する習慣をつけておくと、ミスに自分で気づけるようになります。
たすき掛けは、慣れないうちは組み合わせを何度も試すことになりますが、それは決して悪いことではありません。数学の問題を解くときは、いくつかの候補を試してみて、条件に合うものを選び出すという作業がよくあります。たすき掛けはその練習として、とてもよい題材です。
例題
例題1(基本)
問題
次の式を因数分解しなさい。
$3x^2+7x+2$
解答・解説を見る
$x^2$ の係数 $3$ を、かけて $3$ になる2つの数に分けます。$3=3\times1$ しかないので、縦の左の列は次のように決まります。
$p=3,\ r=1$
定数項 $2$ を、かけて $2$ になる2つの数に分けます。候補は $2=2\times1$ または $2=1\times2$ です。
まず $q=2,\ s=1$ を試します。
$ps+qr=3\times1+2\times1=3+2=5$
求めたい $x$ の係数は $7$ なので、一致しません。
次に $q=1,\ s=2$ を試します。
$ps+qr=3\times2+1\times1=6+1=7$
$7$ になり、真ん中の項の係数 $7$ と一致しました。
したがって、$p=3,\ q=1,\ r=1,\ s=2$ となるので、
$3x^2+7x+2=(3x+1)(x+2)$
最後に検算します。
$(3x+1)(x+2)=3x\times x+3x\times2+1\times x+1\times2=3x^2+6x+x+2=3x^2+7x+2$
元の式と一致したので、答えは
$3x^2+7x+2=(3x+1)(x+2)$
です。
例題2(標準)
問題
次の式を因数分解しなさい。
$2x^2-5x-3$
解答・解説を見る
この問題には負の数(マイナスの符号がついた数)が登場します。負の数が混ざっても、たすき掛けの手順は同じです。ただし、かけて負の数になる組み合わせを考える必要がある点に注意します。
$x^2$ の係数 $2$ を、かけて $2$ になる2つの数に分けます。$2=2\times1$ しかないので、
$p=2,\ r=1$
とします。
定数項は $-3$ です。かけて $-3$ になる2つの数の組み合わせを考えます。$-3$ は負の数なので、一方が正の数、もう一方が負の数になります。候補としては、$(-3)\times1$、$1\times(-3)$、$3\times(-1)$、$(-1)\times3$ などがあります。
まず $q=-3,\ s=1$ を試します。
$ps+qr=2\times1+(-3)\times1=2-3=-1$
求めたい $x$ の係数は $-5$ なので、一致しません。
次に $q=1,\ s=-3$ を試します。
$ps+qr=2\times(-3)+1\times1=-6+1=-5$
$-5$ になり、真ん中の項の係数 $-5$ と一致しました。
したがって、$p=2,\ q=1,\ r=1,\ s=-3$ となるので、
$2x^2-5x-3=(2x+1)(x-3)$
最後に検算します。
$(2x+1)(x-3)=2x\times x+2x\times(-3)+1\times x+1\times(-3)=2x^2-6x+x-3=2x^2-5x-3$
元の式と一致したので、答えは
$2x^2-5x-3=(2x+1)(x-3)$
です。
負の数がからむ問題では、符号を1つずつ丁寧に確認しながら計算することが、ミスを防ぐ一番の方法です。
例題3(応用)
問題
次の式を因数分解しなさい。
$6x^2+7xy-3y^2$
解答・解説を見る
この式には $x$ と $y$ の2種類の文字が入っていますが、考え方はこれまでと同じです。$y$ を「ただの数」だと思って、$x$ についての2次式として見ると、$x^2$ の係数は $6$、$xy$ の係数(真ん中の項の係数にあたる部分)は $7y$、定数項にあたる部分は $-3y^2$ です。
このタイプの式を因数分解するときは、次のような形を目指します。
$6x^2+7xy-3y^2=(px+qy)(rx+sy)$
これを展開すると、
$(px+qy)(rx+sy)=pr\,x^2+(ps+qr)xy+qs\,y^2$
となるので、$pr=6$、$qs=-3$、$ps+qr=7$ となる $p,q,r,s$ をたすき掛けで探します。
まず $x^2$ の係数 $6$ を、かけて $6$ になる2つの数に分けます。候補はいくつかありますが、ここでは
$p=2,\ r=3$
を試してみます。
次に、$y^2$ の係数(の元になる数)$-3$ を、かけて $-3$ になる2つの数に分けます。候補として
$q=3,\ s=-1$
を試してみます。
ナナメにかけて足し、$xy$ の係数と一致するか確認します。
$ps+qr=2\times(-1)+3\times3=-2+9=7$
$7$ になり、求めたい $xy$ の係数 $7$ と一致しました。
したがって、$p=2,\ q=3,\ r=3,\ s=-1$ となるので、
$6x^2+7xy-3y^2=(2x+3y)(3x-y)$
最後に検算します。
$(2x+3y)(3x-y)=2x\times3x+2x\times(-y)+3y\times3x+3y\times(-y)$
$=6x^2-2xy+9xy-3y^2=6x^2+7xy-3y^2$
元の式と一致したので、答えは
$6x^2+7xy-3y^2=(2x+3y)(3x-y)$
です。文字が2種類になっても、$x^2$の係数・かけ算した結果が定数項(またはそれに対応する部分)になる項・真ん中の項の係数、という3つの役割を丁寧に対応させれば、同じ手順で解くことができます。
練習問題
問題
次の式を因数分解しなさい。
$4x^2+8x+3$
答え
$4x^2+8x+3=(2x+1)(2x+3)$
(考え方:$x^2$の係数 $4$ を $p=2,\ r=2$ に、定数項 $3$ を $q=1,\ s=3$ に分けると、$ps+qr=2\times3+1\times2=6+2=8$ となり、真ん中の項の係数 $8$ と一致します。検算すると $(2x+1)(2x+3)=4x^2+6x+2x+3=4x^2+8x+3$ となり、正しいことが確認できます。)