数学III / 極限
よくある間違い
間違い1: $\infty-\infty$ をそのまま $0$ だと考えてしまう
よくある誤答例
$\lim_{n\to\infty}(\sqrt{n^2+n}-n)$ を計算するとき、「$n\to\infty$ で $\sqrt{n^2+n}\to\infty$、$n\to\infty$ だから、大きい無限大どうしを引いて $\infty-\infty=0$」と考えて、答えを $0$ としてしまう。
なぜ間違いなのか
$\infty$ は具体的な1つの数ではなく、「限りなく大きくなり続ける」という状態を表す記号です。数どうしの引き算のように $\infty-\infty$ を計算することはそもそもできません。実際に有理化して計算すると、この極限は $\dfrac{1}{2}$ になります(2つの「無限大」が近い速さで大きくなっているかどうかで結果は変わるのです)。
正しい考え方
$\infty-\infty$ の形(多くは根号を含む式)が出てきたら、それは不定形であって値が確定していないというサインです。分子を有理化するなどして $\dfrac{0}{0}$ や「実数 ÷ 実数」の形に変形してから、あらためて極限を計算します。
間違い2: 数列 $\{r^n\}$ の収束条件で $r=1$ を見落とす
よくある誤答例
数列 $\{r^n\}$ が収束する条件を「$-1 なぜ間違いなのか $r=1$ のとき、$r^n=1^n=1$ となり、すべての項がぴったり $1$ です。数列 $1,1,1,\dots$ は明らかに $1$ に収束しています。$r=1$ を除外してしまうと、この収束するケースを見逃すことになります。 正しい考え方 $\{r^n\}$ の収束条件は $-1 よくある誤答例 無限等比級数 $\sum_{n=1}^{\infty} ar^{n-1}$ の収束条件も、数列 $\{r^n\}$ と同じ「$-1 なぜ間違いなのか $r=1$ のとき、級数は $a+a+a+\cdots$ となります。$a\neq 0$ ならば、これは同じ数を無限回足し続けることになり、和はどんどん大きく(小さく)なって発散します。「数列 $\{r^n\}$ 自体が $1$ に収束する」ことと、「その数列を無限に足し合わせた級数が収束する」ことはまったく別の話です。 正しい考え方 無限等比級数が収束するのは、$a=0$ の場合を除けば $-1 よくある誤答例 $\lim_{x\to-\infty}\left(\sqrt{x^2+x}+x\right)$ を計算する際、$\sqrt{x^2+x}$ を $x$ で割るときに $\sqrt{x^2}=x$ として処理してしまい、符号を間違える。 なぜ間違いなのか $\sqrt{x^2}$ は常に $0$ 以上の値になるので、$\sqrt{x^2}=|x|$ が正しい関係です。$x$ が負の数のときは $|x|=-x$ となるので、$\sqrt{x^2}=-x$ です。$x\to-\infty$ を考えているときは $x$ は負の数なので、うっかり $\sqrt{x^2}=x$ としてしまうと、答えの符号がまるごと反転してしまいます。 正しい考え方 $x\to-\infty$ を含む極限で根号 $\sqrt{x^2+\cdots}$ が出てきたら、必ず一度立ち止まって「$x$ は負の数だから $\sqrt{x^2}=|x|=-x$ だ」と確認してから式変形を進めましょう。 よくある誤答例 $\lim_{n\to\infty}\dfrac{n^2+1}{n+1}$ を求めるときに、とりあえず分母に合わせて分子・分母を $n$ で割り、$\dfrac{n+\frac{1}{n}}{1+\frac{1}{n}}$ という式のまま、分子に残った $n$ をうっかり無視して、有限の値に収束すると思い込んでしまう。 なぜ間違いなのか 分子の次数($n^2$、2次)が分母の次数($n$、1次)より高いため、この分数は $n\to\infty$ で無限に大きくなり、発散します。分母の次数($n$)で割っても分子には $n$ が残ってしまい、その $n$ 自体が $n\to\infty$ で無限大に飛んでいくことを見落とすと、誤って有限の答えを出してしまいます。 正しい考え方 分数式の極限を求める前に、まず分子と分母の次数を比較する習慣をつけましょう。「分子の次数が高い → 発散」「次数が同じ → 最高次の係数の比に収束」「分母の次数が高い → $0$ に収束」と整理してから計算に入ると、こうしたミスを防げます。 よくある誤答例 $\lim_{x\to0}\dfrac{\sin 3x}{x}$ を求める際、公式 $\lim_{x\to0}\dfrac{\sin x}{x}=1$ を見た目だけで当てはめて、そのまま答えを $1$ としてしまう。 なぜ間違いなのか 公式 $\lim_{x\to0}\dfrac{\sin x}{x}=1$ が使えるのは、$\sin$ の中身と分母がまったく同じ形(両方とも $x$、あるいは両方とも $3x$ など)になっているときだけです。この問題では $\sin$ の中身が $3x$ なのに分母が $x$ のままなので、形がそろっておらず、公式をそのまま当てはめることはできません。実際に正しく計算すると答えは $3$ になります。 正しい考え方 分母を角の中身と同じ形にそろえるように式を変形してから(例:$\dfrac{\sin 3x}{x}=3\times\dfrac{\sin 3x}{3x}$)、$t=3x$ とおいて公式を適用します。形をそろえる作業を絶対に省略しないようにしましょう。 よくある誤答例 絶対値を含む関数などの極限 $\lim_{x\to a}f(x)$ を求める際、右極限だけを計算して「極限は〇〇である」と結論づけてしまい、左極限を確認しない。 なぜ間違いなのか 極限 $\lim_{x\to a}f(x)$ が存在すると言うためには、左極限と右極限の両方が存在し、かつその2つの値が一致することを確認しなければなりません。右極限だけを調べてそれを極限値だと決めつけると、実際には左極限と右極限が異なり、そもそも極限が存在しないケースを見逃してしまいます。 正しい考え方 絶対値を含む関数や場合分けが必要な関数の極限を求めるときは、必ず左極限と右極限の両方を別々に計算し、両者が一致することを確認してから「極限が存在し、その値は〇〇である」と結論づけましょう。 よくある誤答例 関数が $x=a$ で連続かどうかを調べる際、$\lim_{x\to a}f(x)$ が存在することだけを確認して、「極限があるから連続だ」と結論づけてしまう。 なぜ間違いなのか 連続であるためには、(1) $f(a)$ が定義されている、(2) 極限が存在する、(3) その極限値が $f(a)$ と一致する、という3つの条件がすべて必要です。極限が存在していても、$f(a)$ がそれとは違う値として個別に定義されていれば、グラフはその1点だけ穴が開いたような形になり、不連続になります。 正しい考え方 連続性を調べるときは、(1)(2)(3)の3つの条件を1つずつ順番にすべてチェックする習慣をつけましょう。特に、場合分けされた関数(ある点だけ別の式や値が指定されている関数)では、極限値と指定された値を見比べる作業を絶対に省略しないことが大切です。間違い3: 無限等比数列の収束条件と、無限等比級数の収束条件を混同する
間違い4: $x\to-\infty$ のときに $\sqrt{x^2}=x$ としてしまう
間違い5: 分子・分母の次数を比べずに割ってしまう
間違い6: $\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$ を、形が違うまま当てはめてしまう
間違い7: 右極限(または左極限)だけ確認して満足してしまう
間違い8: 連続性の判定で、極限の存在だけ確認して $f(a)$ との一致を忘れる