数学I / データの分析

四分位数と箱ひげ図

要点整理

前回、データの代表値(平均・中央値・最頻値)を学びました。中央値は「データを小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値」でしたね。今回は、この中央値の考え方をさらに発展させて、データを4つの区画に分ける「四分位数」と、それを図にした「箱ひげ図」を学んでいきます。

四分位数とは何か

データを小さい順に並べたとき、全体をちょうど4等分する3つの区切りの値のことを、小さい方から順に次のように呼びます。

  • 第1四分位数 $Q_1$(全体の下から4分の1のところ)
  • 第2四分位数 $Q_2$(全体のちょうど真ん中。これは中央値と同じものです)
  • 第3四分位数 $Q_3$(全体の下から4分の3のところ)

つまり、$Q_1$、$Q_2$、$Q_3$ という3つの値によって、データ全体が「小さい方から4分の1ずつ」の4つのグループに分けられる、というイメージです。

四分位数の求め方(手順)

四分位数は、次の手順で求めます。

  1. データを小さい順に並べる。
  2. データ全体の中央値を求める。これが $Q_2$ です。
  3. 中央値より小さい方のデータの集まり(下組)を作り、その中央値を求める。これが $Q_1$ です。
  4. 中央値より大きい方のデータの集まり(上組)を作り、その中央値を求める。これが $Q_3$ です。

ここで1つだけ注意点があります。データの個数が奇数のとき、真ん中の値(中央値そのもの)は、下組にも上組にも入れません。データの個数が偶数のときは、ちょうど半分ずつに分けるだけなので、この心配は不要です。

言葉だけだとイメージしづらいので、簡単な例で確認してみましょう。次の7個のデータを考えます。

$2,\ 4,\ 6,\ 8,\ 10,\ 12,\ 14$

これはすでに小さい順に並んでいるとします。データの個数は7個(奇数)なので、真ん中の値は4番目の値です。

$Q_2 = 8$

次に、中央値の8より小さい方のデータ(下組)を取り出します。8自身は下組に入れないことに注意すると、下組は次の3個です。

$2,\ 4,\ 6$

この3個の中央値(真ん中の値)は4なので、

$Q_1 = 4$

同じように、中央値の8より大きい方のデータ(上組)を取り出すと、次の3個です。

$10,\ 12,\ 14$

この3個の中央値は12なので、

$Q_3 = 12$

これで、$Q_1=4$、$Q_2=8$、$Q_3=12$ と求めることができました。

四分位範囲と四分位偏差

$Q_3$ と $Q_1$ の差を、四分位範囲(英語で Interquartile Range、略して IQR)と呼びます。

$Q_3 - Q_1$

先ほどの例では、$Q_3-Q_1=12-4=8$ です。四分位範囲は、データの真ん中あたり(全体の半分)がどれくらいの範囲に散らばっているかを表す値です。全体の最大値・最小値を使う「範囲」とちがって、極端に大きい値や小さい値(外れ値)の影響を受けにくいという特徴があります。

さらに、四分位範囲を2で割った値を四分位偏差と呼びます。

$\frac{Q_3 - Q_1}{2}$

これは、中央値からデータがどれくらい散らばっているかの目安を表す値です。先ほどの例では、四分位偏差は $8 \div 2 = 4$ となります。

箱ひげ図とは何か

箱ひげ図とは、次の5つの値(これをまとめて五数要約と呼びます)を使って、データの分布のようすを1本の図にまとめたものです。

  • 最小値
  • 第1四分位数 $Q_1$
  • 第2四分位数(中央値) $Q_2$
  • 第3四分位数 $Q_3$
  • 最大値

かき方は次の通りです。まず数直線を1本引きます。その数直線の上に、$Q_1$ から $Q_3$ までを箱(長方形)で囲みます。この箱の中に、$Q_2$(中央値)の位置に縦線を引きます。そして、箱の左右から、最小値・最大値までそれぞれ線(ひげ)を伸ばします。

先ほどの7個のデータ($2,4,6,8,10,12,14$)であれば、最小値2、$Q_1=4$、$Q_2=8$、$Q_3=12$、最大値14なので、「2から4まで左のひげ」「4から12までが箱」「箱の中の8の位置に線」「12から14まで右のひげ」という図になります。

箱ひげ図のよいところは、複数のデータの集まりを並べて描くことで、分布の中心や散らばり具合をひと目で比較できる点です。例えば、箱(つまり $Q_1$ から $Q_3$ まで)が広いデータほど、データの真ん中あたりのばらつきが大きいと読み取れます。また、中央値の線が箱の中で左右どちらかに偏っていれば、データが左右非対称に分布していることも読み取れます。

外れ値の考え方(発展)

データの中に、他の値から極端に離れた値が混ざっていることがあります。これを外れ値と呼びます。外れ値を判定する代表的な基準の1つが、四分位範囲を使った次の基準です。

$Q_1 - 1.5(Q_3-Q_1)$

より小さい値、または、

$Q_3 + 1.5(Q_3-Q_1)$

より大きい値は、外れ値とみなします。この考え方は例題3で実際に使ってみます。

例題

例題1(基本)

問題

次の9個のデータがある。

$8,\ 20,\ 5,\ 14,\ 3,\ 12,\ 9,\ 15,\ 7$

このデータについて、第1四分位数 $Q_1$、第2四分位数 $Q_2$、第3四分位数 $Q_3$ をそれぞれ求めなさい。

解答・解説を見る

ステップ1:データを小さい順に並べる

与えられたデータを小さい順に並べ替えます。

$3,\ 5,\ 7,\ 8,\ 9,\ 12,\ 14,\ 15,\ 20$

データの個数は9個です。

ステップ2:中央値($Q_2$)を求める

データの個数が9個(奇数)なので、真ん中の値は小さい方から $(9+1)\div 2 = 5$ 番目の値です。

並べたデータの5番目の値を数えると、$3,5,7,8,\underline{9},12,14,15,20$ となり、5番目は9です。したがって、

$Q_2 = 9$

ステップ3:下組を作り、$Q_1$を求める

中央値の9より小さい方のデータ(下組)を取り出します。9自身は下組に入れません。

$3,\ 5,\ 7,\ 8$

この下組は4個(偶数個)のデータなので、中央値は真ん中の2つの値、つまり2番目の5と3番目の7の平均になります。

$Q_1 = \frac{5+7}{2} = \frac{12}{2} = 6$

ステップ4:上組を作り、$Q_3$を求める

中央値の9より大きい方のデータ(上組)を取り出します。

$12,\ 14,\ 15,\ 20$

この上組も4個(偶数個)のデータなので、中央値は真ん中の2つの値、つまり2番目の14と3番目の15の平均になります。

$Q_3 = \frac{14+15}{2} = \frac{29}{2} = 14.5$

結論

$Q_1 = 6,\quad Q_2 = 9,\quad Q_3 = 14.5$

例題2(標準)

問題

次の8個のデータがある。

$15,\ 2,\ 18,\ 7,\ 13,\ 4,\ 9,\ 10$

このデータについて、五数要約(最小値、$Q_1$、$Q_2$、$Q_3$、最大値)を求め、さらに四分位範囲と四分位偏差を求めなさい。

解答・解説を見る

ステップ1:データを小さい順に並べる

$2,\ 4,\ 7,\ 9,\ 10,\ 13,\ 15,\ 18$

データの個数は8個です。最小値は2、最大値は18です。

ステップ2:中央値($Q_2$)を求める

データの個数が8個(偶数)なので、真ん中の2つの値、つまり4番目の値と5番目の値の平均が中央値になります。

並べたデータを数えると、4番目は9、5番目は10です。したがって、

$Q_2 = \frac{9+10}{2} = \frac{19}{2} = 9.5$

ステップ3:下組を作り、$Q_1$を求める

データの個数が偶数のときは、全体をちょうど半分に分けます。前半4個が下組です。

$2,\ 4,\ 7,\ 9$

この4個の中央値は、2番目の4と3番目の7の平均です。

$Q_1 = \frac{4+7}{2} = \frac{11}{2} = 5.5$

ステップ4:上組を作り、$Q_3$を求める

後半4個が上組です。

$10,\ 13,\ 15,\ 18$

この4個の中央値は、2番目の13と3番目の15の平均です。

$Q_3 = \frac{13+15}{2} = \frac{28}{2} = 14$

ステップ5:四分位範囲と四分位偏差を求める

四分位範囲は $Q_3-Q_1$ なので、

$Q_3 - Q_1 = 14 - 5.5 = 8.5$

四分位偏差はこれを2で割った値なので、

$\frac{Q_3-Q_1}{2} = \frac{8.5}{2} = 4.25$

結論

最小値2、$Q_1=5.5$、$Q_2=9.5$、$Q_3=14$、最大値18。四分位範囲は8.5、四分位偏差は4.25です。

補足として、中央値と最小値の差は $9.5-2=7.5$、最大値と中央値の差は $18-9.5=8.5$ となり、中央値より大きい側の方がわずかに散らばりが大きいデータであることが読み取れます。箱ひげ図をかくと、右側のひげの方が少し長くなるはずです。

例題3(応用)

問題

あるクラスの13人が受けた小テストの得点は、次の通りであった(単位は点)。

$20,\ 55,\ 60,\ 62,\ 65,\ 68,\ 70,\ 72,\ 75,\ 78,\ 80,\ 82,\ 85$

(1) $Q_1$、$Q_2$、$Q_3$、および四分位範囲を求めなさい。

(2) 次の基準を用いて、20点のデータが外れ値かどうかを判定しなさい。

「$Q_1-1.5\times IQR$ より小さい値、または $Q_3+1.5\times IQR$ より大きい値を外れ値とする(ここでIQRは四分位範囲 $Q_3-Q_1$ を表す)。」

解答・解説を見る

(1) $Q_1$、$Q_2$、$Q_3$、四分位範囲を求める

このデータはすでに小さい順に並んでいます。データの個数は13個です。

データの個数が13個(奇数)なので、真ん中の値は小さい方から $(13+1)\div 2=7$ 番目の値です。

$20,55,60,62,65,68,\underline{70},72,75,78,80,82,85$

7番目の値は70なので、

$Q_2 = 70$

中央値の70より小さい方のデータ(下組)は、70自身を除いた前半6個です。

$20,\ 55,\ 60,\ 62,\ 65,\ 68$

この下組は6個(偶数個)のデータなので、中央値は真ん中の2つの値、つまり3番目の60と4番目の62の平均です。

$Q_1 = \frac{60+62}{2} = \frac{122}{2} = 61$

中央値の70より大きい方のデータ(上組)は、後半6個です。

$72,\ 75,\ 78,\ 80,\ 82,\ 85$

この6個の中央値は、3番目の78と4番目の80の平均です。

$Q_3 = \frac{78+80}{2} = \frac{158}{2} = 79$

したがって、四分位範囲は、

$Q_3-Q_1 = 79-61 = 18$

(2) 20点が外れ値かどうかを判定する

まず、基準に使う $1.5\times IQR$ の値を計算します。四分位範囲は(1)で求めた通り18なので、

$1.5\times 18 = 27$

外れ値の下側の基準値は、$Q_1$ からこの27を引いた値です。

$Q_1 - 27 = 61 - 27 = 34$

つまり、「34点より小さい値は外れ値」という基準になります。

20点はこの基準値34より小さいので($20<34$)、20点は外れ値であると判定できます。

結論

$Q_1=61,\quad Q_2=70,\quad Q_3=79$

四分位範囲は18です。20点は基準となる34点を下回っているため、外れ値と判定されます。このように、箱ひげ図で極端に離れた値を見つけたときは、単に「小さいデータがある」で終わらせず、四分位範囲を使った基準で外れ値かどうかを確かめることができます。

練習問題

問題

次の7個のデータがある。

$9,\ 4,\ 15,\ 6,\ 20,\ 11,\ 8$

このデータについて、$Q_1$、$Q_2$、$Q_3$、および四分位範囲を求めなさい。

答え

データを小さい順に並べると、$4,\ 6,\ 8,\ 9,\ 11,\ 15,\ 20$(7個)。

真ん中(4番目)の値が中央値なので $Q_2=9$。

下組(9より小さい前半3個)は $4,6,8$ で、その中央値は $Q_1=6$。

上組(9より大きい後半3個)は $11,15,20$ で、その中央値は $Q_3=15$。

四分位範囲は $Q_3-Q_1=15-6=9$。

$Q_1=6,\quad Q_2=9,\quad Q_3=15$

四分位範囲は9です。