数学II / いろいろな式
複素数の計算
要点整理
なぜ新しい数が必要なのか
数学Iまでで学んできた実数(整数や分数、根号を含む数など、数直線上に並べられる数すべて)の世界では、2次方程式 $x^2 = -1$ を解くことができません。なぜなら、どんな実数を2乗しても、結果は必ず $0$ 以上になるからです。正の数を2乗しても正、負の数を2乗しても正、$0$ を2乗すれば $0$ です。ですから「2乗して $-1$ になる実数」は存在しません。
そこで数学では、「2乗すると $-1$ になる」という性質だけを持つ新しい数を考えます。これを虚数単位と呼び、記号 $i$ で表します。つまり、次の式が成り立つように $i$ を定義します。
$i^2 = -1$
この $i$ を使うと、実数 $a$, $b$ を使って
$a+bi$
という形の数を作ることができます。これを複素数と呼びます。複素数 $a+bi$ において、$a$ の部分を実部、$b$ の部分を虚部と呼びます。たとえば $3+2i$ という複素数では、実部が $3$、虚部が $2$ です。
なお、虚部が $0$ の場合($b=0$ のとき)、複素数 $a+0i$ はふつうの実数 $a$ と同じものとみなします。つまり、複素数は実数を含む、より広い数の世界だと考えてください。また、虚部が $0$ でない複素数($b \neq 0$)を虚数と呼び、その中でも実部が $0$ であるもの($0+bi$、つまり $bi$ の形)を純虚数と呼びます。
複素数が等しいとはどういうことか
2つの複素数 $a+bi$ と $c+di$(ただし $a$, $b$, $c$, $d$ はすべて実数)が等しいのは、実部同士・虚部同士がそれぞれ一致するときだけです。
$a+bi = c+di \Leftrightarrow a=c \text{ かつ } b=d$
特に、$a+bi = 0$ となるのは $a=0$ かつ $b=0$ のときだけです。この「実部と虚部を比較する」という考え方は、後で方程式を解くときにとても重要になりますので、覚えておきましょう。
加法・減法(たし算・ひき算)
複素数のたし算・ひき算は、$i$ を文字(たとえば $x$ のような文字式の文字)だと思って、実部同士・虚部同士をそれぞれまとめるだけです。
$(a+bi)+(c+di) = (a+c)+(b+d)i$
$(a+bi)-(c+di) = (a-c)+(b-d)i$
具体例として、$(3+2i)+(1-4i)$ を計算してみましょう。実部の $3$ と $1$ をまとめて $4$、虚部の $2$ と $-4$ をまとめて $-2$ になるので、答えは $4-2i$ となります。
乗法(かけ算)
複素数のかけ算も、文字式の展開と同じように分配法則を使って展開します。ただし、展開の途中で $i^2$ が出てきたら、必ず $-1$ に置き換える点だけが実数の計算と違います。
$(a+bi)(c+di) = ac+adi+bci+bdi^2 = (ac-bd)+(ad+bc)i$
途中式を1行ずつ確認します。まず分配法則で4つの項に展開すると $ac+adi+bci+bdi^2$ になります。次に $i^2=-1$ を使うと、最後の項 $bdi^2$ は $bd \times (-1) = -bd$ になります。ですから全体は $ac+adi+bci-bd$ となり、これを実部と虚部に整理すると $(ac-bd)+(ad+bc)i$ になります。
この計算に関連して、$i$ のべき乗(同じ数を何回もかけたもの)は次のように4個の値を周期的に繰り返します。
$i^1=i,\quad i^2=-1,\quad i^3=-i,\quad i^4=1$
$i^3$ は $i^2 \times i = (-1) \times i = -i$、$i^4$ は $i^2 \times i^2 = (-1)\times(-1)=1$ と計算できます。$i^5$ はまた $i$ に戻り、以降 $i, -1, -i, 1$ の4つを繰り返します。
共役複素数と除法(わり算)
複素数 $a+bi$ に対して、虚部の符号だけを変えた $a-bi$ を、もとの複素数の共役複素数と呼びます。共役複素数どうしをかけ算すると、次のように必ず実数(虚部が $0$ の数)になります。
$(a+bi)(a-bi) = a^2-(bi)^2 = a^2-b^2i^2 = a^2+b^2$
この式変形を1行ずつ確認します。まず $(a+bi)(a-bi)$ は「和と差の積」の形なので、$a^2-(bi)^2$ になります。次に $(bi)^2 = b^2i^2$ ですから、$a^2-b^2i^2$ になります。さらに $i^2=-1$ を代入すると、$a^2-b^2\times(-1) = a^2+b^2$ となります。$a$, $b$ は実数なので、$a^2+b^2$ はマイナスの虚部を持たない実数です。
この性質を使うと、複素数のわり算を計算できます。分数の分母に複素数がある場合、分母の共役複素数を分子と分母の両方にかけることで、分母を実数にすることができます。
$\frac{a+bi}{c+di} = \frac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)(c-di)} = \frac{(ac+bd)+(bc-ad)i}{c^2+d^2}$
分母は先ほどの共役複素数の性質から $c^2+d^2$ という実数になります。分子は $(a+bi)(c-di)$ をかけ算の公式で展開して整理したものです。この分母を実数にする操作を「分母の実数化」と呼びます。
例題
例題1(基本)
問題
次の計算をしなさい。
(1) $(3+2i)+(1-4i)$
(2) $(5-i)-(2+3i)$
(3) $(1+2i)(3-i)$
解答・解説を見る
(1) 実部同士、虚部同士をそれぞれ足し算します。
$(3+2i)+(1-4i) = (3+1)+(2-4)i$
実部は $3+1=4$、虚部は $2+(-4)=-2$ なので、
$(3+2i)+(1-4i) = 4-2i$
(2) ひき算も同じように、実部同士・虚部同士でまとめます。マイナスをすべての項に配ることを忘れないようにしましょう。
$(5-i)-(2+3i) = (5-2)+(-1-3)i$
実部は $5-2=3$、虚部は $-1-3=-4$ なので、
$(5-i)-(2+3i) = 3-4i$
(3) 分配法則を使って展開します。
$(1+2i)(3-i) = 1\times3+1\times(-i)+2i\times3+2i\times(-i)$
それぞれの項を計算すると、
$= 3-i+6i-2i^2$
ここで $i^2=-1$ を使うと、$-2i^2 = -2\times(-1)=2$ になるので、
$= 3-i+6i+2$
最後に実部と虚部をそれぞれまとめます。実部は $3+2=5$、虚部は $-1+6=5$ なので、
$(1+2i)(3-i) = 5+5i$
例題2(標準)
問題
次の計算をしなさい。
(1) $\dfrac{2+3i}{1-i}$
(2) $i^{15}$
解答・解説を見る
(1) 分母 $1-i$ の共役複素数は $1+i$ です。分子・分母の両方に $1+i$ をかけて、分母を実数にします。
$\frac{2+3i}{1-i} = \frac{(2+3i)(1+i)}{(1-i)(1+i)}$
まず分母を計算します。共役複素数の積の公式より、
$(1-i)(1+i) = 1^2-i^2 = 1-(-1) = 2$
次に分子を展開します。
$(2+3i)(1+i) = 2\times1+2\times i+3i\times1+3i\times i = 2+2i+3i+3i^2$
$i^2=-1$ を使うと $3i^2=-3$ になるので、
$= 2+2i+3i-3 = -1+5i$
分子・分母がそろったので、
$\frac{2+3i}{1-i} = \frac{-1+5i}{2} = -\frac{1}{2}+\frac{5}{2}i$
(2) $i$ のべき乗は $i^1=i$, $i^2=-1$, $i^3=-i$, $i^4=1$ の4つを周期的に繰り返します。指数の $15$ を $4$ で割ると、
$15 = 4\times3+3$
余りが $3$ なので、$i^{15}$ は $i^3$ と同じ値になります。実際に確認すると、
$i^{15} = (i^4)^3\times i^3 = 1^3\times i^3 = i^3$
$i^3=i^2\times i=(-1)\times i=-i$ なので、
$i^{15} = -i$
例題3(応用)
問題
$x$, $y$ を実数とする。次の等式を満たす $x$, $y$ の値を求めなさい。
$(x+yi)(2-i) = 5+5i$
解答・解説を見る
まず左辺を展開します。分配法則を使うと、
$(x+yi)(2-i) = x\times2+x\times(-i)+yi\times2+yi\times(-i)$
それぞれの項を計算すると、
$= 2x-xi+2yi-yi^2$
$i^2=-1$ を使うと、最後の項は $-yi^2=-y\times(-1)=y$ になるので、
$= 2x-xi+2yi+y$
実部($i$ の付いていない項)と虚部($i$ の付いている項)にそれぞれ整理します。実部は $2x+y$、虚部の係数は $-x+2y$ なので、
$(x+yi)(2-i) = (2x+y)+(2y-x)i$
これが右辺の $5+5i$ と等しいので、複素数が等しい条件(実部は実部同士、虚部は虚部同士が一致する)から、次の2つの式が同時に成り立ちます。
$2x+y=5 \quad \cdots ①$
$2y-x=5 \quad \cdots ②$
①を $y$ について解くと、
$y=5-2x$
これを②に代入します。
$2(5-2x)-x=5$
左辺を計算すると、
$10-4x-x=5$
$10-5x=5$
両辺から $10$ を引くと、
$-5x=-5$
両辺を $-5$ で割ると、
$x=1$
$x=1$ を $y=5-2x$ に代入すると、
$y=5-2\times1=3$
したがって、答えは $x=1$, $y=3$ です。
検算: $x=1$, $y=3$ を元の式に戻して確かめます。$(1+3i)(2-i) = 2-i+6i-3i^2 = 2+5i+3 = 5+5i$ となり、たしかに右辺と一致します。
練習問題
問題
次の計算をしなさい。
$\frac{3-4i}{2+i}$
答え
分母 $2+i$ の共役複素数 $2-i$ を分子・分母の両方にかけます。
分母は $(2+i)(2-i) = 2^2-i^2 = 4-(-1) = 5$ です。
分子は $(3-4i)(2-i) = 6-3i-8i+4i^2 = 6-11i-4 = 2-11i$ です。
よって、
$\frac{3-4i}{2+i} = \frac{2-11i}{5} = \frac{2}{5}-\frac{11}{5}i$