数学II / 図形と方程式
軌跡と方程式
要点整理
前のページでは、円と直線の位置関係について学びました。ここでは、その考え方も土台にしながら、「ある条件を満たす点を全部集めると、どんな図形になるか」を調べる、軌跡(きせき)の考え方を学びます。
軌跡とは何か
軌跡とは、与えられた条件を満たす点をすべて集めたときにできる図形のことです。例えば、「ある1点から一定の距離にある点をすべて集める」と、それは円になります。これは軌跡のいちばん簡単な例です。
軌跡の問題では、条件を満たす点は1つではなく無数にあります。その無数の点がどんな図形を作るのかを、方程式を使って調べていきます。
軌跡を求める基本の手順
軌跡を求めるときは、次の手順で考えます。
- 求めたい軌跡上の点を $\mathrm{P}(x, y)$ とおきます。$x, y$ はまだ値が決まっていない、動く点の座標を表す文字です。
- 問題文に書かれている条件を、$x, y$ を使った式(方程式)で表します。
- その式を計算して整理し、見慣れた図形の方程式(直線の方程式や円の方程式など)の形に直します。
- 整理してできた式が表す図形が、実際に問題の条件をすべて満たしているかを確認します。特別な事情があるときは、条件に合わない点を除きます。
この4つの中でも、特に大事なのは1と2です。「動く点を文字でおいて、条件を式にする」という考え方は、軌跡の問題すべてに共通する土台になります。
具体例① 2点から等しい距離にある点の軌跡
2つの定点 $\mathrm{A}$, $\mathrm{B}$ から等しい距離にある点 $\mathrm{P}$ の軌跡を考えてみましょう。条件は $\mathrm{PA} = \mathrm{PB}$ です。
この式に2点間の距離の公式を当てはめて $x, y$ の式に直し、整理していくと、最終的には点 $\mathrm{P}$ の軌跡は、線分 $\mathrm{AB}$ の垂直二等分線(線分の中点を通り、その線分と垂直に交わる直線)という直線になることが分かります。図でイメージすると、$\mathrm{A}$ と $\mathrm{B}$ から同じ距離にある点は、ちょうど2点のまん中を通る直線上に並ぶ、という意味です。具体的な計算は例題1で確認します。
具体例② 距離の比が一定である点の軌跡(アポロニウスの円)
今度は、2つの定点 $\mathrm{A}$, $\mathrm{B}$ からの距離の比が一定になる点 $\mathrm{P}$ の軌跡を考えます。つまり、
$\mathrm{PA} : \mathrm{PB} = m : n$
($m, n$ は正の数)という条件です。この比が $1:1$ のときは具体例①と同じで垂直二等分線になりますが、比が $1:1$ でないとき(例えば $1:2$ など)は、なんと円になることが分かっています。この円のことをアポロニウスの円と呼びます。
$\mathrm{PA} : \mathrm{PB} = m : n \iff n \cdot \mathrm{PA} = m \cdot \mathrm{PB}$
という比の性質(「内項の積は外項の積に等しい」という比の基本性質です)を使って式を作り、両辺を2乗して整理すると、円の方程式が出てきます。具体的な計算は例題2で確認します。
軌跡を求めるときの注意点
軌跡の問題で長さの条件($\mathrm{PA} = \mathrm{PB}$ など)を扱うときは、両辺を2乗して式を整理することがよくあります。長さは必ず0以上の数なので、「両辺が0以上のときに2乗する」という操作は、意味を変えずに式を変形する操作(同値変形といいます)になります。そのため、多くの場合はステップ4の確認で余分な点を除く必要はありません。
ただし、問題によっては、途中で使った別の文字(媒介変数といいます)が動く範囲に制限がある場合など、最終的な図形の一部だけが答えになることもあります。この点は例題3で扱います。
例題
例題1(基本)
問題 2点 $\mathrm{A}(1, 2)$, $\mathrm{B}(5, 4)$ から等しい距離にある点 $\mathrm{P}$ の軌跡を求めなさい。
解答・解説を見る
求める点を $\mathrm{P}(x, y)$ とおきます。条件は $\mathrm{PA} = \mathrm{PB}$ です。
2点間の距離の公式を使うと、
$\mathrm{PA} = \sqrt{(x-1)^2 + (y-2)^2}, \quad \mathrm{PB} = \sqrt{(x-5)^2 + (y-4)^2}$
です。$\mathrm{PA} = \mathrm{PB}$ の両辺は0以上なので、両辺を2乗しても同じ意味の式になります(同値変形です)。2乗するとルート($\sqrt{\ }$)が外れて、
$(x-1)^2 + (y-2)^2 = (x-5)^2 + (y-4)^2$
となります。ここから左辺と右辺をそれぞれ展開します。
左辺は、
$(x-1)^2 + (y-2)^2 = x^2 - 2x + 1 + y^2 - 4y + 4 = x^2 + y^2 - 2x - 4y + 5$
右辺は、
$(x-5)^2 + (y-4)^2 = x^2 - 10x + 25 + y^2 - 8y + 16 = x^2 + y^2 - 10x - 8y + 41$
これらを等式にすると、
$x^2 + y^2 - 2x - 4y + 5 = x^2 + y^2 - 10x - 8y + 41$
両辺に共通する $x^2 + y^2$ を、両辺から引いて消します。
$-2x - 4y + 5 = -10x - 8y + 41$
右辺の項を、符号を変えて左辺に移項します。
$-2x - 4y + 5 + 10x + 8y - 41 = 0$
同じ文字の項どうしをまとめます。
$8x + 4y - 36 = 0$
両辺を4で割って式を簡単にします。
$2x + y - 9 = 0$
これが求める軌跡の方程式です。これは直線の方程式なので、点 $\mathrm{P}$ の軌跡は直線 $2x + y - 9 = 0$ になります。
この直線は、実は線分 $\mathrm{AB}$ の垂直二等分線になっています。今回の2乗する変形は、$\mathrm{PA}$, $\mathrm{PB}$ がどちらも0以上であることから成り立つ同値変形だったので、除外すべき点はありません。
例題2(標準)
問題 2点 $\mathrm{A}(0, 0)$, $\mathrm{B}(6, 0)$ からの距離の比が $\mathrm{PA} : \mathrm{PB} = 1 : 2$ である点 $\mathrm{P}$ の軌跡を求めなさい。
解答・解説を見る
求める点を $\mathrm{P}(x, y)$ とおきます。条件は $\mathrm{PA} : \mathrm{PB} = 1 : 2$ です。
比の性質(内項の積と外項の積が等しい)を使うと、
$2 \cdot \mathrm{PA} = 1 \cdot \mathrm{PB}$
つまり $2\,\mathrm{PA} = \mathrm{PB}$ となります。両辺とも0以上なので、両辺を2乗しても同値です。2乗すると、
$4\,\mathrm{PA}^2 = \mathrm{PB}^2$
となります。ここに2点間の距離の公式(2乗した形)を当てはめます。
$\mathrm{PA}^2 = (x-0)^2 + (y-0)^2 = x^2 + y^2$
$\mathrm{PB}^2 = (x-6)^2 + (y-0)^2 = (x-6)^2 + y^2$
これらを $4\,\mathrm{PA}^2 = \mathrm{PB}^2$ に代入します。
$4(x^2 + y^2) = (x-6)^2 + y^2$
左辺を展開します。
$4x^2 + 4y^2 = (x-6)^2 + y^2$
右辺の $(x-6)^2$ を展開すると $(x-6)^2 = x^2 - 12x + 36$ なので、
$4x^2 + 4y^2 = x^2 - 12x + 36 + y^2$
右辺の項をすべて、符号を変えて左辺に移項します。
$4x^2 + 4y^2 - x^2 + 12x - 36 - y^2 = 0$
同じ文字の項どうしをまとめます。
$3x^2 + 3y^2 + 12x - 36 = 0$
両辺を3で割って式を簡単にします。
$x^2 + y^2 + 4x - 12 = 0$
この式は、まだ円の方程式の形($(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$ の形)に直っていません。そこで、$x$ の項だけを取り出して平方完成(2乗の形に直す変形)をします。
$x^2 + 4x = (x+2)^2 - 4$
これを元の式に代入すると、
$(x+2)^2 - 4 + y^2 - 12 = 0$
$-4$ と $-12$ を右辺に移項してまとめると、
$(x+2)^2 + y^2 = 16$
これが求める軌跡の方程式です。$16 = 4^2$ なので、これは中心 $(-2, 0)$、半径 $4$ の円を表しています。
したがって、点 $\mathrm{P}$ の軌跡は、中心 $(-2, 0)$、半径 $4$ の円(アポロニウスの円)です。この計算もすべて同値変形(2乗の部分も両辺が0以上どうしの変形)なので、除外すべき点はありません。
例題3(応用)
問題 円 $x^2 + y^2 = 4$ 上を点 $\mathrm{Q}$ が動くとき、定点 $\mathrm{A}(4, 2)$ と点 $\mathrm{Q}$ を結ぶ線分 $\mathrm{AQ}$ の中点を $\mathrm{P}$ とする。点 $\mathrm{Q}$ が円上のすべての点を動くとき、点 $\mathrm{P}$ の軌跡を求めなさい。
解答・解説を見る
この問題では、動く点が2つ登場します。円周上を動く点 $\mathrm{Q}$ と、その $\mathrm{Q}$ の動きにあわせて動く点 $\mathrm{P}$ です。このように、ある点の動きに連動して別の点が動くタイプの軌跡問題では、次の考え方を使います。
- まず、動く点 $\mathrm{Q}$ の座標を $(s, t)$ と文字でおきます。$x, y$ はこの後 $\mathrm{P}$ の座標に使うので、$\mathrm{Q}$ には別の文字 $s, t$ を使います。
- $\mathrm{Q}(s, t)$ が満たしている条件(ここでは円の方程式)を、$s, t$ の式で書いておきます。
- 求めたい点 $\mathrm{P}(x, y)$ と $\mathrm{Q}(s, t)$ の関係式(ここでは中点の関係)を作ります。
- その関係式を $s = (x, y$ の式$)$、$t = (x, y$ の式$)$ の形に直し、円の方程式に代入して $s, t$ を消去します。
それでは実際に計算します。$\mathrm{Q}(s, t)$ は円 $x^2 + y^2 = 4$ 上の点なので、
$s^2 + t^2 = 4 \quad \cdots ①$
が成り立ちます。
一方、$\mathrm{P}(x, y)$ は線分 $\mathrm{AQ}$ の中点で、$\mathrm{A}(4, 2)$, $\mathrm{Q}(s, t)$ なので、中点の座標の公式から、
$x = \frac{4 + s}{2}, \quad y = \frac{2 + t}{2}$
が成り立ちます。この2つの式を、$s, t$ について解きます。
$x = \dfrac{4+s}{2}$ の両辺を2倍すると $2x = 4 + s$ となるので、
$s = 2x - 4$
同じように $y = \dfrac{2+t}{2}$ の両辺を2倍すると $2y = 2 + t$ となるので、
$t = 2y - 2$
この $s = 2x-4$, $t = 2y-2$ を、①の式 $s^2 + t^2 = 4$ に代入します。
$(2x-4)^2 + (2y-2)^2 = 4$
左辺を展開します。$(2x-4)^2 = 4(x-2)^2$、$(2y-2)^2 = 4(y-1)^2$ です(かっこの中を2でくくって2乗しています)ので、
$4(x-2)^2 + 4(y-1)^2 = 4$
両辺を4で割ります。
$(x-2)^2 + (y-1)^2 = 1$
これが求める軌跡の方程式です。中心 $(2, 1)$、半径 $1$ の円を表しています。
最後に確認です。点 $\mathrm{Q}$ は円 $x^2+y^2=4$ の全体を動くので、$s, t$ に制限はありません。したがって、変換された $x, y$ にも制限が生まれず、点 $\mathrm{P}$ の軌跡はこの円のすべての点になります。もし問題文で「$\mathrm{Q}$ は円の上半分だけを動く」のように範囲が限定されていたら、$\mathrm{P}$ の軌跡もその範囲に対応する一部分だけになるので、注意が必要です。
練習問題
問題 2点 $\mathrm{A}(-3, 0)$, $\mathrm{B}(3, 0)$ から等しい距離にある点 $\mathrm{P}$ の軌跡を求めなさい。
答え
点 $\mathrm{P}(x, y)$ とおき、$\mathrm{PA} = \mathrm{PB}$ の両辺を2乗すると $(x+3)^2 + y^2 = (x-3)^2 + y^2$ となります。展開すると $x^2 + 6x + 9 = x^2 - 6x + 9$ となり、整理すると $12x = 0$、すなわち $x = 0$ となります。
したがって、点 $\mathrm{P}$ の軌跡は直線 $x = 0$(つまり $y$ 軸)です。