数学II / いろいろな式

頻出解法パターン

この単元(数学II「いろいろな式」)では、整式の割り算・分数式・二項定理・複素数・高次方程式・恒等式や不等式の証明など、扱うテーマが一気に増えます。それぞれ別々の内容に見えますが、実は「この形を見たらこう動く」という決まった型(パターン)があるものがほとんどです。ここでは、そのパターンを8つにまとめました。問題を見て「あ、あのパターンだ」と気づけるようになることが目標です。

パターン1: 二項定理は「一般項」を書いてから欲しい項の番号を探す

こんな問題で使う

$(2x+3)^5$ を展開したときの $x^3$ の項の係数を求めよ、のように「展開式のうち、ある特定の項の係数だけ」を聞かれる問題で使います。式全体をすべて展開する必要はありません。

二項定理とは、$(a+b)^n$ を展開したときの各項の形を、次のようにまとめて表す公式です。

$(a+b)^n=\sum_{r=0}^{n}\binom{n}{r}a^{n-r}b^{r}$

ここで $\sum_{r=0}^{n}$ は「$r=0$ から $r=n$ まで、順番に代入した式をすべて足し合わせる」という意味の記号です。また $\binom{n}{r}$ は「$n$個の中から$r$個を選ぶ組み合わせの数」を表す記号で、二項係数と呼ばれます。この和の中の1つ1つの項 $\binom{n}{r}a^{n-r}b^{r}$ を一般項と言います。

解法の手順

  • 一般項 $\binom{n}{r}a^{n-r}b^{r}$ を、問題の $a,b,n$ に合わせて書く。
  • 欲しい項の次数(たとえば $x^3$ なら3次)になるように、文字の指数の部分の式を作り、$r$ の値を決める。
  • 決まった $r$ を一般項に代入し、数の部分(係数)を計算する。

具体例

問題:$(2x+3)^5$ を展開したときの、$x^3$ の項の係数を求めよ。

解答: $a=2x,\ b=3,\ n=5$ として一般項を書きます。

$\binom{5}{r}(2x)^{5-r}3^{r}=\binom{5}{r}2^{5-r}3^{r}x^{5-r}$

$x^3$ の項が欲しいので、指数の部分について $5-r=3$ とおくと、$r=2$ です。 $r=2$ を代入して係数を計算します。

$\binom{5}{2}2^{5-2}3^{2}=\binom{5}{2}2^{3}3^{2}$

$\binom{5}{2}$ は5個から2個を選ぶ組み合わせの数で、$\binom{5}{2}=\dfrac{5\times4}{2\times1}=10$ です。

$10\times2^{3}\times3^{2}=10\times8\times9=720$

したがって、$x^3$ の項の係数は $720$ です。

パターン2: 割り算せずに余りを知りたいときは剰余の定理

こんな問題で使う

整式 $P(x)$ を $x-a$ で割った余りを求めよ、あるいは $P(x)$ を $(x-a)(x-b)$ のような2次式で割った余りを求めよ、という問題で使います。実際に長い筆算(割り算)をしなくても、余りだけをピンポイントで求められるのが強みです。

剰余の定理とは、「整式 $P(x)$ を $x-a$ で割った余りは、$P(x)$ の $x$ に $a$ を代入した値 $P(a)$ に等しい」という定理です。

解法の手順(1次式 $x-a$ で割る場合)

  • $P(x)$ の $x$ に $a$ を代入して、$P(a)$ を計算する。
  • 計算した値が、そのまま求める余りである。

解法の手順(2次式 $(x-a)(x-b)$ で割る場合)

  • 割る式が2次式なので、余りは1次以下の式になる。余りを $px+q$ とおき、商を $Q(x)$ として、次の等式を作る。

$P(x)=(x-a)(x-b)Q(x)+px+q$

  • $x=a$ を代入すると、右辺の $(x-a)(x-b)Q(x)$ の部分が $0$ になって消えるので、$P(a)=pa+q$ という式が得られる。
  • 同じように $x=b$ を代入して、$P(b)=pb+q$ という式も得る。
  • 2つの式を連立方程式として解き、$p,q$ を求める。

具体例

問題:$P(x)=x^3-2x^2+3x-5$ を $x-2$ で割った余りを求めよ。

解答: 剰余の定理より、求める余りは $P(2)$ です。

$P(2)=2^3-2\times2^2+3\times2-5=8-8+6-5=1$

したがって、余りは $1$ です。

パターン3: 高次方程式は因数定理で解の候補を探してから因数分解

こんな問題で使う

$x^3-6x^2+11x-6=0$ のような、3次以上の方程式(高次方程式)を解け、という問題で使います。

因数定理とは、「$P(a)=0$ が成り立つならば、$P(x)$ は $x-a$ を因数に持つ」という定理です。剰余の定理(パターン2)で余りが $0$ になる場合の特別な形と考えるとイメージしやすいです。

解法の手順

  • $P(x)=0$ となるような $x=a$ の値を、いくつか数を代入して探す。代入する数の候補は、定数項の約数を、最高次の項の係数の約数で割った分数の形の中から探すとよい。
  • $P(a)=0$ となる $a$ が見つかったら、$P(x)$ は $x-a$ を因数に持つとわかるので、$P(x)$ を $x-a$ で実際に割り算する。
  • 割り算してできた商が2次式であれば、たすき掛けや解の公式でさらに因数分解し、方程式の解をすべて求める。商がまだ3次以上であれば、同じ手順をもう一度繰り返す。

具体例

問題:方程式 $x^3-6x^2+11x-6=0$ を解け。

解答: $P(x)=x^3-6x^2+11x-6$ とします。$x=1$ を代入すると、

$P(1)=1-6+11-6=0$

となるので、$P(x)$ は $x-1$ を因数に持ちます。$P(x)$ を $x-1$ で割ると、

$P(x)=(x-1)(x^2-5x+6)$

となります(この割り算の計算そのものは、パターン2で扱った整式の割り算の手順で行います)。さらに $x^2-5x+6$ を因数分解すると、掛けて $6$、足して $-5$ になる2数は $-2$ と $-3$ なので、

$x^2-5x+6=(x-2)(x-3)$

したがって、

$P(x)=(x-1)(x-2)(x-3)$

$P(x)=0$ より、$x=1,\ 2,\ 3$ が答えです。

パターン4: 複素数の計算は「$i^2=-1$ に置き換える」と「実部と虚部を分ける」だけ

こんな問題で使う

$(2+3i)(1-i)$ のような複素数どうしの四則演算や、複素数の相等条件を使う問題で使います。

複素数とは、$2$乗すると $-1$ になる数 $i$(虚数単位と言います、つまり $i^2=-1$ です)を使って、$a+bi$($a,b$ は実数)の形で表される数のことです。$a$ をその複素数の実部、$b$ を虚部と言います。複素数の相等条件とは、「$a+bi=c+di$ ならば $a=c$ かつ $b=d$」というルールのことです(ただし $a,b,c,d$ はすべて実数とします)。

解法の手順

  • 複素数の積や和は、$i$ を1つの文字だと思って、ふつうの文字式と同じように展開・計算する。
  • 展開して出てきた $i^2$ は、すべて $-1$ に置き換える。
  • 実部(実数だけの項)どうし、虚部($i$ がついた項)どうしをそれぞれまとめて、$a+bi$ の形に整理する。
  • 相等条件を使う問題では、両辺の実部どうし・虚部どうしがそれぞれ等しいとおいて、連立方程式を作る。

具体例

問題:$(2+3i)(1-i)$ を計算せよ。

解答: 文字式と同じように展開します。

$(2+3i)(1-i)=2\times1+2\times(-i)+3i\times1+3i\times(-i)$

$=2-2i+3i-3i^2$

$i^2=-1$ を代入します。

$-3i^2=-3\times(-1)=3$

これを使って整理すると、

$2-2i+3i+3$

実部どうし($2$と$3$)、虚部どうし($-2i$と$3i$)をまとめます。

$=5+i$

したがって、答えは $5+i$ です。

パターン5: 判別式で解の種類を判定し、実数係数なら虚数解はペアで出ることを利用する

こんな問題で使う

2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ が異なる2つの虚数解を持つような定数の条件を求めよ、や、実数を係数とする2次方程式が複素数の解を1つ持つとわかっているとき、もう一方の解を求めよ、という問題で使います。

判別式とは、2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解の種類を、実際に解の公式を使わなくても判定できる式 $D=b^2-4ac$ のことです。

解法の手順

  • 判別式 $D=b^2-4ac$ を計算する。
  • $D>0$ のとき、異なる2つの実数解を持つ。$D=0$ のとき、ただ1つの実数解(重解)を持つ。$D<0$ のとき、異なる2つの虚数解を持つ、と判定する。
  • 「異なる2つの虚数解を持つ」「実数解を持たない」などの条件が問題に書かれていたら、それを $D<0$ という不等式に翻訳して、定数の条件を求める。
  • 係数がすべて実数の2次方程式では、虚数解は必ず $p+qi$ と $p-qi$(共役な複素数、実部が同じで虚部の符号だけ反対のペア)の形で同時に現れることを利用してよい。片方の解がわかれば、もう一方の解もすぐにわかる。

具体例

問題:$x$ についての2次方程式 $x^2-4x+k=0$ が異なる2つの虚数解を持つような、定数 $k$ の値の範囲を求めよ。

解答: 判別式を計算します。

$D=(-4)^2-4\times1\times k=16-4k$

異なる2つの虚数解を持つのは $D<0$ のときなので、

$16-4k<0$

両辺を $-4$ で割ります。負の数で割るので不等号の向きが反対になることに注意すると、

$k>4$

したがって、答えは $k>4$ です。

パターン6: 「解を求めずに」解の組み合わせの値を出すなら解と係数の関係

こんな問題で使う

2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の2つの解を $\alpha,\beta$ とするとき、$\alpha^2+\beta^2$ や $\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}$ のような、解の組み合わせの値を求めよ、という問題で使います。$\alpha,\beta$ 自体を解の公式で求めてしまうと計算が複雑になる場合でも、この関係を使えば見通しよく計算できます。

解と係数の関係とは、2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の2つの解を $\alpha,\beta$ とするとき、解を実際に求めなくても、係数だけから解の和と積がわかる、という関係のことです。

$\alpha+\beta=-\frac{b}{a},\qquad \alpha\beta=\frac{c}{a}$

解法の手順

  • 解と係数の関係を使って、$\alpha+\beta$ と $\alpha\beta$ の値を先に求める。
  • 求めたい式を、$\alpha+\beta$ と $\alpha\beta$ だけを使って表せるように変形する。たとえば $\alpha^2+\beta^2=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta$ のような対称式の公式(2つの文字を入れ替えても形が変わらない式どうしの変形公式)を使う。
  • 手順1で求めた $\alpha+\beta$、$\alpha\beta$ の値を代入して計算する。

具体例

問題:2次方程式 $2x^2-3x+1=0$ の2つの解を $\alpha,\beta$ とするとき、$\alpha^2+\beta^2$ の値を求めよ。

解答: 解と係数の関係より、

$\alpha+\beta=-\frac{-3}{2}=\frac{3}{2},\qquad \alpha\beta=\frac{1}{2}$

$\alpha^2+\beta^2$ を、$\alpha+\beta$ と $\alpha\beta$ で表します。

$\alpha^2+\beta^2=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta$

値を代入します。

$=\left(\frac{3}{2}\right)^2-2\times\frac{1}{2}=\frac{9}{4}-1=\frac{9}{4}-\frac{4}{4}=\frac{5}{4}$

したがって、答えは $\dfrac{5}{4}$ です。

パターン7: 恒等式の未知の係数は「係数比較法」か「数値代入法」で求める

こんな問題で使う

「次の等式が、すべての $x$ について成り立つとき、定数 $a,b,c$ の値を求めよ」のように、恒等式の条件から未知の係数を求める問題で使います。

恒等式とは、含まれている文字にどんな値を代入しても、常に両辺が等しくなる等式のことです(特定の $x$ でだけ成り立つ普通の方程式とは区別されます)。

解法の手順

  • 与えられた等式が「$x$ についての恒等式である」という条件を確認する。
  • 係数比較法を使う場合は、両辺を同じ次数の整式の形に展開・整理し、両辺で同じ次数の項の係数どうしが等しいとおいて、連立方程式を作る。
  • 数値代入法を使う場合は、$x$ に計算が楽になる値(式の一部が $0$ になる値など)を代入して式を作ることを、未知数の数だけ繰り返す。
  • どちらの方法でも、最後に連立方程式を解いて係数を求める。
  • 数値代入法を使ったときは、代入して作った式が成り立つことは「恒等式であるための必要条件」でしかないため、求めた値をもとの等式に戻して、本当にすべての $x$ で成り立つ恒等式になっているかを確認する。

具体例

問題:等式 $x^2+3x-1=a(x-1)^2+b(x-1)+c$ が、すべての $x$ について成り立つとき、定数 $a,b,c$ の値を求めよ。

解答: 数値代入法を使います。まず $x=1$ を代入すると、右辺の $(x-1)$ を含む項が $0$ になります。

$1+3-1=a\times0+b\times0+c \quad\Rightarrow\quad c=3$

次に $x=0$ を代入します。

$0+0-1=a\times1+b\times(-1)+c \quad\Rightarrow\quad -1=a-b+c$

$c=3$ を代入して整理すると、

$-1=a-b+3 \quad\Rightarrow\quad a-b=-4 \quad\cdots①$

次に $x=2$ を代入します。

$4+6-1=a\times1+b\times1+c \quad\Rightarrow\quad 9=a+b+c$

$c=3$ を代入して整理すると、

$9=a+b+3 \quad\Rightarrow\quad a+b=6 \quad\cdots②$

①と②を連立方程式として解きます。①$+$②より、

$2a=2 \quad\Rightarrow\quad a=1$

$a=1$ を②に代入すると、$1+b=6$ より $b=5$ です。 最後に、$a=1,b=5,c=3$ をもとの等式に戻して確かめます。右辺は、

$(x-1)^2+5(x-1)+3=x^2-2x+1+5x-5+3=x^2+3x-1$

となり、左辺と一致するので、確かに恒等式になっています。したがって、答えは $a=1,\ b=5,\ c=3$ です。

パターン8: 等式・不等式の証明は「差をとる」、条件がそろえば相加平均・相乗平均を疑う

こんな問題で使う

「$A\geq B$ が成り立つことを証明せよ」のような不等式の証明問題全般で使います。とくに $a>0,b>0$ のように「すべて正の数」という条件が書かれていて、かつ和や積が絡む式であれば、相加平均・相乗平均の関係を疑うとよいサインです。

解法の手順

  • 証明したい不等式が $A\geq B$ の形であれば、まず左辺から右辺を引いた式 $A-B$ を作る(これを「差をとる」と言います)。
  • $A-B$ を計算・変形し、$(実数)^2\geq0$ の形(平方完成)や、明らかに $0$ 以上とわかる項の和の形に持っていく。
  • すべての項が $0$ 以上であることを示し、その和である $A-B$ も $0$ 以上、つまり $A-B\geq0$、すなわち $A\geq B$ であると結論づける。
  • 等号が成り立つのはどのようなときか(平方の中身がちょうど $0$ になるときなど)も確認して書き添える。
  • 「$a>0,b>0$」のようにすべて正の数という条件があり、和と積の両方が式に出てくるときは、相加平均・相乗平均の関係

$\frac{a+b}{2}\geq\sqrt{ab}\quad(\text{等号は }a=b\text{ のとき})$

が使えないか考える。この関係は、右辺の $\sqrt{ab}$(相乗平均)と左辺の $\dfrac{a+b}{2}$(相加平均)を比べる形の不等式を証明したいときに、そのまま使える強力な道具です。

具体例

問題:$a>0,\ b>0$ のとき、$a+b\geq2\sqrt{ab}$ が成り立つことを証明せよ。また、等号が成り立つのはどのようなときか答えよ。

解答: 左辺から右辺を引きます。

$(a+b)-2\sqrt{ab}$

$a=(\sqrt{a})^2$、$b=(\sqrt{b})^2$ であることを使って書き直すと、

$=(\sqrt{a})^2-2\sqrt{a}\sqrt{b}+(\sqrt{b})^2$

これは $x^2-2xy+y^2=(x-y)^2$ の形をしているので、

$=(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2$

どんな実数を2乗しても $0$ 以上になるので、

$(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2\geq0$

すなわち、

$(a+b)-2\sqrt{ab}\geq0$

両辺に $2\sqrt{ab}$ を足すと、

$a+b\geq2\sqrt{ab}$

が示されました。また、等号が成り立つのは $\sqrt{a}-\sqrt{b}=0$、つまり $\sqrt{a}=\sqrt{b}$、すなわち $a=b$ のときです。