数学I / 数と式

命題の逆・裏・対偶と証明

要点整理

前のトピック「命題と条件・必要十分条件」では、「$p$ ならば $q$」という形の命題を $p \Rightarrow q$ と表すこと、$p$ を仮定(条件が成り立つと決めてかかる部分)、$q$ を結論(そこから導かれる部分)と呼ぶことを学びました。ここでは、この $p \Rightarrow q$ という1つの命題から、新しく3つの命題(逆・裏・対偶)を作り、それらの真偽(正しいか正しくないか)を調べる方法を学びます。数と式の単元はこのテーマで最後になります。

逆・裏・対偶とは何か

命題 $p \Rightarrow q$ に対して、次のように3つの命題を作ることができます。ここで $\overline{p}$ は「$p$ の否定」、つまり「$p$ ではない」ということを表す記号です(バーは否定を表します)。

$ \begin{aligned} \text{逆}\ &:\ q \Rightarrow p\quad(\text{仮定と結論を入れ替える}) \\ \text{裏}\ &:\ \overline{p} \Rightarrow \overline{q}\quad(\text{仮定と結論をそれぞれ否定する}) \\ \text{対偶}\ &:\ \overline{q} \Rightarrow \overline{p}\quad(\text{入れ替えて、さらにそれぞれ否定する}) \end{aligned} $

言葉で覚えるなら、「逆」は矢印の向きだけを変えたもの、「裏」は矢印の向きはそのままで両方に否定をつけたもの、「対偶」は矢印の向きを変えたうえで両方に否定をつけたもの、という違いです。

具体例で確認する

次の命題で考えてみましょう。

  • $p$:「四角形 $ABCD$ は正方形である」
  • $q$:「四角形 $ABCD$ は長方形である」

元の命題 $p \Rightarrow q$:「正方形ならば長方形である」。正方形は(4つの角がすべて直角という意味で)長方形の一種なので、これは(正しい)です。

逆 $q \Rightarrow p$:「長方形ならば正方形である」。これは(正しくない)です。なぜなら、たて $2$、よこ $3$ の長方形のように、長方形であっても正方形ではない図形が存在するからです。このように、ある命題が正しいことを打ち消す具体例のことを反例と呼びます。

裏 $\overline{p} \Rightarrow \overline{q}$:「正方形でないならば長方形でない」。これもです。反例として、たて $2$、よこ $3$ の長方形を考えると、これは正方形ではありません($\overline{p}$ は真)が、長方形ではある($\overline{q}$ は偽)ので、「正方形でないならば長方形でない」は成り立ちません。

対偶 $\overline{q} \Rightarrow \overline{p}$:「長方形でないならば正方形でない」。これはです。なぜなら、正方形は必ず長方形の一種なので、長方形でない図形は(長方形の一種である)正方形であるはずがないからです。

この例からわかるように、逆や裏は、元の命題が真であっても真になるとは限りません。一方で、対偶は元の命題と必ず真偽が一致します。これは偶然ではなく、次のような理由があります。

なぜ対偶は元の命題と真偽が一致するのか

$p \Rightarrow q$ が真であるとは、「$p$ を満たすもの全体の集合」が「$q$ を満たすもの全体の集合」に含まれている、という意味でした(前のトピックで学んだ集合の包含関係です)。図で言えば、$p$ の範囲がまるごと $q$ の範囲の中に入っているイメージです。

このとき、「$q$ の範囲の外」にあるものは、当然「$p$ の範囲の外」にもあるはずです。もし $q$ の外にあるのに $p$ の中にあるものがあったら、それは $p$ の範囲が $q$ の範囲からはみ出していることになり、「$p$ ならば $q$」という前提と矛盾してしまうからです。「$q$ の範囲の外」とは $\overline{q}$ が成り立つこと、「$p$ の範囲の外」とは $\overline{p}$ が成り立つことなので、これはまさに $\overline{q} \Rightarrow \overline{p}$(対偶)が成り立つことを意味します。この関係は逆にもたどれるので、次の重要な性質がいえます。

$p \Rightarrow q\ \text{の真偽と}\ \overline{q} \Rightarrow \overline{p}\ \text{の真偽は、常に一致する}$

(参考までに、「逆」$q\Rightarrow p$ の対偶を作ってみると $\overline{p}\Rightarrow\overline{q}$、つまり「裏」になります。逆と裏は互いに対偶の関係になっているため、この2つも真偽が一致します。先ほどの例で、逆・裏がどちらも偽だったのは、このためです。)

対偶を利用した証明法

対偶と元の命題の真偽が必ず一致するという性質を使うと、次のような証明の工夫ができます。

$p \Rightarrow q\ \text{を直接示すのが難しいときは、代わりに対偶}\ \overline{q} \Rightarrow \overline{p}\ \text{を示せばよい}$

対偶を示すことができれば、それだけで元の命題 $p \Rightarrow q$ も真であると結論できます。これを対偶証明法と呼びます。「$q$ でない」という否定の情報からスタートするほうが、扱いやすい具体的な性質(たとえば「偶数でない」→「奇数である」)になることが多く、証明の見通しがよくなる場面でとても役立ちます。

背理法という考え方

証明の工夫としてもう1つ、背理法という方法も紹介しておきます。これは、示したいこと(結論)が成り立たない、つまり結論を否定した状態を一時的に「正しい」と仮定してみて、そこから矛盾(つじつまの合わないこと)を導き出す方法です。矛盾が起きたということは、「結論が成り立たない」という仮定が誤りだった、つまり本当は結論が成り立つ、と結論づけることができます。対偶証明法とは仕組みが少し違いますが、どちらも「否定の状態から出発して議論する」という点で似た発想を持つ証明法です。例題3で実際の使い方を確認しましょう。

例題

例題1(基本)

問題

命題「$x=3$ ならば $x^2=9$」について、この命題の逆・裏・対偶をそれぞれ作りなさい。また、元の命題と、逆・裏・対偶のそれぞれについて、真偽を調べなさい。

解答・解説を見る

ステップ1:$p,q$ を確認する

この命題は $p \Rightarrow q$ の形をしていて、$p$:「$x=3$」、$q$:「$x^2=9$」です。

ステップ2:元の命題の真偽を調べる

$x=3$ のとき、$x^2=3^2=9$ となるので、たしかに $q$ が成り立ちます。したがって、元の命題「$x=3$ ならば $x^2=9$」はです。

ステップ3:逆を作り、真偽を調べる

逆は $q \Rightarrow p$、つまり「$x^2=9$ ならば $x=3$」です。ここで、$x^2=9$ を満たす $x$ は $x=3$ だけでなく $x=-3$ もあります($(-3)^2=9$ だからです)。$x=-3$ を考えると、$x^2=9$ は成り立ちます($q$ は真)が、$x=3$ は成り立ちません($p$ は偽)。したがって、$x=-3$ が反例となり、逆「$x^2=9$ ならば $x=3$」はです。

ステップ4:裏を作り、真偽を調べる

裏は $\overline{p} \Rightarrow \overline{q}$、つまり「$x\neq 3$ ならば $x^2\neq 9$」です。ここでも $x=-3$ を考えると、$x\neq 3$ は成り立ちます($\overline{p}$ は真)が、$x^2=(-3)^2=9$ なので $x^2\neq 9$ は成り立ちません($\overline{q}$ は偽)。したがって、$x=-3$ が反例となり、裏「$x\neq 3$ ならば $x^2\neq 9$」もです。

ステップ5:対偶を作り、真偽を調べる

対偶は $\overline{q} \Rightarrow \overline{p}$、つまり「$x^2\neq 9$ ならば $x\neq 3$」です。これが本当に成り立つか確かめます。もし $x=3$ だとすると $x^2=9$ になってしまうので、「$x^2\neq 9$」という前提と矛盾します。つまり、$x^2\neq 9$ が成り立っている限り、$x=3$ ということはありえません。したがって $x\neq 3$ が必ず成り立つので、対偶「$x^2\neq 9$ ならば $x\neq 3$」はです。

まとめ

元の命題(真)と対偶(真)は一致し、逆(偽)と裏(偽)も一致しています。要点整理で確認した性質のとおりになっていることが確認できました。

例題2(標準)

問題

$n$ を整数とする。命題「$n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数である」を、対偶を利用して証明しなさい。

解答・解説を見る

ステップ1:対偶を作る

元の命題は $p \Rightarrow q$ の形で、$p$:「$n^2$ が偶数」、$q$:「$n$ が偶数」です。対偶は $\overline{q} \Rightarrow \overline{p}$ なので、$\overline{q}$:「$n$ が偶数でない、すなわち $n$ は奇数である」、$\overline{p}$:「$n^2$ が偶数でない、すなわち $n^2$ は奇数である」となり、対偶は次の命題になります。

$n\ \text{が奇数ならば}\ n^2\ \text{は奇数である}$

対偶と元の命題は真偽が一致するので、この対偶が真であることを示せば、元の命題も真であることが証明できます。

ステップ2:$n$ が奇数であることを式で表す

奇数とは、ある整数 $k$ を使って $2k+1$ の形に書ける数のことです($2k$ の部分が「$2$ の倍数(偶数)」で、そこに $1$ を足したものが奇数、という意味です)。そこで、$n$ が奇数であるとき、

$n=2k+1\quad(k\ \text{はある整数})$

と表すことができます。

ステップ3:$n^2$ を計算する

この $n=2k+1$ を2乗すると、

$n^2=(2k+1)^2$

乗法公式 $(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$ を使って展開すると、

$n^2=(2k)^2+2\times(2k)\times1+1^2=4k^2+4k+1$

ステップ4:奇数の形に整理する

「奇数」であることを示すには、式全体を $2\times(\text{整数})+1$ の形に書き直す必要があります。$4k^2+4k$ の部分に注目すると、

$4k^2+4k=2(2k^2+2k)$

とくくり出せるので、

$n^2=2(2k^2+2k)+1$

となります。ここで $2k^2+2k$ は、整数 $k$ を使った整数の計算(掛け算・足し算)だけでできているので、これ自体も整数です。そこで $m=2k^2+2k$(整数)とおくと、

$n^2=2m+1$

これは「$2\times(\text{整数})+1$」の形になっているので、$n^2$ は奇数であることが示せました。

ステップ5:結論をまとめる

以上より、「$n$ が奇数ならば $n^2$ は奇数である」(対偶)が真であることが証明できました。対偶が真ならば元の命題も真なので、

$\therefore\ n^2\ \text{が偶数ならば}\ n\ \text{は偶数である}$

が証明されました。

なぜ対偶を使ったのか

もし元の命題を直接証明しようとすると、「$n^2$ が偶数である」という情報から出発することになりますが、$n^2=2\times(\text{整数})$ という情報だけから $n$ 自身がどんな形の数かを直接組み立てるのは簡単ではありません。それに対して、対偶では「$n$ が奇数である」、つまり $n=2k+1$ という具体的な形から出発できるので、計算だけで確実に証明を進めることができます。このように、否定した情報のほうが具体的で扱いやすいときに、対偶証明法はとても有効です。

例題3(応用)

問題

$\sqrt{2}$ が無理数であることを、背理法を用いて証明しなさい。ただし、例題2で証明した「整数 $n$ について、$n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数である」という事実は、証明の中で使ってよいものとします。

解答・解説を見る

ステップ1:背理法の準備(結論を否定して仮定する)

示したいことは「$\sqrt{2}$ は無理数である」ということです。背理法では、この結論を否定した「$\sqrt{2}$ は無理数でない、すなわち $\sqrt{2}$ は有理数である」ということを、一度正しいと仮定してみます。

ステップ2:有理数を分数の形で表す

$\sqrt{2}$ が有理数であると仮定すると、$\sqrt{2}$ は整数 $a,b$($b\neq 0$)を使った分数 $\dfrac{a}{b}$ の形で表せます。さらに、分数はいつでも約分して「これ以上約分できない形(既約分数)」にできるので、$a,b$ は正の整数で、かつ最大公約数が $1$(すなわち $a$ と $b$ は $1$ 以外に共通の約数を持たない)としてよいものとします。つまり、

$\sqrt{2}=\frac{a}{b}\qquad(a,b\ \text{は正の整数、}a\ \text{と}\ b\ \text{に共通の約数は}\ 1\ \text{のみ})$

ステップ3:両辺を2乗して分母を払う

この式の両辺を2乗すると、

$2=\frac{a^2}{b^2}$

両辺に $b^2$ をかけると、

$2b^2=a^2\qquad\cdots(*)$

ステップ4:$a$ が偶数であることを示す

$(*)$ の右辺 $a^2$ は、左辺 $2b^2=2\times b^2$ に等しいので、$2\times(\text{整数})$ の形、つまり偶数です。したがって $a^2$ は偶数です。ここで、例題2で証明した事実「$n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数である」を $n=a$ として使うと、$a$ も偶数であることがわかります。

ステップ5:$a$ を $2m$ とおいて代入する

$a$ が偶数なので、ある整数 $m$ を使って $a=2m$ と表せます。これを $(*)$ に代入すると、

$2b^2=(2m)^2=4m^2$

両辺を $2$ で割ると、

$b^2=2m^2$

ステップ6:$b$ も偶数であることを示す

この式の右辺 $2m^2$ は $2\times(\text{整数})$ の形なので、$b^2$ は偶数です。ここでも同じ事実を $n=b$ として使うと、$b$ も偶数であることがわかります。

ステップ7:矛盾を導く

ステップ4とステップ6より、$a$ も $b$ もどちらも偶数であることがわかりました。しかし、これは「$a$ と $b$ に共通の約数は $1$ のみである」というステップ2での前提と矛盾します(なぜなら、$a,b$ がともに偶数ならば、両方とも $2$ で割り切れるので、$2$ という共通の約数を持ってしまうからです)。

ステップ8:結論

矛盾が生じたということは、ステップ1で立てた仮定「$\sqrt{2}$ は有理数である」が誤りだったということです。したがって、

$\therefore\ \sqrt{2}\ \text{は無理数である}$

が証明されました。

練習問題

問題

$x,y$ を整数とする。命題「$xy$ が奇数ならば、$x$ と $y$ はともに奇数である」を、対偶を利用して証明しなさい。

答え

対偶は「$x$ と $y$ の少なくとも一方が偶数ならば、$xy$ は偶数である」となります(「ともに奇数」の否定は「少なくとも一方が偶数」であることに注意します)。

証明:$x,y$ のうち少なくとも一方が偶数であるとし、たとえば $x$ が偶数であるとします(整数 $k$ を使って $x=2k$ と表せます)。このとき、

$xy=2k\times y=2(ky)$

$ky$ は整数どうしの積なので整数であり、$xy=2\times(\text{整数})$ の形になっているので $xy$ は偶数です。($y$ が偶数の場合も、$x$ と $y$ の役割を入れ替えれば同じように示せます。)

これで対偶が真であることが示せたので、元の命題「$xy$ が奇数ならば、$x$ と $y$ はともに奇数である」も真であることが証明されました。