数学I / データの分析

頻出解法パターン

この記事では、数学Iの「データの分析」で入試や定期テストによく出題される解法パターンを、パターンごとに「使う場面」「手順」「具体例」の3つに分けてまとめています。データの分析は覚える公式こそ多くありませんが、「どの場面でどの考え方を使えばよいか」を意識できていないと、計算量が無駄に増えたり、求めた数の意味を取り違えたりしがちな単元です。実際に数字を使って手を動かしながら、一つずつ確認していきましょう。

パターン1: 平均の計算は「仮平均」を使うと楽になる

こんな問題で使う データの値が、たとえば170前後のように、近い値ばかり並んでいるときに使います。そのまま全部の値を足して個数で割ろうとすると、大きい数どうしの足し算になってしまい、計算ミスが起きやすくなります。「値が全部似たような大きさに集まっているな」と感じたら、このパターンを疑ってみてください。

解法の手順

  • まず、データの値に近い、キリの良い数を1つ選びます。これを仮平均(かりへいきん)、または基準値と呼びます。
  • 各データの値から仮平均を引いた数(これを偏差(へんさ)と呼びます)を、すべてのデータについて求めます。
  • 求めた偏差を、すべて足し合わせます。
  • 偏差の合計をデータの個数で割り、「偏差の平均」を求めます。
  • 仮平均に、偏差の平均を足すと、それが本当の平均(真の平均)になります。

数式で書くと、仮平均を $a$ 、データを $x_1, x_2, \ldots, x_n$ ($n$個のデータがあるという意味です)とすると、

$\overline{x} = a + \frac{(x_1-a)+(x_2-a)+\cdots+(x_n-a)}{n}$

という関係が成り立ちます。$\overline{x}$ は平均を表す記号で、「エックスバー」と読みます。式の中の「$\cdots$」(3つの点)は、「同じような計算を、残りのデータについても同じように行って、全部足し合わせる」という意味を表しています。また $x_n$ は「$n$番目、つまり最後のデータ」を表しています。

具体例 5人の生徒のテストの得点が、173点, 176点, 171点, 178点, 172点だったとします。この5つの値は175点前後に集まっているので、仮平均を $a=175$ とおきます。

各データから仮平均を引くと、偏差は次のようになります。

$173-175=-2,\quad 176-175=1,\quad 171-175=-4,\quad 178-175=3,\quad 172-175=-3$

これらの偏差をすべて足すと、

$-2+1-4+3-3=-5$

偏差の合計 $-5$ をデータの個数 $5$ で割ると、

$-5\div 5=-1$

したがって、平均は

$\overline{x}=175+(-1)=174$

と求まります。実際に5つの値を直接足して確かめてみると、$173+176+171+178+172=870$ であり、$870\div5=174$ となるので、確かに一致していることが分かります。

パターン2: 度数分布表からの代表値は「階級値」を使って求める

こんな問題で使う 一人ひとりの正確な値ではなく、「0点以上10点未満が2人、10点以上20点未満が5人」のように、範囲(階級)ごとの人数(度数)だけが表になって与えられている問題で使います。個々の生の値が分からない以上、代表となる1つの数値を決めて計算する必要があります。

解法の手順

  • 表の中の1つの区間のことを階級(かいきゅう)と呼びます。
  • それぞれの階級の、真ん中の値を階級値(かいきゅうち)と呼びます。たとえば「0以上10未満」の階級値は $\dfrac{0+10}{2}=5$ です。
  • 計算をするときは、その階級に入っているデータは、すべて階級値と同じ値を取っているものとみなします。
  • 平均を求めるときは、(階級値)×(度数)をすべての階級について計算し、その合計をデータの総数で割ります。
  • 最頻値(さいひんち、モードとも呼ばれ、最もよく出てくる値のことです)を求めるときは、度数が一番多い階級を探し、その階級の階級値を答えとします。

数式で書くと、階級値を $x_1, x_2, \ldots, x_k$($k$個の階級があるという意味です)、対応する度数を $f_1, f_2, \ldots, f_k$、データの総数を $n=f_1+f_2+\cdots+f_k$ とすると、

$\overline{x}=\frac{x_1 f_1+x_2 f_2+\cdots+x_k f_k}{n}$

となります。

具体例 あるクラスのテスト結果が、次の度数分布表にまとめられているとします。

階級 階級値 度数
0点以上10点未満 5 2人
10点以上20点未満 15 5人
20点以上30点未満 25 3人

データの総数は $n=2+5+3=10$ 人です。平均は、

$\overline{x}=\frac{5\times2+15\times5+25\times3}{10}=\frac{10+75+75}{10}=\frac{160}{10}=16$

より、16点と求まります。また、度数が一番多い階級は「10点以上20点未満」(度数5人)なので、最頻値はこの階級の階級値である15点です。

パターン3: 四分位数は「データを並べて半分に割る」ことで求める

こんな問題で使う 「四分位数を求めよ」「箱ひげ図をかけ」といった指示がある問題や、すでに箱ひげ図が与えられていて、そこから最小値・最大値・四分位範囲などを読み取らせる問題で使います。

解法の手順

  • まず、データを小さい順に並べ替えます。
  • データ全体のちょうど真ん中の値を第2四分位数(中央値、$Q_2$ と書きます)とします。データの個数が偶数のときは、真ん中の2つの値の平均を取ります。
  • 中央値より小さい方の半分のデータ(データの個数が奇数のときは、中央値そのものはどちらの半分にも入れません)を取り出し、その中での中央値を第1四分位数($Q_1$)とします。
  • 中央値より大きい方の半分のデータについても同じように中央値を求め、それを第3四分位数($Q_3$)とします。
  • $Q_3-Q_1$ の値を四分位範囲(しぶんいはんい)と呼びます。これは、データの中央付近、全体のおよそ半分が収まっている範囲の広さを表しています。
  • 箱ひげ図(はこひげず)をかくときは、最小値・$Q_1$・$Q_2$・$Q_3$・最大値の5つの値を使います。長方形(箱)の左端が $Q_1$、右端が $Q_3$、箱の中に引かれた線が $Q_2$ を表します。

具体例 次の9個のデータについて、四分位数を求めてみます。

$3,\ 7,\ 8,\ 5,\ 12,\ 14,\ 9,\ 6,\ 11$

まず、小さい順に並べ替えます。

$3,\ 5,\ 6,\ 7,\ 8,\ 9,\ 11,\ 12,\ 14$

データは9個(奇数)あるので、ちょうど真ん中、つまり小さい方から5番目の値が中央値($Q_2$)です。並べ替えた列の5番目の値は8なので、$Q_2=8$ です。

中央値より小さい方の4個のデータ、$3,\ 5,\ 6,\ 7$ を取り出します。この4個の中央値(小さい方から2番目と3番目の値の平均)を求めると、

$Q_1=\frac{5+6}{2}=5.5$

中央値より大きい方の4個のデータ、$9,\ 11,\ 12,\ 14$ についても同じように、

$Q_3=\frac{11+12}{2}=11.5$

したがって、四分位範囲は

$Q_3-Q_1=11.5-5.5=6$

と求まります。

パターン4: 分散は「2乗の平均引く平均の2乗」の公式を使うと計算が速い

こんな問題で使う 分散や標準偏差を求めよ、と指示されている問題全般で使えます。特に、データの値が整数などのきれいな数のときは、この公式を使うと1つずつ偏差(平均との差)を計算しなくて済むため、計算の手間を減らせます。

解法の手順

  • 分散(ぶんさん)とは、それぞれのデータが平均からどれくらい離れているかを表す数値で、「(データの値と平均との差)を2乗したものの平均」として定義されます。
  • 分散を求める方法は2通りあります。1つ目は定義通りに、各データから平均を引いて2乗し、それらをすべて足してデータの個数で割る方法です。
  • 2つ目は、「データそれぞれを2乗してから平均を取った値」から、「もとのデータの平均を2乗した値」を引く方法です。多くの場合、この2つ目の方法のほうが計算が楽になります。
  • 標準偏差(ひょうじゅんへんさ)は、分散の正の平方根(ルートを取ったもの)です。分散はもとのデータの単位の2乗になってしまうため、もとの単位に戻すために平方根を取ります。

数式で書くと、データを $x_1,\ldots,x_n$、平均を $\overline{x}$ として、分散 $s^2$ は

$s^2=\frac{(x_1-\overline{x})^2+(x_2-\overline{x})^2+\cdots+(x_n-\overline{x})^2}{n}=\overline{x^2}-(\overline{x})^2$

という2通りの式で表されます。ここで $\overline{x^2}$ は、$x_1^2, x_2^2,\ldots,x_n^2$ の平均を表します。標準偏差は $s=\sqrt{s^2}$ です。

具体例 5個のデータ $2,\ 4,\ 6,\ 8,\ 10$ の分散を求めてみます。

まず平均を求めると、

$\overline{x}=\frac{2+4+6+8+10}{5}=\frac{30}{5}=6$

次に、2乗の平均 $\overline{x^2}$ を求めます。各データを2乗すると $4,\ 16,\ 36,\ 64,\ 100$ となるので、

$\overline{x^2}=\frac{4+16+36+64+100}{5}=\frac{220}{5}=44$

したがって、分散は

$s^2=\overline{x^2}-(\overline{x})^2=44-6^2=44-36=8$

と求まります。定義通りに計算しても一致することを確かめておきましょう。各データと平均の差を2乗すると $16,\ 4,\ 0,\ 4,\ 16$ となり、これらの和は $40$ なので、$40\div5=8$ となり、確かに同じ値になります。標準偏差は $s=\sqrt{8}=2\sqrt{2}$ です。

パターン5: 変量を一次変換すると、平均・分散・標準偏差はどう変わるかを利用する

こんな問題で使う 「全員の得点に一律で5点を加えたら、平均や分散はどうなるか」「単位をcmからmに変えたら、標準偏差はどうなるか」というように、もとのデータに同じ計算(定数を足す、定数をかける)を行ったときに、代表値がどう変わるかを問う問題で使います。パターン1で使った仮平均の考え方も、実はこのパターンの一部です。

解法の手順

  • もとのデータを $x_1,\ldots,x_n$ とし、新しい変量を $y_i=ax_i+b$($a,b$ は定数で、$i$ は1番目から$n$番目までのそれぞれのデータを指します)として作るとします。つまり、すべてのデータに同じ数 $a$ をかけて、同じ数 $b$ を足す変換です。
  • 平均については、$\overline{y}=a\overline{x}+b$ という関係が成り立ちます。定数を足す部分 $b$ はそのまま平均にも足され、定数倍する部分 $a$ はそのまま平均にもかかります。
  • 分散については、$b$ を足す操作はデータ全体を同じだけ平行移動するだけなので、データの散らばり具合(ばらつき)自体は変化しません。一方、$a$ 倍する操作は散らばり具合も $a$ 倍されるため、2乗する分散では $a^2$ 倍になります。式で書くと $s_y^2=a^2 s_x^2$ です。
  • 標準偏差は分散の平方根なので、$s_y=|a|\,s_x$ となります。$a$ が負の数であっても標準偏差自体が負になることはないため、絶対値をつけます。

具体例 4人の生徒のテストの得点が $60,\ 70,\ 80,\ 90$ だったとします。平均は

$\overline{x}=\frac{60+70+80+90}{4}=\frac{300}{4}=75$

分散は、各データと平均の差を2乗すると $225,\ 25,\ 25,\ 225$ となるので、

$s_x^2=\frac{225+25+25+225}{4}=\frac{500}{4}=125$

です。ここで、全員に一律5点を加える($y=x+5$)場合を考えます。新しい平均は

$\overline{y}=\overline{x}+5=75+5=80$

分散は、定数を足すだけなので変化せず、$s_y^2=125$ のままです。実際、新しいデータは $65,\ 75,\ 85,\ 95$ となり、平均との差はもとと同じ $-15,-5,5,15$ になるので、分散が変わらないことが確認できます。

次に、得点をすべて2倍する($y=2x$)場合を考えます。新しい平均は

$\overline{y}=2\overline{x}=2\times75=150$

新しい分散は

$s_y^2=2^2\times s_x^2=4\times125=500$

となります。

パターン6: 相関係数は「共分散÷(標準偏差の積)」で求め、符号を散布図の形と結びつける

こんな問題で使う 2つの変量(たとえば、勉強時間とテストの得点のように、2種類のデータの組)の関係の強さを数値で答えさせる問題や、散布図(2つの変量の値を点として平面上に打った図)を見て、相関係数の符号やおおよその大きさを判断させる問題で使います。

解法の手順

  • 2つの変量を $x,y$ とし、それぞれの平均を $\overline{x},\overline{y}$、標準偏差を $s_x,s_y$ とします。
  • 共分散(きょうぶんさん)と呼ばれる、2つの変量が同じ方向に動く傾向をとらえた値を求めます。共分散 $s_{xy}$ は、対応する $x$ の偏差と $y$ の偏差の積を、すべてのデータについて計算し、その平均を取ったものです。

$s_{xy}=\frac{(x_1-\overline{x})(y_1-\overline{y})+(x_2-\overline{x})(y_2-\overline{y})+\cdots+(x_n-\overline{x})(y_n-\overline{y})}{n}$

  • 共分散を、$x$ の標準偏差と $y$ の標準偏差の積で割ったものが相関係数 $r$ です。

$r=\frac{s_{xy}}{s_x s_y}$

  • 相関係数は必ず $-1$ 以上 $1$ 以下の値になります。$r$ が正の値で1に近いほど、「$x$ が大きいほど $y$ も大きい」という正の相関が強いことを表し、散布図では点が右上がりに集まります。$r$ が負の値で$-1$に近いほど負の相関が強く、散布図では点が右下がりに集まります。$r$ が0に近いときは、はっきりした直線的な関係が見られないことを表します。

具体例 5人分の、勉強時間 $x$(単位は省略します)とテストの得点 $y$ の組が、次のようになっているとします。

$x:\ 1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5 \qquad y:\ 2,\ 3,\ 5,\ 4,\ 6$

まず、それぞれの平均を求めます。

$\overline{x}=\frac{1+2+3+4+5}{5}=3,\qquad \overline{y}=\frac{2+3+5+4+6}{5}=4$

次に、それぞれの偏差を求めます。$x$ の偏差は、順に $-2,-1,0,1,2$ です。$y$ の偏差は、順に $-2,-1,1,0,2$ です。

共分散を求めるために、対応する偏差どうしをかけ合わせて足します。

$(-2)\times(-2)+(-1)\times(-1)+0\times1+1\times0+2\times2=4+1+0+0+4=9$

これをデータの個数5で割ると、共分散は

$s_{xy}=\frac{9}{5}=1.8$

次に、それぞれの分散を求めます。$x$ の偏差の2乗は $4,1,0,1,4$ で、合計は10なので $s_x^2=\dfrac{10}{5}=2$ です。$y$ の偏差の2乗も同じく $4,1,1,0,4$ で合計10なので $s_y^2=\dfrac{10}{5}=2$ です。したがって、標準偏差はどちらも $s_x=s_y=\sqrt2$ です。

以上より、相関係数は

$r=\frac{s_{xy}}{s_x s_y}=\frac{1.8}{\sqrt2\times\sqrt2}=\frac{1.8}{2}=0.9$

$r=0.9$ は1にかなり近い正の値なので、$x$ と $y$ の間には強い正の相関がある(勉強時間が長い人ほど得点が高い傾向がある)と言えます。

パターン7: 仮説検定は「基準となる確率(有意水準)と比べて判断する」という手順で考える

こんな問題で使う 「このさいころは1の目が出やすいと言えるか」「ある宣伝文句(たとえば新しい方法のほうが成功しやすい、という主張)は正しいと言えるか」のように、観測されたデータが単なる偶然によるものか、それとも意味のある差(かたより)によるものかを判断させる問題で使います。仮説検定(かせつけんてい)とは、このような判断を、確率にもとづいて筋道立てて行うための考え方です。

解法の手順

  • まず、「本当は差がない」「本当は公平である」というように、確かめたい主張とは反対の、いったん否定したい仮説を立てます。これを帰無仮説(きむかせつ)と呼びます。
  • 判断の基準となる確率を決めます。これを有意水準(ゆういすいじゅん)と呼び、多くの場合5%(0.05)が使われます。有意水準は、「これより低い確率でしか起こらないはずのことが実際に起こったなら、それは単なる偶然とは考えにくい、珍しいことだ」とみなすための線引きです。
  • 帰無仮説が正しいと仮定した場合に、実際に観測された結果と同じか、それよりも極端な結果が起こる確率を求めます。この確率は、コインやさいころなどをくり返し試す実験・シミュレーションの結果をまとめた表(度数分布表やヒストグラム)から読み取れる形で問題文中に与えられることが多いです。
  • その確率が有意水準よりも小さければ、「帰無仮説のもとでは、めったに起こらないはずのことが起きた」と考え、帰無仮説を疑わしいとして退けます。これを、帰無仮説を棄却する(ききゃくする)と言います。棄却した場合は、もとの主張(帰無仮説とは反対の考え)のほうが正しいと判断します。
  • その確率が有意水準以上であれば、「帰無仮説のもとでも、それほど珍しいことではない」と考え、帰無仮説を退けるだけの十分な根拠がないと判断します。この場合は、帰無仮説が正しくないとまでは言えない、という結論にとどめます(帰無仮説が正しいと証明されたわけではない、という点に注意しましょう)。

具体例 1つのさいころを150回投げたところ、1の目が32回出ました。このさいころは1の目が出やすいように偏っていると言えるか、有意水準5%で考えてみます。

まず、帰無仮説を「このさいころにかたよりはなく、どの目も同様に出やすい(公平なさいころである)」とします。

次に、この帰無仮説が正しい(公平なさいころである)と仮定して、150回投げる実験を多数回シミュレーションしたときに、1の目が32回以上出る割合を調べます。ここでは、シミュレーションを1000回くり返したところ、1の目が32回以上出た回数は40回だった、という結果が問題文で与えられているとします。この割合は、

$\frac{40}{1000}=0.04=4\%$

です。この $4\%$ という確率を、有意水準の $5\%$ と比べます。$4\%$ は $5\%$ より小さいので、「公平なさいころである」という帰無仮説のもとでは、めったに起こらないはずのことが実際に起きたと判断できます。

したがって、帰無仮説を棄却し、「このさいころは1の目が出やすいように偏っている可能性が高い」と結論づけます。