数学A / 場合の数と確率

反復試行の確率

要点整理

数学Aの「場合の数と確率」では、すでに独立試行の確率を学びました。独立な試行では、それぞれの回の確率を掛け合わせるだけで、一連の結果が起こる確率を求められるのでした。この単元では、その考え方をさらに一歩進めて、「同じ試行を何回もくり返したとき、ある事象がちょうど何回起こるか」という確率の求め方を学びます。

反復試行とは何か

反復試行とは、同じ条件のもとで同じ試行を、結果が互いに影響しないように独立に何度もくり返すことです。例えば、「1個のさいころを5回投げる」「1枚のコインを10回投げる」といった場面が反復試行にあたります。ポイントは、1回ごとの試行が独立していること、つまり前の回の結果が次の回の確率に一切影響しないことです。

具体例で考え方をつかむ

いきなり一般的な公式を見ても分かりにくいので、まずは具体的な例で考えてみましょう。

例:コインを3回投げるとき、表がちょうど2回出る確率を求める。

1回の試行でコインの表が出る確率は $p = \dfrac{1}{2}$、裏が出る確率も $\dfrac{1}{2}$ です。

まず、「1回目が表、2回目が表、3回目が裏」という特定の順番になる確率を考えます。各回は独立な試行なので、独立試行の確率で学んだとおり、それぞれの回の確率を掛け合わせればよいのでした。

$\frac{1}{2} \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{8}$

ここで大事なことは、「表がちょうど2回出る」という事象には、この順番以外にもいろいろな並び方が含まれているということです。3回のうちどの2回が表になるかで、次の3通りの並び方があります。

  • 表・表・裏
  • 表・裏・表
  • 裏・表・表

どの並び方についても、表が2回、裏が1回という中身は同じなので、確率はすべて同じ値になります。実際、掛け算の順序を変えても積の値は変わらないので、どの並び方でも確率は

$p \times p \times (1-p) = p^{2}(1-p)$

すなわち $\dfrac{1}{2}\times\dfrac{1}{2}\times\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{8}$ となります。

また、この3つの並び方は同時には起こりえない事象(排反な事象)なので、「表がちょうど2回出る」確率は、この3つの確率をすべて足し合わせたものになります。同じ値 $\dfrac{1}{8}$ が3つ分あるので、

$\frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8} = 3 \times \frac{1}{8} = \frac{3}{8}$

と求められます。

ここで注目してほしいのは、「3」という数の意味です。これは「3回のうち、どの2回を表にするか」を選ぶ場合の数、つまり組合せの数 ${}_{3}\mathrm{C}_{2} = 3$ に一致しています。

反復試行の確率の公式

上の考え方を一般化しましょう。1回の試行で事象Aが起こる確率を $p$ とし、Aが起こらない確率を $q$ とします。確率の基本性質から、AとAでない事象を合わせると必ずどちらかが起こるので、

$q = 1 - p$

という関係があります。この試行を独立に $n$ 回くり返すとき、事象Aがちょうど $r$ 回起こる確率は、次の手順で求められます。

  1. どの回にAが起こるかを決める:$n$回のうち、どの $r$ 回でAが起こるかを選ぶ場合の数は、組合せの数 ${}_{n}\mathrm{C}_{r}$ です。
  2. 1つの並び方が起こる確率を求める:Aが起こる回が $r$ 回、起こらない回が $n-r$ 回と決まれば、独立試行の確率より、その並び方が起こる確率は $p^{r}q^{n-r}$ です(掛け算の順序を変えても積は変わらないので、Aがどの回に起こるかによらず、この値は同じになります)。
  3. すべての並び方を足し合わせる:これらの並び方は互いに排反(同時には起こらない)なので、確率を足し合わせます。同じ値 $p^{r}q^{n-r}$ が ${}_{n}\mathrm{C}_{r}$ 個分あるので、それらを合計すると ${}_{n}\mathrm{C}_{r}$ 倍になります。

以上をまとめると、次の公式が得られます。

$P(X = r) = {}_{n}\mathrm{C}_{r}\, p^{r} q^{n-r} \quad (q = 1-p)$

ここで、$n$は試行の回数、$r$は事象Aが起こってほしい回数、$p$は1回の試行でAが起こる確率、$q=1-p$は1回の試行でAが起こらない確率を表しています。先ほどのコインの例($n=3$, $r=2$, $p=\dfrac{1}{2}$)を公式に当てはめると、

${}_{3}\mathrm{C}_{2}\left(\frac{1}{2}\right)^{2}\left(\frac{1}{2}\right)^{1} = 3 \times \frac{1}{8} = \frac{3}{8}$

となり、先ほど1つずつ数えた結果と一致することが確認できます。

例題

例題1(基本)

問題 1個のさいころを4回投げるとき、1の目がちょうど2回出る確率を求めなさい。

解答・解説を見る

この問題は、「さいころを4回投げる」という反復試行において、「1の目が出る」という事象がちょうど2回起こる確率を求める問題です。反復試行の確率の公式を使います。

まず、公式に当てはめる値を整理します。

  • 試行の回数:$n = 4$
  • Aが起こってほしい回数:$r = 2$
  • 1回の試行でAが起こる確率(1の目が出る確率):$p = \dfrac{1}{6}$
  • 1回の試行でAが起こらない確率(1以外の目が出る確率):$q = 1-\dfrac{1}{6} = \dfrac{5}{6}$

これらを公式 $P(X=r) = {}_{n}\mathrm{C}_{r}\,p^{r}q^{n-r}$ に代入します。

$P(X=2) = {}_{4}\mathrm{C}_{2}\left(\frac{1}{6}\right)^{2}\left(\frac{5}{6}\right)^{2}$

まず、${}_{4}\mathrm{C}_{2}$ を計算します。これは4個から2個を選ぶ組合せの数なので、

${}_{4}\mathrm{C}_{2} = \frac{4\times3}{2\times1} = 6$

次に、$\left(\dfrac{1}{6}\right)^{2}$ を計算します。

$\left(\frac{1}{6}\right)^{2} = \frac{1}{36}$

同じように、$\left(\dfrac{5}{6}\right)^{2}$ を計算します。

$\left(\frac{5}{6}\right)^{2} = \frac{25}{36}$

これらをすべて掛け合わせます。

$6 \times \frac{1}{36} \times \frac{25}{36} = \frac{6 \times 25}{36 \times 36} = \frac{150}{1296}$

最後に約分します。分子・分母を6で割ると、

$\frac{150}{1296} = \frac{25}{216}$

したがって、答えは $\dfrac{25}{216}$ です。

例題2(標準)

問題 あるバスケットボール選手のフリースローの成功率は $\dfrac{3}{5}$ です。この選手が5回フリースローを行うとき、3回以上成功する確率を求めなさい。

解答・解説を見る

「3回以上成功する」というのは、「ちょうど3回成功する」「ちょうど4回成功する」「ちょうど5回成功する」という3つの場合をすべて合わせた事象です。これらは同時には起こらない(排反な)事象なので、それぞれの確率を反復試行の確率の公式で求めて、最後に足し合わせます。

まず、公式に共通して使う値を整理します。

  • 試行の回数:$n = 5$
  • 1回の試行で成功する確率:$p = \dfrac{3}{5}$
  • 1回の試行で失敗する確率:$q = 1-\dfrac{3}{5} = \dfrac{2}{5}$

ちょうど3回成功する確率($r=3$)

${}_{5}\mathrm{C}_{3}\left(\frac{3}{5}\right)^{3}\left(\frac{2}{5}\right)^{2}$

${}_{5}\mathrm{C}_{3}$ を計算します。

${}_{5}\mathrm{C}_{3} = \frac{5\times4\times3}{3\times2\times1} = 10$

$\left(\dfrac{3}{5}\right)^{3} = \dfrac{27}{125}$、$\left(\dfrac{2}{5}\right)^{2} = \dfrac{4}{25}$ なので、

$10 \times \frac{27}{125} \times \frac{4}{25} = \frac{10\times27\times4}{125\times25} = \frac{1080}{3125}$

ちょうど4回成功する確率($r=4$)

${}_{5}\mathrm{C}_{4}\left(\frac{3}{5}\right)^{4}\left(\frac{2}{5}\right)^{1}$

${}_{5}\mathrm{C}_{4} = 5$、$\left(\dfrac{3}{5}\right)^{4} = \dfrac{81}{625}$ なので、

$5 \times \frac{81}{625} \times \frac{2}{5} = \frac{5\times81\times2}{625\times5} = \frac{810}{3125}$

ちょうど5回成功する確率($r=5$)

${}_{5}\mathrm{C}_{5}\left(\frac{3}{5}\right)^{5}\left(\frac{2}{5}\right)^{0}$

${}_{5}\mathrm{C}_{5} = 1$、$\left(\dfrac{2}{5}\right)^{0} = 1$(0乗は1と約束されています)なので、

$1 \times \left(\frac{3}{5}\right)^{5} \times 1 = \frac{243}{3125}$

3つの確率を足し合わせる

3つの確率はすべて分母が3125にそろっているので、そのまま分子を足し合わせます。

$\frac{1080}{3125} + \frac{810}{3125} + \frac{243}{3125} = \frac{1080+810+243}{3125} = \frac{2133}{3125}$

したがって、答えは $\dfrac{2133}{3125}$ です(小数で表すとおよそ $0.683$ です)。

例題3(応用)

問題 1個のさいころを4回投げるとき、少なくとも1回は1の目が出る確率を求めなさい。

解答・解説を見る

「少なくとも1回は1の目が出る」という事象は、「1の目が1回も出ない」という事象の余事象(すでに確率の基本性質で学んだ、「Aが起こらない」という事象のことです)になっています。

「少なくとも1回」を直接求めようとすると、「ちょうど1回」「ちょうど2回」「ちょうど3回」「ちょうど4回」の4つの場合をすべて計算して足し合わせる必要があり、とても手間がかかります。そこで、余事象を使う工夫をします。

方針:全体の確率1から、余事象(1回も出ない確率)を引く

まず、公式に使う値を整理します。

  • 試行の回数:$n = 4$
  • 1の目が出る確率:$p = \dfrac{1}{6}$
  • 1の目が出ない確率:$q = 1-\dfrac{1}{6} = \dfrac{5}{6}$

余事象である「1の目が1回も出ない」というのは、反復試行の確率の公式で $r=0$ の場合にあたります。

$P(X=0) = {}_{4}\mathrm{C}_{0}\left(\frac{1}{6}\right)^{0}\left(\frac{5}{6}\right)^{4}$

まず、${}_{4}\mathrm{C}_{0} = 1$ です(4個の中から0個を選ぶ選び方は「何も選ばない」の1通りだけです)。また、$\left(\dfrac{1}{6}\right)^{0} = 1$(0乗は1と約束されています)です。したがって、

$P(X=0) = 1 \times 1 \times \left(\frac{5}{6}\right)^{4} = \left(\frac{5}{6}\right)^{4}$

$\left(\dfrac{5}{6}\right)^{4}$ を計算します。まず2乗を求めます。

$\left(\frac{5}{6}\right)^{2} = \frac{25}{36}$

これをさらに2乗します。

$\left(\frac{25}{36}\right)^{2} = \frac{625}{1296}$

つまり、$P(X=0) = \dfrac{625}{1296}$ です。

余事象の関係を使って答えを求める

「少なくとも1回は1の目が出る」確率は、全体の確率1から、この余事象の確率を引いたものです。

$P(\text{少なくとも1回}) = 1 - P(X=0) = 1 - \frac{625}{1296}$

分数の引き算をするために、1を $\dfrac{1296}{1296}$ になおしてから計算します。

$1 - \frac{625}{1296} = \frac{1296}{1296} - \frac{625}{1296} = \frac{1296-625}{1296} = \frac{671}{1296}$

したがって、答えは $\dfrac{671}{1296}$ です。

練習問題

問題 1枚のコインを6回投げるとき、表がちょうど4回出る確率を求めなさい。

答え

$n=6$、$r=4$、$p=q=\dfrac{1}{2}$として公式に代入すると、

${}_{6}\mathrm{C}_{4}\left(\frac{1}{2}\right)^{4}\left(\frac{1}{2}\right)^{2} = 15 \times \left(\frac{1}{2}\right)^{6} = 15 \times \frac{1}{64} = \frac{15}{64}$

答え:$\dfrac{15}{64}$