数学I / 二次関数

グラフの平行移動・対称移動

要点整理

1. 平行移動とは何か

まず、「平行移動」という言葉の意味を確認しましょう。平行移動とは、図形の形や向きをまったく変えずに、決まった方向へ決まった距離だけスライドさせることです。

例えば、$y = x^2$ のグラフを、$x$ 軸方向に $2$、$y$ 軸方向に $3$ だけ平行移動することを考えます。これは、グラフ上のすべての点を「右に $2$、上に $3$」だけ動かす、という意味です。

具体的に点で確認してみましょう。$y=x^2$ のグラフは点 $(0, 0)$ を通ります($x=0$ を代入すると $y=0$ になるからです)。この点を右に $2$、上に $3$ だけ動かすと、点 $(2, 3)$ に移ります。同じように、$y=x^2$ 上の点 $(1, 1)$ を動かすと $(3, 4)$ に移ります。

このように、移動後のグラフ上の点は、すべて「元の点の $x$ 座標に $p$ を足し、$y$ 座標に $q$ を足したもの」になっています($p, q$ はそれぞれ $x$ 軸方向、$y$ 軸方向の移動量を表す文字です)。

2. 平行移動の公式(一般の関数)

上で確認したことを、文字式で表してみましょう。$y=f(x)$ のグラフ($f(x)$ は $x$ の式を表す記号で、例えば $f(x) = x^2$ のようなものです)を、$x$ 軸方向に $p$、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動してできるグラフの方程式は、次の式で表されます。

$y - q = f(x - p)$

なぜこうなるのか、順を追って確認します。移動後のグラフ上の点を $(X, Y)$ とします。この点は、移動前のどこかの点 $(x_0, y_0)$ が「右に $p$、上に $q$」だけ動いてできたものなので、

$X = x_0 + p, \quad Y = y_0 + q$

という関係があります。ここから $x_0, y_0$ を $X, Y$ で表すと、

$x_0 = X - p, \quad y_0 = Y - q$

もとの点 $(x_0, y_0)$ は $y=f(x)$ のグラフ上にあったので、$y_0 = f(x_0)$ が成り立ちます。これに上の式を代入すると、

$Y - q = f(X - p)$

$X, Y$ はグラフ上の点を表す文字なので、これを改めて $x, y$ と書き直せば、

$y - q = f(x-p)$

が得られます。

ここで一番の注意点です。$x$ 軸方向に $p$ だけ「動かす」のに、式の中では $x$ を $x - p$ に置き換えます。「右に動かすなら $x+p$ では?」と感じるかもしれませんが、それは間違いです。上の説明で確認したとおり、正しくは $x-p$ に置き換えるのが正解です。符号のミスが最も起こりやすいところなので、迷ったら「移動後の点 $(X,Y)$ を、移動前の関係式に代入する」という考え方に戻って確認しましょう。

3. 2次関数の平行移動と頂点

前の単元では、$y=ax^2+bx+c$ を平方完成することで $y=a(x-p)^2+q$ の形に変形し、頂点が $(p, q)$ であることを学びました。実はこの形は、$y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動したグラフの式そのものです。

確かめてみましょう。$f(x) = ax^2$ として、上の公式 $y-q=f(x-p)$ に当てはめると、

$y - q = a(x-p)^2$

$y = a(x-p)^2 + q$

となり、確かに一致します。$y=ax^2$ のグラフの頂点は原点 $(0,0)$ なので、これを $(p,q)$ だけ平行移動すれば、頂点も $(0,0)$ から $(p,q)$ に移動する、というわけです。つまり、平方完成で頂点を求める作業は、「$y=ax^2$ のグラフをどれだけ平行移動したものか」を求める作業と同じ意味を持っていたのです。

4. 対称移動とは何か

次に、「対称移動」を確認しましょう。対称移動とは、ある直線や点を鏡のようにして、図形を反対側に映す移動のことです。高校数学でまず扱うのは、次の3種類です。

  • $x$ 軸に関する対称移動(上下がひっくり返ります)
  • $y$ 軸に関する対称移動(左右がひっくり返ります)
  • 原点に関する対称移動(上下と左右の両方がひっくり返ります)

5. 対称移動の公式

$y=f(x)$ のグラフを、それぞれの対称移動でうつしてできるグラフの方程式は、次のようになります。

$x$ 軸に関する対称移動では、点 $(x, y)$ は点 $(x, -y)$ に移ります($x$ 座標はそのまま、$y$ 座標の符号だけが変わります)。移動後の点を $(X,Y)$ とすると、$X=x_0$, $Y=-y_0$ より $x_0=X$, $y_0=-Y$ です。もとの点は $y_0=f(x_0)$ を満たすので、$-Y=f(X)$、つまり $Y=-f(X)$ となります。よって、

$y = -f(x)$

$y$ 軸に関する対称移動では、点 $(x, y)$ は点 $(-x, y)$ に移ります。同じように考えると $x_0=-X$, $y_0=Y$ で、$y_0=f(x_0)$ から $Y=f(-X)$ となります。よって、

$y = f(-x)$

原点に関する対称移動では、点 $(x, y)$ は点 $(-x, -y)$ に移ります。$x_0=-X$, $y_0=-Y$ で、$y_0=f(x_0)$ から $-Y=f(-X)$、つまり $Y=-f(-X)$ となります。よって、

$y = -f(-x)$

6. 2次関数を対称移動したときの式

$y=ax^2+bx+c$ を例に、それぞれの対称移動でどう変わるか確認しておきましょう(下の式は、上の公式に $f(x)=ax^2+bx+c$ を代入して計算したものです)。

$x$ 軸に関する対称移動では、

$y = -ax^2 - bx - c$

$y$ 軸に関する対称移動では、

$y = ax^2 - bx + c$

原点に関する対称移動では、

$y = -ax^2 + bx - c$

このように、対称移動は「符号がどう変わるか」の問題に帰着します。焦らず、公式に $-x$ を代入する→全体に $-1$ をかける、という手順を1つずつ確認すれば大丈夫です。

例題

例題1(基本)

問題 放物線 $y = 2x^2$ を、$x$ 軸方向に $3$、$y$ 軸方向に $-1$ だけ平行移動して得られる放物線の方程式を求めなさい。

解答・解説を見る

平行移動の公式 $y - q = f(x-p)$ を使います。ここで、$f(x) = 2x^2$、$p = 3$($x$ 軸方向の移動量)、$q = -1$($y$ 軸方向の移動量)です。

まず、公式に $p=3$, $q=-1$ を代入します。

$y - (-1) = f(x - 3)$

左辺の $-(-1)$ は $+1$ になるので、

$y + 1 = f(x-3)$

次に、$f(x-3)$ を計算します。$f(x) = 2x^2$ の $x$ のところに $x-3$ を入れると、

$f(x-3) = 2(x-3)^2$

したがって、

$y + 1 = 2(x-3)^2$

両辺から $1$ を引いて、$y$ について解きます。

$y = 2(x-3)^2 - 1$

これで答えとして正しいのですが、$y=ax^2+bx+c$ の形にも展開しておきましょう。$(x-3)^2$ を展開すると、

$(x-3)^2 = x^2 - 6x + 9$

これを使うと、

$y = 2(x^2 - 6x + 9) - 1$

かっこの中の各項に $2$ をかけると、

$y = 2x^2 - 12x + 18 - 1$

最後に定数項の $18-1$ をまとめると、

$y = 2x^2 - 12x + 17$

以上より、求める放物線の方程式は $y = 2(x-3)^2-1$、または展開した形で $y = 2x^2 - 12x + 17$ です。

例題2(標準)

問題 放物線 $y = x^2 - 4x + 1$ を、$x$ 軸方向に $3$、$y$ 軸方向に $-2$ だけ平行移動して得られる放物線の方程式を、$y = ax^2+bx+c$ の形で求めなさい。

解答・解説を見る

今回は、平方完成で頂点を求めてから、頂点を移動させる方法で解いてみましょう。

ステップ1:平方完成して頂点を求める

$y = x^2 - 4x + 1$ を平方完成します(前の単元で学んだ方法です)。$x^2-4x$ の部分を $(x-2)^2$ の形に直すために、$x$ の係数 $-4$ を半分にして2乗した数 $4$ を足して引きます。

$y = (x^2 - 4x + 4 - 4) + 1$

$x^2-4x+4$ の部分は $(x-2)^2$ にまとまるので、

$y = (x-2)^2 - 4 + 1$

$y = (x-2)^2 - 3$

よって、もとの放物線は $a=1$ で、頂点は $(2, -3)$ です。

ステップ2:頂点を平行移動する

頂点も1つの「点」なので、平行移動では頂点の $x$ 座標に $3$ を足し、$y$ 座標に $-2$ を足せば、移動後の頂点が求まります。

新しい頂点の $x$ 座標は、

$2 + 3 = 5$

新しい頂点の $y$ 座標は、

$-3 + (-2) = -5$

したがって、移動後の頂点は $(5, -5)$ です。

ステップ3:移動後の式をつくる

放物線の開き方(グラフの形)は平行移動しても変わらないので、$a=1$ のままです。頂点が $(5,-5)$ になったので、頂点の形の式は、

$y = (x-5)^2 - 5$

ステップ4:$y=ax^2+bx+c$ の形に展開する

$(x-5)^2$ を展開すると、

$(x-5)^2 = x^2 - 10x + 25$

これを代入すると、

$y = x^2 - 10x + 25 - 5$

定数項をまとめて、

$y = x^2 - 10x + 20$

以上より、求める放物線の方程式は $y = x^2 - 10x + 20$ です。

例題3(応用)

問題 放物線 $y = -2x^2 + 4x - 5$ を原点に関して対称移動し、さらに $x$ 軸方向に $1$、$y$ 軸方向に $-2$ だけ平行移動して得られる放物線の方程式を求めなさい。

解答・解説を見る

移動が2段階になっているので、順番に1つずつ処理していきます。$f(x) = -2x^2+4x-5$ とします。

ステップ1:原点に関して対称移動する

原点に関する対称移動の公式は $y=-f(-x)$ でした。まず $f(-x)$ を計算します。$f(x)$ の $x$ のところに $-x$ を代入します。

$f(-x) = -2(-x)^2 + 4(-x) - 5$

$(-x)^2 = x^2$ なので、

$f(-x) = -2x^2 - 4x - 5$

次に、この式全体に $-1$ をかけて $-f(-x)$ を求めます。かっこを外すと、かっこの中のすべての項の符号が反転します。

$-f(-x) = -(-2x^2 - 4x - 5) = 2x^2 + 4x + 5$

したがって、原点に関して対称移動した後の放物線の式は、

$g(x) = 2x^2 + 4x + 5$

とおきます($g(x)$ は、1回目の移動が終わったあとの式を表すために新しくつけた記号です)。

ステップ2:平行移動する

次に、$g(x)=2x^2+4x+5$ のグラフを $x$ 軸方向に $1$、$y$ 軸方向に $-2$ だけ平行移動します。平行移動の公式 $y-q=g(x-p)$ に、$p=1$, $q=-2$ を代入します。

$y - (-2) = g(x-1)$

左辺を整理すると、

$y + 2 = g(x-1)$

次に $g(x-1)$ を計算します。$g(x)=2x^2+4x+5$ の $x$ のところに $x-1$ を代入します。

$g(x-1) = 2(x-1)^2 + 4(x-1) + 5$

まず $(x-1)^2$ を展開します。

$(x-1)^2 = x^2 - 2x + 1$

これを使って、右辺の1つ目の項を計算します。

$2(x-1)^2 = 2(x^2-2x+1) = 2x^2 - 4x + 2$

2つ目の項は、

$4(x-1) = 4x - 4$

これらと最後の $5$ をすべて足し合わせます。

$g(x-1) = (2x^2 - 4x + 2) + (4x - 4) + 5$

$x$ の項どうしをまとめると $-4x+4x=0$ となって消えるので、

$g(x-1) = 2x^2 + (2 - 4 + 5) = 2x^2 + 3$

したがって、

$y + 2 = 2x^2 + 3$

両辺から $2$ を引いて、$y$ について解きます。

$y = 2x^2 + 1$

以上より、求める放物線の方程式は $y = 2x^2 + 1$ です。

練習問題

問題 放物線 $y = 3x^2 - 6x + 2$ を $y$ 軸に関して対称移動して得られる放物線の方程式を、$y=ax^2+bx+c$ の形で求めなさい。

答え

$y$ 軸に関する対称移動の公式は $y=f(-x)$ です。$f(x)=3x^2-6x+2$ の $x$ に $-x$ を代入すると、

$f(-x) = 3(-x)^2 - 6(-x) + 2 = 3x^2 + 6x + 2$

よって、答えは $y = 3x^2 + 6x + 2$ です。