数学I / 図形と計量

三角方程式・不等式の基礎

要点整理

この単元で使う道具の確認

前の単元「三角比の拡張(0°〜180°)」で、$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲であれば、鋭角だけでなく直角や鈍角に対しても $\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ が定義できることを学びました。ここでは、その定義を土台にして、$\sin\theta$ や $\cos\theta$ などを含む「方程式」や「不等式」を解く方法を学びます。

まず、これまでに学んだ代表的な角の三角比の値を、表にして確認しておきましょう。

$\theta$ $0^\circ$ $30^\circ$ $45^\circ$ $60^\circ$ $90^\circ$ $120^\circ$ $135^\circ$ $150^\circ$ $180^\circ$
$\sin\theta$ $0$ $\frac{1}{2}$ $\frac{\sqrt{2}}{2}$ $\frac{\sqrt{3}}{2}$ $1$ $\frac{\sqrt{3}}{2}$ $\frac{\sqrt{2}}{2}$ $\frac{1}{2}$ $0$
$\cos\theta$ $1$ $\frac{\sqrt{3}}{2}$ $\frac{\sqrt{2}}{2}$ $\frac{1}{2}$ $0$ $-\frac{1}{2}$ $-\frac{\sqrt{2}}{2}$ $-\frac{\sqrt{3}}{2}$ $-1$
$\tan\theta$ $0$ $\frac{\sqrt{3}}{3}$ $1$ $\sqrt{3}$ 定義されない $-\sqrt{3}$ $-1$ $-\frac{\sqrt{3}}{3}$ $0$

この表は丸暗記するだけでなく、「単位円(原点を中心とする半径1の円)の上を点Pが $0^\circ$ から $180^\circ$ まで動いていくとき、$\cos\theta$ は点Pのx座標、$\sin\theta$ は点Pのy座標である」という定義にいつでも戻って考えられるようにしておくと安心です。

三角方程式の解き方の考え方

三角方程式とは、$\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ のように角 $\theta$ の三角比を含む方程式のことです。この記事では、角の範囲を $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ に限定して考えます。

方程式を解くときのポイントは、それぞれの関数の「形」の違いを意識することです。

  • $\cos\theta$ は、$\theta$ が $0^\circ$ から $180^\circ$ まで増えるにつれて、$1$ から $-1$ まで単調に(常に減る一方で)減少します。そのため、$\cos\theta = k$ という方程式は、$-1 \leq k \leq 1$ である限り、$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の中でただ1つの解を持ちます。
  • $\sin\theta$ は、$0^\circ$ から $90^\circ$ まで $0$ から $1$ に増加し、$90^\circ$ から $180^\circ$ まで $1$ から $0$ に減少します。つまり山の形をしているので、$\sin\theta = k$($0 < k < 1$)という方程式は、一般に2つの解を持ちます。この2つの解は $\theta$ と $180^\circ - \theta$ の関係になっています(これは前の単元で学んだ $\sin(180^\circ - \theta) = \sin\theta$ という関係そのものです)。
  • $\tan\theta$ は $\theta = 90^\circ$ で定義されませんが、$0^\circ \leq \theta < 90^\circ$ では $0$ から限りなく大きな値へ、$90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ では限りなく小さな値(負で絶対値が大きい値)から $0$ へと、どちらの区間でも $\theta$ が増えると $\tan\theta$ も増える形で変化します。そのため、$\tan\theta = k$ という方程式は、$k$ がどんな実数であっても、$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$(ただし $\theta \neq 90^\circ$)の中でただ1つの解を持ちます。

三角不等式の解き方の考え方

三角不等式とは、$\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ を含む不等式のことです。解き方の手順は次のようになります。

  1. まず、不等号を等号に変えた方程式(例えば $\cos\theta \leq k$ なら $\cos\theta = k$)を解いて、境界となる $\theta$ の値を求めます。
  2. 次に、上で確認した「増える・減る」という関数の形を利用して、不等式を満たす $\theta$ の範囲を判断します。

この「境界を求めてから、増減を使って範囲を決める」という2段階の考え方は、これから先の数学でも繰り返し使う大切な手順です。

例題

例題1(基本)

問題

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、方程式 $\sin\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を満たす $\theta$ をすべて求めなさい。

解答・解説を見る

ステップ1: 値の表から、条件を満たす角を1つ見つける

上の表を見ると、$\theta = 60^\circ$ のとき $\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ です。これは条件を満たす角の1つです。

ステップ2: sinθ が「山の形」であることを思い出す

$\sin\theta$ は $0^\circ$ から $90^\circ$ まで増加し、$90^\circ$ から $180^\circ$ まで減少する山の形をしています。$\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ は $0$ より大きく $1$ より小さい値なので、山の頂上($\theta = 90^\circ$)より低い高さです。ですから、$\sin\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を満たす $\theta$ は、一般に2つあります。

ステップ3: もう1つの解を求める

前の単元で学んだ関係式 $\sin(180^\circ - \theta) = \sin\theta$ を使います。$\theta = 60^\circ$ が解の1つなので、

$180^\circ - 60^\circ = 120^\circ$

も解になります。実際に表を見ても $\sin 120^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ となっており、確かに条件を満たしています。

ステップ4: 範囲を確認する

$\theta = 60^\circ$ も $\theta = 120^\circ$ も、どちらも $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲に入っています。

答え

$\theta = 60^\circ,\ 120^\circ$

例題2(標準)

問題

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、不等式 $2\cos\theta + 1 < 0$ を満たす $\theta$ の範囲を求めなさい。

解答・解説を見る

ステップ1: cosθ について解く

$2\cos\theta + 1 < 0$

両辺から $1$ を引きます。

$2\cos\theta < -1$

両辺を $2$(正の数)で割ります。正の数で割るときは不等号の向きは変わりません。

$\cos\theta < -\frac{1}{2}$

ステップ2: 境界となる角を求める

まず、境界の方程式 $\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ を解きます。値の表を見ると、

$\cos 120^\circ = -\frac{1}{2}$

なので、境界となる角は $\theta = 120^\circ$ です。

ステップ3: cosθ の増減を使って範囲を判断する

$\cos\theta$ は $\theta$ が $0^\circ$ から $180^\circ$ まで増えるにつれて、$1$ から $-1$ まで単調に減少する関数です。つまり、$\theta$ が大きいほど $\cos\theta$ は小さくなります。

境界の角 $120^\circ$ でちょうど $\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ なので、$\cos\theta$ がそれより小さい値($<-\dfrac{1}{2}$)になるのは、$\theta$ が $120^\circ$ より大きいときです。

ステップ4: 範囲を確定する

$\theta = 120^\circ$ ちょうどのときは $\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ であり、不等号は等号を含まない $<$ なので、$\theta = 120^\circ$ 自身はこの不等式を満たしません。一方、$\theta = 180^\circ$ のときは $\cos 180^\circ = -1 < -\dfrac{1}{2}$ となり満たすので、$\theta = 180^\circ$ は範囲に含みます。

答え

$120^\circ < \theta \leq 180^\circ$

例題3(応用)

問題

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、方程式 $2\cos^2\theta + \sin\theta - 1 = 0$ を解きなさい。

解答・解説を見る

この方程式には $\cos\theta$ と $\sin\theta$ の両方が入っていて、このままでは値の表を見てもすぐには解けません。そこで、三角比の相互関係(以前に学んだ、$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ という関係)を使って、$\sin\theta$ だけの式に書きかえます。

ステップ1: cos²θ を sinθ で表す

$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を $\cos^2\theta$ について解くと、

$\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta$

ステップ2: 方程式に代入する

もとの方程式 $2\cos^2\theta + \sin\theta - 1 = 0$ の $\cos^2\theta$ の部分に、ステップ1の式を代入します。

$2(1 - \sin^2\theta) + \sin\theta - 1 = 0$

ステップ3: かっこを展開する

$2 - 2\sin^2\theta + \sin\theta - 1 = 0$

ステップ4: 同類項をまとめる

定数項 $2$ と $-1$ をまとめます。

$-2\sin^2\theta + \sin\theta + 1 = 0$

ステップ5: 両辺に $-1$ をかけて、$\sin^2\theta$ の係数を正にする

$2\sin^2\theta - \sin\theta - 1 = 0$

ステップ6: s = sinθ とおく

見やすくするために $s = \sin\theta$ とおくと、これは $s$ についての2次方程式になります。

$2s^2 - s - 1 = 0$

ステップ7: 左辺を因数分解する

$(2s + 1)(s - 1) = 0$

(確認: $(2s+1)(s-1) = 2s^2 - 2s + s - 1 = 2s^2 - s - 1$ となり、もとの式と一致します。)

ステップ8: sの値を求める

$2s + 1 = 0 \quad \text{または} \quad s - 1 = 0$

より、

$s = -\frac{1}{2} \quad \text{または} \quad s = 1$

ステップ9: sinθ に戻して、範囲をチェックする

$s = \sin\theta$ だったので、

$\sin\theta = -\frac{1}{2} \quad \text{または} \quad \sin\theta = 1$

ここで注意が必要です。$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲では、単位円上の点Pはx軸より上側(またはx軸上)にあるので、点Pのy座標である $\sin\theta$ は必ず $0$ 以上になります。つまりこの範囲では $\sin\theta$ が負の値になることはありません。

したがって、$\sin\theta = -\dfrac{1}{2}$ を満たす $\theta$ はこの範囲に存在しないので、この解は除外します。

ステップ10: 残った解を求める

$\sin\theta = 1$ を満たすのは、値の表より $\theta = 90^\circ$ です。

答え

$\theta = 90^\circ$

練習問題

問題

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ かつ $\theta \neq 90^\circ$ のとき、不等式 $\tan\theta \leq -1$ を満たす $\theta$ の範囲を求めなさい。

答え

$90^\circ < \theta \leq 135^\circ$

(考え方:まず境界の方程式 $\tan\theta = -1$ を解くと、値の表より $\theta = 135^\circ$ です。また、$0^\circ \leq \theta < 90^\circ$ では $\tan\theta \geq 0$ なので、この範囲に $\tan\theta \leq -1$ を満たす $\theta$ はありません。$90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ の範囲では、$\theta$ が $90^\circ$ に近いほど $\tan\theta$ は絶対値の大きい負の数になり、$\theta$ が大きくなるにつれて $\tan\theta$ は $0$ に向かって増加していきます。境界の $\theta = 135^\circ$ でちょうど $\tan\theta = -1$ なので、それより $90^\circ$ に近い側($\theta \leq 135^\circ$)で $\tan\theta \leq -1$ を満たします。)