数学I / 数と式
複雑な式の因数分解(置換・工夫)
要点整理
前の単元では、たすき掛けを使って $2x^2+5x+3$ のような2次式を因数分解する方法を学びました。この単元では、その力を使って、もっと複雑に見える式を因数分解するための3つの「工夫」を学びます。どれも、複雑な式を「見慣れた形」に変身させてから、今までの道具(公式やたすき掛け)を使うという考え方です。
工夫その1:置換(同じかたまりを1つの文字に置き換える)
式の中に、同じ形のまとまりが繰り返し出てくることがあります。そのようなときは、そのまとまりを $A$ のような新しい1つの文字で置き換えると、式がシンプルな2次式になります。この操作を置換といいます。たとえば、次の式を考えてみましょう。
$(x+y)^2 - 5(x+y) - 6$
この式には $x+y$ というまとまりが2回出てきます。そこで、$A = x+y$ とおきます。
$A^2 - 5A - 6$
これは、今まで習ってきた2次式の因数分解と同じ形です。かけて $-6$、足して $-5$ になる2つの数を探すと、$-6$ と $1$ が見つかるので、
$A^2-5A-6 = (A-6)(A+1)$
最後に、$A$ を元の $x+y$ に戻します。
$(x+y-6)(x+y+1)$
このように、「置換する → 因数分解する → 元の文字に戻す」という3つのステップが置換のポイントです。
工夫その2:4項の式はグループ分けする
項が4つある式は、うまく2つずつのペアに分けると、それぞれのペアから共通因数(すべての項に共通してかけられている因数)をくくり出せることがあります。たとえば、
$ax + ay + bx + by$
を、前の2項と後ろの2項に分けます。
$= a(x+y) + b(x+y)$
すると、$(x+y)$ という共通因数が両方の項に現れました。これをくくり出すと、
$= (a+b)(x+y)$
となり、因数分解が完成します。
工夫その3:文字が2種類以上あるときは、1つの文字について整理する
$x$ と $y$ の両方を含むような式は、そのままではどこから手をつければよいか分かりにくいことがあります。そのようなときは、どちらか1つの文字に着目して、その文字について降べきの順(次数が高い項から低い項へ並べる順番)に整理してみましょう。そうすると、もう一方の文字は「ただの数(係数)」として扱えるようになり、たすき掛けなど今まで通りのやり方が使えるようになります。詳しいやり方は、この後の例題3で実際に手を動かしながら確認します。
まとめると、複雑な式を見たときは、次のような視点で式を観察してみましょう。
- 同じかたまりが繰り返し出てきたら → 置換を考える
- 項がちょうど4つあったら → 2つずつのグループ分けを考える
- 文字が2種類以上あったら → 1つの文字について整理することを考える
例題
例題1(基本)
問題 次の式を因数分解しなさい。
$(x-1)^2+5(x-1)+6$
解答・解説を見る
ステップ1:繰り返し出てくるまとまりを見つける
この式には $x-1$ というまとまりが2回出てきています。そこで、このまとまりを新しい文字に置き換えます(置換)。
$A = x-1$
ステップ2:置換して式を書き直す
$x-1$ を $A$ に置き換えると、式は次のようになります。
$A^2+5A+6$
ステップ3:$A$ についての2次式を因数分解する
かけて $6$、足して $5$ になる2つの整数を探すと、$2$ と $3$ が見つかります。
$A^2+5A+6 = (A+2)(A+3)$
ステップ4:$A$ を元の $x-1$ に戻す
$(A+2)(A+3) = (x-1+2)(x-1+3)$
ステップ5:それぞれのかっこの中を計算して整理する
$x-1+2 = x+1$、$x-1+3 = x+2$ なので、
$(x-1+2)(x-1+3) = (x+1)(x+2)$
答え
$(x-1)^2+5(x-1)+6 = (x+1)(x+2)$
(確かめ)右辺を展開すると $(x+1)(x+2) = x^2+3x+2$ となります。左辺も展開すると $(x-1)^2+5(x-1)+6 = x^2-2x+1+5x-5+6 = x^2+3x+2$ となり、一致します。
例題2(標準)
問題 次の式を因数分解しなさい。
$x^2+2xy+y^2-x-y-6$
解答・解説を見る
ステップ1:式の一部を公式の形にまとめる
最初の3つの項 $x^2+2xy+y^2$ に注目すると、これは乗法公式 $a^2+2ab+b^2=(a+b)^2$ とちょうど同じ形になっています($a=x$、$b=y$ とみたときの形です)。そこで、この3項をまとめます。
$x^2+2xy+y^2-x-y-6 = (x+y)^2-x-y-6$
ステップ2:残りの項も同じまとまりでくくれることに気づく
残っている $-x-y$ の部分も、$x+y$ というまとまりを使って書き直せます。
$-x-y = -(x+y)$
これを使うと、式全体は次のようになります。
$(x+y)^2-(x+y)-6$
ステップ3:$x+y$ を置換する
$A=x+y$ とおくと、
$A^2-A-6$
ステップ4:$A$ についての2次式を因数分解する
かけて $-6$、足して $-1$ になる2つの整数を探すと、$-3$ と $2$ が見つかります。
$A^2-A-6=(A-3)(A+2)$
ステップ5:$A$ を元の $x+y$ に戻す
$(A-3)(A+2) = (x+y-3)(x+y+2)$
答え
$x^2+2xy+y^2-x-y-6 = (x+y-3)(x+y+2)$
(確かめ)右辺を展開すると、$(x+y-3)(x+y+2) = (x+y)^2+2(x+y)-3(x+y)-6 = (x+y)^2-(x+y)-6 = x^2+2xy+y^2-x-y-6$ となり、もとの式と一致します。
例題3(応用)
問題 次の式を因数分解しなさい。
$x^2+xy-2y^2+x+5y-2$
解答・解説を見る
この式には $x$ と $y$ の2種類の文字があり、しかも $(x+y)$ のような分かりやすい共通のまとまりも見当たりません。このようなときは、「1つの文字について整理する」という工夫を使います。ここでは $x$ に着目します。
ステップ1:$x$ について降べきの順に整理する
もとの式 $x^2+xy-2y^2+x+5y-2$ の中から、$x$ を含む項と含まない項に分けます。
- $x^2$ の項:$x^2$
- $x^1$ の項:$xy$ と $x$ → まとめると $(y+1)x$
- $x$ を含まない項:$-2y^2+5y-2$
これらを次数の高い順(降べきの順)に並べると、
$x^2+(y+1)x+(-2y^2+5y-2)$
ステップ2:$x$ を含まない部分を、$y$ の式として因数分解する
$-2y^2+5y-2$ を、まず符号を整理します。
$-2y^2+5y-2 = -(2y^2-5y+2)$
$2y^2-5y+2$ をたすき掛けで因数分解します。かけて $2y^2$、$2$ になり、クロスに掛けて足すと $-5y$ になる組み合わせを探すと、$2y-1$ と $y-2$ の組が見つかります。実際に確かめてみましょう。
$(2y-1)(y-2) = 2y^2-4y-y+2 = 2y^2-5y+2$
たしかに一致します。したがって、
$-2y^2+5y-2 = -(2y-1)(y-2)$
ステップ3:式全体を $x$ についての2次式とみて、たすき掛けで因数分解する
ステップ1・2の結果をまとめると、もとの式は次のように書けます。
$x^2+(y+1)x-(2y-1)(y-2)$
これは、$x^2+px+q$ の形で、$p=y+1$、$q=-(2y-1)(y-2)$ にあたります。たすき掛けでは、この $p,q$ に対して、足すと $p$、かけると $q$ になる2つの数(ここでは $y$ の式)を探しましたね。それと同じように、次の2つの式を試してみます。
$a = 2y-1, \qquad b = -(y-2) = -y+2$
和の確認($a+b$ が $p=y+1$ になるか)
$a+b = (2y-1)+(-y+2) = y+1$
たしかに $p=y+1$ と一致します。
積の確認($ab$ が $q=-(2y-1)(y-2)$ になるか)
$ab = (2y-1)(-y+2) = -(2y-1)(y-2)$
たしかに $q=-(2y-1)(y-2)$ と一致します。
よって、$x^2+(y+1)x-(2y-1)(y-2) = (x+a)(x+b)$ に $a,b$ を代入して、
$(x+2y-1)(x-y+2)$
答え
$x^2+xy-2y^2+x+5y-2 = (x+2y-1)(x-y+2)$
(確かめ)右辺を展開すると、$(x+2y-1)(x-y+2) = x^2-xy+2x+2xy-2y^2+4y-x+y-2 = x^2+xy+x-2y^2+5y-2$ となり、もとの式と一致します。
練習問題
問題 次の式を因数分解しなさい。
$x^2-y^2+6x+9$
答え
まず、$y^2$ を除いた3つの項 $x^2+6x+9$ に注目すると、これは $(x+3)^2$ の形(乗法公式 $a^2+2ab+b^2=(a+b)^2$ で $a=x,b=3$ の場合)になっています。そこで式を並べ替えて、
$x^2-y^2+6x+9 = (x^2+6x+9)-y^2 = (x+3)^2-y^2$
これは $A^2-B^2=(A+B)(A-B)$ の形(差の平方の公式)なので、$A=x+3$、$B=y$ として因数分解できます。
$(x+3)^2-y^2=(x+3+y)(x+3-y)$
答え:$x^2-y^2+6x+9=(x+y+3)(x-y+3)$