数学II / 図形と方程式

不等式の表す領域

要点整理

前のページ「軌跡と方程式」では、条件を満たす点をすべて集めると、直線や円といった図形の方程式になることを学びました。今回学ぶ「領域」は、その条件が等式($=$)ではなく、不等式($<,\ >,\ \leqq,\ \geqq$)になったバージョンです。

不等式の境界になる図形(直線や円)は、実は前のページで扱った軌跡と同じように「方程式」で表される図形です。不等式は、その境界となる図形を目印にして、平面全体を2つの部分に分けたときの、どちらか一方(境界を含む場合はその境目も含む)を表しています。

直線が表す領域

直線 $y=mx+n$ を考えると、この直線は座標平面を「直線より上側」と「直線より下側」の2つの部分に分けます。次の不等式は、それぞれ次のような領域を表します。

  • $y > mx+n$:直線より上側の領域(境界の直線は含まない)
  • $y < mx+n$:直線より下側の領域(境界の直線は含まない)
  • $y \geqq mx+n$:直線より上側の領域(境界の直線を含む)
  • $y \leqq mx+n$:直線より下側の領域(境界の直線を含む)

不等式が $y=(xの式)$ の形になっていないとき(たとえば $2x-y+3>0$ のような形のとき)は、まず $y$ について解く(左辺に $y$ だけが残るように式を変形する)と、上のどのパターンに当てはまるかが分かりやすくなります。ただし、$y$ について解く途中で両辺を負の数でわったり、負の数をかけたりするときは、不等号の向きが反転することを絶対に忘れないようにしてください。

具体例:不等式 $2x-y+3>0$ が表す領域を調べてみます。左辺の $-y$ 以外の項を右辺に移項すると、

$-y > -2x-3$

両辺を $-1$ でわります。負の数でわるので、不等号の向きが反転します。

$y < 2x+3$

したがって、この不等式が表す領域は、直線 $y=2x+3$ より下側の部分(境界を含まない)です。

不等式が表す領域が、直線のどちら側になるかを確認するもう1つの方法として、「テスト点」を使う方法があります。境界の直線上にない点(原点 $(0,0)$ がよく使われます)を1つ選び、それをもとの不等式に代入してみて、不等式が成り立つかどうかを調べます。成り立てば、その点がある側が求める領域です。上の例で確認すると、原点 $(0,0)$ を $2x-y+3>0$ に代入すると $2\times0-0+3=3>0$ となり成り立つので、原点を含む側(直線 $y=2x+3$ より下側、実際に原点の $y$座標 $0$ は $2\times0+3=3$ より小さいので下側)が求める領域だと確認できます。

円が表す領域

中心 $(a,b)$、半径 $r$ の円 $(x-a)^2+(y-b)^2=r^2$ を考えると、この円は座標平面を「円の内部」と「円の外部」の2つの部分に分けます。

  • $(x-a)^2+(y-b)^2 < r^2$:円の内部(境界の円は含まない)
  • $(x-a)^2+(y-b)^2 > r^2$:円の外部(境界の円は含まない)
  • $(x-a)^2+(y-b)^2 \leqq r^2$:円の内部(境界を含む)
  • $(x-a)^2+(y-b)^2 \geqq r^2$:円の外部(境界を含む)

これも、円の中心 $(a,b)$ をテスト点として代入すると、内部か外部かを確認しやすくなります。中心を代入すると左辺は $0$ になるので、たとえば $(x-a)^2+(y-b)^20$ なら常に成り立つ)となり、中心を含む側、つまり円の内部が正しい領域であることが確認できます。

連立不等式が表す領域

2つ以上の不等式をすべて同時に満たす点の集まりを考えるとき、これを連立不等式と呼びます。連立不等式が表す領域は、それぞれの不等式が表す領域の共通部分(どちらの領域にも属している部分)になります。

具体例:連立不等式 $x^2+y^2 \leqq 9$、$y \geqq x-1$ が表す領域を考えてみましょう。1つ目の不等式 $x^2+y^2\leqq9$ は、中心 $(0,0)$、半径 $3$ の円の内部(境界を含む)を表します。2つ目の不等式 $y\geqq x-1$ は、すでに $y$ について解かれた形なので、直線 $y=x-1$ より上側(境界を含む)を表します。

したがって、連立不等式が表す領域は、「半径3の円の内部(境界含む)」と「直線 $y=x-1$ より上側(境界含む)」の両方を満たす部分、つまりこの2つの領域が重なっている部分です。テスト点として原点 $(0,0)$ を確かめると、$0^2+0^2=0\leqq9$ かつ $0\geqq0-1=-1$ となり両方成り立つので、原点はこの領域に含まれます。

領域内での1次式の最大値・最小値

領域を学ぶことの実用的な応用として、「ある領域の中で、$x+2y$ のような1次式がとりうる値の最大値・最小値を求める」という問題があります。この考え方は「線形計画法」と呼ばれる分野の基本にもなっています。

考え方のポイントは、いくつかの直線の不等式で囲まれた領域(多角形の形になることが多いです)では、1次式の最大値・最小値は、必ず領域の頂点(角の部分、複数の境界線が交わる点)のどれかで達成される、という性質です。この性質を使うと、領域の中を無数に動く点をすべて調べなくても、有限個の頂点の座標だけを調べれば最大値・最小値が求められます。具体的な手順は例題3で確認します。

例題

例題1(基本)

問題

不等式 $3x+2y-6<0$ が表す領域を、境界の直線とともに答えなさい。また、境界を含むかどうかも答えなさい。

解答・解説を見る

まず、$y$ について解く形に変形します。$3x-6$ を右辺に移項します。

$2y < -3x+6$

両辺を $2$ でわります。$2$ は正の数なので、不等号の向きは変わりません。

$y < -\frac{3}{2}x+3$

したがって、この不等式が表す領域は、直線 $y=-\dfrac32x+3$ より下側の部分です。不等号がもともと $<$($\leqq$ ではない)なので、境界の直線は含みません

確認(テスト点):原点 $(0,0)$ をもとの不等式 $3x+2y-6<0$ に代入すると、$3\times0+2\times0-6=-6<0$ となり成り立ちます。直線 $y=-\dfrac32x+3$ に $x=0$ を代入すると $y=3$ なので、原点($y$座標 $0$)はこの直線より下側にあり、確かに求めた領域と一致しています。

例題2(標準)

問題

連立不等式 $x^2+y^2-4x-2y+1 \leqq 0$、$x+y \geqq 3$ が表す領域を求めなさい。

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ステップ1:1つ目の不等式を標準形に直す

$x^2+y^2-4x-2y+1\leqq0$ は、まだ円の標準形になっていません。$x$ の項と $y$ の項をそれぞれ平方完成します。

$x^2-4x = (x-2)^2-4$

$y^2-2y = (y-1)^2-1$

これらを元の式に代入します。

$(x-2)^2-4+(y-1)^2-1+1\leqq0$

定数の部分($-4-1+1=-4$)をまとめて右辺に移項します。

$(x-2)^2+(y-1)^2 \leqq 4$

これは、中心 $(2,1)$、半径 $2$($4=2^2$ より)の円の内部(境界を含む)を表しています。

ステップ2:2つ目の不等式を確認する

$x+y\geqq3$ を $y$ について解くと、

$y \geqq -x+3$

これは、直線 $y=-x+3$ より上側(境界を含む)を表しています。

ステップ3:共通部分をまとめる

したがって、求める領域は、「中心 $(2,1)$、半径 $2$ の円の内部(境界含む)」と「直線 $y=-x+3$ より上側(境界含む)」の共通部分です。

確認(テスト点):円の中心 $(2,1)$ 自身が2つ目の条件を満たすか確認します。$2+1=3\geqq3$ となり、ちょうど境界上ですが条件を満たします。円の中心に近い点、たとえば $(2,2)$ を確認すると、円の式に代入して $(2-2)^2+(2-1)^2=0+1=1\leqq4$ で円の内部にあり、直線の式にも $2+2=4\geqq3$ を満たすので、この領域に含まれる点が実際に存在することが分かります。

例題3(応用)

問題

連立不等式

$x \geqq 0,\quad y\geqq 0,\quad x+y\leqq4,\quad x\leqq3$

の表す領域を $D$ とする。点 $(x,y)$ がこの領域 $D$ 内(境界を含む)を動くとき、$x+2y$ の最大値と最小値を求めなさい。

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ステップ1:領域 $D$ の頂点を求める

領域 $D$ は、4本の境界線($x=0$、$y=0$、$x+y=4$、$x=3$)で囲まれた図形です。この図形の頂点は、2本の境界線が交わり、かつ残りすべての不等式も満たしている点です。境界線どうしの交点を順番に調べます。

  • $x=0$ と $y=0$ の交点:$(0,0)$。他の条件を確認すると $x+y=0\leqq4$、$x=0\leqq3$ を満たすので、頂点です。
  • $x=0$ と $x+y=4$ の交点:$x=0$ を $x+y=4$ に代入して $y=4$、つまり $(0,4)$。$x=0\leqq3$ を満たすので、頂点です。
  • $y=0$ と $x+y=4$ の交点:$y=0$ を $x+y=4$ に代入して $x=4$、つまり $(4,0)$。しかし $x\leqq3$ という条件を確認すると $4\leqq3$ は成り立たないので、この点は領域 $D$ の頂点ではありません
  • $y=0$ と $x=3$ の交点:$(3,0)$。$x+y=3\leqq4$ を満たすので、頂点です。
  • $x+y=4$ と $x=3$ の交点:$x=3$ を $x+y=4$ に代入して $y=1$、つまり $(3,1)$。$y=1\geqq0$ を満たすので、頂点です。

以上より、領域 $D$ は $4$ つの頂点 $(0,0)$、$(3,0)$、$(3,1)$、$(0,4)$ を持つ四角形(境界を含む)です。

ステップ2:最大値・最小値が頂点で決まる理由

$x+2y=k$ とおくと、これは傾き $-\dfrac12$ の直線を表す式で、$k$ の値を変えるといろいろな平行線の集まりになります($y=-\dfrac12x+\dfrac{k}{2}$ の形に直せることから分かります)。$k$ の値を少しずつ大きくしていくと、この直線は同じ傾きのまま平行に上(または右)へ移動していきます。

領域 $D$ は直線だけで囲まれた図形(多角形)なので、この平行線が領域 $D$ とギリギリ触れる(それより先には共通点がなくなる)瞬間は、必ず領域の**角(頂点)**を通るときになります。したがって、$x+2y$ の最大値・最小値を調べるには、領域内のすべての点を調べる代わりに、頂点だけを調べれば十分です。

ステップ3:各頂点で $x+2y$ の値を計算する

$(0,0):\quad 0+2\times0=0$

$(3,0):\quad 3+2\times0=3$

$(3,1):\quad 3+2\times1=3+2=5$

$(0,4):\quad 0+2\times4=0+8=8$

ステップ4:最大値・最小値をまとめる

計算した4つの値 $0,\ 3,\ 5,\ 8$ を比べると、最も大きいのは $8$(頂点 $(0,4)$)、最も小さいのは $0$(頂点 $(0,0)$)です。

したがって、$x+2y$ の最大値は $8$(そのときの点は $(0,4)$)、最小値は $0$(そのときの点は $(0,0)$)です。

練習問題

問題

不等式 $x^2+y^2-4x+2y+1\leqq0$ が表す領域を求めなさい(中心と半径、境界を含むかどうかも答えなさい)。

答え

$x^2-4x=(x-2)^2-4$、$y^2+2y=(y+1)^2-1$ なので、元の式に代入すると

$(x-2)^2-4+(y+1)^2-1+1\leqq0$

整理すると、

$(x-2)^2+(y+1)^2\leqq4$

したがって、中心 $(2,-1)$、半径 $2$ の円の内部(境界を含む)です。