数学I / 数と式

よくある間違い

数学Ⅰの「数と式」は、整式の整理から展開・因数分解、実数と絶対値、根号を含む式の計算、1次不等式、そして集合や命題まで、この先ずっと使う「文字式の扱い方」の基礎を作る単元です。基礎的な内容だからこそ、多くの人が同じところでつまずきます。ここでは、この単元に含まれる複数のトピックの中から、特によくある間違いを10個取り上げます。「自分もこれ、やったことがあるかも」と思いながら読んでみてください。

間違い1:同類項ではないものを足し合わせてしまう

よくある誤答例

$ 3x^2 + 5x = 8x^2 $

のように、次数(文字を何回掛け合わせているかを表す数)が違う項どうしを、うっかり1つの項にまとめてしまう。

なぜ間違いなのか

$3x^2$ は「$x$ を2回掛けたもの」が3個分、$5x$ は「$x$ が1個」だけが5個分という、まったく違う種類の量です。同類項(文字の部分がまったく同じ形をしている項)どうしでなければ、係数(文字の前についている数)を足し算することはできません。$3x^2$ と $5x$ は文字の部分が $x^2$ と $x$ で異なるため、同類項ではありません。りんご3個とみかん5個を合わせても「果物8個」とはまとめられても「りんご8個」にはならないのと同じで、次数が違う項は別々の項として残しておく必要があります。

正しい考え方

$3x^2$ と $5x$ は同類項ではないので、これ以上まとめることはできません。

$ 3x^2 + 5x $

の形のまま、これが答えです。もし同類項が含まれているなら、たとえば $3x^2 + 5x + 2x^2$ のように、文字の部分が完全に一致する項どうし($3x^2$ と $2x^2$)だけを選んで

$ 3x^2 + 2x^2 + 5x = 5x^2 + 5x $

のようにまとめます。

間違い2:多項式の引き算でかっこを外すときに符号を変え忘れる

よくある誤答例

$ (3x^2+2x-1)-(x^2-4x+5) $

を計算するときに、後ろのかっこの最初の項だけ符号を変えて、残りの項の符号を変え忘れてしまう。

$ 3x^2+2x-1-x^2-4x+5 = 2x^2-2x+4 $

なぜ間違いなのか

かっこの前にマイナス($-$)がついているとき、そのマイナスは「かっこの中の項すべて」にかかります。$-(x^2-4x+5)$ は、かっこの中の3つの項 $x^2$、$-4x$、$5$ のそれぞれの符号を反対にした $-x^2+4x-5$ という意味です。上の誤答例では、最初の項 $x^2$ の符号だけを $-x^2$ に変え、2番目の項 $-4x$ と3番目の項 $5$ の符号を変え忘れてしまっています。かっこの前のマイナスは1つの項だけにかかるのではなく、かっこの中身全体に配られる(分配される)ことを忘れてはいけません。

正しい考え方

$-(x^2-4x+5)$ を正しく展開すると

$ -(x^2-4x+5) = -x^2+4x-5 $

です。したがって

$ (3x^2+2x-1)-(x^2-4x+5) = 3x^2+2x-1-x^2+4x-5 $

となります。同類項どうしをまとめると

$ (3x^2-x^2)+(2x+4x)+(-1-5) = 2x^2+6x-6 $

が正しい答えです。

間違い3:$(a+b)^2 = a^2+b^2$ としてしまう

よくある誤答例

$ (x+3)^2 = x^2+9 $

のように、2乗のかっこを外すときに、それぞれの項をただ2乗して足すだけにしてしまう。

なぜ間違いなのか

$(x+3)^2$ は「$(x+3)$ を2回掛け算する」という意味、つまり $(x+3)\times(x+3)$ のことです。これを分配法則(かっこの中の項すべてに掛け算を配ること)を使って展開すると、$x\times x$、$x\times 3$、$3\times x$、$3\times 3$ という4つの掛け算が出てきます。$x\times3$ と $3\times x$ という「交差する」掛け算が2つ生まれるはずなのに、誤答例ではこの部分がすっぽり抜け落ちてしまっています。

正しい考え方

展開の公式(乗法公式)の1つとして

$ (a+b)^2 = a^2+2ab+b^2 $

を使います。途中式を1つずつ書くと

$ (x+3)^2 = (x+3)(x+3) = x\cdot x + x\cdot 3 + 3\cdot x + 3\cdot 3 = x^2+3x+3x+9 $

となり、$3x$ と $3x$ は同類項なのでまとめて

$ x^2+6x+9 $

が正しい答えです。

間違い4:因数分解で「足す数」と「掛ける数」の符号を取り違える

よくある誤答例

$ x^2-4x-5 = (x-1)(x+5) $

なぜ間違いなのか

$x^2+px+q$ の形(2次式で、$x^2$ の係数が1の形)を因数分解するときは、「掛けて $q$、足して $p$ になる2つの数」を探します。今回は $q=-5$、$p=-4$ なので、「掛けて $-5$、足して $-4$」になる2つの数が必要です。ところが誤答例の $(x-1)(x+5)$ を実際に展開して確かめてみると

$ (x-1)(x+5) = x^2+5x-x-5 = x^2+4x-5 $

となり、$x$ の係数が $+4$ になってしまい、もとの式の $-4x$ と符号が合っていません。使った2つの数($-1$ と $5$)は「掛けて $-5$」は満たしていますが、「足して $-4$」を満たしていない($-1+5=4$ であって $-4$ ではない)ことが間違いの原因です。

正しい考え方

掛けて $-5$、足して $-4$ になる2つの数を探すと、$1$ と $-5$ が見つかります($1\times(-5)=-5$、$1+(-5)=-4$)。したがって

$ x^2-4x-5 = (x+1)(x-5) $

です。展開して検算すると

$ (x+1)(x-5) = x^2-5x+x-5 = x^2-4x-5 $

となり、もとの式と一致するので正しいと確認できます。因数分解をしたら、必ず展開してもとの式に戻るかを確かめる習慣をつけましょう。

間違い5:たすき掛けで数字を組み合わせる相手を間違える

よくある誤答例

$ 2x^2+5x-3 = (2x+3)(x-1) $

なぜ間違いなのか

たすき掛けによる因数分解では、$x^2$ の係数($2x^2$ の $2$)を2つの数の積に、定数項($-3$)も2つの数の積に分けたうえで、「ななめに掛けて足した結果」がまん中の項の係数(この場合は $5$)に一致する組み合わせを探します。誤答例の $(2x+3)(x-1)$ が本当に正しいかどうかは、展開して確かめてみればわかります。

$ (2x+3)(x-1) = 2x^2-2x+3x-3 = 2x^2+x-3 $

$x$ の係数が $1$ になってしまい、もとの式のまん中の項 $5x$ と一致しません。組み合わせる数の選び方(どの数とどの数を同じかっこに入れるか)が違っていたことがわかります。

正しい考え方

$-3$ を $-1$ と $3$ に、$2$ を $2$ と $1$ に分けて、今度は組み合わせを変えて $(2x-1)(x+3)$ を試してみます。

$ (2x-1)(x+3) = 2x^2+6x-x-3 = 2x^2+5x-3 $

まん中の項が $6x-x=5x$ となり、もとの式と一致します。したがって

$ 2x^2+5x-3 = (2x-1)(x+3) $

が正しい答えです。たすき掛けは組み合わせが何通りもあるので、1つ見つけたらすぐに安心せず、必ず展開して検算することが大切です。

間違い6:置換して因数分解したあと、もとの文字に戻し忘れる

よくある誤答例

$(x+1)^2-5(x+1)+6$ を因数分解する問題で、$t=x+1$ と置き換えて

$ t^2-5t+6=(t-2)(t-3) $

まで求めたあと、$t$ を $x+1$ に戻す作業を省略して

$ (x-2)(x-3) $

を最終的な答えにしてしまう。

なぜ間違いなのか

置換(式の一部を新しい文字に置き換えて計算を簡単にする方法)で使う $t$ は、あくまで「計算のあいだだけ」使う仮の文字です。$t=x+1$ と置いたのですから、計算の最後には必ず $t$ を $x+1$ に戻さなければ、もとの式についての答えにはなりません。誤答例では $t-2$ と $t-3$ の $t$ を、ただ機械的に $x$ に書き換えてしまっており、「$t$ は $x+1$ である」という置き換えの中身が反映されていません。

正しい考え方

$t=x+1$ を $(t-2)(t-3)$ に代入し直します。

$ (t-2)(t-3) = \left((x+1)-2\right)\left((x+1)-3\right) = (x-1)(x-2) $

これが正しい答えです。実際に展開して検算すると、$(x-1)(x-2)=x^2-3x+2$ となり、もとの式 $(x+1)^2-5(x+1)+6$ を展開した結果($x^2+2x+1-5x-5+6=x^2-3x+2$)と一致します。置換を使ったときは、答えを書く直前に「置き換えた文字をもとに戻したか」を必ず確認しましょう。

間違い7:絶対値の方程式で場合分けを忘れる

よくある誤答例

$ |x-3|=5 $

を解くときに、$x-3=5$ だけを考えて $x=8$ を答えにしてしまい、もう1つの場合を見落とす。

なぜ間違いなのか

絶対値 $|a|$ は、「数直線上で $a$ が $0$ からどれだけ離れているか」という距離を表す記号で、必ず $0$ 以上の値になります。$|a|=5$ ということは、「$0$ から距離が $5$ だけ離れている数」という意味なので、$a=5$ だけでなく $a=-5$ もあてはまります。つまり $|a|=5$ ならば、$a=5$ または $a=-5$ の両方を考える必要があります。誤答例では、この「または」の一方だけしか考えられていません。

正しい考え方

$|x-3|=5$ は、$x-3=5$ の場合と $x-3=-5$ の場合の両方を考えます。

$x-3=5$ のとき、

$ x=5+3=8 $

$x-3=-5$ のとき、

$ x=-5+3=-2 $

したがって、答えは $x=8$ または $x=-2$ です。絶対値の方程式・不等式を見たら、まず「中身がプラスの場合とマイナスの場合の両方があるはずだ」と意識する癖をつけましょう。

間違い8:$\sqrt{a}+\sqrt{b}=\sqrt{a+b}$ としてしまう

よくある誤答例

$ \sqrt2+\sqrt3=\sqrt5 $

のように、根号(ルート)がついた数どうしの足し算を、根号の中身を足すだけで計算できると思ってしまう。

なぜ間違いなのか

実際におよその値で確かめてみると、$\sqrt2$ はおよそ $1.41$、$\sqrt3$ はおよそ $1.73$ なので、$\sqrt2+\sqrt3$ はおよそ $3.15$ になります。一方、$\sqrt5$ はおよそ $2.24$ です。$3.15$ と $2.24$ は明らかに違う数なので、$\sqrt2+\sqrt3=\sqrt5$ が成り立たないことがわかります。根号の中の数どうしを足し算してよいという計算規則は、そもそも存在しません。足し算や引き算で根号をまとめられるのは、根号の中身(根号の中の数)がまったく同じ場合、たとえば $2\sqrt3+5\sqrt3=7\sqrt3$ のように、根号の部分を同類項のように扱えるときだけです。

正しい考え方

$\sqrt2$ と $\sqrt3$ は根号の中身が異なるため、これ以上まとめることはできません。

$ \sqrt2+\sqrt3 $

の形のまま、これが答えです。もし根号の中身が同じ数どうしであれば、たとえば

$ 2\sqrt3+5\sqrt3=(2+5)\sqrt3=7\sqrt3 $

のように、根号の前についている数(係数)どうしを足し算してまとめることができます。根号の中身が同じかどうかを、必ず最初に確認しましょう。

間違い9:不等式の両辺を負の数で割るときに不等号の向きを変え忘れる

よくある誤答例

$ -3x>6 $

を解くときに、両辺を $-3$ で割って

$ x>-2 $

としてしまう。

なぜ間違いなのか

不等式の両辺に同じ負の数を掛けたり、両辺を同じ負の数で割ったりすると、数の大小関係が反対になるため、不等号の向きを逆にしなければなりません。たとえば $2<3$ という正しい不等式の両辺を $-1$ 倍すると $-2>-3$ となり、不等号の向きが変わることからも確認できます。誤答例では、両辺を $-3$ で割る際にこのルールを忘れてしまい、不等号の向きを $>$ のままにしてしまっています。試しに $x=0$ で確認すると、誤答の $x>-2$ では $x=0$ が解に含まれることになりますが、もとの不等式に $x=0$ を代入すると $-3\times0=0$ であり、$0>6$ は成り立ちません。つまり $x=0$ は本当は解ではないのに、誤答の答えには含まれてしまっているのです。

正しい考え方

両辺を負の数 $-3$ で割るので、不等号の向きを反対にします。

$ -3x>6 $

$ x<\frac{6}{-3} $

$ x<-2 $

が正しい答えです。負の数を掛けたり割ったりするときは、必ず不等号の向きを変えることを、式を変形するたびに指差し確認するくらいの気持ちで習慣にしましょう。

間違い10:ド・モルガンの法則で「かつ」と「または」を取り違える

よくある誤答例

$ \overline{A\cap B}=\bar{A}\cap\bar{B} $

のように、補集合(全体集合の中で、その集合に入っていない要素だけを集めた集合)を考えるときに、「かつ」を表す $\cap$ をそのまま残してしまう。

なぜ間違いなのか

具体的な数の集合で確かめてみましょう。全体集合を $U=\{1,2,3,4,5\}$、$A=\{1,2,3\}$、$B=\{2,3,4\}$ とします。まず $A\cap B$($A$ と $B$ の共通部分、つまり両方に入っている要素の集合)を求めると

$ A\cap B=\{2,3\} $

なので、その補集合は

$ \overline{A\cap B}=\{1,4,5\} $

です。一方、$\bar{A}=\{4,5\}$、$\bar{B}=\{1,5\}$ なので

$ \bar{A}\cap\bar{B}=\{5\} $

となり、$\overline{A\cap B}=\{1,4,5\}$ と一致しません。「$A$ にも $B$ にも入っていない」という条件は、「$A$ に入っていない、かつ、$B$ に入っていない」ではなく、「$A$ に入っていない、または、$B$ に入っていない」という条件と同じになるのです。

正しい考え方

ド・モルガンの法則(補集合と「かつ」「または」の関係を表す法則)では、$\cap$(かつ)と $\cup$(または)が入れ替わります。

$ \overline{A\cap B}=\bar{A}\cup\bar{B} $

先ほどの具体例で確認すると、$\bar{A}\cup\bar{B}=\{4,5\}\cup\{1,5\}=\{1,4,5\}$ となり、$\overline{A\cap B}=\{1,4,5\}$ と一致します。同じように、もう1つのド・モルガンの法則は

$ \overline{A\cup B}=\bar{A}\cap\bar{B} $

です。補集合を考えるときは「かつ」と「または」がひっくり返る、と覚えておきましょう。