数学I / 図形と計量

三角形の面積公式

要点整理

前の単元では、余弦定理を使って三角形の辺の長さや角の大きさを求める方法を学びました。今回は、その考え方を土台にしながら、三角形の面積を求める公式を学んでいきます。三角形の面積というと「底辺×高さ÷2」という中学校で習った公式を思い浮かべるかもしれませんが、高さが分からなくても、角度の情報があれば面積が求められるようになります。

以降では、三角形ABCの3つの頂点をA, B, C、それぞれの頂点の向かい側にある辺の長さを $a$(=BCの長さ), $b$(=CAの長さ), $c$(=ABの長さ)と表します。この表し方は余弦定理のときと同じです。また、三角形の面積は記号 $S$ で表すことにします。

公式1:2辺とその間の角から面積を求める

まず、辺CAの長さが $b$、辺CBの長さが $a$、その間の角である角Cの大きさが分かっているとします。このとき、頂点Aから辺BC(を延長した直線)に垂線を下ろし、その足をHとします。線分AHの長さが、辺BCを底辺と見たときの三角形の高さになります。

角Cが鋭角(90°より小さい角)のとき、直角三角形ACHに注目すると、角Cの大きさと辺の関係から

$\sin C = \frac{\mathrm{AH}}{\mathrm{CA}} = \frac{\mathrm{AH}}{b}$

という関係が成り立ちます。これは「サイン=高さ÷斜辺」という三角比の定義そのものです。この式の両辺に $b$ をかけると、

$\mathrm{AH} = b\sin C$

となり、高さAHが $b\sin C$ と表せることが分かります。角Cが鈍角(90°より大きい角)の場合でも、拡張された三角比の性質を使うと同じ式が成り立つことが知られています。

三角形の面積は「底辺×高さ÷2」なので、底辺をBC(=$a$)、高さをAH(=$b\sin C$)として代入すると、

$S = \frac{1}{2}\times a \times b\sin C = \frac{1}{2}ab\sin C$

という公式が得られます。これが1つ目の面積公式です。

$S = \frac{1}{2}ab\sin C$

この式で大事なのは、「かけている2辺(この場合は $a$ と $b$)に挟まれた角(この場合はC)のsinを使う」という点です。どの2辺を選ぶかによって、次のように3通りの書き方ができます。

$S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2}ca\sin B = \frac{1}{2}ab\sin C$

どれも同じ面積 $S$ を表していますが、問題で分かっている2辺と、その間の角の組み合わせに応じて、使う式を選びます。

公式2:3辺の長さだけから面積を求める(ヘロンの公式)

3つの辺の長さ $a, b, c$ だけが分かっていて角の大きさが分かっていないときは、上の公式1をそのまま使うことができません。そこで登場するのがヘロンの公式です。まず、次の値を定義します。

$s = \frac{a+b+c}{2}$

この $s$ は3辺の長さの和を2で割った値で、「半周長」と呼ばれます(三角形の周りの長さ、つまり周長 $a+b+c$ の半分という意味です)。この $s$ を使うと、面積は次の式で求められます。

$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$

この公式を初めて見ると「なぜこんな形になるのか」と不思議に思うかもしれません。実は、これは前の単元で学んだ余弦定理から導くことができます。導き方が気になる人のために、以下に手順を示しますが、難しく感じたら公式の形だけしっかり覚えて先に進んでも大丈夫です。

ヘロンの公式の導き方

ステップ1:余弦定理より、角Cの余弦(コサイン)は次のように表せます。

$\cos C = \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$

ステップ2:三角比の相互関係 $\sin^2 C + \cos^2 C = 1$ を使うと、$\sin^2 C = 1-\cos^2 C$ です。0°より大きく180°より小さい角Cでは $\sin C$ は必ず正の値になるので、

$\sin C = \sqrt{1-\cos^2 C} = \sqrt{(1-\cos C)(1+\cos C)}$

と変形できます($1-\cos^2C$ を $(1-\cos C)(1+\cos C)$ に因数分解しました)。

ステップ3:$1-\cos C$ と $1+\cos C$ をそれぞれ計算します。

$1-\cos C = 1-\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{2ab-a^2-b^2+c^2}{2ab} = \frac{c^2-(a-b)^2}{2ab} = \frac{(c-a+b)(c+a-b)}{2ab}$

($c^2-(a-b)^2$ は「2乗の差」の形なので $(c-(a-b))(c+(a-b))$ に因数分解できます。)

$1+\cos C = 1+\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{2ab+a^2+b^2-c^2}{2ab} = \frac{(a+b)^2-c^2}{2ab} = \frac{(a+b-c)(a+b+c)}{2ab}$

ステップ4:$s=\frac{a+b+c}{2}$ より $a+b+c=2s$ なので、上に出てきたかっこの中身は次のように書き換えられます。

$a+b-c = 2s-2c = 2(s-c), \qquad c+a-b = 2s-2b = 2(s-b), \qquad c-a+b = 2s-2a = 2(s-a)$

これらを使って先ほどの2つの式を書き直すと、

$1-\cos C = \frac{2(s-a)\times 2(s-b)}{2ab} = \frac{2(s-a)(s-b)}{ab}$

$1+\cos C = \frac{2(s-c)\times 2s}{2ab} = \frac{2s(s-c)}{ab}$

ステップ5:$\sin^2 C = (1-\cos C)(1+\cos C)$ に代入すると、

$\sin^2 C = \frac{2(s-a)(s-b)}{ab}\times\frac{2s(s-c)}{ab} = \frac{4s(s-a)(s-b)(s-c)}{a^2b^2}$

ステップ6:公式1より $S=\frac{1}{2}ab\sin C$ なので、両辺を2乗すると、

$S^2 = \left(\frac{1}{2}ab\sin C\right)^2 = \frac{1}{4}a^2b^2\sin^2 C$

ここに、ステップ5で求めた $\sin^2 C$ を代入すると、

$S^2 = \frac{1}{4}a^2b^2\times\frac{4s(s-a)(s-b)(s-c)}{a^2b^2} = s(s-a)(s-b)(s-c)$

($\frac{1}{4}$ と $4$ が約分されて消え、$a^2b^2$ どうしも約分されて消えます。)

ステップ7:面積 $S$ は正の値なので、両辺の平方根をとると、

$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$

となり、ヘロンの公式が導けました。

公式3:内接円の半径と面積の関係

三角形ABCの内部に、3つの辺すべてに接するように円を描くことができます。この円を内接円、その中心を内心、半径を $r$ とします。内心を通る点をI(アイ)として、点Iと3つの頂点A, B, Cをそれぞれ結ぶと、三角形ABCは次の3つの小さな三角形に分けられます。

  • 三角形IAB(底辺はAB、長さ $c$)
  • 三角形IBC(底辺はBC、長さ $a$)
  • 三角形ICA(底辺はCA、長さ $b$)

内接円は3辺すべてに接しているので、内心Iから3辺までの距離はすべて等しく、その距離がちょうど半径 $r$ になります。つまり、この3つの小さな三角形はどれも「底辺が三角形ABCの1辺、高さが $r$」の三角形なので、面積はそれぞれ

$\triangle\mathrm{IAB} = \frac{1}{2}cr, \qquad \triangle\mathrm{IBC} = \frac{1}{2}ar, \qquad \triangle\mathrm{ICA} = \frac{1}{2}br$

と表せます。三角形ABCの面積 $S$ は、この3つの小さな三角形の面積の和なので、

$S = \frac{1}{2}cr + \frac{1}{2}ar + \frac{1}{2}br = \frac{1}{2}r(a+b+c)$

という関係が得られます。

$S = \frac{1}{2}r(a+b+c)$

この式は、面積 $S$ と3辺の長さ $a, b, c$ が分かっていれば、内接円の半径 $r$ を逆に求められる、という使い方もできます。式を $r$ について解くと、

$r = \frac{2S}{a+b+c}$

となります。

例題

例題1(基本)

問題

△ABCにおいて、AB $=8$、AC $=5$、$\angle A = 60°$ であるとき、△ABCの面積 $S$ を求めなさい。

解答・解説を見る

角Aは、辺ABと辺ACに挟まれた角です。したがって、公式1「$S=\frac{1}{2}\times(\text{2辺})\times\sin(\text{その間の角})$」がそのまま使えます。

$S = \frac{1}{2}\times \mathrm{AB} \times \mathrm{AC} \times \sin\angle A$

ここに、AB$=8$、AC$=5$、$\angle A=60°$ を代入します。

$S = \frac{1}{2}\times 8 \times 5 \times \sin 60°$

まず、$\frac{1}{2}\times 8 \times 5$ を計算します。

$\frac{1}{2}\times 8 \times 5 = \frac{1}{2}\times 40 = 20$

$\sin 60° = \frac{\sqrt{3}}{2}$ なので、これを代入します。

$S = 20\times\frac{\sqrt{3}}{2}$

分母の2で20を割ってから $\sqrt{3}$ をかけます。

$S = 10\sqrt{3}$

したがって、△ABCの面積は $S=10\sqrt{3}$ です。

例題2(標準)

問題

△ABCにおいて、BC $=a=7$、CA $=b=8$、AB $=c=9$ であるとき、△ABCの面積 $S$ を求めなさい。

解答・解説を見る

この問題では3辺の長さしか分かっておらず、角の大きさが直接与えられていません。そこで、まず余弦定理を使って角Cの大きさに関する情報($\cos C$ の値)を求め、そこから $\sin C$ を求めて、公式1につなげる、という2段階の方針で進めます。

ステップ1:余弦定理で $\cos C$ を求める

角Cは辺 $a$($=$BC)と辺 $b$($=$CA)に挟まれた角で、その向かい側の辺がCです。余弦定理より、

$\cos C = \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$

$a=7$, $b=8$, $c=9$ を代入します。

$\cos C = \frac{7^2+8^2-9^2}{2\times 7\times 8}$

分子を計算します。$7^2=49$、$8^2=64$、$9^2=81$ なので、

$49+64-81 = 113-81 = 32$

分母を計算します。

$2\times 7\times 8 = 112$

したがって、

$\cos C = \frac{32}{112}$

分子・分母を16で割って約分すると、

$\cos C = \frac{2}{7}$

ステップ2:三角比の相互関係で $\sin C$ を求める

$\sin^2 C + \cos^2 C = 1$ より、$\sin^2 C = 1-\cos^2 C$ です。

$\sin^2 C = 1-\left(\frac{2}{7}\right)^2 = 1-\frac{4}{49}$

$1=\frac{49}{49}$ と考えて通分すると、

$\sin^2 C = \frac{49}{49}-\frac{4}{49} = \frac{45}{49}$

角Cは三角形の内角なので $0°

$\sin C = \sqrt{\frac{45}{49}} = \frac{\sqrt{45}}{7}$

$\sqrt{45}=\sqrt{9\times 5}=3\sqrt{5}$ なので、

$\sin C = \frac{3\sqrt{5}}{7}$

ステップ3:公式1で面積を求める

$S = \frac{1}{2}ab\sin C = \frac{1}{2}\times 7\times 8\times\frac{3\sqrt{5}}{7}$

分子と分母にある $7$ を約分すると、

$S = \frac{1}{2}\times 8\times 3\sqrt{5}$

$\frac{1}{2}\times 8 = 4$ なので、

$S = 4\times 3\sqrt{5} = 12\sqrt{5}$

したがって、△ABCの面積は $S=12\sqrt{5}$ です。

(発展的な確認:この問題は、要点整理で学んだヘロンの公式を使っても解くことができます。$s=\frac{7+8+9}{2}=12$ なので、$S=\sqrt{12\times(12-7)\times(12-8)\times(12-9)}=\sqrt{12\times5\times4\times3}=\sqrt{720}=\sqrt{144\times5}=12\sqrt{5}$ となり、同じ答えが得られます。)

例題3(応用)

問題

ある土地の形が三角形になっており、3辺の長さがそれぞれ13m、14m、15mであるとします。この土地の面積 $S$ を求めなさい。また、この三角形に内接する円の半径 $r$ を求めなさい。

解答・解説を見る

この問題では角の大きさがまったく与えられておらず、3辺の長さだけが分かっています。このような場合は、ヘロンの公式を使って面積を求めます。

ステップ1:半周長 $s$ を求める

$a=13$, $b=14$, $c=15$ とします。

$s = \frac{a+b+c}{2} = \frac{13+14+15}{2}$

分子を計算すると $13+14+15=42$ なので、

$s = \frac{42}{2} = 21$

ステップ2:$s-a$, $s-b$, $s-c$ を求める

$s-a = 21-13 = 8$

$s-b = 21-14 = 7$

$s-c = 21-15 = 6$

ステップ3:ヘロンの公式に代入して面積を求める

$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} = \sqrt{21\times 8\times 7\times 6}$

ルートの中を順番に計算します。

$21\times 8 = 168$

$168\times 7 = 1176$

$1176\times 6 = 7056$

したがって、

$S = \sqrt{7056}$

$84^2=7056$(実際に $84\times 84$ を計算すると、$80\times84=6720$、$4\times84=336$ で $6720+336=7056$ となり確かめられます)なので、

$S = 84$

よって、この土地の面積は $84\,\mathrm{m}^2$ です。

ステップ4:内接円の半径 $r$ を求める

要点整理で学んだ、面積と内接円の半径の関係式

$S = \frac{1}{2}r(a+b+c)$

を $r$ について解くと、

$r = \frac{2S}{a+b+c}$

でした。$S=84$、$a+b+c=13+14+15=42$ を代入すると、

$r = \frac{2\times 84}{42} = \frac{168}{42}$

$168\div 42=4$ なので、

$r = 4$

したがって、内接円の半径は $4\,\mathrm{m}$ です。

練習問題

問題

△ABCにおいて、AB $=6$、AC $=9$、$\angle A = 45°$ であるとき、△ABCの面積 $S$ を求めなさい。

答え

$S = \frac{1}{2}\times 6\times 9\times\sin 45° = 27\times\frac{\sqrt{2}}{2} = \frac{27\sqrt{2}}{2}$

答え:$S=\frac{27\sqrt{2}}{2}$