数学III / 極限
いろいろな関数の極限(三角関数など)
要点整理
ここでは、これから微分法・積分法を学ぶ上で欠かせない、三角関数・指数関数・対数関数に関する基本的な極限をまとめます。
$\lim_{x\to 0}\dfrac{\sin x}{x}=1$ の証明
$\sin x$ も $x$ も $x\to 0$ のとき $0$ に近づくので、$\dfrac{\sin x}{x}$ は $\dfrac{0}{0}$ の不定形です。この極限が $1$ になることを、図形の面積を使って確認します。
半径 $1$ の円(単位円)の中心を $O$、円周上の点を $A=(1,0)$ とし、$0 このとき、次の3つの図形の面積を比べます。 図から、三角形 $OAP$ は扇形 $OAP$ の中に完全に含まれ、扇形 $OAP$ は三角形 $OAT$ の中に完全に含まれています。したがって、面積の大小関係は $\frac{1}{2}\sin x < \frac{1}{2}x < \frac{1}{2}\tan x$ すべての辺を $2$倍すると、 $\sin x < x < \tan x$ $0 $1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{\tan x}{\sin x}$ 右端は $\dfrac{\tan x}{\sin x}=\dfrac{\sin x/\cos x}{\sin x}=\dfrac{1}{\cos x}$ と書き換えられるので、 $1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{1}{\cos x}$ 各辺は正の数なので、逆数を取ると不等号の向きが反転します。 $\cos x < \frac{\sin x}{x} < 1$ $x\to 0+0$(右側から $0$ に近づける)とすると、$\cos x\to \cos 0=1$ なので、はさみうちの原理より $\lim_{x\to 0+0}\frac{\sin x}{x}=1$ また、$\dfrac{\sin x}{x}$ は $x$ を $-x$ に置き換えても $\dfrac{\sin(-x)}{-x}=\dfrac{-\sin x}{-x}=\dfrac{\sin x}{x}$ となり、値が変わりません(偶関数)。したがって $x<0$ の側から $0$ に近づける場合(左極限)も同じ値 $1$ になります。以上より、 $\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1$ が成り立ちます。 この結果を使うと、次の極限も導けます。 $\lim_{x\to 0}\frac{\tan x}{x} = \lim_{x\to 0}\left(\frac{\sin x}{x}\cdot\frac{1}{\cos x}\right) = 1\times\frac{1}{1}=1$ $\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{x^2} = \frac{1}{2}\quad(\text{証明は例題2で確認します})$ また、$x\to 0$ での $\sin$、$\tan$ を使った極限を計算するときは、角の中身を1つのかたまりとみなして置き換える(置換する)のがコツです。例えば $\lim_{x\to 0}\dfrac{\sin 3x}{x}$ を求めたいときは、$t=3x$ とおくと $x\to 0$ のとき $t\to 0$ なので、$\dfrac{\sin 3x}{x}=3\cdot\dfrac{\sin t}{t}\to 3\times 1=3$ という計算ができます(詳しくは例題1)。 数列 $\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n$ は、$n$ を大きくしていくと、ある一定の無理数に限りなく近づくことが知られています。この値をネイピア数(または自然対数の底)といい、$e$ という記号で表します。 $e = \lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n = 2.71828\cdots$ $n$ の代わりに連続的に変化する実数 $h\to 0$ を使うと、同じ値が次のようにも表せます。 $e = \lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}$ このネイピア数 $e$ を底とする指数関数 $e^x$ と、$e$ を底とする対数(自然対数、$\log x$ と書く)には、次の極限が成り立ちます。 $\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{x}=1,\qquad \lim_{x\to 0}\frac{\log(1+x)}{x}=1$ これらの極限は、後の微分法の単元で $e^x$ や $\log x$ の導関数を求めるときの基礎になる、非常に重要な公式です。 問題 次の極限を求めなさい。 $\lim_{x\to 0}\frac{\sin 3x}{x}$ 基本公式 $\lim_{x\to 0}\dfrac{\sin x}{x}=1$ は、角の部分と分母の部分が完全に同じ形($x$ と $x$)になっているときにしか、そのままでは使えません。この問題では角の部分が $3x$ なのに分母が $x$ なので、形をそろえる工夫をします。 分母・分子に都合よく数をかけて、角の部分と同じ形を作ります。 $\frac{\sin 3x}{x} = 3\times\frac{\sin 3x}{3x}$ (右辺を確認すると、$3\times\dfrac{\sin 3x}{3x}=\dfrac{3\sin 3x}{3x}=\dfrac{\sin 3x}{x}$ となり、たしかに左辺と一致します。) ここで $t=3x$ とおきます。$x\to 0$ のとき $t=3x\to 0$ となるので、 $\frac{\sin 3x}{3x} = \frac{\sin t}{t} \to 1\quad(t\to 0,\ \text{すなわち}\ x\to 0)$ したがって、 $\lim_{x\to 0}\frac{\sin 3x}{x} = 3\times\lim_{x\to 0}\frac{\sin 3x}{3x} = 3\times 1 = 3$ 答え:$3$ 問題 次の極限を求めなさい。 $\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{x^2}$ $x\to 0$ のとき分子 $1-\cos x\to 0$、分母 $x^2\to 0$ なので $\dfrac{0}{0}$ の不定形です。分子に $1+\cos x$ を掛けて分母にも同じものを掛ける(有理化と同じ考え方)ことで、$\cos$ の1次式に変形します。 $\frac{1-\cos x}{x^2} = \frac{(1-\cos x)(1+\cos x)}{x^2(1+\cos x)}$ 分子は $(1-\cos x)(1+\cos x)=1-\cos^2 x$ となります。ここで三角関数の相互関係 $\sin^2 x+\cos^2 x=1$ より $1-\cos^2 x=\sin^2 x$ なので、 $\frac{1-\cos x}{x^2} = \frac{\sin^2 x}{x^2(1+\cos x)} = \left(\frac{\sin x}{x}\right)^2\times\frac{1}{1+\cos x}$ $x\to 0$ のとき、$\dfrac{\sin x}{x}\to 1$ なので $\left(\dfrac{\sin x}{x}\right)^2\to 1^2=1$ です。また $\cos x\to\cos 0=1$ なので $\dfrac{1}{1+\cos x}\to\dfrac{1}{1+1}=\dfrac{1}{2}$ です。積の極限の性質より、 $\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{x^2} = 1\times\frac{1}{2} = \frac{1}{2}$ 答え:$\dfrac{1}{2}$ 問題 次の極限を求めなさい。 $\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{\log(1+x)}$ $x\to 0$ のとき、分子 $\sin x\to 0$、分母 $\log(1+x)\to\log 1=0$ なので、$\dfrac{0}{0}$ の不定形です。分母・分子をそれぞれ $x$ で割ることで、基本極限の形を作ります。 $\frac{\sin x}{\log(1+x)} = \frac{\dfrac{\sin x}{x}}{\dfrac{\log(1+x)}{x}}$ (分母・分子を同じ $x$ で割っているので、値は変わりません。) 基本極限より、 $\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x} = 1,\qquad \lim_{x\to 0}\frac{\log(1+x)}{x} = 1$ 商の極限の性質より、 $\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{\log(1+x)} = \frac{\lim_{x\to 0}\dfrac{\sin x}{x}}{\lim_{x\to 0}\dfrac{\log(1+x)}{x}} = \frac{1}{1} = 1$ 答え:$1$ 問題1 次の極限を求めなさい。 $\lim_{x\to 0}\frac{\tan 2x}{x}$ $\dfrac{\tan 2x}{x}=2\times\dfrac{\tan 2x}{2x}$ とし、$t=2x$ とおくと $\dfrac{\tan t}{t}\to 1$ となるので、答えは $2\times 1=2$ です。 問題2 次の極限を求めなさい。 $\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{\sin x}$ 分母・分子を $x$ で割ると $\dfrac{(e^x-1)/x}{(\sin x)/x}\to\dfrac{1}{1}$ となるので、答えは $1$ です。
関連する極限
ネイピア数 $e$ と指数関数・対数関数の極限
例題
例題1(基本)
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例題2(標準)
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例題3(応用)
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練習問題
答え
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