数学I / 図形と計量

よくある間違い

「図形と計量」は、三角比の定義さえしっかり押さえれば怖くない単元です。でも裏を返すと、定義や公式のほんの一部を勘違いしただけで、答えが大きくズレてしまう単元でもあります。ここでは、多くの高校生が実際にやってしまう間違いを10個集めました。自分がやりそうな間違いがないか、チェックしながら読んでみてください。

間違い1: $\sin\theta$ と $\cos\theta$ の定義を取り違える

よくある誤答例

直角三角形があり、直角ではない角の1つを $\theta$ とします。この三角形で、$\theta$ に向かい合う辺(対辺)が3、$\theta$ のとなりにある辺(隣辺)が4、直角に向かい合う一番長い辺(斜辺)が5だとします。このとき、

$\sin\theta = \frac{4}{5}, \quad \cos\theta = \frac{3}{5}$

と書いてしまう。

なぜ間違いなのか

$\sin\theta$ と $\cos\theta$ は、どちらも分母は斜辺の長さですが、分子に使う辺が違います。$\sin\theta$ の分子は「対辺」(角 $\theta$ の真向かいにある辺)、$\cos\theta$ の分子は「隣辺」(角 $\theta$ のそばにあって斜辺ではない辺)です。上の誤答は、この対辺と隣辺をそっくり入れ替えてしまっています。三角比を習いたてのころ、どちらがどちらか自信が持てず、なんとなく数字を当てはめてしまうとこの間違いが起こります。

正しい考え方

定義に戻って、対辺・隣辺・斜辺をそれぞれ確認します。

$\sin\theta = \frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}}, \quad \cos\theta = \frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}}, \quad \tan\theta = \frac{\text{対辺}}{\text{隣辺}}$

対辺が3、隣辺が4、斜辺が5なので、正しくは

$\sin\theta = \frac{3}{5}, \quad \cos\theta = \frac{4}{5}, \quad \tan\theta = \frac{3}{4}$

となります。迷ったときは、必ず「$\theta$ の真向かいにあるのはどの辺か」を図の中で指でたどって確認する習慣をつけましょう。

間違い2: 相互関係の公式で符号を確認せずに答えを出してしまう

よくある誤答例

$\sin\theta = \dfrac{1}{3}$ で、$\theta$ が鈍角($90^\circ < \theta < 180^\circ$)であるとき、$\cos\theta$ を次のように求めてしまう。

$\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta = 1 - \frac{1}{9} = \frac{8}{9}$

$\cos\theta = \frac{2\sqrt{2}}{3}$

なぜ間違いなのか

$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ という相互関係の公式から $\cos^2\theta = \dfrac{8}{9}$ までは合っています。しかし、ここから $\cos\theta$ の値を求めるときには

$\cos\theta = \pm\sqrt{\frac{8}{9}} = \pm\frac{2\sqrt{2}}{3}$

のように、プラスとマイナスの両方の可能性があります。上の誤答は、この $\pm$ を考えずに正の値だけを答えにしてしまっています。$\theta$ が鈍角のとき、$\cos\theta$ は必ず負の値になるという性質を見落としているのです。

正しい考え方

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲では、$\theta$ が鋭角(角度が $90^\circ$ より小さい)なら $\cos\theta > 0$、$\theta$ が鈍角(角度が $90^\circ$ より大きい)なら $\cos\theta < 0$ になります。この問題では $\theta$ が鈍角と指定されているので、

$\cos\theta = -\frac{2\sqrt{2}}{3}$

が正しい答えです。さらに $\tan\theta$ を求めると

$\tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta} = \frac{\frac{1}{3}}{-\frac{2\sqrt{2}}{3}} = -\frac{1}{2\sqrt{2}} = -\frac{\sqrt{2}}{4}$

となります。$\sin\theta$ から $\cos\theta$ や $\tan\theta$ を求める問題では、必ず「角度の範囲」を先に確認してから符号を決める、という順番を守りましょう。

間違い3: 鈍角の三角比を、鋭角のときと同じ値だと思い込む

よくある誤答例

$\cos 120^\circ$ の値を求める問題で、$120^\circ$ を見て「$60^\circ$ に近い数字だから」と考え、

$\cos 120^\circ = \cos 60^\circ = \frac{1}{2}$

としてしまう。

なぜ間違いなのか

三角比を $0^\circ$ から $180^\circ$ まで拡張するとき、$\cos$ の値は $90^\circ$ を境に符号が変わります。$0^\circ \leq \theta < 90^\circ$ では $\cos\theta > 0$ ですが、$90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ では $\cos\theta < 0$ になります。$120^\circ$ は鈍角なので、$\cos 120^\circ$ は負の値でなければなりません。上の誤答は、この符号の変化を忘れて、$60^\circ$ の三角比の値をそのまま流用してしまっています。

正しい考え方

鈍角 $\theta$($90^\circ < \theta < 180^\circ$)については、$180^\circ - \theta$ という鋭角を使って、次の関係が成り立ちます。

$\sin\theta = \sin(180^\circ - \theta), \quad \cos\theta = -\cos(180^\circ - \theta)$

$\sin$ は符号がそのまま、$\cos$ は符号が反転する、という違いに注意してください。$120^\circ = 180^\circ - 60^\circ$ なので、

$\cos 120^\circ = -\cos 60^\circ = -\frac{1}{2}, \qquad \sin 120^\circ = \sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}$

となります。$\sin$ は符号がそのまま、$\cos$ はマイナスがつく、と覚えておくと混乱しにくくなります。

間違い4: $\tan 90^\circ$ に無理やり数値を当てはめてしまう

よくある誤答例

$0^\circ, 30^\circ, 45^\circ, 60^\circ, 90^\circ, \dots$ の三角比の値をまとめる表を作る問題で、$\tan 90^\circ$ の欄に $0$ や $1$ といった数値を書いてしまう。

なぜ間違いなのか

$\tan\theta$ は $\tan\theta = \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ という関係で定義されています。ここで $\theta = 90^\circ$ を代入すると、$\sin 90^\circ = 1$、$\cos 90^\circ = 0$ なので、

$\tan 90^\circ = \frac{1}{0}$

となり、分母が $0$ になってしまいます。数学では分母を $0$ にする割り算は考えません(値が定まらないからです)。したがって $\tan 90^\circ$ は「ある数値」として存在せず、「定義されない」というのが正しい扱いです。空欄に何かの数字を書こうとすること自体が誤りなのです。

正しい考え方

三角比の表や、方程式・不等式を解くときには、$\tan\theta$ を使う前に「その $\theta$ で $\cos\theta \neq 0$ かどうか」を確認する習慣をつけましょう。$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲では、$\cos\theta = 0$ になるのは $\theta = 90^\circ$ のときだけなので、$\tan\theta$ が定義されるのは $\theta \neq 90^\circ$ のときに限られます。表を作るときは、$\tan 90^\circ$ の欄には数値ではなく「定義されない」あるいは「/(斜線)」のように、値が存在しないことを示す印を書きます。

間違い5: 三角方程式で解を1つしか答えない

よくある誤答例

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲で $\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ を満たす $\theta$ を求める問題で、

$\theta = 30^\circ$

とだけ答えてしまう。

なぜ間違いなのか

間違い3で確認したとおり、$\sin\theta = \sin(180^\circ - \theta)$ という関係が成り立ちます。つまり、ある角度 $\theta_0$ で $\sin\theta_0$ がある値になるなら、$180^\circ - \theta_0$ でも同じ値になります。$\sin 30^\circ = \dfrac{1}{2}$ であると同時に、$\sin 150^\circ = \sin(180^\circ - 30^\circ) = \sin 30^\circ = \dfrac{1}{2}$ でもあるので、$\theta = 150^\circ$ もこの方程式の解です。$\theta = 30^\circ$ だけを答えるのは、この2つ目の解を見落としてしまっています。

正しい考え方

$\sin\theta = k$($k$ はある決まった数)の形の方程式を $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲で解くときは、原則として

$\theta = \theta_0 \quad \text{または} \quad \theta = 180^\circ - \theta_0$

の2つの解が出てくる可能性を考えます($\theta_0 = 90^\circ$ のときだけ、この2つが一致して解は1つになります)。この問題では $\theta_0 = 30^\circ$ なので、答えは

$\theta = 30^\circ, \ 150^\circ$

の2つです。$\sin$ の方程式を解くときは、必ず「もう1つ解がないか」を確認するクセをつけましょう(ちなみに $\cos\theta = k$ の方程式は、この範囲では解がふつう1つだけになります)。

間違い6: 正弦定理の「$2R$」を「$R$」と勘違いする

よくある誤答例

三角形 $ABC$ で、辺 $a$(角 $A$ の対辺)が $4$、角 $A$ が $30^\circ$ のとき、この三角形の外接円(三角形のすべての頂点を通る円)の半径 $R$ を、

$R = \frac{a}{\sin A} = \frac{4}{\sin 30^\circ} = \frac{4}{\frac{1}{2}} = 8$

と計算してしまう。

なぜ間違いなのか

正弦定理は、次のように「$2R$」という形で成り立つ公式です。

$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R$

ここで $R$ は外接円の半径、$2R$ はその直径です。上の誤答は、$\dfrac{a}{\sin A}$ の値がそのまま半径 $R$ に等しいと思い込んでしまっていますが、実際にはこの値は直径 $2R$ に等しいのです。半径と直径を取り違えると、答えがちょうど2倍ずれてしまいます。

正しい考え方

正弦定理の右辺は $2R$ であることを踏まえて計算します。

$2R = \frac{a}{\sin A} = \frac{4}{\sin 30^\circ} = \frac{4}{\frac{1}{2}} = 8$

ここまでは同じ計算ですが、これは $2R$ の値なので、最後にもう1段階、両辺を2で割る作業が必要です。

$R = \frac{8}{2} = 4$

正しい外接円の半径は $4$ です。公式を書くときに、必ず「$= 2R$」の「$2$」まで一緒に書く習慣をつけると、この間違いを防げます。

間違い7: 余弦定理の $-$(マイナス)を $+$(プラス)にしてしまう

よくある誤答例

三角形 $ABC$ で $a = 5$、$b = 7$、角 $C = 60^\circ$ のとき、辺 $c$ の長さを求める問題で、

$c^2 = a^2 + b^2 + 2ab\cos C = 25 + 49 + 2 \times 5 \times 7 \times \frac{1}{2} = 25 + 49 + 35 = 109$

と計算してしまう。

なぜ間違いなのか

余弦定理は、次のように「引き算」の形をした公式です。

$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$

上の誤答は、この $-2ab\cos C$ の部分を $+2ab\cos C$ と、符号を逆にして覚えてしまっています。中学校で習った三平方の定理 $c^2 = a^2 + b^2$(直角三角形のときだけ成り立つ式)に、何かをたす形で覚えようとすると、この符号ミスが起こりやすくなります。

正しい考え方

余弦定理の符号は必ず「引き算」であることを、そのつど確認しましょう。

$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C = 25 + 49 - 2 \times 5 \times 7 \times \frac{1}{2} = 74 - 35 = 39$

したがって $c = \sqrt{39}$ です。角 $C$ が $90^\circ$ のときは $\cos C = 0$ になるので $-2ab\cos C$ の項が消え、見慣れた三平方の定理 $c^2 = a^2 + b^2$ に一致します。余弦定理は「三平方の定理を、直角ではない三角形にも使えるように拡張した式」であり、角が直角より小さいか大きいかによって $\cos C$ の符号が変わることで、辺の長さの計算に自動的に補正がかかる仕組みになっています。

間違い8: 余弦定理で $\cos$ を求める式の分母の「$2$」を忘れる

よくある誤答例

三角形 $ABC$ で $a = 3$、$b = 4$、$c = \sqrt{13}$ のとき、角 $C$ の余弦を、

$\cos C = \frac{a^2 + b^2 - c^2}{ab} = \frac{9 + 16 - 13}{12} = \frac{12}{12} = 1$

と計算してしまう。

なぜ間違いなのか

余弦定理 $c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$ を $\cos C$ について解くと、正しくは

$\cos C = \frac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab}$

となり、分母は $ab$ ではなく $2ab$ です。上の誤答は、この分母の $2$ を書き忘れています。しかも、$\cos C = 1$ という答えは、角 $C$ が $0^\circ$ であることを意味しますが、三角形の内角が $0^\circ$ になることはあり得ません。計算結果が図形として成り立つかどうかを確認していれば、この間違いには気づけたはずです。

正しい考え方

分母の $2ab$ を忘れずに計算します。

$\cos C = \frac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab} = \frac{9 + 16 - 13}{2 \times 3 \times 4} = \frac{12}{24} = \frac{1}{2}$

したがって $C = 60^\circ$ です。$\cos C$ の値を求めたら、それが $-1$ 以上 $1$ 以下の範囲に収まっているか、また対応する角度が三角形の内角として不自然でないかを、必ず見直す習慣をつけましょう。

間違い9: 三角形の面積公式で $\dfrac{1}{2}$ を書き忘れる

よくある誤答例

三角形 $ABC$ で $a = 4$、$b = 5$、この2辺にはさまれた角 $C = 30^\circ$ のとき、面積 $S$ を、

$S = ab\sin C = 4 \times 5 \times \sin 30^\circ = 20 \times \frac{1}{2} = 10$

と計算してしまう。

なぜ間違いなのか

三角形の面積公式は、次のように先頭に $\dfrac{1}{2}$ がつきます。

$S = \frac{1}{2}ab\sin C$

上の誤答は、この $\dfrac{1}{2}$ を書き忘れています。長方形の面積を「たて $\times$ よこ」で求める感覚のまま、三角形の面積も「辺 $\times$ 辺 $\times$ 三角比」だけで求められると思い込んでしまうと、この間違いが起こります。

正しい考え方

先頭の $\dfrac{1}{2}$ を忘れずに計算します。

$S = \frac{1}{2}ab\sin C = \frac{1}{2} \times 4 \times 5 \times \frac{1}{2} = \frac{1}{2} \times 10 = 5$

正しい面積は $5$ です。なお、この公式で使う角 $C$ は、必ず「辺 $a$ と辺 $b$ にはさまれた角」でなければなりません。$a$ や $b$ に向かい合う角(角 $A$ や角 $B$)を代わりに使ってしまうと、$\dfrac{1}{2}$ を忘れていなくても答えが違ってしまうので、どの角が「2辺にはさまれた角」なのかも図を見ながら確認しましょう。

間違い10: 空間図形の対角線を、平面の対角線だけで求めてしまう

よくある誤答例

たて $3$、よこ $4$、高さ $12$ の直方体(箱の形をした立体)の対角線(向かい合う頂点どうしを結ぶ、一番長い線分)の長さを求める問題で、底面の対角線だけを計算して、

$\sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9+16} = \sqrt{25} = 5$

これが答えだと思ってしまう。

なぜ間違いなのか

$\sqrt{3^2+4^2}=5$ という計算自体は正しいのですが、これは底面(たて $3$、よこ $4$ の長方形)の対角線の長さであって、直方体全体を貫く対角線の長さではありません。空間図形の対角線を求めるには、三平方の定理を2回使う必要があります。1回目で底面の対角線を求め、2回目でその対角線と高さを使ってようやく空間の対角線が求まるのに、上の誤答は1回目の計算だけで止まってしまっています。

正しい考え方

まず底面の対角線を求めます(1回目の三平方の定理)。

$\sqrt{3^2+4^2} = \sqrt{25} = 5$

次に、この底面の対角線(長さ $5$)と、高さ $12$ を2辺とする直角三角形を考えて、もう一度三平方の定理を使います(2回目)。

$\sqrt{5^2+12^2} = \sqrt{25+144} = \sqrt{169} = 13$

したがって、直方体の対角線の長さは $13$ です。空間図形の問題では、立体そのものの中に三平方の定理を使える直角三角形を、頭の中や図の中で2つ見つけ出す(必要ならその直角三角形だけを取り出して平面の図にかき直す)ことが大切です。1回計算して満足せず、「これは本当に求めたい対角線か」を確認する習慣をつけましょう。