数学I / 数と式
1次不等式
要点整理
数学Iの「数と式」の単元では、ここまで整式の展開や因数分解、そして実数と数直線・絶対値について学んできました。ここでは、その実数の知識を土台にして、「不等式」、特に「1次不等式」の解き方を学びます。
不等式とは何か
2つの式や数の大小関係を、記号を使って表した式を不等式といいます。使う記号は次の4つです。
- $A < B$ … $A$ は $B$ より小さい
- $A > B$ … $A$ は $B$ より大きい
- $A \leq B$ … $A$ は $B$ 以下(「$A < B$ または $A = B$」という意味です)
- $A \geq B$ … $A$ は $B$ 以上(「$A > B$ または $A = B$」という意味です)
不等式の中に文字(たとえば $x$)が含まれていて、その文字の次数(何乗になっているか)が1次であるものを、1次不等式といいます。たとえば $2x - 3 < 5$ は、$x$ が1乗しか出てこないので1次不等式です。
不等式を「解く」とは、その不等式を成り立たせる $x$ の値の範囲をすべて求めることです。方程式の解が1つの値(または有限個の値)だったのに対して、不等式の解は「$x < 4$」のような、無限に多くの値からなる範囲になるのが大きな違いです。
不等式の性質(向きが変わる場合に注意)
不等式は方程式と同じように移項して解くことができますが、1つだけ大きな注意点があります。それは、両辺に負の数をかけたり、両辺を負の数で割ったりすると、不等号の向きが逆になるという点です。
具体的な数で確認してみましょう。$2 < 5$ という正しい不等式があります。この両辺に $-1$ をかけると、
$ 2 \times (-1) = -2, \qquad 5 \times (-1) = -5 $
となります。数直線で考えると、$-2$ は $-5$ より右側にあるので、$-2 > -5$ です。つまり、もとは「$2$ は $5$ より小さい」だったのに、両辺に $-1$ をかけたあとは「$-2$ は $-5$ より大きい」に変わってしまいました。このように、両辺に負の数をかけたり割ったりするときは、不等号の向き($<$ と $>$、$\leq$ と $\geq$)を入れ替える必要があります。
この性質をまとめると、次の3つになります。$A,\ B,\ C$ を実数として、$A > B$ が成り立っているとします。
$ A > B \implies A + C > B + C,\quad A - C > B - C $
$ A > B,\ C > 0 \implies AC > BC,\quad \frac{A}{C} > \frac{B}{C} $
$ A > B,\ C < 0 \implies AC < BC,\quad \frac{A}{C} < \frac{B}{C} $
1つ目と2つ目の性質(足す・引く、正の数をかける・割る)では不等号の向きはそのままですが、3つ目の性質(負の数をかける・割る)では不等号の向きが逆になることを、必ず覚えておいてください。
1次不等式の解き方の手順
1次不等式は、次の手順で解くことができます。方程式を解く手順とほとんど同じですが、最後の「両辺を割る」ところだけ注意が必要です。
- 文字 $x$ を含む項を左辺に、数だけの項(定数項といいます)を右辺に移項する。
- 両辺をそれぞれ整理して、$ax > b$(または $<,\ \leq,\ \geq$)の形にする。
- 両辺を $x$ の係数 $a$ で割る。このとき $a$ が負の数であれば、不等号の向きを逆にする。
実際に $2x - 3 < 5$ を解いてみましょう。
$ 2x - 3 < 5 $
まず、$-3$ を右辺に移項します。移項するときは符号を変えるので、$-3$ は $+3$ になって右辺に移ります。
$ 2x < 5 + 3 $
右辺を計算します。
$ 2x < 8 $
両辺を $x$ の係数である $2$(正の数)で割ります。正の数で割るので、不等号の向きはそのままです。
$ x < 4 $
これで解が求まりました。$x$ が $4$ より小さい実数であれば、すべてもとの不等式を満たします。
次に、負の数で割る場合を確認しておきましょう。$-3x + 2 > 11$ を解きます。
$ -3x + 2 > 11 $
$2$ を右辺に移項します。
$ -3x > 11 - 2 $
$ -3x > 9 $
両辺を $x$ の係数である $-3$(負の数)で割ります。負の数で割るので、不等号の向きを逆にします。
$ x < -3 $
もし向きを変え忘れて $x > -3$ としてしまうと、まったく逆の範囲になってしまうので、この一手間を絶対に忘れないようにしましょう。
解を数直線で表す
不等式の解は、数直線上に図示することもできます。境界の値を含まない(等号がつかない、つまり $<$ や $>$ )ときは白丸(境界の点は含まれないことを表す)、境界の値を含む(等号がつく、つまり $\leq$ や $\geq$)ときは黒丸(境界の点を含むことを表す)で表し、そこから解の範囲がある方向に矢印を伸ばして描きます。たとえば $x < 4$ であれば、$4$ の位置に白丸を置いて、そこから左側(小さい方向)に矢印を伸ばします。
連立不等式
2つ以上の1次不等式を同時に満たす $x$ の値の範囲を求める問題を、連立不等式といいます。連立不等式は、それぞれの不等式を別々に解いたあと、両方の解に共通する範囲(共通部分)を求めることで解くことができます。
たとえば、次の連立不等式を考えます。
$ 2x - 3 < x + 4 \quad \cdots\text{①} $
$ 3x - 5 \geq x - 1 \quad \cdots\text{②} $
まず①を解きます。$x$ を含む項を左辺に、定数項を右辺に移項します。
$ 2x - x < 4 + 3 $
$ x < 7 $
次に②を解きます。同じように移項します。
$ 3x - x \geq -1 + 5 $
$ 2x \geq 4 $
両辺を $2$(正の数)で割ります。
$ x \geq 2 $
①の解は $x < 7$、②の解は $x \geq 2$ です。この2つの範囲に共通する部分を数直線でイメージすると、$2$ 以上かつ $7$ より小さい範囲になります。したがって、連立不等式の解は、
$ 2 \leq x < 7 $
となります。
絶対値を含む1次不等式
すでに学んだように、絶対値 $|a|$ は数直線上で $0$ からその数までの距離を表す数でした(距離なので、常に $0$ 以上になります)。この性質を使うと、絶対値を含む不等式も解くことができます。$a$ を正の数とするとき、次の関係が成り立ちます。
$ |x| < a \iff -a < x < a $
$ |x| > a \iff x < -a \ \text{または}\ x > a $
1つ目は、「$0$ からの距離が $a$ より小さい」という意味なので、$x$ は $-a$ より大きく $a$ より小さい範囲(原点をはさんで両側の、近い範囲)になります。2つ目は、「$0$ からの距離が $a$ より大きい」という意味なので、$x$ は $-a$ より小さいか、または $a$ より大きい範囲(原点から遠く離れた、外側の範囲)になります。この2つの型は、あとの例題で実際に使いながら慣れていきましょう。
例題
例題1(基本)
問題
次の1次不等式を解きなさい。
$ 4x + 3 > 11 $
解答・解説を見る
まず、$3$ を右辺に移項します。移項すると符号が変わるので、$+3$ は $-3$ になって右辺に移ります。
$ 4x > 11 - 3 $
右辺を計算します。
$ 4x > 8 $
両辺を $x$ の係数である $4$(正の数)で割ります。正の数で割るので、不等号の向きはそのままです。
$ x > 2 $
答え: $x > 2$
途中で正の数の $4$ で割っているだけなので、不等号の向きを変える必要はありません。この「向きを変えるかどうか」を毎回きちんと確認することが、1次不等式を正しく解くための一番のポイントです。
例題2(標準)
問題
次の連立不等式を解きなさい。
$ 5x - 7 \leq 2x + 5 \quad \cdots\text{①} $
$ -2x + 1 < 3x - 9 \quad \cdots\text{②} $
解答・解説を見る
①と②をそれぞれ別々に解いてから、最後に共通の範囲を求めます。
①を解く
$ 5x - 7 \leq 2x + 5 $
$x$ を含む項を左辺に、定数項を右辺に移項します。$2x$ は符号を変えて左辺へ、$-7$ は符号を変えて右辺へ移ります。
$ 5x - 2x \leq 5 + 7 $
両辺を計算します。
$ 3x \leq 12 $
両辺を $x$ の係数である $3$(正の数)で割ります。
$ x \leq 4 $
②を解く
$ -2x + 1 < 3x - 9 $
同じように移項します。$3x$ は符号を変えて左辺へ、$1$ は符号を変えて右辺へ移ります。
$ -2x - 3x < -9 - 1 $
両辺を計算します。
$ -5x < -10 $
両辺を $x$ の係数である $-5$(負の数)で割ります。負の数で割るので、不等号の向きを逆にします。
$ x > 2 $
共通範囲を求める
①の解は $x \leq 4$、②の解は $x > 2$ です。この2つをどちらも満たす $x$ の範囲は、$2$ より大きく $4$ 以下の範囲です。したがって、
$ 2 < x \leq 4 $
答え: $2 < x \leq 4$
②で不等号の向きを変え忘れると、$x < 2$ という誤った解になってしまい、共通範囲もまったく違うものになってしまいます。負の数で割る場面が来たら、一呼吸置いて「向きを変える」と確認する習慣をつけましょう。
例題3(応用)
問題
不等式 $|2x - 1| \leq 5$ を満たす整数 $x$ の個数を求めなさい。
解答・解説を見る
まず、絶対値を含む不等式の基本形を使って、絶対値の記号をはずします。$|x| \leq a$($a$ は正の数)のときは $-a \leq x \leq a$ となる(これは $|x| < a \iff -a < x < a$ と同じ考え方で、等号がつく場合も同じように成り立ちます)ので、今回は $A = 2x-1$、$a = 5$ として、
$ -5 \leq 2x - 1 \leq 5 $
という3つの部分からなる不等式になります。これは「$-5 \leq 2x-1$」と「$2x - 1 \leq 5$」を同時に満たすという意味です。この形のまま、真ん中の $2x-1$ から $x$ だけを残すように、両端にも同じ操作を行っていきます。
まず、すべての辺(左・真ん中・右)に $1$ を足します。
$ -5 + 1 \leq 2x - 1 + 1 \leq 5 + 1 $
$ -4 \leq 2x \leq 6 $
次に、すべての辺を $2$(正の数)で割ります。正の数で割るので、不等号の向きはすべてそのままです。
$ -2 \leq x \leq 3 $
これで、$x$ の値の範囲が $-2$ 以上 $3$ 以下であるとわかりました。
最後に、この範囲に含まれる整数を数え上げます。$-2$ 以上 $3$ 以下の整数は、
$ -2,\ -1,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3 $
の $6$ 個です。
答え: $6$ 個
念のため、境界の値で確認しておきましょう。$x = -2$ のとき $|2 \times (-2) - 1| = |-4-1| = |-5| = 5$ となり、たしかに $5 \leq 5$ を満たします。$x = 3$ のとき $|2 \times 3 - 1| = |6-1| = |5| = 5$ となり、こちらも $5 \leq 5$ を満たします。等号がついた不等式なので、境界の値もきちんと解に含まれることが確認できました。
練習問題
問題
次の不等式を解きなさい。
$ \frac{2x - 1}{3} \geq x - 2 $
答え
両辺に $3$(正の数)をかけて分母を払うと、
$ 2x - 1 \geq 3(x - 2) $
右辺を展開すると、
$ 2x - 1 \geq 3x - 6 $
移項して整理すると、
$ -1 + 6 \geq 3x - 2x $
$ 5 \geq x $
これは $x \leq 5$ と同じ意味です。
答え: $x \leq 5$