数学C / ベクトル
空間座標とベクトルの基本
要点整理
これまでは平面(2次元)の中でベクトルを考えてきました。ここからは、空間(3次元)に世界を広げます。基本的な考え方はすべて平面のときと同じですが、成分が1つ増えて3つになります。
空間座標
平面上の点は $x$ 座標と $y$ 座標の組 $(x, y)$ で表しました。空間では、原点 $\mathrm{O}$ を通り、互いに垂直な3本の直線 $x$ 軸、$y$ 軸、$z$ 軸を考え、点の位置を $(x, y, z)$ という3つの数の組で表します。
$x$ 軸と $y$ 軸を含む平面を $xy$ 平面、$y$ 軸と $z$ 軸を含む平面を $yz$ 平面、$z$ 軸と $x$ 軸を含む平面を $zx$ 平面といい、これらをまとめて座標平面と呼びます。たとえば $xy$ 平面上にある点は、$z$ 座標が $0$ になります。
点 $\mathrm{A}(a_1, a_2, a_3)$ とは、$x$ 座標が $a_1$、$y$ 座標が $a_2$、$z$ 座標が $a_3$ である点のことです。図をイメージするときは、床(机の面)を $xy$ 平面、そこから真上に伸びる方向を $z$ 軸と考えるとわかりやすいでしょう。
2点間の距離(空間版の三平方の定理)
平面上の2点間の距離は、三平方の定理を使って $\sqrt{(\text{x座標の差})^2 + (\text{y座標の差})^2}$ と求められました。空間でも同じように、三平方の定理を2回使うことで、2点 $\mathrm{A}(a_1, a_2, a_3)$、$\mathrm{B}(b_1, b_2, b_3)$ 間の距離を求める公式が得られます。
$\mathrm{AB} = \sqrt{(b_1-a_1)^2 + (b_2-a_2)^2 + (b_3-a_3)^2}$
平面の距離の公式に、$z$ 座標の差の項が1つ増えただけの形をしています。特に、原点 $\mathrm{O}(0,0,0)$ から点 $\mathrm{A}(a_1,a_2,a_3)$ までの距離は、
$\mathrm{OA} = \sqrt{a_1^2 + a_2^2 + a_3^2}$
です。
空間ベクトルの成分表示
平面のときと同じように、空間の中のベクトル $\vec{a}$ は、始点を原点に平行移動したときの終点の座標 $(a_1, a_2, a_3)$ を使って、
$\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)$
と成分表示できます。$\vec{a}$ の大きさは、原点から点 $(a_1,a_2,a_3)$ までの距離なので、
$|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2 + a_3^2}$
です。
2点 $\mathrm{A}(a_1,a_2,a_3)$、$\mathrm{B}(b_1,b_2,b_3)$ に対して、平面のときと同じ「(終点)$-$(始点)」の考え方で、
$\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (b_1-a_1,\ b_2-a_2,\ b_3-a_3)$
です。
空間ベクトルの相等・和・差・実数倍
$\vec{a} = (a_1,a_2,a_3)$、$\vec{b} = (b_1,b_2,b_3)$、$k$ を実数とするとき、平面のときとまったく同じ規則が、成分が1つ増えた形で成り立ちます。
相等条件:
$\vec{a} = \vec{b} \iff a_1=b_1 \text{ かつ } a_2=b_2 \text{ かつ } a_3=b_3$
和・差:
$\vec{a} + \vec{b} = (a_1+b_1,\ a_2+b_2,\ a_3+b_3), \qquad \vec{a} - \vec{b} = (a_1-b_1,\ a_2-b_2,\ a_3-b_3)$
実数倍:
$k\vec{a} = (ka_1,\ ka_2,\ ka_3)$
平行条件: $\vec{a} \neq \vec{0}$、$\vec{b} \neq \vec{0}$ のとき、
$\vec{a} \parallel \vec{b} \iff \vec{b} = k\vec{a} \text{ となる実数 } k \text{ が存在する}$
これらはすべて、平面ベクトルのページで学んだ性質を、成分を3つに増やしただけのものです。計算のやり方自体は何も変わりません。
例題
例題1(基本)
問題
$\mathrm{A}(1, 2, 3)$、$\mathrm{B}(4, -1, 5)$ とする。$\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ を成分表示で求め、線分 $\mathrm{AB}$ の長さを求めなさい。
解答・解説を見る
「(終点の座標)$-$(始点の座標)」の公式を使います。$x$ 成分は $4-1$、$y$ 成分は $-1-2$、$z$ 成分は $5-3$ です。
$\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (4-1,\ -1-2,\ 5-3) = (3, -3, 2)$
線分 $\mathrm{AB}$ の長さは $|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|$ なので、大きさの公式 $|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}$ に代入します。
$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = \sqrt{3^2 + (-3)^2 + 2^2} = \sqrt{9+9+4} = \sqrt{22}$
答え: $\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (3, -3, 2)$、$\mathrm{AB} = \sqrt{22}$
例題2(標準)
問題
$\vec{a} = (2, -1, 2)$ について、$|\vec{a}|$ を求めなさい。また、$\vec{a}$ と同じ向きで大きさが $1$ であるベクトル(これを $\vec{a}$ 方向の単位ベクトルといいます)を成分表示で求めなさい。
解答・解説を見る
まず $|\vec{a}|$ を求めます。
$|\vec{a}| = \sqrt{2^2 + (-1)^2 + 2^2} = \sqrt{4+1+4} = \sqrt{9} = 3$
$\vec{a}$ と同じ向きで大きさ $1$ のベクトルを作るには、$\vec{a}$ を「$\vec{a}$ 自身の大きさ」で割ればよい、というのが基本の考え方です。実数倍の性質を思い出すと、$k > 0$ のとき $k\vec{a}$ は $\vec{a}$ と同じ向きで大きさが $|\vec{a}|$ の $k$ 倍になるので、$k = \dfrac{1}{|\vec{a}|}$ とすれば、$k\vec{a}$ の大きさはちょうど $|\vec{a}| \times \dfrac{1}{|\vec{a}|} = 1$ になります。
$k = \frac{1}{|\vec{a}|} = \frac{1}{3}$
したがって、求める単位ベクトルは、
$\frac{1}{3}\vec{a} = \frac{1}{3}(2, -1, 2) = \left(\frac{2}{3},\ -\frac{1}{3},\ \frac{2}{3}\right)$
答え: $|\vec{a}| = 3$、単位ベクトルは $\left(\dfrac{2}{3}, -\dfrac{1}{3}, \dfrac{2}{3}\right)$
(検算: この単位ベクトルの大きさを計算すると、$\sqrt{\left(\dfrac{2}{3}\right)^2+\left(-\dfrac{1}{3}\right)^2+\left(\dfrac{2}{3}\right)^2} = \sqrt{\dfrac{4}{9}+\dfrac{1}{9}+\dfrac{4}{9}} = \sqrt{\dfrac{9}{9}} = \sqrt{1} = 1$ となり、確かに大きさ $1$ です。)
例題3(応用)
問題
$y$ 軸上にあって、2点 $\mathrm{A}(1, 2, -1)$、$\mathrm{B}(2, -1, 3)$ から等しい距離にある点 $\mathrm{P}$ の座標を求めなさい。
解答・解説を見る
点 $\mathrm{P}$ は $y$ 軸上にあるので、$x$ 座標と $z$ 座標がともに $0$ です。$y$ 座標を文字 $y$ とおいて、
$\mathrm{P}(0, y, 0)$
とします。「$\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ から等しい距離にある」という条件を、距離の2乗を使って式にします(2乗にしても大小関係や等しさは変わらず、根号が消えて計算しやすくなります)。
$\mathrm{PA}^2 = \mathrm{PB}^2$
まず $\mathrm{PA}^2$ を計算します。
$\mathrm{PA}^2 = (0-1)^2 + (y-2)^2 + (0-(-1))^2 = (-1)^2 + (y-2)^2 + 1^2 = 1 + (y-2)^2 + 1$
$(y-2)^2$ を展開すると $y^2 - 4y + 4$ なので、
$\mathrm{PA}^2 = 1 + (y^2-4y+4) + 1 = y^2 - 4y + 6$
次に $\mathrm{PB}^2$ を計算します。
$\mathrm{PB}^2 = (0-2)^2 + (y-(-1))^2 + (0-3)^2 = (-2)^2 + (y+1)^2 + (-3)^2 = 4 + (y+1)^2 + 9$
$(y+1)^2$ を展開すると $y^2+2y+1$ なので、
$\mathrm{PB}^2 = 4 + (y^2+2y+1) + 9 = y^2 + 2y + 14$
$\mathrm{PA}^2 = \mathrm{PB}^2$ より、
$y^2 - 4y + 6 = y^2 + 2y + 14$
両辺から $y^2$ を引きます。
$-4y + 6 = 2y + 14$
$2y$ を左辺に、$6$ を右辺に移項します。
$-4y - 2y = 14 - 6$
$-6y = 8$
両辺を $-6$ で割ります。
$y = -\frac{8}{6} = -\frac{4}{3}$
答え: $\mathrm{P}\left(0, -\dfrac{4}{3}, 0\right)$
練習問題
問題1
$\mathrm{A}(2, -3, 1)$、$\mathrm{B}(0, 1, 4)$ とする。$\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ を成分表示で求め、$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|$ を求めなさい。
答え
$\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (-2, 4, 3)$、$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = \sqrt{4+16+9} = \sqrt{29}$
問題2
$\vec{a} = (1, -2, 2)$ の大きさ $|\vec{a}|$ を求め、$\vec{a}$ と同じ向きの単位ベクトルを求めなさい。
答え
$|\vec{a}| = 3$、単位ベクトルは $\left(\dfrac{1}{3}, -\dfrac{2}{3}, \dfrac{2}{3}\right)$
(解説: $|\vec{a}| = \sqrt{1+4+4} = \sqrt{9} = 3$。単位ベクトルは $\dfrac{1}{3}\vec{a}$。)
問題3
$x$ 軸上にあって、2点 $\mathrm{A}(1, 1, 2)$、$\mathrm{B}(3, -1, 0)$ から等しい距離にある点 $\mathrm{P}$ の座標を求めなさい。
答え
$\mathrm{P}(1, 0, 0)$
(解説: $\mathrm{P}(x,0,0)$ とおき、$\mathrm{PA}^2 = (x-1)^2+1+4 = (x-1)^2+5$、$\mathrm{PB}^2=(x-3)^2+1+0=(x-3)^2+1$。$\mathrm{PA}^2=\mathrm{PB}^2$ より $(x-1)^2+5=(x-3)^2+1$。展開すると $x^2-2x+1+5=x^2-6x+9+1$、整理すると $-2x+6=-6x+10$、$4x=4$、$x=1$。)