数学II / 指数関数・対数関数

よくある間違い

数学IIの「指数関数・対数関数」は、指数の意味を分数や実数全体に広げたり、指数の逆の見方である対数という新しい考え方を学んだりする単元です。新しい記号やルールが次々に登場するため、符号や向きに関する小さな勘違いがそのまま大きな計算ミスにつながりやすい単元でもあります。ここでは、この単元でよくある間違いを9個取り上げます。「自分もこれ、やったことがあるかも」と思いながら読んでみてください。

間違い1:偶数乗根では $\sqrt[n]{a^n}=a$ が常に成り立つと思い込む

よくある誤答例

$\sqrt[4]{(-3)^4}$ を計算する問題で、

$\sqrt[4]{(-3)^4} = -3$

のように、中の $-3$ をそのまま答えにしてしまう。

なぜ間違いなのか

$\sqrt[n]{\ }$($n$が偶数)という記号は、「$n$乗すると中の数になる、$0$以上の数」を表す約束でした。$(-3)^4$ の値自体は、

$(-3)^4 = 81$

という正の数です。$\sqrt[4]{81}$ は「4乗すると $81$ になる、$0$以上の数」を指すので、答えは $-3$ ではなく、その絶対値である $3$($3^4=81$ より)になるはずです。$-3$ を4乗根の記号の中に入れると、符号の情報はいったん消えてしまう($4$乗するとどんな数も正になる)ことを意識しましょう。

正しい考え方

一般に、$n$ が偶数のとき、$\sqrt[n]{a^n}=|a|$(絶対値)が成り立ちます。したがって、

$\sqrt[4]{(-3)^4} = |-3| = 3$

が正しい答えです。これは、数学Iで学んだ $\sqrt{x^2}=|x|$ という関係を、4乗根に広げたものだと考えると理解しやすいでしょう。

間違い2:負の指数を「マイナスをつける」ことだと勘違いする

よくある誤答例

$4^{-2}$ を計算する問題で、

$4^{-2} = -16 \quad \text{または} \quad 4^{-2}=-\frac{1}{16}$

のように、マイナスの指数を見て、答えの符号を反転させてしまう。

なぜ間違いなのか

負の指数の定義は $a^{-r}=\dfrac{1}{a^r}$ であり、これは「符号を反転させる」という意味ではなく、「逆数(分母と分子を入れ替えた数)にする」という意味です。$a>0$ である限り、$a^r$ も $a^{-r}$ も、常に正の数になります(正の数を何乗しても、正の数のままです)。負の指数を見ただけで答えをマイナスにしてしまうと、この性質と矛盾してしまいます。

正しい考え方

負の指数の定義通りに、逆数を作ります。

$4^{-2} = \frac{1}{4^2} = \frac{1}{16}$

したがって、正しい答えは $\dfrac{1}{16}$ です。指数のマイナス符号は「逆数にする」という指示であって、値自体の符号を変えるものではない、という点をしっかり区別しましょう。

間違い3:指数関数の大小比較で、底が1より小さいときも「指数が大きいほど値も大きい」と思い込む

よくある誤答例

$\left(\dfrac13\right)^2$ と $\left(\dfrac13\right)^5$ の大小を比較する問題で、

「指数が大きい方が値も大きいはずだから、$\left(\dfrac13\right)^2 < \left(\dfrac13\right)^5$」

のように誤答してしまう。

なぜ間違いなのか

「指数が大きいほど値も大きい」という関係が成り立つのは、底が $1$ より大きいとき(指数関数が単調増加のとき)だけです。今回の底 $\dfrac13$ は $1$ より小さいので、指数関数 $y=\left(\dfrac13\right)^x$ は単調減少であり、指数が大きいほど値はむしろ小さくなります。実際に計算してみると、

$\left(\frac13\right)^2 = \frac19 \approx 0.111, \qquad \left(\frac13\right)^5 = \frac{1}{243} \approx 0.0041$

となり、$\left(\dfrac13\right)^2$ の方が大きい値であることが分かります。誤答とは逆の結果です。

正しい考え方

底が $0

$2 < 5 \quad\Rightarrow\quad \left(\frac13\right)^2 > \left(\frac13\right)^5$

したがって、正しくは $\left(\dfrac13\right)^2 > \left(\dfrac13\right)^5$ です。底が $1$ より大きいか小さいかで、大小の向きが変わることを、必ず先に確認する習慣をつけましょう。

間違い4:指数方程式で、底をそろえずに指数だけを比較してしまう

よくある誤答例

方程式 $3^{2x}=9$ を解く問題で、右辺の $9$ を底 $3$ のべきに直さずに、

「指数だけを比較して $2x=9$」

のように計算し、$x=4.5$ と誤答してしまう。

なぜ間違いなのか

指数方程式 $a^p=a^q \iff p=q$ という関係が使えるのは、両辺が同じ底の累乗になっているときだけです。$3^{2x}=9$ では、左辺の底は $3$ ですが、右辺の $9$ はそのままでは底が $3$ の累乗の形になっていません。指数の $2x$ と、真数(累乗の結果の値)である $9$ を直接イコールで結んでしまうのは、まったく別のものを比較していることになり、誤りです。

正しい考え方

まず、右辺を底 $3$ の累乗の形に直します。$9=3^2$ なので、

$3^{2x} = 3^2$

これで両辺の底がそろったので、指数どうしを比較できます。

$2x=2$

両辺を $2$ でわります。

$x=1$

したがって、正しい答えは $x=1$ です。指数方程式・不等式では、指数を比較する前に、必ず両辺の底をそろえる作業が必要です。

間違い5:対数の和を、そのまま各項に分配して計算してしまう

よくある誤答例

$\log_2(4+4)$ を計算する問題で、

$\log_2(4+4) = \log_24+\log_24 = 2+2=4$

のように、かっこの中の足し算を、対数の中でそのまま分配してしまう。

なぜ間違いなのか

対数の法則 $\log_a(MN)=\log_aM+\log_aN$ が成り立つのは、かっこの中が(かけ算)になっているときだけです。かっこの中が(足し算)になっているときには、この法則は使えません。今回のように $\log_2(4+4)$ のように和が入っているときは、先に中身を計算してから対数をとる必要があります。

正しく計算すると、

$\log_2(4+4) = \log_28$

$2^3=8$ なので $\log_28=3$ となり、誤答の $4$ とは異なる値になります。

正しい考え方

かっこの中に和や差が入っているときは、対数の法則を使う前に、先にその中身を計算してしまいます。

$\log_2(4+4) = \log_28 = 3$

したがって、正しい答えは $3$ です。「$\log_a(MN)=\log_aM+\log_aN$」の法則は、あくまでかけ算を対数の足し算に変換するものであり、逆に「足し算」を対数の中で分配することはできない、という点を混同しないようにしましょう。

間違い6:対数関数の大小比較で、底が1より小さいときも「真数が大きいほど値も大きい」と思い込む

よくある誤答例

$\log_{1/3}2$ と $\log_{1/3}5$ の大小を比較する問題で、

「$2<5$ だから $\log_{1/3}2 < \log_{1/3}5$」

のように誤答してしまう。

なぜ間違いなのか

これも、指数関数のときと同じ種類の間違いです。「真数が大きいほど対数の値も大きい」という関係が成り立つのは、底が $1$ より大きい(対数関数が単調増加である)ときだけです。今回の底 $\dfrac13$ は $1$ より小さいので、対数関数 $y=\log_{1/3}x$ は単調減少であり、真数が大きいほど値はむしろ小さくなります。

正しい考え方

底が $0

$2<5 \quad\Rightarrow\quad \log_{1/3}2 > \log_{1/3}5$

したがって、正しくは $\log_{1/3}2 > \log_{1/3}5$ です。指数関数と対数関数のどちらでも、「底が1より小さいときは向きが反転する」という点を、セットで覚えておきましょう。

間違い7:対数方程式で、真数条件を確認せずに解を答えてしまう

よくある誤答例

方程式 $\log_3(x-1)+\log_3(x-5)=1$ を解く問題で、真数条件を確認せずに機械的に計算を進め、出てきた解を両方とも答えにしてしまう。

なぜ間違いなのか

この方程式では、真数が $x-1$ と $x-5$ の2つあるので、どちらも正の数でなければいけません。$x-1>0$ より $x>1$、$x-5>0$ より $x>5$ なので、両方を満たす真数条件は $x>5$ です。この条件を確認しないまま計算を進めると、方程式から出てきた2つの解のうち、真数条件を満たさない方まで答えに含めてしまう危険があります。

実際に計算すると、左辺を積の法則でまとめて $\log_3\big[(x-1)(x-5)\big]=1$、つまり $(x-1)(x-5)=3$ となり、展開して整理すると $x^2-6x+2=0$ という2次方程式が得られます。解の公式を使うと $x=3\pm\sqrt7$ となり、$\sqrt7\approx2.65$ なので、$x\approx5.65$ と $x\approx0.35$ の2つの値が出てきます。真数条件 $x>5$ を確認すると、$x=3+\sqrt7\ (\approx5.65)$ はこれを満たしますが、$x=3-\sqrt7\ (\approx0.35)$ は満たしません。

正しい考え方

対数方程式では、計算を始める前に真数条件を書き出し、計算の最後に、求めた解がその条件を満たすかどうかを必ず確認します。今回の場合、真数条件 $x>5$ を満たすのは $x=3+\sqrt7$ だけなので、

$x = 3+\sqrt7$

が正しい(唯一の)答えです。$x=3-\sqrt7$ は、方程式の見た目の上では出てくる数ですが、真数が負になってしまうため、解として採用してはいけません。

間違い8:$\log_a x^2=2\log_a x$ が、$x$が負のときも成り立つと思い込む

よくある誤答例

方程式 $\log_2(x^2)=4$ を解く問題で、累乗の法則を無条件に使い、

$\log_2(x^2) = 2\log_2x \quad\Rightarrow\quad 2\log_2x=4 \quad\Rightarrow\quad \log_2x=2 \quad\Rightarrow\quad x=4$

として、$x=4$ だけを答えにしてしまう($x=-4$ を見落とす)。

なぜ間違いなのか

累乗の法則 $\log_aM^k=k\log_aM$ が成り立つのは、真数 $M$ が正の数のときです。今回、$\log_2(x^2)$ の真数は $x^2$ であり、$x$ がどんな実数(正でも負でも)であっても $x^2>0$($x\neq0$のとき)となるので、$\log_2(x^2)$ 自体はいつでも定義できます。しかし、変形後の $2\log_2x$ の方は、$\log_2x$ という部分があるため、$x$ 自身が正の数でなければ定義できません。つまり、$x$ が負の数のときには、$\log_2(x^2)=2\log_2x$ という変形そのものが使えないのです。誤答例のように機械的にこの変形をしてしまうと、$x$ が負である可能性のある解を、最初から計算の外に締め出してしまいます。

正しい考え方

真数 $x^2$ をそのまま使って、対数の定義から直接解きます。

$\log_2(x^2)=4 \quad\Rightarrow\quad x^2=2^4=16$

両辺の平方根をとります。

$x=\pm4$

真数条件を確認すると、必要なのは $x^2>0$、つまり $x\neq0$ だけです。$x=4$ も $x=-4$ も、$x^2=16>0$ を満たすので、どちらも正しい解です。

したがって、正しい答えは $x=4$ または $x=-4$ です。真数の中に文字の2乗が入っている形を見たら、安易に累乗の法則で対数の外に指数を出す前に、その文字自身の符号に制限がないかを確認するようにしましょう。

間違い9:桁数を求める問題で、$\log_{10}N$ の整数部分をそのまま桁数だと思い込む

よくある誤答例

$500$ の桁数を、常用対数を使って確認する問題で、

$\log_{10}500 = \log_{10}5+\log_{10}100 = 0.699+2=2.699$

「整数部分が $2$ だから、$500$ は $2$桁の数」

のように誤答してしまう。

なぜ間違いなのか

$500$ は明らかに3桁の数($5,0,0$ の3つの数字が並んでいます)なので、この誤答はすぐにおかしいと分かります。原因は、「整数部分 $k$」と「桁数」を、そのままイコールで結んでしまったことです。正しい関係は、$k\leqq\log_{10}N

正しい考え方

$\log_{10}500\approx2.699$ の整数部分は $k=2$ です。桁数は、この $k$ に $1$ を足した $k+1=3$ 桁になります。

$500 \to \log_{10}500\approx2.699 \to k=2 \to \text{桁数}=k+1=3$

実際に $500$ を見ても、確かに3桁の数になっています。「整数部分」と「桁数」の間には、必ず「$+1$」の差があることを、公式として覚えておきましょう。