数学II / いろいろな式
分数式の計算
要点整理
これまで数学IIの「いろいろな式」単元で、「整式の除法」を使って整式(文字の多項式)どうしの割り算を学んできました。ここでは、その考え方を土台にして、分数の形をした式――分数式の計算ができるようになることが目標です。
分数式とは何か
分数式とは、2つの整式 $A$, $B$(ただし $B$ は $0$ でない整式)を使って、
$\frac{A}{B}$
の形に表される式のことです。例えば、
$\frac{x+1}{x-2}, \qquad \frac{x^2-1}{x^2+3x+2}$
はどちらも分数式です。中学校で習った数だけの分数と考え方はまったく同じで、分子・分母に文字が混ざっているというだけです。
ここで大事な注意点が1つあります。分数式では、分母を $0$ にしてしまう文字の値を代入することはできません。例えば $\frac{x+1}{x-2}$ であれば、$x=2$ を代入すると分母が $0$ になってしまうので、$x=2$ は考えないことにします。この教材では、以降「分母が $0$ にならない範囲で考える」という前提を省略せずに意識しておいてください(答案では、特に指示がなければ毎回書かなくても問題ありません)。
約分
分数式の分子と分母をよく見ると、共通の因数(掛け算の形で共通して含まれている式)が隠れていることがあります。これを見つけて割り、式を簡単にする操作を約分といいます。数の分数で $\frac{6}{8}=\frac{2\times3}{2\times4}=\frac{3}{4}$ とするのと同じ発想です。
分数式の約分の手順は次の通りです。
- 分子を因数分解する
- 分母を因数分解する
- 分子と分母に共通する因数を見つけて、その因数で分子・分母を割る
例えば、
$\frac{x^2-1}{x^2+3x+2}$
は、分子を $x^2-1=(x+1)(x-1)$、分母を $x^2+3x+2=(x+1)(x+2)$ と因数分解すると、
$\frac{x^2-1}{x^2+3x+2}=\frac{(x+1)(x-1)}{(x+1)(x+2)}=\frac{x-1}{x+2}$
のように簡単になります。「因数分解してから約分する」という順番が命です。展開されたままの形では、共通因数が見えないからです。
乗法・除法
分数式どうしの掛け算・割り算も、数の分数とまったく同じルールで計算します。
$\frac{A}{B}\times\frac{C}{D}=\frac{AC}{BD}$
$\frac{A}{B}\div\frac{C}{D}=\frac{A}{B}\times\frac{D}{C}=\frac{AD}{BC}$
割り算は「割る式の分子と分母を入れ替えた式(これを逆数といいます)を掛ける形に直す」というのがポイントです。分数式の場合も、掛け算する前にすべて因数分解しておき、掛け合わせる前に約分できる因数を消しておくと計算が楽になります。
加法・減法
分数式の足し算・引き算は、分母が同じときは分子どうしをそのまま足し引きするだけです。
$\frac{A}{C}+\frac{B}{C}=\frac{A+B}{C}$
しかし分母が異なるときは、まず分母をそろえる必要があります。この「分母をそろえる」操作を通分といいます。分数式の通分では、それぞれの分母を因数分解してから、すべての因数を含む式を新しい分母にします。
$\frac{A}{B}+\frac{C}{D}=\frac{AD}{BD}+\frac{BC}{BD}=\frac{AD+BC}{BD}$
分母が複雑な式のときほど、先に因数分解してから通分することが計算ミスを防ぐコツです。
以上の「約分」「乗除」「加減」の3つの操作を組み合わせれば、どんな分数式の計算にも対応できるようになります。次の例題で、実際に手を動かしながら確認していきましょう。
例題
例題1(基本)
問題 次の分数式を約分しなさい。
$\frac{x^2-9}{x^2+5x+6}$
解答・解説を見る
分子と分母をそれぞれ因数分解します。
ステップ1: 分子を因数分解する
$x^2-9$ は「2乗の差」の形をしています。公式 $a^2-b^2=(a+b)(a-b)$ を使うと、
$x^2-9=x^2-3^2=(x+3)(x-3)$
ステップ2: 分母を因数分解する
$x^2+5x+6$ は、足して $5$、掛けて $6$ になる2つの数を探します。$2+3=5$、$2\times3=6$ なので、
$x^2+5x+6=(x+2)(x+3)$
ステップ3: 因数分解した形で分数式を書き直す
$\frac{x^2-9}{x^2+5x+6}=\frac{(x+3)(x-3)}{(x+2)(x+3)}$
ステップ4: 共通因数 $(x+3)$ で約分する
分子にも分母にも $(x+3)$ が含まれているので、これを消すことができます(ただし $x\neq-3$)。
$\frac{(x+3)(x-3)}{(x+2)(x+3)}=\frac{x-3}{x+2}$
以上より、答えは
$\frac{x-3}{x+2}$
です。
例題2(標準)
問題 次の計算をしなさい。
$\frac{x^2-4}{x^2-1}\div\frac{x^2+x-6}{x^2+2x-3}$
解答・解説を見る
ステップ1: 割り算を掛け算に直す
分数式の割り算は、割る式(後ろの分数式)の分子と分母を入れ替えた「逆数」を掛ける形に直します。
$\frac{x^2-4}{x^2-1}\div\frac{x^2+x-6}{x^2+2x-3}=\frac{x^2-4}{x^2-1}\times\frac{x^2+2x-3}{x^2+x-6}$
ステップ2: それぞれの式を因数分解する
4つの式をひとつずつ因数分解します。
$x^2-4$ は2乗の差なので、
$x^2-4=(x+2)(x-2)$
$x^2-1$ も2乗の差なので、
$x^2-1=(x+1)(x-1)$
$x^2+2x-3$ は、足して $2$、掛けて $-3$ になる2数($3$ と $-1$)を探して、
$x^2+2x-3=(x+3)(x-1)$
$x^2+x-6$ は、足して $1$、掛けて $-6$ になる2数($3$ と $-2$)を探して、
$x^2+x-6=(x+3)(x-2)$
ステップ3: 因数分解した形に書き直す
$\frac{(x+2)(x-2)}{(x+1)(x-1)}\times\frac{(x+3)(x-1)}{(x+3)(x-2)}$
ステップ4: 分子どうし・分母どうしを1つにまとめる
掛け算なので、分子は分子どうし、分母は分母どうしを掛け合わせます。
$\frac{(x+2)(x-2)(x+3)(x-1)}{(x+1)(x-1)(x+3)(x-2)}$
ステップ5: 共通因数を約分する
分子にも分母にも $(x-2)$、$(x+3)$、$(x-1)$ が共通して含まれているので、これらを消すことができます。
$\frac{(x+2)(x-2)(x+3)(x-1)}{(x+1)(x-1)(x+3)(x-2)}=\frac{x+2}{x+1}$
以上より、答えは
$\frac{x+2}{x+1}$
です。
例題3(応用)
問題 次の式を計算し、簡単にしなさい。
$\frac{2}{x^2-1}+\frac{1}{x^2-3x+2}$
解答・解説を見る
ステップ1: それぞれの分母を因数分解する
$x^2-1$ は2乗の差なので、
$x^2-1=(x+1)(x-1)$
$x^2-3x+2$ は、足して $-3$、掛けて $2$ になる2数($-1$ と $-2$)を探して、
$x^2-3x+2=(x-1)(x-2)$
ステップ2: 因数分解した形に書き直す
$\frac{2}{(x+1)(x-1)}+\frac{1}{(x-1)(x-2)}$
ステップ3: 通分するための共通の分母を決める
1つ目の分母には $(x+1)$ と $(x-1)$、2つ目の分母には $(x-1)$ と $(x-2)$ が含まれています。両方の分母に現れるすべての因数を、ちょうど1回ずつ含む式が共通の分母になるので、
$(x+1)(x-1)(x-2)$
を共通の分母にします。
ステップ4: それぞれの分数式の分母をそろえる
1つ目の分数式は、分母に $(x-2)$ が足りないので、分子と分母の両方に $(x-2)$ を掛けます。
$\frac{2}{(x+1)(x-1)}=\frac{2(x-2)}{(x+1)(x-1)(x-2)}$
2つ目の分数式は、分母に $(x+1)$ が足りないので、分子と分母の両方に $(x+1)$ を掛けます。
$\frac{1}{(x-1)(x-2)}=\frac{x+1}{(x+1)(x-1)(x-2)}$
ステップ5: 分母がそろったので、分子どうしを足す
$\frac{2(x-2)}{(x+1)(x-1)(x-2)}+\frac{x+1}{(x+1)(x-1)(x-2)}=\frac{2(x-2)+(x+1)}{(x+1)(x-1)(x-2)}$
ステップ6: 分子を展開して整理する
分子の $2(x-2)+(x+1)$ を計算します。まず $2(x-2)$ を展開すると、
$2(x-2)=2x-4$
これに $(x+1)$ を足すと、
$2x-4+x+1=3x-3$
よって、
$\frac{2(x-2)+(x+1)}{(x+1)(x-1)(x-2)}=\frac{3x-3}{(x+1)(x-1)(x-2)}$
ステップ7: 分子を因数分解して、もう一度約分できないか確認する
$3x-3=3(x-1)$ と因数分解できます。
$\frac{3x-3}{(x+1)(x-1)(x-2)}=\frac{3(x-1)}{(x+1)(x-1)(x-2)}$
分子にも分母にも $(x-1)$ が共通しているので、約分します。
$\frac{3(x-1)}{(x+1)(x-1)(x-2)}=\frac{3}{(x+1)(x-2)}$
以上より、答えは
$\frac{3}{(x+1)(x-2)}$
です。$(x+1)(x-2)$ を展開すれば $\frac{3}{x^2-x-2}$ と書いても構いません。
練習問題
問題 次の計算をしなさい。
$\frac{x^2-5x+6}{x^2-9}\times\frac{x+3}{x-2}$
答え
$1$
(手順:$x^2-5x+6=(x-2)(x-3)$、$x^2-9=(x+3)(x-3)$ と因数分解してから掛け合わせると、
$\frac{(x-2)(x-3)}{(x+3)(x-3)}\times\frac{x+3}{x-2}=\frac{(x-2)(x-3)(x+3)}{(x+3)(x-3)(x-2)}=1$
となり、分子と分母がまったく同じ式(の積)になるため、答えは $1$ です。)