数学I / 図形と計量
正弦定理
要点整理
前の単元では、$0^\circ$から$180^\circ$までの角に対して$\sin\theta$、$\cos\theta$、$\tan\theta$を定義しました。ここからは、その三角比を使って実際の三角形の辺の長さや角の大きさを求めていきます。その最初の道具になるのが「正弦定理」です。
三角形の頂点と辺の表し方(準備)
三角形の頂点を$A$、$B$、$C$とします。このとき、それぞれの頂点に向かい合う辺(対辺)の長さを、頂点の名前に対応する小文字で表す約束があります。
- 頂点$A$の対辺(辺$BC$)の長さを$a$
- 頂点$B$の対辺(辺$CA$)の長さを$b$
- 頂点$C$の対辺(辺$AB$)の長さを$c$
また、頂点$A$における三角形の内角(角$BAC$)の大きさを、単に「角$A$」と呼び、記号$A$で表します。角$B$、角$C$についても同じです。この表し方は、これから学ぶ正弦定理・余弦定理などで共通して使う基本ルールなので、ここでしっかり押さえておきましょう。
正弦定理とは
三角形$ABC$の3つの頂点は、すべてただ1つの円周上に乗ります。この円のことを、その三角形の外接円といい、外接円の半径を$R$と表します。
正弦定理は、この外接円の半径$R$と、三角形の辺の長さ・角の大きさとの間に成り立つ、次の関係式です。
$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R$
言葉で説明すると、「辺の長さを、その対角の$\sin$の値で割った値は、$A$についても$B$についても$C$についても同じ値になり、しかもその値は外接円の直径$2R$にちょうど等しい」ということです。辺と角の大きさは一見バラバラに変わっていくように見えますが、実は「外接円」という1つの円を通じてつながっているのです。
直角三角形の場合で確かめてみよう
なぜこのような関係が成り立つのか、まずは一番わかりやすい場合、つまり角$C$が直角($C=90^\circ$)であるときで確かめてみます。
中学校の図形の学習で、「直角三角形の外接円は、直角の対辺(斜辺)を直径とする円になる」という性質を学んでいます。今の場合、角$C=90^\circ$の対辺は$c$ですから、この辺$c$が外接円の直径になります。式で書くと、
$c = 2R$
です。
一方で、角$C=90^\circ$なので三角形$ABC$自体が直角三角形になっています。直角三角形における三角比の定義にもどると、角$A$から見て、斜辺は$c$、角$A$の対辺は$a$ですから、
$\sin A = \frac{a}{c}$
が成り立ちます。この式の両辺に$c$を掛けると、
$c \sin A = a$
となります。さらに両辺を$\sin A$で割ると、
$c = \frac{a}{\sin A}$
が得られます。先ほど$c=2R$とわかっていたので、これを代入すると、
$\frac{a}{\sin A} = 2R$
となり、正弦定理の1つ目の等式が確かめられました。角$B$についても、$\sin B = \dfrac{b}{c}$から全く同じ手順で$\dfrac{b}{\sin B}=2R$が示せます。角$C$については$\sin C = \sin 90^\circ = 1$なので、$\dfrac{c}{\sin C} = \dfrac{c}{1} = c = 2R$となり、これもきちんと成り立っています。
角$C$が直角でない一般の三角形(鋭角三角形や鈍角三角形)についても、外接円の性質を使うことで同じ結論が成り立つことが知られています。ここでは結果を認めて、この先は実際の使い方を練習していきましょう。
正弦定理の使いどころ
正弦定理が活躍する場面は、大きく分けて次の2パターンです。
パターン1:2つの角と1つの辺がわかっているとき → 残りの辺を求める
たとえば角$A$、角$B$、辺$a$がわかっているとします。正弦定理より、
$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B}$
が成り立ちます。この式の両辺に$\sin B$を掛けると、辺$b$がすぐに求められます。
$b = \frac{a \sin B}{\sin A}$
パターン2:2つの辺と、そのうち1つの辺の対角がわかっているとき → もう一方の辺の対角を求める
たとえば辺$a$、辺$b$、角$A$(辺$a$の対角)がわかっているとします。正弦定理より、
$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B}$
が成り立ちます。この式の両辺に$\sin B$を掛けると、
$\frac{a\sin B}{\sin A} = b$
さらに両辺に$\sin A$を掛けると、
$a\sin B = b\sin A$
最後に両辺を$a$で割ると、角$B$の$\sin$の値が求められます。
$\sin B = \frac{b\sin A}{a}$
ただし、ここで注意が必要です。$0^\circ
外接円の半径を求める
正弦定理の式$\dfrac{a}{\sin A}=2R$の両辺を$2$で割ると、
$R = \frac{a}{2\sin A}$
となります。「辺とその対角」の組が1組さえわかれば、他の辺や角の値を求めなくても、外接円の半径をすぐに計算できます。
例題
例題1(基本)
問題 三角形$ABC$において、$A=30^\circ$、$B=45^\circ$、$a=5$のとき、辺$b$の長さを求めなさい。
解答・解説を見る
手順1:正弦定理の式を立てる
角$A$とその対辺$a$、角$B$とその対辺$b$がわかっているので、正弦定理
$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B}$
に、$a=5$、$A=30^\circ$、$B=45^\circ$を代入します。
$\frac{5}{\sin 30^\circ} = \frac{b}{\sin 45^\circ}$
手順2:bについて解く
両辺に$\sin 45^\circ$を掛けると、
$b = \frac{5}{\sin 30^\circ} \times \sin 45^\circ = \frac{5 \sin 45^\circ}{\sin 30^\circ}$
手順3:sinの値を代入して計算する
$\sin 30^\circ = \dfrac{1}{2}$、$\sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$ なので、代入すると、
$b = \frac{5 \times \dfrac{\sqrt{2}}{2}}{\dfrac{1}{2}}$
これは$\dfrac{\sqrt2}{2}$を$\dfrac12$で割ってから$5$倍する計算です。割り算は逆数のかけ算に直せるので、
$\frac{\sqrt{2}}{2} \div \frac{1}{2} = \frac{\sqrt{2}}{2} \times \frac{2}{1} = \sqrt{2}$
よって、
$b = 5 \times \sqrt{2} = 5\sqrt{2}$
答え:$b = 5\sqrt{2}$
例題2(標準)
問題 三角形$ABC$において、$a=6$、$b=3\sqrt{2}$、$A=45^\circ$のとき、角$B$と角$C$の大きさを求めなさい。
解答・解説を見る
手順1:正弦定理の式を立てる
辺$a$とその対角$A$、辺$b$とその対角$B$に注目して、正弦定理
$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B}$
に、$a=6$、$b=3\sqrt2$、$A=45^\circ$を代入します。
$\frac{6}{\sin 45^\circ} = \frac{3\sqrt{2}}{\sin B}$
手順2:両辺の分母を払う
両辺に$\sin B$を掛けると、
$\frac{6\sin B}{\sin 45^\circ} = 3\sqrt2$
さらに両辺に$\sin 45^\circ$を掛けると、
$6\sin B = 3\sqrt2 \sin 45^\circ$
手順3:sin Bについて解く
両辺を$6$で割ると、
$\sin B = \frac{3\sqrt2 \sin 45^\circ}{6}$
手順4:sin45°の値を代入して計算する
$\sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt2}{2}$なので、
$\sin B = \frac{3\sqrt2 \times \dfrac{\sqrt2}{2}}{6}$
分子の$3\sqrt2 \times \dfrac{\sqrt2}{2}$を先に計算します。$\sqrt2\times\sqrt2=2$なので、
$3\sqrt2 \times \frac{\sqrt2}{2} = \frac{3\times2}{2} = 3$
よって、
$\sin B = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}$
手順5:sin B = 1/2 となる角Bの候補をすべて挙げる
$0^\circ
手順6:三角形として成り立つ方を選ぶ
三角形の内角の和は$180^\circ$なので、$A+B<180^\circ$でなければなりません。$A=45^\circ$なので、それぞれの候補を確認します。
- $B=30^\circ$のとき:$A+B=45^\circ+30^\circ=75^\circ<180^\circ$ → 成り立つ
- $B=150^\circ$のとき:$A+B=45^\circ+150^\circ=195^\circ$ → $180^\circ$を超えてしまい、三角形として成り立たない
したがって$B=150^\circ$は不適で、$B=30^\circ$に決まります。
手順7:角Cを求める
三角形の内角の和が$180^\circ$であることから、
$C = 180^\circ - A - B = 180^\circ - 45^\circ - 30^\circ = 105^\circ$
答え:$B=30^\circ$、$C=105^\circ$
例題3(応用)
問題 三角形$ABC$において、$a=6$、$b=6\sqrt2$、$A=30^\circ$のとき、考えられる角$B$の大きさをすべて求めなさい。また、そのときの外接円の半径$R$を求めなさい。
解答・解説を見る
手順1:正弦定理の式を立てる
正弦定理$\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}$に、$a=6$、$b=6\sqrt2$、$A=30^\circ$を代入します。
$\frac{6}{\sin 30^\circ} = \frac{6\sqrt2}{\sin B}$
手順2:両辺の分母を払う
両辺に$\sin B$を掛けると、
$\frac{6\sin B}{\sin 30^\circ} = 6\sqrt2$
さらに両辺に$\sin 30^\circ$を掛けると、
$6\sin B = 6\sqrt2 \sin 30^\circ$
手順3:sin Bについて解く
両辺を$6$で割ると、
$\sin B = \sqrt2 \sin 30^\circ$
手順4:sin30°の値を代入して計算する
$\sin 30^\circ=\dfrac12$なので、
$\sin B = \sqrt2 \times \frac12 = \frac{\sqrt2}{2}$
手順5:sin B = √2/2 となる角Bの候補をすべて挙げる
$0^\circ
手順6:どちらも三角形として成り立つか確認する
$A=30^\circ$なので、それぞれの場合に$A+B<180^\circ$になるか確認します。
- $B=45^\circ$のとき:$A+B=30^\circ+45^\circ=75^\circ<180^\circ$ → 成り立つ
- $B=135^\circ$のとき:$A+B=30^\circ+135^\circ=165^\circ<180^\circ$ → こちらも成り立つ
例題2とは違い、今回はどちらの場合も$180^\circ$を超えません。つまり、2通りとも三角形として成り立ちます。これが「正弦定理の使いどころ」で触れた、辺の長さの関係によっては三角形が2つ考えられる場合にあたります。
参考として、角$C$もそれぞれ求めておくと、
- $B=45^\circ$のとき:$C=180^\circ-30^\circ-45^\circ=105^\circ$
- $B=135^\circ$のとき:$C=180^\circ-30^\circ-135^\circ=15^\circ$
となり、条件を満たす三角形$ABC$が2種類存在することがわかります。
手順7:外接円の半径Rを求める
正弦定理の式$\dfrac{a}{\sin A}=2R$を使います。$a=6$、$A=30^\circ$なので、
$2R = \frac{a}{\sin A} = \frac{6}{\sin 30^\circ} = \frac{6}{\dfrac12} = 6\times2=12$
両辺を$2$で割ると、
$R = 6$
$R$の値は辺$a$とその対角$A$だけで決まる値なので、$B=45^\circ$の三角形でも$B=135^\circ$の三角形でも、外接円の半径は同じ$R=6$になります。
答え:$B=45^\circ$または$B=135^\circ$(どちらも三角形として成り立つ)、外接円の半径$R=6$
練習問題
問題 三角形$ABC$において、$B=60^\circ$、$b=2\sqrt3$のとき、この三角形の外接円の半径$R$を求めなさい。
答え
正弦定理$\dfrac{b}{\sin B}=2R$に、$b=2\sqrt3$、$B=60^\circ$、$\sin 60^\circ=\dfrac{\sqrt3}{2}$を代入すると、
$2R = \frac{2\sqrt3}{\sin 60^\circ} = \frac{2\sqrt3}{\dfrac{\sqrt3}{2}} = 2\sqrt3\times\frac{2}{\sqrt3} = 4$
両辺を$2$で割って、
$R = 2$
答え:$R=2$