数学A / 図形の性質
三角形の辺と角の関係
要点整理
数学A「図形の性質」の最初のテーマとして、三角形の「辺の長さ」と「角の大きさ」の間にどのような関係があるかを学びます。中学校で習った「三角形の内角の和は $180^{\circ}$ である」という性質を土台にして、話を進めていきます。
言葉の準備:対辺と外角
三角形ABCにおいて、ある角に向かい合っている辺のことを、その角の対辺と呼びます。頂点Aを含まない辺BCが、角Aの対辺です。同じように、辺CAは角Bの対辺、辺ABは角Cの対辺です。この「どの辺がどの角の対辺なのか」という対応関係が、このページ全体でとても重要になります。
また、三角形の1つの頂点で、内角ととなり合い、辺を延長してできる角のことを外角と呼びます。例えば、辺BCを点Cの先まで延長して点Eをとったとき、角ACE(角Aと角Bの和ではなく、角Cのとなりにできる角)が、頂点Cにおける外角です。
外角には、次の性質があります。
外角の性質:三角形の1つの外角は、それととなり合わない2つの内角の和に等しい。
この性質は、三角形の内角の和の式から、次のように導くことができます。
- 三角形ABCの内角の和は $180^{\circ}$ なので、$\angle A + \angle B + \angle C = 180^{\circ}$ が成り立ちます。
- 辺BCを点Cの先まで延長して点Eをとると、点Cを通る直線BE上で、角ACBと角ACEは一直線をなす2つの角なので、$\angle ACB + \angle ACE = 180^{\circ}$ が成り立ちます。ここで $\angle ACB = \angle C$ です。
- 1と2はどちらも右辺が $180^{\circ}$ なので、$\angle A + \angle B + \angle C = \angle C + \angle ACE$ が成り立ちます。
- 両辺から $\angle C$ を引くと、$\angle A + \angle B = \angle ACE$ となります。
これで、頂点Cにおける外角 $\angle ACE$ が、となり合わない2つの内角の和 $\angle A + \angle B$ に等しいことが示せました。この外角の性質は、あとで学ぶ「辺と角の大小関係」の証明でも使う、とても大切な道具です。
辺と角の大小関係
この単元でいちばん重要な定理が、次の「辺と角の大小関係」です。
定理(辺と角の大小関係):三角形ABCにおいて、
$AB > AC \iff \angle C > \angle B$
つまり、「2辺の長さを比べたとき、長い方の辺の対角は、短い方の辺の対角より大きい」ということです。上の式の $\iff$ という記号は「同値である」、つまり「左側が成り立つならば右側も成り立ち、右側が成り立つならば左側も成り立つ」という意味の記号です。
なぜこの関係が成り立つのか、順を追って確認しましょう。まず「$AB > AC$ ならば $\angle C > \angle B$」の向きを証明します。
証明
- 辺AB上に、$AD = AC$ となるような点Dをとります。$AB > AC$ なので、このような点Dは辺ABの内部(AとBの間)に必ずとることができます。
- こうしてできた三角形ACDは、$AD = AC$ の二等辺三角形です。二等辺三角形の底角(底辺の両端の角)は等しいという中学校で習った性質から、$\angle ACD = \angle ADC$ が成り立ちます。……①
- 次に、$\angle ADC$ に注目します。点A、D、Bは一直線上にあるので、$\angle ADC$ は三角形DBCにとっての外角になっています(内角である $\angle BDC$ ととなり合う外角です)。外角の性質より、$\angle ADC = \angle DBC + \angle DCB$ が成り立ちます。
- 点Dは辺AB上の点なので、$\angle DBC = \angle ABC = \angle B$ です。また、$\angle DCB$ は三角形DBCの内角の1つなので、$\angle DCB > 0^{\circ}$ です。したがって、$\angle ADC = \angle B + \angle DCB > \angle B$ が成り立ちます。……②
- ①と②を合わせると、$\angle ACD = \angle ADC > \angle B$ となるので、$\angle ACD > \angle B$ です。……③
- さらに、点Dは辺AB上の点なので、半直線CDは角ACBの内部を通ります。そのため、$\angle ACB = \angle ACD + \angle DCB$ が成り立ちます。$\angle DCB > 0^{\circ}$ なので、$\angle ACB > \angle ACD$ です。……④
- ③と④を合わせると、$\angle ACB > \angle ACD > \angle B$ となるので、$\angle ACB > \angle B$、つまり $\angle C > \angle B$ が示せました。
これで「$AB > AC$ ならば $\angle C > \angle B$」が証明できました。
続いて、逆向きの「$\angle C > \angle B$ ならば $AB > AC$」を、背理法(結論を否定して矛盾を導く証明方法)で確認します。
証明(逆向き)
$\angle C > \angle B$ が成り立っているとして、結論を否定し、$AB \leqq AC$ であると仮定します。
- $AB = AC$ の場合:二等辺三角形の性質より $\angle C = \angle B$ となり、これは仮定の $\angle C > \angle B$ に矛盾します。
- $AB < AC$ の場合:さきほど証明した内容(長い辺の対角の方が大きい)を $AC > AB$ に当てはめると $\angle B > \angle C$ となり、これも仮定の $\angle C > \angle B$ に矛盾します。
どちらの場合も矛盾が起きるので、$AB \leqq AC$ であると仮定したことが誤りだったことになります。したがって、$AB > AC$ でなければなりません。
この2つの証明によって、「辺の大小」と「その対角の大小」は必ず一致することが確認できました。
三角形の成立条件
もう1つ大切なのが、「3本の線分の長さがどんな値であれば、実際に三角形を作ることができるか」という条件です。
3辺の長さが $a$、$b$、$c$ である三角形が存在するための条件は、次の3つの不等式がすべて成り立つことです。
$a+b>c, \quad b+c>a, \quad c+a>b$
これは、「三角形の2辺の長さの和は、残りの1辺の長さより大きい」という条件を、3通りの組み合わせすべてについて書いたものです。直感的に言うと、2辺の長さの和が残りの1辺より短い(または等しい)と、その2辺は残りの1辺の両端まで届かず(または一直線に重なってしまい)、三角形の形にならないということです。
実は、この3つの不等式のうち、最も長い辺についての不等式だけを確かめれば十分です。理由を確認しましょう。いま、$c$ が3辺の中で最も長い辺だとします(つまり $c \geqq a$ かつ $c \geqq b$)。
- $b+c>a$ について:$c \geqq a$ かつ $b>0$ なので、$b+c > 0+c \geqq a$ となり、この不等式は自動的に成り立ちます。
- $c+a>b$ について:同じように $c \geqq b$ かつ $a>0$ なので、$c+a > 0+c \geqq b$ となり、これも自動的に成り立ちます。
つまり、確かめる必要があるのは $a+b>c$(最も長い辺 $c$ が、残り2辺の和より短い)という条件だけなのです。
この条件は、次のように1つの不等式にまとめて書くこともできます。3辺を $a$、$b$、$c$ とするとき、
$|b-c| < a < b+c$
という形です。この式の意味を確認しておきましょう。右側の $a < b+c$ は、いま説明した「2辺の和は残りの1辺より大きい」という条件そのものです。左側の $|b-c| < a$ は、$a > b-c$ と $a > c-b$ という2つの条件をまとめたものです。これらはそれぞれ、$b < a+c$、$c < a+b$ という不等式を移項したものになっています。つまり、この1本の不等式 $|b-c| < a < b+c$ の中に、3つの三角形の成立条件がすべて詰め込まれているというわけです。
例題
例題1(基本)
問題
三角形ABCにおいて、$AB=5$、$BC=8$、$CA=6$ であるとき、最も大きい角と最も小さい角を、それぞれ答えなさい。
解答・解説を見る
まず、それぞれの辺がどの角の対辺になっているかを整理します。
- 辺ABは、頂点Cを含まないので、角Cの対辺です。長さは $AB=5$。
- 辺BCは、頂点Aを含まないので、角Aの対辺です。長さは $BC=8$。
- 辺CAは、頂点Bを含まないので、角Bの対辺です。長さは $CA=6$。
3辺の長さを比べると、
$AB=5 < CA=6 < BC=8$
です。「辺と角の大小関係」の定理より、辺の大小関係とその対角の大小関係は一致するので、対辺の長さが小さい順に、対応する角も小さい順に並びます。したがって、
$\angle C < \angle B < \angle A$
が成り立ちます。
最も大きい角は、最も長い辺BCの対角である $\angle A$ です。 最も小さい角は、最も短い辺ABの対角である $\angle C$ です。
例題2(標準)
問題
三角形ABCの3辺の長さが、$AB=x$、$BC=x+3$、$CA=2x-1$ で表されるとき、$x$ のとりうる値の範囲を求めなさい。
解答・解説を見る
三角形が存在するためには、まず3辺の長さがすべて正の数である必要があります。
$x>0, \quad x+3>0, \quad 2x-1>0$
このうち $x+3>0$ は $x>0$ から自動的に成り立ちます。$2x-1>0$ を解くと $x>\dfrac{1}{2}$ です。
次に、三角形の成立条件である3つの不等式を、それぞれ確認します。
(i) $AB+BC>CA$ を確認する
$x+(x+3) > 2x-1$
$2x+3 > 2x-1$
左右から $2x$ を引くと、
$3 > -1$
となり、これは $x$ の値に関係なく常に成り立ちます。
(ii) $BC+CA>AB$ を確認する
$(x+3)+(2x-1) > x$
$3x+2 > x$
左右から $x$ を引くと、
$2x+2>0$
これを解くと $x>-1$ となり、$x>0$ という条件から自動的に成り立ちます。
(iii) $CA+AB>BC$ を確認する
$(2x-1)+x > x+3$
$3x-1 > x+3$
左右から $x$ を引くと、
$2x-1>3$
さらに両辺に1を加えると、
$2x>4$
両辺を2で割ると、
$x>2$
すべての条件をまとめる
これまでに出てきた条件は、$x>0$、$x>\dfrac{1}{2}$、$x>-1$、$x>2$ の4つです。このうち、最も厳しい(範囲が最も狭い)条件は $x>2$ なので、これがそのまま答えになります。
$x>2$
例題3(応用)
問題
三角形ABCの内部に点Pをとる。このとき、
$BP+PC < AB+AC$
が成り立つことを証明しなさい。
解答・解説を見る
点Pは三角形の内部にある点なので、頂点Bから点Pを通る半直線を延長していくと、対辺であるAC上のある点Dで交わります。この点Dを使って、証明を進めます。半直線の延長でできた線分BD上では、点Pは点Bと点Dの間にあるので、
$BD = BP+PD$
という関係が成り立ちます。
ステップ1:三角形ABDに三角形の成立条件を使う
三角形ABDにおいて、2辺の和は残りの1辺より大きいという三角形の成立条件より、
$AB+AD > BD$
ここで、$BD=BP+PD$ を代入すると、
$AB+AD > BP+PD \quad \cdots ①$
ステップ2:三角形PDCに三角形の成立条件を使う
同じように、三角形PDCにおいても、2辺の和は残りの1辺より大きいので、
$PD+DC > PC \quad \cdots ②$
ステップ3:①と②を辺々足し合わせる
①の両辺と②の両辺を、それぞれ足し合わせます。
$(AB+AD)+(PD+DC) > (BP+PD)+PC$
左辺を整理すると $AB+AD+PD+DC$、右辺を整理すると $BP+PD+PC$ になるので、
$AB+AD+PD+DC > BP+PD+PC$
ステップ4:両辺からPDを引く
両辺に共通して現れている $PD$ を、左辺と右辺の両方から引きます。
$AB+AD+DC > BP+PC$
ステップ5:AD+DCをACに置きかえる
点Dは辺AC上の点なので、$AD+DC=AC$ が成り立ちます。この関係を左辺に代入すると、
$AB+AC > BP+PC$
これは、証明したかった不等式
$BP+PC < AB+AC$
そのものです。よって、三角形の内部の点Pについて、この不等式が成り立つことが証明できました。
練習問題
問題
三角形ABCにおいて、$\angle A=70^{\circ}$、$\angle B=50^{\circ}$ であるとき、3辺AB、BC、CAの長さの大小関係を、不等号を用いて表しなさい。
答え
三角形の内角の和は $180^{\circ}$ なので、$\angle C=180^{\circ}-70^{\circ}-50^{\circ}=60^{\circ}$ です。
3つの角の大きさを比べると、$\angle B(50^{\circ}) < \angle C(60^{\circ}) < \angle A(70^{\circ})$ となります。
辺と角の大小関係より、角の大小関係と、その対辺の大小関係は一致します。$\angle B$ の対辺はCA、$\angle C$ の対辺はAB、$\angle A$ の対辺はBCなので、
$CA < AB < BC$