数学A / 場合の数と確率
集合の要素の個数
要点整理
この単元「場合の数と確率」の最初のテーマは、集合に含まれる要素の個数を求める方法です。すでに数学Iの「集合の基本(共通部分・和集合・補集合)」で、集合そのものの意味は学んでいますので、ここではその集合に「いくつ要素が入っているか」を数える計算に進みます。
要素の個数を表す記号
集合 $A$ に含まれる要素の個数を、$n(A)$ という記号で表します。たとえば $A = \{1, 2, 3, 4\}$ であれば、$A$ の要素は $1, 2, 3, 4$ の4個なので、$n(A) = 4$ です。
和集合の要素の個数(2つの集合の場合)
集合 $A$ と集合 $B$ について、$A$ にも $B$ にも属する要素の集合を共通部分といい $A \cap B$ と書き、$A$ か $B$ の少なくとも一方に属する要素の集合を和集合といい $A \cup B$ と書きます。
ここで $n(A \cup B)$ を求めるとき、単純に $n(A) + n(B)$ を計算してしまうと、共通部分 $A \cap B$ に属する要素を2回数えてしまいます。ベン図(集合を円で表した図)を思い浮かべると、$A$ の円の中の個数と $B$ の円の中の個数をそのまま足すと、2つの円が重なっている部分(共通部分)がちょうど2回分含まれてしまうのです。そこで、重なって数えすぎた分を1回だけ引く必要があります。これをまとめると、次の公式になります。
$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$
具体例で確認しましょう。$A = \{1, 2, 3, 4\}$、$B = \{3, 4, 5\}$ とします。
- $n(A) = 4$(要素は $1, 2, 3, 4$)
- $n(B) = 3$(要素は $3, 4, 5$)
- $A \cap B = \{3, 4\}$ なので $n(A \cap B) = 2$
- $A \cup B = \{1, 2, 3, 4, 5\}$ なので、実際に数えると $n(A \cup B) = 5$
公式に当てはめると、$n(A) + n(B) - n(A \cap B) = 4 + 3 - 2 = 5$ となり、実際に数えた値と一致します。
なお、$A$ と $B$ が共通部分を持たない(重なりがない)場合、つまり $A \cap B$ が空集合(要素が1つもない集合。記号 $\varnothing$ で表します)のときは、$n(A \cap B) = 0$ なので、
$n(A \cup B) = n(A) + n(B)$
と単純に足すだけで求められます。
補集合の要素の個数
考えている要素全体の集合を全体集合といい、記号 $U$ で表します。全体集合 $U$ の中で、集合 $A$ に属さない要素全体からなる集合を $A$ の補集合といい、$A^c$ と書きます。
$A$ とその補集合 $A^c$ を合わせるとちょうど全体集合 $U$ になり、$A$ と $A^c$ には重なる部分がありません。したがって、
$n(U) = n(A) + n(A^c)$
が成り立ちます。この式の両辺から $n(A)$ を引く(左辺と右辺の両方から同じ数を引いても等式は成り立つ、という性質を使います)と、
$n(U) - n(A) = n(A^c)$
となり、左右を入れ替えると次の公式が得られます。
$n(A^c) = n(U) - n(A)$
つまり、「$A$ に当てはまらないものの個数」は、「全体の個数から $A$ に当てはまるものの個数を引く」ことで求められます。直接数えにくいものを数えるときに、とても便利な考え方です。
3つの集合の和集合(発展)
集合が3つになっても考え方は同じです。$A$、$B$、$C$ の3つの集合について、和集合の要素の個数は次の式で求められます。
$n(A \cup B \cup C) = n(A) + n(B) + n(C) - n(A \cap B) - n(B \cap C) - n(C \cap A) + n(A \cap B \cap C)$
これは、まず3つの集合をそれぞれ1回ずつ足し、2つずつの重なり(共通部分)の分だけ引きすぎているのでそれを引いて調整し、最後に3つとも重なっている部分は引きすぎてしまっているのでもう一度足し戻す、という考え方に基づいています。3つの集合が出てくる問題は応用的な内容ですが、例題3で実際の使い方を確認します。
例題
例題1(基本)
問題 50人の生徒にアンケートを取ったところ、犬を飼っている人が20人、猫を飼っている人が15人、犬と猫の両方を飼っている人が5人でした。犬または猫を飼っている人は何人ですか。
解答・解説を見る
犬を飼っている人の集合を $A$、猫を飼っている人の集合を $B$ とします。問題文の数値を記号で整理すると、次のようになります。
- $n(A) = 20$(犬を飼っている人)
- $n(B) = 15$(猫を飼っている人)
- $n(A \cap B) = 5$(犬と猫の両方を飼っている人)
「犬または猫を飼っている人」というのは、犬か猫の少なくとも一方を飼っている人のことなので、これは和集合 $A \cup B$ の要素の個数、つまり $n(A \cup B)$ を求めればよいということになります。
和集合の要素の個数の公式
$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$
に、先ほど整理した数値を代入します。
$n(A \cup B) = 20 + 15 - 5$
右辺を順番に計算します。まず $20 + 15 = 35$ です。次に $35 - 5 = 30$ です。したがって、
$n(A \cup B) = 30$
答え: 犬または猫を飼っている人は 30人 です。
例題2(標準)
問題 40人のクラスで、自転車で通学する人が25人、バスで通学する人が20人、自転車もバスも使わない人が3人いました。自転車とバスの両方を使って通学する人は何人ですか。
解答・解説を見る
このクラス全体を全体集合 $U$ とし、自転車で通学する人の集合を $A$、バスで通学する人の集合を $B$ とします。問題文からわかることを記号で整理します。
- $n(U) = 40$(クラス全体の人数)
- $n(A) = 25$(自転車で通学する人)
- $n(B) = 20$(バスで通学する人)
- 自転車もバスも使わない人が3人 → これは「$A$ にも $B$ にも属さない人」のことなので、和集合 $A \cup B$ の補集合の要素の個数が3人ということです。つまり $n((A \cup B)^c) = 3$ です。
この問題では、いきなり両方を使う人の数 $n(A \cap B)$ を求めることはできません。そこで、2段階に分けて考えます。
ステップ1:まず $n(A \cup B)$(自転車かバスの少なくとも一方を使う人の数)を求めます。
補集合の要素の個数の公式 $n(A^c) = n(U) - n(A)$ は、$A$ の部分をまとめて $A \cup B$ に置き換えても同じように成り立ちます(全体集合から、ある集合に含まれない人の個数を引く、という考え方自体は変わらないからです)。したがって、
$n(A \cup B) = n(U) - n((A \cup B)^c)$
に数値を代入すると、
$n(A \cup B) = 40 - 3$
これを計算すると、
$n(A \cup B) = 37$
ステップ2:和集合の公式を使って $n(A \cap B)$ を求めます。
和集合の要素の個数の公式は
$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$
でした。この式を $n(A \cap B)$ について解きます。左辺の $n(A \cup B)$ と右辺の $-n(A \cap B)$ を入れ替える(移項する。移項するときは符号が反対になります)と、
$n(A \cap B) = n(A) + n(B) - n(A \cup B)$
という式になります。ここに、$n(A) = 25$、$n(B) = 20$、そしてステップ1で求めた $n(A \cup B) = 37$ を代入します。
$n(A \cap B) = 25 + 20 - 37$
右辺を順番に計算します。まず $25 + 20 = 45$ です。次に $45 - 37 = 8$ です。したがって、
$n(A \cap B) = 8$
答え: 自転車とバスの両方を使って通学する人は 8人 です。
例題3(応用)
問題 1から100までの整数のうち、2の倍数でも、3の倍数でも、5の倍数でもない整数は何個ありますか。
解答・解説を見る
全体集合を $U = \{1, 2, 3, \ldots, 100\}$(1から100までの整数全体)とし、次のように集合を定めます。
- $A$:2の倍数の集合
- $B$:3の倍数の集合
- $C$:5の倍数の集合
求めたいのは「2の倍数でも、3の倍数でも、5の倍数でもない整数の個数」なので、これは $A$ にも $B$ にも $C$ にも属さない要素の個数、つまり和集合 $A \cup B \cup C$ の補集合の要素の個数 $n((A \cup B \cup C)^c)$ です。補集合の公式より、
$n((A \cup B \cup C)^c) = n(U) - n(A \cup B \cup C)$
なので、まず $n(A \cup B \cup C)$ を求めることを考えます。
ステップ1:それぞれの集合の要素の個数を数えます。
1から100までの整数のうち、$k$ の倍数の個数は、$100 \div k$ を計算したときの商(小数点以下を切り捨てた値)になります。たとえば2の倍数は $2, 4, 6, \ldots$ と2個おきに現れるので、100までに $100 \div 2$ 個あるということです。
- $n(A)$:2の倍数の個数。$100 \div 2 = 50$ なので $n(A) = 50$
- $n(B)$:3の倍数の個数。$100 \div 3 = 33.33\ldots$ なので、商は33。つまり $n(B) = 33$
- $n(C)$:5の倍数の個数。$100 \div 5 = 20$ なので $n(C) = 20$
ステップ2:2つずつの共通部分の要素の個数を数えます。
「2の倍数かつ3の倍数」である整数は「6の倍数」のことです(2と3の最小公倍数が6だからです)。同じように考えると、
- $n(A \cap B)$:6の倍数の個数。$100 \div 6 = 16.66\ldots$ なので、商は16。つまり $n(A \cap B) = 16$
- $n(B \cap C)$:15の倍数の個数(3と5の最小公倍数は15)。$100 \div 15 = 6.66\ldots$ なので、商は6。つまり $n(B \cap C) = 6$
- $n(C \cap A)$:10の倍数の個数(5と2の最小公倍数は10)。$100 \div 10 = 10$ なので $n(C \cap A) = 10$
ステップ3:3つの共通部分の要素の個数を数えます。
「2の倍数かつ3の倍数かつ5の倍数」である整数は「30の倍数」のことです(2, 3, 5の最小公倍数が30だからです)。$100 \div 30 = 3.33\ldots$ なので、商は3。つまり
$n(A \cap B \cap C) = 3$
ステップ4:3つの集合の和集合の公式に代入します。
$n(A \cup B \cup C) = n(A) + n(B) + n(C) - n(A \cap B) - n(B \cap C) - n(C \cap A) + n(A \cap B \cap C)$
ここに、ここまで求めた数値をすべて代入します。
$n(A \cup B \cup C) = 50 + 33 + 20 - 16 - 6 - 10 + 3$
右辺を左から順番に計算します。
$50 + 33 = 83$
$83 + 20 = 103$
$103 - 16 = 87$
$87 - 6 = 81$
$81 - 10 = 71$
$71 + 3 = 74$
したがって、
$n(A \cup B \cup C) = 74$
ステップ5:補集合の公式で答えを求めます。
$n((A \cup B \cup C)^c) = n(U) - n(A \cup B \cup C) = 100 - 74 = 26$
答え: 2の倍数でも、3の倍数でも、5の倍数でもない整数は 26個 です。
練習問題
問題 30人のクラスで、部活動Aに入っている人が18人、部活動Bに入っている人が12人、どちらの部活動にも入っていない人が5人います。部活動Aと部活動Bの両方に入っている人は何人ですか。
答え
部活動Aに入っている人の集合を $A$、部活動Bに入っている人の集合を $B$ とし、クラス全体を全体集合 $U$ とします。
$n(U) = 30$、$n(A) = 18$、$n(B) = 12$、どちらにも入っていない人が5人なので $n((A \cup B)^c) = 5$ です。
補集合の公式より、$n(A \cup B) = n(U) - n((A \cup B)^c) = 30 - 5 = 25$ です。
和集合の公式を $n(A \cap B)$ について解いた式 $n(A \cap B) = n(A) + n(B) - n(A \cup B)$ に代入すると、
$n(A \cap B) = 18 + 12 - 25 = 5$
答え: 5人