数学III / 極限

数列の極限の基本

要点整理

数学Bでは、数列 $\{a_n\}$ の一般項(何番目の項かを表す文字 $n$ を使って項の値を表した式)を学びました。ここでは、その一般項 $a_n$ において $n$ を $1,2,3,\dots$ とどんどん大きくしていったとき、$a_n$ の値がどうなっていくかを考えます。

極限とは何か

数列 $\{a_n\}$ において、$n$ を限りなく大きくするとき、$a_n$ がある一定の値 $\alpha$ に限りなく近づくならば、数列 $\{a_n\}$ は $\alpha$ に収束するといい、次のように書きます。

$\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha$

この $\alpha$ を、数列 $\{a_n\}$ の極限値と呼びます。「$\lim$」は limit(極限)の略で、「$\lim_{n\to\infty} a_n$」は「$n$ を無限大に近づけたときの $a_n$ の行き先」を表す記号です。

例えば $a_n = \dfrac{1}{n}$ という数列を考えると、

$a_1=1,\ a_2=\frac{1}{2},\ a_3=\frac{1}{3},\ a_4=\frac{1}{4},\ \dots$

のように、$n$ が大きくなるほど $a_n$ は $0$ にどんどん近づいていきます。したがって

$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0$

となります。これは以後何度も使う、最も基本的な極限の1つです。

発散とは何か

数列が収束しない場合、その数列は発散するといいます。発散には次の3つのパターンがあります。

  • 正の無限大に発散:$n$ を大きくすると $a_n$ がどこまでも大きくなる。$\lim_{n\to\infty} a_n = \infty$ と書きます。例:$a_n = n^2$
  • 負の無限大に発散:$n$ を大きくすると $a_n$ がどこまでも小さくなる(マイナス方向に大きくなる)。$\lim_{n\to\infty} a_n = -\infty$ と書きます。例:$a_n = -n$
  • 振動:一定の値にも近づかず、正・負の無限大にも向かわない。例:$a_n = (-1)^n$ は $-1,1,-1,1,\dots$ を繰り返すだけで、どこにも近づきません。

極限の性質(和・差・積・商)

数列 $\{a_n\}$、$\{b_n\}$ がともに収束していて、$\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha$、$\lim_{n\to\infty} b_n = \beta$ であるとき、次のことが成り立ちます($k$ は定数)。

$\lim_{n\to\infty} k a_n = k\alpha$

$\lim_{n\to\infty} (a_n + b_n) = \alpha+\beta,\qquad \lim_{n\to\infty} (a_n - b_n) = \alpha-\beta$

$\lim_{n\to\infty} a_n b_n = \alpha\beta$

$\lim_{n\to\infty} \frac{a_n}{b_n} = \frac{\alpha}{\beta}\quad(\text{ただし } \beta \neq 0)$

つまり、それぞれの数列がきちんと1つの値に収束しているならば、足し算・引き算・掛け算・割り算をしてから極限を取っても、先に極限を取ってから計算しても同じ結果になる、ということです。

分数式の極限の求め方(最重要テクニック)

分子・分母がともに $n$ の多項式である分数の極限を求めるときは、分母の最も次数が高い項で分子・分母を割るのが基本の手順です。こうすると、$\dfrac{1}{n}\to 0$ という事実が使える形に持ち込めます。

例えば $\lim_{n\to\infty}\dfrac{2n+1}{n+3}$ を考えます。このままでは分子も分母も無限大に大きくなっていくので、「$\infty$ 分の $\infty$」の形になっていて、そのままでは極限が分かりません(このような形を不定形と呼びます)。そこで分母の最高次の項 $n$ で分子・分母を割ります。

$\frac{2n+1}{n+3} = \frac{(2n+1)\div n}{(n+3)\div n} = \frac{2+\dfrac{1}{n}}{1+\dfrac{3}{n}}$

$n\to\infty$ のとき $\dfrac{1}{n}\to 0$、$\dfrac{3}{n}\to 0$ なので、

$\lim_{n\to\infty}\frac{2n+1}{n+3} = \frac{2+0}{1+0} = 2$

となります。

$\sqrt{\ }$ を含む式の極限(有理化)

$\sqrt{n^2+n}-n$ のように、根号を含む式の引き算は、そのままでは「$\infty-\infty$」の不定形になります。この場合は、分子を有理化する(分子に共役な式を掛けて根号を分子から追い出す)ことで、分数の形に直してから上と同じ方法を使います。詳しくは例題2で確認します。

はさみうちの原理

数列の値を直接計算しにくいけれど、上下から別の数列で挟めるときに使うのが、はさみうちの原理です。

すべての $n$ について $a_n \leq c_n \leq b_n$ が成り立ち、かつ $\lim_{n\to\infty} a_n = \lim_{n\to\infty} b_n = \alpha$ であるならば、真ん中の数列 $\{c_n\}$ も同じ値 $\alpha$ に収束します。

$\lim_{n\to\infty} c_n = \alpha$

これは「$c_n$ は $a_n$ より大きくて $b_n$ より小さいのに、その $a_n$ と $b_n$ が両方とも同じ場所に近づいていくなら、間に挟まれた $c_n$ も逃げ場がなくそこに近づくしかない」というイメージで理解すると覚えやすいです。

例題

例題1(基本)

問題

次の極限を求めなさい。

$\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2-n}{n^2+2}$

解答・解説を見る

分子・分母の中で最も次数が高いのは $n^2$ です。そこで分子・分母を $n^2$ で割ります。

$\frac{3n^2-n}{n^2+2} = \frac{(3n^2-n)\div n^2}{(n^2+2)\div n^2} = \frac{3-\dfrac{1}{n}}{1+\dfrac{2}{n^2}}$

$n\to\infty$ のとき $\dfrac{1}{n}\to 0$、$\dfrac{2}{n^2}\to 0$ なので、

$\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2-n}{n^2+2} = \frac{3-0}{1+0} = 3$

答え:$3$

例題2(標準)

問題

次の極限を求めなさい。

$\lim_{n\to\infty}\left(\sqrt{n^2+n}-n\right)$

解答・解説を見る

$n\to\infty$ のとき $\sqrt{n^2+n}\to\infty$、$n\to\infty$ なので、このままでは「$\infty-\infty$」の不定形です。そこで、分子を有理化するために、$\sqrt{n^2+n}+n$ を分子・分母に掛けます(全体を1倍しているだけなので、値は変わりません)。

$\sqrt{n^2+n}-n = \frac{\left(\sqrt{n^2+n}-n\right)\left(\sqrt{n^2+n}+n\right)}{\sqrt{n^2+n}+n}$

分子は $(\sqrt{X})^2-n^2$ の形、つまり $(\sqrt{A}-B)(\sqrt{A}+B)=A-B^2$ の公式を使うと、

$\left(\sqrt{n^2+n}\right)^2 - n^2 = (n^2+n)-n^2 = n$

なので、

$\sqrt{n^2+n}-n = \frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n}$

これで根号が分母だけに残った分数の形になりました。ここから、分子・分母を $n$ で割ります。分母の $\sqrt{n^2+n}$ を $n$ で割るときは、$n=\sqrt{n^2}$($n>0$ より)であることを使って、根号の中に $n^2$ を入れてから割ります。

$\frac{\sqrt{n^2+n}}{n} = \frac{\sqrt{n^2+n}}{\sqrt{n^2}} = \sqrt{\frac{n^2+n}{n^2}} = \sqrt{1+\frac{1}{n}}$

したがって、

$\frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n} = \frac{n\div n}{\left(\sqrt{n^2+n}+n\right)\div n} = \frac{1}{\sqrt{1+\dfrac{1}{n}}+1}$

$n\to\infty$ のとき $\dfrac{1}{n}\to 0$ なので、

$\lim_{n\to\infty}\left(\sqrt{n^2+n}-n\right) = \frac{1}{\sqrt{1+0}+1} = \frac{1}{1+1} = \frac{1}{2}$

答え:$\dfrac{1}{2}$

例題3(応用)

問題

次の極限を求めなさい。

$\lim_{n\to\infty}\frac{\sin n}{n}$

解答・解説を見る

$\sin n$ の値は $n$ が変わるたびに複雑に変化し、直接この極限を計算することはできません。そこで、はさみうちの原理を使います。

まず、$\sin$ の値はどんな角度に対しても必ず $-1$ 以上 $1$ 以下である、という性質を使います。

$-1 \leq \sin n \leq 1$

$n$ は自然数なので $n>0$ です。この不等式全体を正の数 $n$ で割っても、不等号の向きは変わりません。

$-\frac{1}{n} \leq \frac{\sin n}{n} \leq \frac{1}{n}$

ここで、両端の数列の極限を考えます。

$\lim_{n\to\infty}\left(-\frac{1}{n}\right) = 0,\qquad \lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0$

両端がともに $0$ に収束するので、はさみうちの原理より、真ん中の数列 $\dfrac{\sin n}{n}$ も $0$ に収束します。

$\lim_{n\to\infty}\frac{\sin n}{n} = 0$

答え:$0$

練習問題

問題1

次の極限を求めなさい。

$\lim_{n\to\infty}\frac{4n^2+3n}{2n^2-5}$

答え

分子・分母を $n^2$ で割ると $\dfrac{4+\frac{3}{n}}{2-\frac{5}{n^2}} \to \dfrac{4}{2}$ となるので、答えは $2$ です。

問題2

次の極限を求めなさい。

$\lim_{n\to\infty}\left(\sqrt{n^2+3n}-n\right)$

答え

分子を有理化すると $\dfrac{3n}{\sqrt{n^2+3n}+n}$ となり、分子・分母を $n$ で割ると $\dfrac{3}{\sqrt{1+\frac{3}{n}}+1}\to \dfrac{3}{1+1}$ となるので、答えは $\dfrac{3}{2}$ です。