数学II / 三角関数
よくある間違い
間違い1: 度とラジアンを混ぜて計算してしまう
よくある誤答例
$\sin90$ を計算するときに、単位を確認せず $\sin90°=1$ と同じ感覚で答えてしまい、$\sin90$(ラジアンの $90$)も $1$だと思い込む。あるいは、扇形の公式 $l=r\theta$ に、度のままの角度($90°$ など)を代入してしまう。
なぜ間違いなのか
数学Ⅱ以降で角を表すとき、単位を書かずに数字だけで角が書いてあったら、それはラジアンの意味です。$90$ ラジアンは $90°$ とはまったく違う角度($90 \times \dfrac{180}{\pi}$ で計算すると $5000°$ 以上にもなる、1周をはるかに超える角)です。また、$l=r\theta$ や $S=\dfrac12r^2\theta$ の公式は、$\theta$ がラジアンであることが前提の公式なので、度のまま代入すると答えが大きく狂います。
正しい考え方
問題文や式に単位「°」が付いていなければ、その角はラジアンだと考えます。度で与えられた角を弧度法の公式に使うときは、必ず先に $\times\dfrac{\pi}{180}$ でラジアンに変換してから代入しましょう。
間違い2: $\sin^2\theta$ の意味を取り違える
よくある誤答例
$\sin^2\theta$ を「$\sin(\theta^2)$」($\theta$ を2乗してから $\sin$ をとる)と読んでしまう。
なぜ間違いなのか
$\sin^2\theta$ という書き方は数学の伝統的な省略記法で、正しくは $(\sin\theta)^2$、つまり「$\sin\theta$ の値を出してから2乗する」という意味です。$\sin(\theta^2)$ とは全くの別物で、混同すると相互関係の公式($\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$)も意味が分からなくなってしまいます。
正しい考え方
$\sin^2\theta = (\sin\theta)^2$ であって、$\theta$ を2乗するのではなく$\sin\theta$ という値を2乗するという意味だと覚えておきましょう。同様に $\cos^2\theta, \tan^2\theta$ も同じ約束です。
間違い3: $\cos\theta=\pm\dfrac{4}{5}$ のように符号を決めずに終えてしまう
よくある誤答例
「$\theta$ は第2象限の角で $\sin\theta=\dfrac35$」という条件で $\cos\theta$ を求める問題で、$\cos^2\theta=\dfrac{16}{25}$ まで計算したあと、$\cos\theta=\pm\dfrac45$ を答えにしてしまい、符号を決めないまま終わる。
なぜ間違いなのか
$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ から $\cos\theta$ を求めるとき、平方根をとる段階では符号が2通り出てくるのは正しいのですが、問題文に「第2象限」のような条件が与えられている場合は、その条件を使って符号を1つに絞り込む必要があります。ここで手を止めてしまうと、答えが完成していないことになります。
正しい考え方
象限が分かっているときは、各象限での $\sin,\cos,\tan$ の符号(第1象限はすべて正、第2象限は $\sin$ のみ正、第3象限は $\tan$ のみ正、第4象限は $\cos$ のみ正)を必ず参照して、符号を1つに確定させてから答えを書きましょう。
間違い4: 加法定理を分配法則のように使ってしまう
よくある誤答例
$\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha+\sin\beta$、$\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha+\cos\beta$ のように、まるで $(a+b)$ を展開するときの分配法則と同じ感覚で計算してしまう。
なぜ間違いなのか
三角関数は $f(x)=x^2$ のような通常の関数と同じで、$f(\alpha+\beta)$ は $f(\alpha)+f(\beta)$ とは一般に一致しません(例えば $\sin30°+\sin30°=\dfrac12+\dfrac12=1$ ですが、$\sin(30°+30°)=\sin60°=\dfrac{\sqrt3}{2}\approx0.87$ で、明らかに一致しません)。
正しい考え方
$\sin(\alpha+\beta)$ を計算するときは、必ず加法定理
$\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$
を正しく使います。加法定理は暗記が必要な公式であり、直感で「展開できるはず」と思い込まないようにしましょう。
間違い5: $\cos2\theta$ の3つの形を混同する、または $2\cos\theta$ と間違える
よくある誤答例
$\cos2\theta$ を求める問題で、うっかり $2\cos\theta$(単に $\cos\theta$ を2倍しただけ)を計算してしまう。あるいは $\cos2\theta=1-2\sin^2\theta$ と $\cos2\theta=2\cos^2\theta-1$ のどちらを使えばよいか混乱して、符号を書き間違える。
なぜ間違いなのか
「2倍角」という言葉から、つい角そのものを2倍する($\cos\theta$ を2倍する)ような操作を連想してしまいますが、正しくは「角が2倍になった三角関数の値」を求める公式です。$\cos2\theta$ と $2\cos\theta$ は全く別の値になります。また、$\cos2\theta$ には $\cos^2\theta-\sin^2\theta$、$1-2\sin^2\theta$、$2\cos^2\theta-1$ の3つの同値な表し方があり、問題で与えられている情報($\sin\theta$ の値だけ分かっている、$\cos\theta$ の値だけ分かっているなど)に応じて使い分ける必要があります。
正しい考え方
$\cos2\theta$ の公式は3つとも導出過程ごと覚え、「$\sin\theta$ の値しか使いたくないときは $1-2\sin^2\theta$」「$\cos\theta$ の値しか使いたくないときは $2\cos^2\theta-1$」のように、状況に応じて選べるようにしておきましょう。
間違い6: 三角関数の合成で $a,b$ の対応を取り違える
よくある誤答例
$a\sin\theta+b\cos\theta$ を合成するときに、$\cos\varphi=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}$、$\sin\varphi=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}$ のように、$a$ と $b$ を逆に対応させてしまう。
なぜ間違いなのか
合成の公式は、$\sin\theta$ の係数が $a$、$\cos\theta$ の係数が $b$ であるときに、$\cos\varphi=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}$($a$ が $\sin\theta$ の係数、つまり $\cos\varphi$ に対応)、$\sin\varphi=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}$ という対応で成り立ちます。この対応を逆にすると、$\varphi$ の角がまったく違うものになってしまいます。
正しい考え方
座標平面上に点 $(a,b)$ をとり、原点からその点への動径が表す角が $\varphi$ になる、とイメージしましょう。「$\sin\theta$ の係数 $a$ が点の $x$ 座標、$\cos\theta$ の係数 $b$ が点の $y$ 座標」という対応を図でイメージすれば、どちらが $\cos\varphi$ でどちらが $\sin\varphi$ か迷わなくなります。
間違い7: 三角方程式の解を1つしか書かない
よくある誤答例
$0\le\theta<2\pi$ で $\sin\theta=\dfrac12$ を解く問題で、$\theta=\dfrac{\pi}{6}$ だけを答えにして、もう1つの解 $\theta=\dfrac{5\pi}{6}$ を書き忘れる。
なぜ間違いなのか
$\sin\theta=a$($0必ず2つ存在します。基本の角(有名角の表からすぐ分かる角)だけを答えて満足してしまうと、もう一方の解を見落とすことになります。
正しい考え方
三角方程式を解くときは、必ず単位円をかいて、条件を満たす点が円周上にいくつあるかを目で確認しましょう。$\sin\theta=a$ や $\cos\theta=a$ は基本的に2つの解([1つに定まる特殊な場合を除く])、$\tan\theta=a$ は周期 $\pi$ ごとに解が現れる、という性質を意識すると解の見落としを防げます。
間違い8: $\tan\theta$ の定義できない角を見落とす
よくある誤答例
$\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ の公式を使うときに、$\cos\theta=0$ となる $\theta=\dfrac{\pi}{2},\dfrac{3\pi}{2}$ などでも $\tan\theta$ の値が求められると思い込んでしまう。
なぜ間違いなのか
分数は分母が $0$ になると定義できません。$\cos\theta=0$ のとき、$\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ は分母が $0$ になるため、その角では $\tan\theta$ の値そのものが存在しません(グラフでは漸近線になっている角です)。
正しい考え方
$\tan\theta$ を扱う問題では、常に「$\cos\theta\neq0$」という条件がついていることを意識しましょう。方程式 $\tan\theta=a$ を解くときも、$\theta=\dfrac{\pi}{2}+n\pi$($n$は整数)の角は最初から解の候補から除外して考えます。