数学III / 微分法
よくある間違い
間違い1: 積の微分法で「両方を微分してから掛ける」としてしまう
よくある誤答例
$y=(x^2+1)(x^3-2x)$ を微分する際、$y'=(2x)(3x^2-2)$ のように、2つの関数をそれぞれ微分してから、その結果どうしを掛け算してしまう。
なぜ間違いなのか
積の微分法は $\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$ であり、「前を微分して後ろはそのまま」の項と、「前はそのままで後ろを微分」の項を足し合わせるのが正しい計算です。両方を微分してから単純に掛け算するのは、まったく別の(誤った)計算です。実際にこの問題を正しく計算すると $y'=5x^4-3x^2-2$ になりますが、$(2x)(3x^2-2)=6x^3-4x$ は次数もまるで違う、誤った答えです。
正しい考え方
積の微分法の公式 $\{fg\}'=f'g+fg'$ を、必ず「2つの項の和」として覚えましょう。掛け算だけで済ませようとする誘惑に負けないことが大切です。
間違い2: 合成関数の微分で「中身の微分」を掛け忘れる
よくある誤答例
$y=(3x-2)^4$ を微分する際、$y'=4(3x-2)^3$ で計算を止めてしまい、中身 $3x-2$ を微分した $3$ を最後に掛け忘れる。
なぜ間違いなのか
連鎖律(合成関数の微分法)は $\{g(x)^n\}'=n\,g(x)^{n-1}\times g'(x)$ という形で、最後に必ず中身の導関数 $g'(x)$ を掛ける必要があります。これを忘れると、正しい答え $12(3x-2)^3$ の $\dfrac{1}{3}$ の大きさ(つまり不足した値)になってしまいます。
正しい考え方
累乗の形をした合成関数を微分するときは、「指数を前に下ろして指数を1減らす」だけでなく、「最後に中身を微分したものを掛ける」ところまでをワンセットの手順として、必ず最後まで実行しましょう。
間違い3: $(\cos x)'$ の符号のマイナスを忘れる
よくある誤答例
$y=\cos x$ を微分する際、$y'=\sin x$ としてしまい、符号のマイナスを付け忘れる。
なぜ間違いなのか
正しい公式は $(\cos x)'=-\sin x$ です。$(\sin x)'=\cos x$ と混同しやすく、$\cos$ を微分するとマイナスが付くことをうっかり忘れてしまうケースが非常に多いです。符号を間違えると、その後の計算(増減や凹凸の判定など)がすべて逆になってしまいます。
正しい考え方
$(\sin x)'=\cos x$(符号はそのまま)、$(\cos x)'=-\sin x$(符号がマイナスに変わる)という組を、セットで正確に覚えましょう。「サインを微分するとコサイン、コサインを微分するとマイナスサイン」と声に出して確認する習慣をつけると、間違いが減ります。
間違い4: 商の微分法で、分子を引く順番を逆にしてしまう
よくある誤答例
$y=\dfrac{f(x)}{g(x)}$ を微分する際、分子を $f(x)g'(x)-f'(x)g(x)$ のように、引く順番を逆にして計算してしまう。
なぜ間違いなのか
正しい公式は $\left\{\dfrac{f}{g}\right\}'=\dfrac{f'g-fg'}{g^2}$ で、先に $f'g$、次に $fg$ を引くという順番が決まっています。順番を逆にすると、符号がまるごと反転した誤った答えになってしまいます。
正しい考え方
「分子はまず $f'$(分子の微分)から掛け始める」と覚え、$f'g-fg'$ という順番を固定して暗記しましょう。積の微分法($f'g+fg'$、足し算で順番を気にしなくてよい)と混同しないように注意が必要です。
間違い5: 陰関数の微分で $y$ を普通の定数のように扱ってしまう
よくある誤答例
$x^2+y^2=25$ を微分する際、$\dfrac{d}{dx}(y^2)=2y$ として計算してしまい、$\dfrac{dy}{dx}$(または $y'$)を掛けるのを忘れてしまう。
なぜ間違いなのか
$y$ は $x$ の関数(陰関数)であり、$x$ そのものとは違う変数です。$y^2$ を $x$ で微分するときは、連鎖律を使って $2y\times\dfrac{dy}{dx}$ としなければなりません。$\dfrac{dy}{dx}$ を掛け忘れると、この後の計算がすべて成立しなくなります。
正しい考え方
陰関数を微分するときは、$y$ を含む項を微分するたびに、必ず $\dfrac{dy}{dx}$(または $y'$)を掛けることを意識しましょう。「$y$ は $x$ の関数だから、$y$ が出てくるたびに $y'$ も一緒に出てくる」と唱えながら計算すると、忘れにくくなります。
間違い6: $f'(x)=0$ を求めただけで、極値だと決めつけてしまう
よくある誤答例
$f'(x)=0$ となる $x$ の値を求めた時点で満足し、そのすべての点を極大または極小だと判断してしまう。
なぜ間違いなのか
$f'(x)=0$ は、極値になる候補を絞り込んだだけで、実際に極値になるとは限りません。例えば $f(x)=x^3$ では $f'(0)=0$ ですが、$f'(x)=3x^2$ は $x=0$ の前後どちらでも正(または $0$)であり、符号が変化しないため、$x=0$ は極値ではありません(この点でグラフは平らになるだけで、増加から減少へは転じていません)。
正しい考え方
$f'(x)=0$ となる候補点を見つけたら、必ずその前後で $f'(x)$ の符号が実際に変化しているかを確認しましょう。「正→負」なら極大、「負→正」なら極小、符号が変化しなければ極値ではない、と最後までチェックすることが大切です。
間違い7: $f''(a)=0$ のときも、無理やり第2次導関数の判定法を使おうとする
よくある誤答例
$f'(a)=0$、$f''(a)=0$ となったときに、「$f''(a)$ が負ではないから極小だろう」のように、無理やり判定してしまう。
なぜ間違いなのか
第2次導関数を使った判定法が使えるのは、$f''(a)$ がはっきり正、またははっきり負のときだけです。$f''(a)=0$ のときは、その点が極大・極小・どちらでもない(変曲点になっている場合も含む)のすべての可能性があり、この方法だけでは判断できません。
正しい考え方
$f''(a)=0$ になってしまったら、第2次導関数による判定はあきらめて、前のページで学んだ「$f'(x)$ の符号の変化を直接調べる」という基本の方法に戻りましょう。
間違い8: 加速度を「位置を1回微分したもの」だと勘違いする
よくある誤答例
位置 $x(t)$ から加速度を求める際、$a(t)=x'(t)$ として、速度と加速度を同じものだと勘違いしてしまう。
なぜ間違いなのか
位置を1回微分したものは速度($v(t)=x'(t)$)です。加速度は、速度をさらにもう1回微分したもの、つまり位置を2回微分したもの($a(t)=v'(t)=x''(t)$)です。1回微分しただけで止まってしまうと、速度と加速度を取り違えることになります。
正しい考え方
「位置 $\to$(1回微分)$\to$ 速度 $\to$(1回微分)$\to$ 加速度」という2段階の関係を、常に図式として頭に描きながら計算するようにしましょう。