数学II / いろいろな式
よくある間違い
数学IIの「いろいろな式」は、整式の除法から分数式の計算、二項定理、複素数の計算、複素数と2次方程式の解、解と係数の関係、剰余の定理と因数定理、高次方程式の解法、そして恒等式と等式・不等式の証明まで、数学Iで学んだ「式」の扱いをぐっと発展させる単元です。扱う内容が一気に増えるぶん、途中の1ステップを飛ばしてしまったり、公式の適用条件を見落としたりといった、同じパターンの間違いがとても起こりやすくなります。ここでは、この単元に含まれる複数のトピックの中から、特によくある間違いを9個取り上げます。「自分もこれ、やったことがあるかも」と思いながら読んでみてください。
間違い1:整式の除法で、次数の条件を確認せずに割り算を途中でやめてしまう
よくある誤答例
$A=x^3-2x^2+3x-4$ を $B=x^2-x$ で割る問題で、筆算を1回だけ行った時点の式を、そのまま余りだと思い込んでしまう。
$x^3-2x^2+3x-4 = (x^2-x)\times x + (-x^2+3x-4)$
ここで計算を止めて、「商は $x$、余りは $-x^2+3x-4$」と答えにしてしまう。
なぜ間違いなのか
整式の除法では、$A=BQ+R$ という関係式が成り立つように商 $Q$ と余り $R$ を求めますが、このとき $R$ の次数(文字が掛け合わされている個数の最大値)は、必ず割る式 $B$ の次数より小さくなければならない、というルールがあります。今回の割る式 $B=x^2-x$ の次数は $2$ です。ところが誤答例の「余り」とされている $-x^2+3x-4$ の次数も $2$ で、$B$ の次数と同じままです。これは「まだ割り切れる余地が残っている」ということを意味していて、割り算がまだ終わっていない状態にすぎません。1回筆算をしたら、そこで出てきた式の次数を必ず確認し、割る式の次数以上であれば、もう一度同じ手順を繰り返す必要があります。
正しい考え方
$-x^2+3x-4$ の次数はまだ $B=x^2-x$ の次数($2$)以上なので、割り算を続けます。最高次の項どうしを比べると $-x^2\div x^2=-1$ なので、商の一部は $-1$ です。
$-x^2+3x-4 = (x^2-x)\times(-1) + (2x-4)$
$2x-4$ の次数は $1$ で、これは $B$ の次数 $2$ より小さくなっているので、ここでようやく割り算が終わります。1回目に求めた商の一部 $x$ と、2回目に求めた商の一部 $-1$ を合わせると、商全体は $x-1$ です。したがって
$x^3-2x^2+3x-4 = (x^2-x)(x-1) + (2x-4)$
商は $x-1$、余りは $2x-4$ が正しい答えです。右辺を実際に展開して確かめると、$(x^2-x)(x-1)+(2x-4) = x^3-2x^2+x-x^2+x+2x-4 = x^3-2x^2+3x-4$ となり、もとの式と一致します。
間違い2:分数式の足し算で、通分せずに分母どうしを足してしまう
よくある誤答例
$\frac{1}{x-1}+\frac{1}{x+1} = \frac{1}{(x-1)+(x+1)} = \frac{1}{2x}$
のように、分母がちがう分数式を足すときに、分母をそのまま足し算して1つの分数にしてしまう。
なぜ間違いなのか
分数の足し算は、分母が同じでなければ、そのまま分子だけを足すことができません。これは数だけの分数(たとえば $\frac13+\frac12$)のときと、まったく同じルールです。具体的な数を代入して確かめてみましょう。$x=2$ を代入すると、もとの式の値は
$\frac{1}{2-1}+\frac{1}{2+1} = 1+\frac13 = \frac43$
です。一方、誤答例の $\dfrac{1}{2x}$ に $x=2$ を代入すると $\dfrac{1}{4}$ になり、$\dfrac43$ とはまったく違う値になってしまいます。分母がちがう分数式を足し算するときは、分母をそろえる(通分する)作業が必ず必要です。
正しい考え方
分母を $(x-1)(x+1)$ にそろえる(通分する)ため、1つ目の分数の分子・分母には $(x+1)$ を、2つ目の分数の分子・分母には $(x-1)$ をそれぞれ掛けます。
$\frac{1}{x-1}=\frac{x+1}{(x-1)(x+1)},\qquad \frac{1}{x+1}=\frac{x-1}{(x-1)(x+1)}$
分母がそろったので、分子どうしを足し算します。
$\frac{1}{x-1}+\frac{1}{x+1} = \frac{(x+1)+(x-1)}{(x-1)(x+1)} = \frac{2x}{x^2-1}$
これが正しい答えです。先ほどと同じく $x=2$ を代入して検算すると、$\dfrac{2\times2}{2^2-1}=\dfrac{4}{3}$ となり、もとの式の値 $\dfrac43$ と一致します。
間違い3:二項定理の一般項で、求めたい次数の数字をそのまま $k$ に代入してしまう
よくある誤答例
$(x+2)^5$ を展開したときの $x^2$ の項の係数を求める問題で、一般項
$T_{k+1} = \binom{5}{k}x^{5-k}2^{k}$
に、いきなり $k=2$ を代入してしまう。
$T_{3} = \binom{5}{2}x^{3}2^{2} = 10\times x^3\times4 = 40x^3$
これを「$x^2$ の係数は $40$」と答えにしてしまう。
なぜ間違いなのか
一般項 $T_{k+1}=\binom{5}{k}x^{5-k}2^{k}$ の中で、$x$ の指数(何乗になっているか)は $5-k$ という式で決まっています。「$x^2$ の項が欲しいから」といって、$2$ という数字をそのまま $k$ の位置に代入してよいわけではありません。指数の部分の式 $5-k$ が $2$ に等しくなるように、方程式 $5-k=2$ を解いて $k$ の値を求める必要があります。誤答例で $k=2$ を代入した結果を見ると、$x$ の指数は $5-2=3$ になっていて、実際には $x^3$ の項の係数を求めてしまっています。求めたかった $x^2$ の項とは、そもそも別の項です。
正しい考え方
$x$ の指数が $2$ になる条件は $5-k=2$ です。これを $k$ について解くと
$k=5-2=3$
なので、$k=3$ を一般項に代入します。
$T_{4} = \binom{5}{3}x^{5-3}2^{3} = \binom{5}{3}x^{2}2^{3}$
$\binom{5}{3}=\dfrac{5!}{3!\,2!}=\dfrac{5\times4}{2\times1}=10$ で、$2^3=8$ なので、係数の部分だけを計算すると
$10\times8=80$
したがって、$x^2$ の項は $80x^2$、係数は $80$ が正しい答えです。次数の条件($5-k=2$)をまず解いてから $k$ の値を一般項に代入する、という順番を必ず守りましょう。
間違い4:負の数の平方根どうしの掛け算で、根号の中身を先に掛けてしまう
よくある誤答例
$\sqrt{-2}\times\sqrt{-3} = \sqrt{(-2)\times(-3)} = \sqrt6$
のように、根号(ルート)の中に負の数が入っているときも、$\sqrt{a}\times\sqrt{b}=\sqrt{ab}$ という公式をそのまま使ってしまう。
なぜ間違いなのか
複素数の計算で学んだように、正の数 $k$ に対して $\sqrt{-k}=\sqrt{k}\,i$ と考えるのでした($i$ は2乗すると $-1$ になる虚数単位)。まず $\sqrt{-2}$ と $\sqrt{-3}$ をこの形に書き直すと、$\sqrt{-2}=\sqrt2\,i$、$\sqrt{-3}=\sqrt3\,i$ です。これらを掛け算すると
$\sqrt{-2}\times\sqrt{-3} = \sqrt2\,i\times\sqrt3\,i = \sqrt6\,i^2$
となり、$i^2=-1$ を使うと $\sqrt6\,i^2=-\sqrt6$ になります。誤答例の $\sqrt6$ とは符号が逆です。$\sqrt{a}\times\sqrt{b}=\sqrt{ab}$ という公式が使えるのは、$a\geq0$ かつ $b\geq0$ のときだけであって、根号の中身が負の数のときにはそのまま当てはめてはいけません。
正しい考え方
根号の中に負の数があるときは、先に $\sqrt{-k}=\sqrt{k}\,i$ の形に書き直してから計算します。
$\sqrt{-2}\times\sqrt{-3} = \left(\sqrt2\,i\right)\times\left(\sqrt3\,i\right) = \sqrt2\times\sqrt3\times i^2 = \sqrt6\times(-1) = -\sqrt6$
したがって、答えは $-\sqrt6$ です。根号の中に負の数が入っている式を見たら、掛け算する前にまず $i$ を使った形に直す癖をつけましょう。
間違い5:判別式が負のとき、複素数の範囲まで考えずに「解なし」で終わらせてしまう
よくある誤答例
2次方程式 $x^2+x+1=0$ を解く問題で、判別式を計算した結果だけを見て、そこで解答を終えてしまう。
$D=1^2-4\times1\times1=1-4=-3$
「$D<0$ だから、この方程式に解はない」と結論づけてしまう。
なぜ間違いなのか
数学Iの段階では、実数の範囲でしか解を考えていなかったので、$D<0$ のときは「実数解がない」で話が終わっていました。しかし数学IIでは、すでに複素数($2$乗すると $-1$ になる数 $i$ を含む数)を学んでいます。複素数まで数の範囲を広げれば、$D<0$ の場合でも、解の公式の根号の中の負の数を $\sqrt{-k}=\sqrt{k}\,i$ の形に書き直すことで、必ず2つの解(互いに共役な複素数)を求めることができます。「$D<0$ のとき解はない」というのは数学Iまでの言い方であり、数学IIでは正しくありません。
正しい考え方
解の公式 $x=\dfrac{-b\pm\sqrt{D}}{2a}$ に、$a=1$, $b=1$, $D=-3$ を代入します。$D<0$ なので、$\sqrt{D}=\sqrt{-3}=\sqrt3\,i$ と書き直せます。
$x=\frac{-1\pm\sqrt3\,i}{2}$
右辺を実部と虚部に分けて書くと
$x=-\frac12\pm\frac{\sqrt3}{2}\,i$
となり、これが正しい答えです。$D<0$ の2次方程式は「解なし」ではなく、「異なる2つの虚数解(互いに共役)を持つ」というのが正確な表現です。
間違い6:解と係数の関係で、和の公式の符号を反転させ忘れる
よくある誤答例
2次方程式 $2x^2-5x+3=0$ の2つの解を $\alpha$, $\beta$ とするとき、$\alpha+\beta$ の値を求める問題で、次のように計算してしまう。
$\alpha+\beta = \frac{b}{a} = \frac{-5}{2} = -\frac52$
なぜ間違いなのか
解と係数の関係の公式は、$\alpha+\beta = -\dfrac{b}{a}$ であって、$\dfrac{b}{a}$ ではありません。分数の前に、もう1つマイナスの符号がついています。誤答例では、$a=2$, $b=-5$ を $\dfrac{b}{a}$ にそのまま代入して $-\dfrac52$ を出していますが、これは公式の頭についているマイナスの符号を反映し忘れています。実際にこの方程式を解いて確かめると、判別式は $D=(-5)^2-4\times2\times3=25-24=1$ で、解の公式より $x=\dfrac{5\pm1}{4}$、つまり $x=\dfrac32$ または $x=1$ です。この2つの解を実際に足し算すると $\dfrac32+1=\dfrac52$ となり、誤答の $-\dfrac52$ とは符号が逆であることがわかります。
正しい考え方
解と係数の関係の公式に、符号を含めて正確に代入します。
$\alpha+\beta = -\frac{b}{a} = -\frac{-5}{2} = \frac52$
したがって、正しい答えは $\dfrac52$ です。先ほど実際に解いて求めた2つの解の和($\dfrac32+1=\dfrac52$)とも一致しています。なお、積のほうは $\alpha\beta=\dfrac{c}{a}$ で、こちらにはマイナスがつかないので、$\alpha\beta=\dfrac{3}{2}$ となり、これも実際の解の積($\dfrac32\times1=\dfrac32$)と一致します。和の公式にだけマイナスがつくことを、混同しないように意識しましょう。
間違い7:剰余の定理で、$x+a$ で割ったときの余りを $P(a)$ で計算してしまう
よくある誤答例
整式 $P(x)=x^3-2x+5$ を $x+2$ で割った余りを求める問題で、次のように計算してしまう。
$P(2) = 2^3-2\times2+5 = 8-4+5 = 9$
なぜ間違いなのか
剰余の定理は、「整式 $P(x)$ を $x-a$ で割った余りは $P(a)$ に等しい」という定理です。この定理を使うときは、割る式を必ず $x-a$ の形に読み替える必要があります。今回の割る式は $x+2$ ですが、これは $x-(-2)$ と同じ式なので、定理の中の $a$ にあたる数は $2$ ではなく $-2$ です。誤答例では、$x+2$ の $2$ をそのまま $a$ だと思い込み、$P(2)$ を計算してしまっています。符号の読み替えを1段階飛ばしてしまったことが原因です。
正しい考え方
$x+2=x-(-2)$ と読み替えると、$a=-2$ です。したがって、余りは $P(-2)$ を計算して求めます。
$P(-2) = (-2)^3-2\times(-2)+5 = -8+4+5 = 1$
正しい余りは $1$ です。実際に筆算で割り算をして確かめても、商は $x^2-2x+2$、余りは $1$ となり、$P(-2)=1$ と一致します。$x-a$ ではなく $x+a$ の形で割る式が与えられたときは、まず頭の中で「$x-(-a)$ だから、代入するのは $-a$ だ」と1段階変換してから代入する習慣をつけましょう。
間違い8:高次方程式で、因数定理で見つけた解を1つ答えて終わりにしてしまう
よくある誤答例
3次方程式 $x^3-6x^2+11x-6=0$ を解く問題で、$x=1$ が解であることを見つけた時点で解答を終えてしまう。
$P(1)=1^3-6\times1^2+11\times1-6=1-6+11-6=0$
「$x=1$ が解だから、答えは $x=1$」としてしまう。
なぜ間違いなのか
高次方程式(3次以上の方程式)を解く手順は、「1つ解を見つけたら終わり」ではありません。因数定理から $P(x)$ が $x-1$ を因数に持つとわかったら、実際に $P(x)$ を $x-1$ で割り算をして、残りの部分($2$次式)をさらに解く必要があります。3次方程式には、一般に(重解の場合を除いて)3つの解があります。$x=1$ という1つの解を見つけただけでは、残り2つの解がまだ見つかっていない可能性が高いのです。
正しい考え方
$P(x)=x^3-6x^2+11x-6$ を $x-1$ で割ります。
$x^3-6x^2+11x-6 = (x-1)(x^2-5x+6)$
右辺の $x^2-5x+6$ を、掛けて $6$、足して $-5$ になる2数($-2$ と $-3$)を使ってさらに因数分解すると
$x^2-5x+6=(x-2)(x-3)$
なので、もとの方程式は
$(x-1)(x-2)(x-3)=0$
と因数分解できます。この式が $0$ になるのは、$x-1=0$ または $x-2=0$ または $x-3=0$ のときなので、答えは $x=1,\ 2,\ 3$ の3つです。因数定理で解を1つ見つけたあとは、必ず次数を下げた式(今回は $x^2-5x+6$)をさらに因数分解できないか確認する、という手順を忘れないようにしましょう。
間違い9:相加相乗平均の関係を、正の数であることを確認せずに使ってしまう
よくある誤答例
$a=-2$, $b=-8$ のとき、相加相乗平均の関係 $\dfrac{a+b}{2}\geq\sqrt{ab}$ が「どんな実数 $a$, $b$ でも成り立つ式」だと思い込んで、そのまま当てはめてしまう。
なぜ間違いなのか
実際に $a=-2$, $b=-8$ を代入して確かめてみましょう。左辺は
$\frac{a+b}{2}=\frac{-2+(-8)}{2}=\frac{-10}{2}=-5$
右辺は
$\sqrt{ab}=\sqrt{(-2)\times(-8)}=\sqrt{16}=4$
です。誤答例の考え方に従うと $-5\geq4$ が成り立つはずですが、これは明らかに誤りです($-5$ のほうが $4$ より小さい数です)。相加相乗平均の関係 $\dfrac{a+b}{2}\geq\sqrt{ab}$ は、$a\geq0$ かつ $b\geq0$ という条件のもとでしか成り立たない不等式です。この条件は、証明の途中で $\sqrt{a}$, $\sqrt{b}$ という実数を作るために必要になるもので、$a$, $b$ が負の数のときには、そもそも証明の手順自体が成り立ちません。公式を使う前に、必ず「$a\geq0$ かつ $b\geq0$」という前提条件を確認する必要があります。
正しい考え方
$a=-2$, $b=-8$ はどちらも負の数なので、この場合には相加相乗平均の関係を使うことができません。相加相乗平均の関係が使えるのは、$a\geq0$ かつ $b\geq0$ のときだけです。
$\frac{a+b}{2}\geq\sqrt{ab}\quad(a\geq0,\ b\geq0のとき、等号成立は a=b のとき)$
たとえば $a=2$, $b=8$ のような、条件を満たす正の数であれば、左辺は $\dfrac{2+8}{2}=5$、右辺は $\sqrt{2\times8}=\sqrt{16}=4$ となり、たしかに $5\geq4$ が成り立ちます。公式を使うときは、そこに書かれている「$a\geq0$」のような前提条件を、計算の前に必ず確認する習慣をつけましょう。