数学I / 図形と計量

余弦定理

要点整理

みなさんはすでに正弦定理を学んでいて、「角とその対辺(向かい側の辺)の組」を使って辺や角を求められることを知っています。正弦定理はとても便利な道具ですが、実は苦手な場面があります。それは、

  • 三角形の**2辺とその間の角(挟角)**しかわかっていないとき
  • 三角形の3辺の長さしかわかっていないとき

の2つです。この2つの場面では、正弦定理の式(比の形)だけではうまく辺や角を求められません。そこで登場するのが、これから学ぶ余弦定理です。

まず記号の確認をします。三角形ABCの3つの頂点をA, B, Cとし、頂点Aの対辺(角Aの真向かいにある辺)の長さを$a$、頂点Bの対辺を$b$、頂点Cの対辺を$c$と表します。これは正弦定理のときと同じ表し方です。

余弦定理の式

余弦定理は、次の3つの式で表されます。

$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$

$b^2 = c^2 + a^2 - 2ca\cos B$

$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$

一番上の式で意味を確認しましょう。$a^2$は「角Aの対辺$a$の2乗」です。右辺の$b^2+c^2$は「角Aをはさむ2辺それぞれの2乗の和」、そして$2bc\cos A$は「その2辺の長さの積の2倍に、はさまれた角Aの余弦(コサイン)をかけたもの」です。つまり、この式は「対辺の2乗」と「残り2辺・その間の角」を結びつける式になっています。

3つの式はどれも同じパターンで、文字を$A\to B\to C\to A$、$a\to b\to c\to a$のように1つずつずらして書き直しただけです。1つのパターンを覚えれば、残り2つも同じ作り方でつくれます。

どんなときに使うか

余弦定理には、大きく分けて2つの使い方があります。

(1) 2辺と挟角がわかっているとき → 残りの辺を求める

このときは、上の3つの式にそのまま数値を代入すれば、求めたい辺の2乗の値が出てきます。

(2) 3辺すべてがわかっているとき → 角の大きさを求める

このときは、上の式を「$\cos$について解いた形」に変形してから使います。$A$についての式で、変形の手順を1つずつ確認してみましょう。

出発点は次の式です。

$a^2 = b^2+c^2-2bc\cos A$

ステップ1:両辺に$2bc\cos A$を足します。

$a^2+2bc\cos A = b^2+c^2$

ステップ2:両辺から$a^2$を引きます。

$2bc\cos A = b^2+c^2-a^2$

ステップ3:両辺を$2bc$で割ります($b,c$は三角形の辺の長さなので0ではなく、割り算ができます)。

$\cos A = \frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$

同じ手順を$B$、$C$についても行うと、次の式が得られます。

$\cos B = \frac{c^2+a^2-b^2}{2ca}$

$\cos C = \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$

こちらの形は「3辺の長さから、角の余弦(コサイン)の値」を求める式になっています。

三平方の定理とのつながり

もし角Aがちょうど90°だったらどうなるでしょうか。$\cos 90^\circ = 0$なので、

$a^2 = b^2+c^2-2bc\times 0 = b^2+c^2$

となり、これは中学校で習った三平方の定理そのものです。つまり余弦定理は、直角三角形しか使えなかった三平方の定理を、どんな三角形にも使えるように広げたものだと考えることができます。

$\cos$の符号から角の種類がわかる

$\cos C = \dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$という式に注目すると、分母の$2ab$は必ず正の数です。そのため、$\cos C$の符号は分子の$a^2+b^2-c^2$の符号と一致します。角の範囲が$0^\circ

  • $a^2+b^2>c^2$ のとき、$\cos C>0$ なので 角Cは鋭角($90^\circ$より小さい角)
  • $a^2+b^2=c^2$ のとき、$\cos C=0$ なので 角Cは直角($90^\circ$、三平方の定理の場合)
  • $a^2+b^2鈍角($90^\circ$より大きい角)

この関係を使うと、実際に角度を求めなくても、三角形が鋭角三角形か鈍角三角形かを判定できます。

例題

例題1(基本)

問題 三角形ABCにおいて、$b=3$, $c=8$, $\angle A = 60^\circ$のとき、辺$a$の長さを求めなさい。

解答・解説を見る

角Aは辺$b$と辺$c$にはさまれた角(挟角)なので、辺を求める形の余弦定理

$a^2 = b^2+c^2-2bc\cos A$

がそのまま使えます。

ステップ1:与えられた値$b=3$, $c=8$, $A=60^\circ$を代入します。

$a^2 = 3^2+8^2-2\times3\times8\times\cos60^\circ$

ステップ2:$3^2=9$、$8^2=64$、そして$\cos60^\circ=\dfrac{1}{2}$(三角比の拡張で学んだ値)なので、これらを代入します。

$a^2 = 9+64-2\times3\times8\times\frac{1}{2}$

ステップ3:まず掛け算の部分を先に計算します。$2\times3\times8=48$であり、$48\times\dfrac{1}{2}=24$です。

$a^2 = 9+64-24$

ステップ4:足し算・引き算は左から順に計算します。まず$9+64=73$なので、

$a^2 = 73-24$

ステップ5:$73-24=49$です。

$a^2 = 49$

ステップ6:$a$は辺の長さなので$a>0$です。$a^2=49$を満たす正の数は

$a=\sqrt{49}=7$

よって、$a=7$です。

例題2(標準)

問題 三角形ABCにおいて、$a=7$, $b=5$, $c=3$のとき、角Aの大きさを求めなさい。ただし、$0^\circ

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3辺の長さがすべてわかっているので、角を求める形の余弦定理

$\cos A = \frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$

を使います。

ステップ1:与えられた値$a=7$, $b=5$, $c=3$を代入します。

$\cos A = \frac{5^2+3^2-7^2}{2\times5\times3}$

ステップ2:$5^2=25$、$3^2=9$、$7^2=49$を計算して代入します。

$\cos A = \frac{25+9-49}{2\times5\times3}$

ステップ3:分子は、まず$25+9=34$、次に$34-49=-15$です。分母は$2\times5\times3=30$です。

$\cos A = \frac{-15}{30}$

ステップ4:分子・分母を$15$で割って約分すると、

$\cos A = -\frac{1}{2}$

ステップ5:$\cos A$がマイナスの値になったことに注目しましょう。これは要点整理で確認した通り、角Aが鈍角(90°より大きい角)であることを表しています。$0^\circ

$A=120^\circ$

よって、角Aの大きさは$120^\circ$です。

例題3(応用)

問題 四角形ABCDにおいて、$AB=3$, $BC=4$, $\angle ABC=60^\circ$, $CD=6$, $DA=5$とします。次の問いに答えなさい。

(1) 対角線ACの長さを求めなさい。 (2) $\cos\angle ADC$の値を求めなさい。

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四角形は、そのままでは余弦定理を使える形をしていません。そこで、対角線ACを引いて、四角形を三角形ABCと三角形ACDの2つに分けて考えます。

(1) 対角線ACの長さ

三角形ABCに注目すると、$AB=3$, $BC=4$, その間の角$\angle ABC=60^\circ$がわかっているので、辺を求める形の余弦定理が使えます。

$AC^2 = AB^2+BC^2-2\times AB\times BC\times\cos(\angle ABC)$

ステップ1:値を代入します。

$AC^2 = 3^2+4^2-2\times3\times4\times\cos60^\circ$

ステップ2:$3^2=9$、$4^2=16$、$\cos60^\circ=\dfrac{1}{2}$を代入します。

$AC^2 = 9+16-2\times3\times4\times\frac{1}{2}$

ステップ3:$2\times3\times4=24$、$24\times\dfrac{1}{2}=12$なので、

$AC^2 = 9+16-12$

ステップ4:$9+16=25$、$25-12=13$です。

$AC^2 = 13$

ステップ5:$AC>0$なので、

$AC=\sqrt{13}$

(2) $\cos\angle ADC$の値

次に三角形ACDに注目します。この三角形の3辺は、$CD=6$, $DA=5$, そして今求めた$AC=\sqrt{13}$とすべてわかっているので、角を求める形の余弦定理が使えます。

$\cos(\angle ADC) = \frac{CD^2+DA^2-AC^2}{2\times CD\times DA}$

ステップ1:$AC^2$の値はステップ(1)ですでに$13$と求まっているので、$(\sqrt{13})^2=13$としてそのまま代入できます。$CD=6$, $DA=5$も代入します。

$\cos(\angle ADC) = \frac{6^2+5^2-13}{2\times6\times5}$

ステップ2:$6^2=36$、$5^2=25$を計算します。

$\cos(\angle ADC) = \frac{36+25-13}{2\times6\times5}$

ステップ3:分子は、$36+25=61$、$61-13=48$です。分母は$2\times6\times5=60$です。

$\cos(\angle ADC) = \frac{48}{60}$

ステップ4:分子・分母を$12$で割って約分すると、

$\cos(\angle ADC) = \frac{4}{5}$

よって、$AC=\sqrt{13}$、$\cos\angle ADC=\dfrac{4}{5}$です。このように、対角線を1本引いて三角形を2つ作り、余弦定理を2回使うという考え方は、四角形の問題でとてもよく使われます。

練習問題

問題 三角形ABCにおいて、$a=6$, $b=7$, $c=9$であるとき、$\cos C$の値を求めなさい。また、この三角形は鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のうち、どれにあたるか答えなさい。

答え

角を求める形の余弦定理$\cos C=\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$に、$a=6$, $b=7$, $c=9$を代入すると、

$\cos C = \frac{6^2+7^2-9^2}{2\times6\times7} = \frac{36+49-81}{84} = \frac{4}{84} = \frac{1}{21}$

$\cos C=\dfrac{1}{21}$は正の数なので、角Cは鋭角です。さらに、辺$c=9$は3辺の中で一番長い辺なので、角Cはこの三角形の中で一番大きい角になります。一番大きい角がすでに鋭角(90°より小さい)ということは、残り2つの角はそれよりさらに小さい鋭角です。したがって、この三角形は鋭角三角形です。