数学I / データの分析

よくある間違い

このページでは、数学Iの「データの分析」という単元でよく見られる間違いを取り上げます。「データの分析」は、代表値(平均・中央値・最頻値)、四分位数と箱ひげ図、分散と標準偏差、データの相関と散布図、相関係数、仮説検定の考え方という6つのトピックからできています。計算そのものは四則演算が中心なので難しく感じにくいのですが、「何を計算しているのか」「その数値が何を意味するのか」を誤解したまま計算だけ進めてしまうミスがとても多い単元です。1つずつ、具体的な数値の例を使って確認していきましょう。

間違い1: 平均値だけを見て代表値を決めてしまう

よくある誤答例

ある9人の年収のデータ(単位は万円)が次のように与えられたとします。

$280,\ 300,\ 310,\ 290,\ 305,\ 295,\ 285,\ 315,\ 5000$

「このデータの代表値を求めなさい」と言われて、平均値だけを計算し、それで終わりにしてしまう人がいます。

まず合計を1つずつ足していきます。

$280+300=580$

$580+310=890$

$890+290=1180$

$1180+305=1485$

$1485+295=1780$

$1780+285=2065$

$2065+315=2380$

$2380+5000=7380$

合計は $7380$ です。データの個数は $9$ 個なので、平均値は

$\overline{x}=\frac{7380}{9}=820$

となります。ここで「この9人の年収の代表値は820万円です」と答えてしまうのが、よくある間違いです。

なぜ間違いなのか

代表値とは「データ全体の特徴を1つの数値で表したもの」のことで、平均値・中央値・最頻値の3つがその代表例です。ところが、平均値には「極端に大きい値(または小さい値)が1つでもあると、その値に大きく引っ張られてしまう」という弱点があります。

このデータをよく見ると、8人は $280$〜$315$ 万円という近い範囲に収まっているのに、1人だけ $5000$ 万円という飛び抜けた値(これを「外れ値」と呼びます)があります。この1人のせいで、平均値の $820$ 万円は「9人のうちの典型的な年収」とはかけ離れた値になってしまっているのです。実際、9人のうち8人は年収820万円よりずっと低いので、「代表値は820万円」と言われても実感と合いません。

正しい考え方

外れ値の影響を受けにくい代表値として、中央値(データを小さい順に並べたときに真ん中に来る値)も必ず確認しましょう。データを小さい順に並べ替えます。

$280,\ 285,\ 290,\ 295,\ 300,\ 305,\ 310,\ 315,\ 5000$

データは $9$ 個(奇数個)なので、中央値は真ん中、つまり小さい方から $5$ 番目の値です。数えてみると $5$ 番目は $300$ なので、中央値は $300$ 万円です。

$中央値=300\ (万円)$

平均値の $820$ 万円と比べると、中央値の $300$ 万円の方が「9人のうちの典型的な年収」に近い値になっていることが分かります。データに外れ値がありそうなときは、平均値だけでなく中央値も必ず計算し、両方を見比べる習慣をつけましょう。

間違い2: 度数分布表から平均値を求めるとき、階級値ではなく階級の下限の値を使ってしまう

よくある誤答例

あるテストの得点を、次の度数分布表(データをいくつかの区間=階級に区切って、それぞれの区間に何個データが入っているか=度数を表にしたもの)にまとめました。

階級(点) 階級値 度数
0以上20未満 10 2
20以上40未満 30 5
40以上60未満 50 8
60以上80未満 70 3
80以上100未満 90 2

度数の合計(データの個数)は $2+5+8+3+2=20$ 人です。

この表から平均値を求めるとき、階級値の代わりに、うっかり階級の下限の値(区間の一番小さい方の値、つまり $0,\ 20,\ 40,\ 60,\ 80$)を使って計算してしまう人がいます。

$\frac{0\times2+20\times5+40\times8+60\times3+80\times2}{20}$

これを1つずつ計算すると、

$0\times2=0,\quad 20\times5=100,\quad 40\times8=320,\quad 60\times3=180,\quad 80\times2=160$

合計は $0+100+320+180+160=760$ なので、

$\frac{760}{20}=38$

となり、「平均値は38点」と誤って答えてしまいます。

なぜ間違いなのか

度数分布表では、もとの1人1人の正確な得点は分かりません(例えば「40以上60未満」の階級に入っている8人が、それぞれ具体的に何点だったかは表からは読み取れません)。そこで、その階級の中に入っているデータは、その階級のちょうど真ん中の値である「階級値」を取っているとみなして計算する、という約束になっています。

階級値は次の式で求められます。

$階級値=\frac{下限+上限}{2}$

例えば最初の階級「0以上20未満」の階級値は $\frac{0+20}{2}=10$ です。階級の下限の値である $0$ をそのまま使ってしまうと、「その階級のデータは全部、区間の一番小さい端にかたまっている」と仮定してしまうのと同じことになり、実際の値より小さく見積もってしまいます。

正しい考え方

必ず、表に示された「階級値」(区間の中央の値)を使って計算します。

$\frac{10\times2+30\times5+50\times8+70\times3+90\times2}{20}$

1つずつ計算すると、

$10\times2=20,\quad 30\times5=150,\quad 50\times8=400,\quad 70\times3=210,\quad 90\times2=180$

合計は $20+150+400+210+180=960$ なので、平均値は

$\overline{x}=\frac{960}{20}=48$

となります。正しい平均値は48点です。度数分布表の問題を見たら、まず各階級の「階級値」を書き出してから計算を始めるようにしましょう。

間違い3: データの個数が奇数のとき、中央値を四分位数の計算にも使ってしまう

よくある誤答例

次の $9$ 個のデータ(すでに小さい順に並んでいます)について、四分位数を求めます。四分位数とは、データを小さい順に並べたときに、全体を4等分する位置にある3つの値 $Q_1$(第1四分位数)、$Q_2$(第2四分位数、中央値と同じ)、$Q_3$(第3四分位数)のことです。

$1,\ 3,\ 5,\ 6,\ 8,\ 9,\ 11,\ 13,\ 15$

データは $9$ 個なので、中央値 $Q_2$ は真ん中、つまり $5$ 番目の値で $Q_2=8$ です。

ここで、$Q_1$ を求めるために「データの下位半分」を、$Q_3$ を求めるために「データの上位半分」を考えますが、このとき中央値の $8$ を両方のグループに入れてしまう人がいます。

下位のグループ(中央値を含めた5個):$1,\ 3,\ 5,\ 6,\ 8$ → 真ん中の値は $5$ なので $Q_1=5$ 上位のグループ(中央値を含めた5個):$8,\ 9,\ 11,\ 13,\ 15$ → 真ん中の値は $11$ なので $Q_3=11$

こうして「$Q_1=5$、$Q_3=11$」と誤って答えてしまいます。

なぜ間違いなのか

四分位数の定義では、データの個数が奇数のときは、中央値そのもの($Q_2$)をどちらのグループにも入れずに、残りのデータだけを下位・上位に分けるという約束になっています。中央値をどちらのグループにも入れてしまうと、下位・上位それぞれのグループのデータの個数が5個ずつになり、本来4個ずつで比べるべきところが崩れてしまいます。その結果、$Q_1$ と $Q_3$ の値が本来の位置からずれてしまうのです。

正しい考え方

データが $9$ 個(奇数)のときは、まず中央値 $Q_2=8$ を求めたら、その $8$ を除いた残り $8$ 個のデータを、下位4個・上位4個に分けます。

下位4個:$1,\ 3,\ 5,\ 6$ 上位4個:$9,\ 11,\ 13,\ 15$

下位4個(偶数個)の中央値が $Q_1$ です。真ん中の2つ($3$ と $5$)の平均を取ります。

$Q_1=\frac{3+5}{2}=4$

上位4個(偶数個)の中央値が $Q_3$ です。真ん中の2つ($11$ と $13$)の平均を取ります。

$Q_3=\frac{11+13}{2}=12$

正しくは $Q_1=4$、$Q_2=8$、$Q_3=12$ です。データの個数が奇数のときは「中央値を除いてから半分に分ける」、偶数のときは「そのまま半分に分ける(中央値という単独のデータは存在しない)」という違いを、必ず区別して覚えておきましょう。

間違い4: 分散の公式 $s^2=\overline{x^2}-(\overline{x})^2$ で、2つの項の順番を逆にしてしまう

よくある誤答例

次の $4$ 個のデータについて、分散を求めます。分散とは、データが平均値からどれくらいばらついているかを表す数値です。

$2,\ 4,\ 6,\ 8$

まず平均値を求めます。

$\overline{x}=\frac{2+4+6+8}{4}=\frac{20}{4}=5$

次に、それぞれのデータを2乗してから平均する「2乗の平均」$\overline{x^2}$ を求めます。

$\overline{x^2}=\frac{2^2+4^2+6^2+8^2}{4}=\frac{4+16+36+64}{4}=\frac{120}{4}=30$

分散の公式は $s^2=\overline{x^2}-(\overline{x})^2$ ですが、このとき「2乗の平均」$\overline{x^2}$ と「平均の2乗」$(\overline{x})^2$ のどちらを先に書くのか混乱してしまい、順番を逆にして計算してしまう人がいます。

$s^2=(\overline{x})^2-\overline{x^2}=5^2-30=25-30=-5$

こうして「分散は $-5$ です」と答えてしまいます。

なぜ間違いなのか

分散は、そもそも「(データ$-$平均値)を2乗したものの平均」として定義されています。2乗した数はどんな実数でも $0$ 以上になるので、それを平均した分散も必ず $0$ 以上の値になります。つまり、分散がマイナスの値になることは絶対にありません。計算の途中で分散が負の数になったら、それは公式の順番を間違えたか、どこかの計算をミスしたサインだと考えてください。

正しい公式は、「2乗の平均」から「平均の2乗」を引く、という順番です。

$s^2=\overline{x^2}-(\overline{x})^2$

これを逆にして「平均の2乗」から「2乗の平均」を引いてしまうと、符号が反転してしまい、マイナスの値が出てきてしまうのです。

正しい考え方

必ず「2乗の平均 $\overline{x^2}$」を先に、「平均の2乗 $(\overline{x})^2$」を後に置いて引き算します。

$s^2=\overline{x^2}-(\overline{x})^2=30-25=5$

正しい分散は $5$ です。念のため、定義通りに(データ$-$平均値)の2乗の平均を計算しても確かめられます。それぞれの偏差(データと平均値の差)は $2-5=-3$、$4-5=-1$、$6-5=1$、$8-5=3$ となり、これを2乗すると $9,\ 1,\ 1,\ 9$ です。

$\frac{9+1+1+9}{4}=\frac{20}{4}=5$

同じく $5$ になり、公式の答えと一致することが確認できます。計算した分散が負の数になったときは、必ず公式の順番を見直しましょう。

間違い5: 標準偏差を求めるとき、$\sqrt{a-b}=\sqrt{a}-\sqrt{b}$ という誤った変形をしてしまう

よくある誤答例

間違い4と同じデータ $2,\ 4,\ 6,\ 8$ について、今度は標準偏差を求めます。標準偏差は分散の正の平方根(ルート)を取った値で、分散と同じようにデータのばらつき具合を表しますが、もとのデータと同じ単位で考えられるという利点があります。

分散の公式の途中式は、間違い4で確認した通り $\overline{x^2}=30$、$(\overline{x})^2=25$ でした。標準偏差はこの分散のルートを取ればよいのですが、ルートの中の引き算をそのまま2つのルートの引き算に分けてしまう人がいます。

$\sqrt{\overline{x^2}-(\overline{x})^2}=\sqrt{\overline{x^2}}-\sqrt{(\overline{x})^2}=\sqrt{30}-\sqrt{25}$

ここで $\sqrt{30}\fallingdotseq5.48$、$\sqrt{25}=5$ なので、

$\sqrt{30}-\sqrt{25}\fallingdotseq5.48-5=0.48$

と計算し、「標準偏差はおよそ $0.48$ です」と誤って答えてしまいます。

なぜ間違いなのか

これは、数と式の単元で習う「根号を含む式の計算」の間違いが、データの分析の中でもそのまま出てきてしまっているケースです。ルートの中に引き算(や足し算)が入っているとき、それぞれの項に別々にルートをつけて計算することはできません。つまり、一般に

$\sqrt{a-b}\neq\sqrt{a}-\sqrt{b}$

です。ルートの計算は、必ず「ルートの中身をすべて計算してから、最後にルートを取る」という順番を守らなければいけません。$\sqrt{30}-\sqrt{25}\fallingdotseq0.48$ という値は、正しい分散である $5$ から求まる値とは大きくかけ離れており、この時点でおかしいと気づけると理想的です。

正しい考え方

先にルートの中身である分散を最後まで計算してから、その結果にルートをつけます。

$s^2=\overline{x^2}-(\overline{x})^2=30-25=5$

$s=\sqrt{s^2}=\sqrt{5}$

$\sqrt{5}$ はこれ以上簡単な形にならない無理数なので、$\sqrt{5}\fallingdotseq2.24$ のように近似値で答えます。標準偏差は $\sqrt{5}$(およそ $2.24$)です。ルート記号を見たら、「中身の計算がすべて終わってからルートを取る」という順番を、毎回意識するようにしましょう。

間違い6: 相関が強いというだけで、因果関係があると決めつけてしまう

よくある誤答例

ある地域で、月ごとの「アイスクリームの売上」と「水難事故の件数」を調べたところ、正の相関(一方が大きくなると他方も大きくなる関係)が見られたとします。このデータを見て、「アイスクリームがよく売れると水難事故が増えるのだから、アイスクリームを食べることが水難事故の原因だ」と結論づけてしまう人がいます。

なぜ間違いなのか

相関関係とは、あくまで「2つの数量が同じように変化する傾向がある」ということを示しているだけであり、「一方が原因で、もう一方がその結果として起きている」という因果関係を意味するわけではありません。この例では、実際には「気温」という第三の要因(交絡因子と呼びます)が背景にあります。気温が高い時期には、アイスクリームがよく売れると同時に、海や川で泳ぐ人が増えるために水難事故も増える、という共通の原因があるだけなのです。アイスクリームの売上と水難事故の件数の間には、直接の因果関係はありません。

正しい考え方

散布図や相関係数によって強い相関が確認できても、そこから直接「原因と結果の関係がある」と主張することはできません。相関が見られたときは、次のような可能性をきちんと考える必要があります。

  • 本当に一方が原因でもう一方が結果になっている(因果関係がある)
  • 実は逆で、もう一方が原因になっている(因果の向きが逆)
  • 両方に影響を与えている、隠れた第三の要因(交絡因子)がある
  • たまたま偶然そうなっているだけ(疑似相関)

「相関があること」と「因果関係があること」は別のことである、という点を必ず区別して考えるようにしましょう。

間違い7: 相関係数が0に近いから、2つのデータには何の関係もないと判断してしまう

よくある誤答例

次の $5$ 個の $(x,\ y)$ のデータについて、相関係数を計算します。

$x:\ -2,\ -1,\ 0,\ 1,\ 2\qquad y:\ 4,\ 1,\ 0,\ 1,\ 4$

(これは $y=x^2$ という関係になっています。)

平均を求めると、$x$ の平均は $\overline{x}=\frac{-2-1+0+1+2}{5}=\frac{0}{5}=0$、$y$ の平均は $\overline{y}=\frac{4+1+0+1+4}{5}=\frac{10}{5}=2$ です。

相関係数の計算のもとになる、偏差(データと平均値の差)の積の合計を求めます。

$(-2-0)(4-2)=(-2)\times2=-4$

$(-1-0)(1-2)=(-1)\times(-1)=1$

$(0-0)(0-2)=0\times(-2)=0$

$(1-0)(1-2)=1\times(-1)=-1$

$(2-0)(4-2)=2\times2=4$

これらを合計すると、

$-4+1+0-1+4=0$

となり、偏差の積の合計が $0$ になるので、相関係数も $0$ になります。ここで「相関係数が $0$ ということは、$x$ と $y$ には何の関係もない」と結論づけてしまう人がいますが、これは誤りです。

なぜ間違いなのか

相関係数は、2つのデータの間に「直線的な関係(一方が増えると他方も一定の割合で増える、あるいは減る、という関係)」がどれくらい強いかを表す数値です。ところが、この例のデータは $y=x^2$ という、はっきりとした規則を持つ関係になっています。ただしこの関係は直線ではなく、放物線(グラフにすると $U$ 字型の曲線)を描く関係です。

$x$ が負の値から正の値に変わるとき、$y=x^2$ の値は減ってからまた増えるという動きをします。この「前半は減る・後半は増える」という動きが互いに打ち消し合ってしまうため、偏差の積の合計がちょうど $0$ になり、相関係数も $0$ になってしまうのです。つまり、相関係数が $0$ であることは「直線的な関係が見られない」ことを示しているだけで、「何の関係もない」ことまでは意味していません。

正しい考え方

相関係数はあくまで「直線的な関係の強さ」だけを測る指標だと理解しておく必要があります。相関係数が $0$、またはそれに近い値であっても、次のような可能性が残っています。

  • 本当にデータ同士に何の関係もない
  • 放物線や指数関数のような、直線ではない(曲線的な)規則正しい関係がある

このように相関係数だけでは判断を誤ることがあるため、相関係数の数値だけを見て結論を出すのではなく、必ず散布図(データを点で図示したもの)も自分の目で確認する習慣をつけましょう。散布図を見れば、この例のようにデータが放物線状に並んでいることがひと目で分かります。

間違い8: 仮説検定で「棄却されない」ことを「仮説が正しいと証明された」と考えてしまう

よくある誤答例

仮説検定とは、「本当にそう言えるのか」を確かめたい主張(対立仮説)に対して、いったん逆の立場である「差はない」「効果はない」という仮説(帰無仮説)を立て、実際のデータがその帰無仮説のもとでどれくらい起こりやすいかを調べることで、帰無仮説を否定できるかどうかを判断する考え方です。

例えば、あるコインについて「表と裏が出る確率はそれぞれ $\frac{1}{2}$ ずつである(偏りはない)」という帰無仮説を立てて検定を行い、有意水準(判断の基準にする確率、よく $5\%$ が使われます)のもとで、この帰無仮説は棄却されなかったとします。この結果を見て、「棄却されなかったのだから、このコインには偏りがないことが証明された」と結論づけてしまう人がいます。

なぜ間違いなのか

仮説検定で帰無仮説が「棄却されない」というのは、あくまで「今回集めたデータの範囲では、帰無仮説を否定するだけの十分に強い証拠が得られなかった」ということを意味しているだけです。「帰無仮説が正しいと積極的に証明された」ということとは全く違います。

これは裁判にたとえるとわかりやすくなります。裁判で「証拠不十分により無罪」という判決が出たとしても、それは「被告人が潔白であると証明された」ことを意味するわけではなく、「有罪だと確定するだけの十分な証拠が見つからなかった」ということを意味しているにすぎません。仮説検定における「棄却されない」も、これと同じように考えます。データをもっとたくさん集めれば、実は偏りが検出されるかもしれませんし、そうでないかもしれません。今回のデータだけでは、どちらとも断定できないというのが正しい理解です。

正しい考え方

仮説検定の結果は、次の2通りのどちらかとして理解しましょう。

  • 帰無仮説が棄却された場合:「帰無仮説のもとでは、それが起こる確率が有意水準より小さいくらいまれなデータが観測された」と言え、帰無仮説は誤りだったと判断してよい。
  • 帰無仮説が棄却されなかった場合:「今回のデータからは、帰無仮説を否定するだけの十分な根拠が見つからなかった」というだけであり、帰無仮説が正しいと積極的に証明されたわけではない。

「棄却されない」ことと「正しいと証明された」ことは、はっきりと区別しなければなりません。仮説検定の結論を書くときは、「〜であるとは言えない」「〜という帰無仮説を棄却するには至らない」のように、断定を避けた表現を使うようにしましょう。