数学A / 場合の数と確率
よくある間違い
数学A「場合の数と確率」は、公式の数が多く、似たような場面でどの公式を使えばよいか迷いやすい単元です。ここでは、実際によく見られる誤答を10個取り上げ、「なぜ間違えてしまうのか」「どう考えれば正しくたどり着けるのか」を1つずつ丁寧に確認していきます。自分がやってしまったことのある間違いがあっても、落ち込む必要はありません。間違いのパターンを知っておくことこそが、同じミスをくり返さないための一番の近道です。
間違い1:「積の法則」を使うべき場面で「和の法則」を使ってしまう
よくある誤答例 問題:大、中、小の3個のさいころを同時に投げるとき、目の出方は全部で何通りありますか。
誤答:$6+6+6=18$通り
なぜ間違いなのか 「和の法則」は、いくつかの場合分けがあって、それらが同時には起こらない(排反である)ときに、「どれか1つが起こる場合の数」を求めるために使う法則です。例えば「くじAを引くか、くじBを引くか、どちらか一方だけを選ぶ」という場面が和の法則にあたります。
一方、この問題では、大のさいころの目、中のさいころの目、小のさいころの目が、それぞれ同時に決まります。つまり「大の目が○であり、かつ中の目が○であり、かつ小の目が○である」という組み合わせを求めたいので、これは「積の法則」を使う場面です。「または」の場面なのか「かつ」の場面なのかを取り違えると、たし算とかけ算を逆に使ってしまいます。
正しい考え方 積の法則(ある作業の場合の数がそれぞれ独立に決まるとき、それらをすべてかけ合わせると全体の場合の数になるという法則)を使います。
- 大の目の出方:$6$通り
- そのそれぞれに対して、中の目の出方:$6$通り
- そのそれぞれに対して、小の目の出方:$6$通り
$6 \times 6 \times 6 = 216\text{通り}$
したがって、正しい答えは216通りです。
間違い2:「順列」と「組合せ」を混同してしまう
よくある誤答例 問題:5人の生徒A, B, C, D, Eの中から3人を選び、1列に並べて記念撮影をします。並び方は何通りありますか。
誤答:${}_{5}\mathrm{C}_{3} = 10$通り
なぜ間違いなのか ${}_{n}\mathrm{C}_{r}$(組合せ)は、$n$個の異なるものから$r$個を「順序を考えずに選ぶだけ」の場合の数を表す記号です。一方、${}_{n}\mathrm{P}_{r}$(順列)は、$n$個の異なるものから$r$個を取り出して「順序を区別して並べる」場合の数を表す記号です。
この問題では、「誰を選ぶか」だけでなく「どの順番で並ぶか」も答えに影響します(例えば同じ3人でも、並ぶ順番が違えば別の写真になります)。つまり「選んで、さらに並べる」という2段階の作業が必要なのに、組合せの公式だけを使うと、並べる部分の計算がまるごと抜け落ちてしまいます。
正しい考え方 順序を区別して並べる問題なので、順列の公式を使います。
${}_{5}\mathrm{P}_{3} = 5 \times 4 \times 3 = 60\text{通り}$
したがって、正しい答えは60通りです。ちなみに、${}_{5}\mathrm{C}_{3}=10$という計算自体は「3人の組み合わせ方」としては正しい値です。そこからさらに、選んだ3人を並べる$3!=6$通りをかけ合わせると、$10 \times 6 = 60$となり、順列の答えと一致することも確認しておきましょう。
間違い3:円順列を、ふつうの順列と同じ公式で計算してしまう
よくある誤答例 問題:5人が丸いテーブルに着席する座り方は何通りありますか。
誤答:$5! = 120$通り
なぜ間違いなのか 円順列とは、異なるものを円形に並べる並べ方の数のことで、全体を回転させると同じ配置になるものは、すべて同じ1通りとみなします。ふつうの順列の公式$n!$は「1列に並べる」場合の数なので、円形に並べたときに回転させれば同じになる配置まで、すべて別々の並べ方として数えてしまっています。
具体的には、5人を1列に並べる$5!=120$通りの中には、円形にしたときに同じ配置になるものが$5$通りずつ含まれています(円をどれだけ回転させるかで$5$通りの見え方があるため)。したがって、$120$通りをそのまま答えにすると、実際の配置の数よりも$5$倍多く数えてしまうことになります。
正しい考え方 円順列の総数は、$1$列に並べる場合の数$n!$を、回転の分だけ重複している数$n$で割って求めます。
$\text{円順列の総数} = \frac{n!}{n} = (n-1)!$
$n=5$の場合、
$(5-1)! = 4! = 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 24\text{通り}$
したがって、正しい答えは24通りです。
間違い4:重複組合せで、種類の数と選ぶ個数を取り違える
よくある誤答例 問題:りんご、みかん、ぶどうの3種類の果物の中から、合計5個を選びます(同じ種類を何個選んでもよく、種類ごとの個数だけが問題で、りんご同士を区別したりはしません)。選び方は何通りありますか。
誤答:$n$と$r$を逆にして、${}_{5}\mathrm{H}_{3} = {}_{5+3-1}\mathrm{C}_{3} = {}_{7}\mathrm{C}_{3} = 35$通り
なぜ間違いなのか ${}_{n}\mathrm{H}_{r}$(重複組合せ)は、「異なる$n$種類のものから、同じ種類を何個でも選んでよいという条件で、合計$r$個を選ぶ場合の数」を表す記号です。左下の$n$は必ず「もとになる種類の数」、右下の$r$は必ず「選ぶ個数の合計」を表します。
この問題では、種類の数は「りんご・みかん・ぶどう」の$3$種類、選ぶ個数の合計は$5$個です。ところが誤答では、これを逆にして$n=5$、$r=3$として公式に当てはめてしまっています。文章題の中に出てくる数字を、意味を確認せずに公式の形にそのまま当てはめてしまうと、こうした取り違えが起こりやすくなります。
正しい考え方 種類の数$n=3$、選ぶ個数$r=5$として、公式${}_{n}\mathrm{H}_{r} = {}_{n+r-1}\mathrm{C}_{r}$に当てはめます。
${}_{3}\mathrm{H}_{5} = {}_{3+5-1}\mathrm{C}_{5} = {}_{7}\mathrm{C}_{5}$
${}_{7}\mathrm{C}_{5}$は、${}_{n}\mathrm{C}_{r} = {}_{n}\mathrm{C}_{n-r}$という性質(7個から5個選ぶことは、選ばれない残り2個を決めることと同じ)を使うと、
${}_{7}\mathrm{C}_{5} = {}_{7}\mathrm{C}_{2} = \frac{7 \times 6}{2 \times 1} = 21$
したがって、正しい答えは21通りです。
間違い5:「同様に確からしい」かどうかを確認せずに確率を計算してしまう
よくある誤答例 問題:大小2つのさいころを同時に投げるとき、出た目の和が$7$になる確率を求めなさい。
誤答:目の和は$2, 3, 4, \ldots, 12$の$11$通りが考えられるから、確率は$\dfrac{1}{11}$
なぜ間違いなのか 確率を$\dfrac{(その事象が起こる場合の数)}{(全部の場合の数)}$という形で計算するためには、分母に使う「全部の場合の数」が「同様に確からしい」もの、つまりどの1つをとっても、起こりやすさがまったく同じものでなければなりません。
しかし、目の和が$2$になるのは$(1,1)$の$1$通りしかないのに対し、目の和が$7$になるのは$(1,6),(2,5),(3,4),(4,3),(5,2),(6,1)$のように何通りもの組み合わせがあります。つまり「和が$2$になる」ことと「和が$7$になる」ことは、起こりやすさが全然違うのに、$11$通りのうちの$1$通りとして同じ重みで数えてしまっているのが誤りの原因です。
正しい考え方 同様に確からしい根元事象(これ以上細かく分けられない、一番基本的な結果)として、(大の目, 小の目)の組を考えます。これなら$6 \times 6 = 36$通りのどれもが、同じ確率$\dfrac{1}{36}$で起こります。
目の和が$7$になるのは、先ほど数えた$(1,6),(2,5),(3,4),(4,3),(5,2),(6,1)$の$6$通りです。したがって、確率は
$\frac{6}{36} = \frac{1}{6}$
となります。正しい答えは$\dfrac{1}{6}$です。
間違い6:排反でない事象に、加法定理を単純なたし算だけで使ってしまう
よくある誤答例 問題:$1$から$20$までの整数が1つずつ書かれた$20$枚のカードから$1$枚引くとき、そのカードの数が「$3$の倍数」または「偶数」である確率を求めなさい。
誤答:$3$の倍数は$3,6,9,12,15,18$の$6$枚、偶数は$10$枚だから、$\dfrac{6}{20}+\dfrac{10}{20}=\dfrac{16}{20}=\dfrac{4}{5}$
なぜ間違いなのか 確率の加法定理には2つの形があります。事象$A$、$B$が同時には起こらない(排反である)場合は$P(A \cup B)=P(A)+P(B)$という単純なたし算でよいのですが、$A$と$B$が同時に起こりうる(排反でない)場合は、重なった部分を1回分だけ引く必要があります。
「$3$の倍数である」ことと「偶数である」ことは、同時に成り立つ数(つまり$6$の倍数:$6,12,18$)があるので、排反ではありません。この$6$の倍数$3$枚は、「$3$の倍数」を数えるときにも「偶数」を数えるときにも、どちらにもカウントされています。そのため、単純に$\dfrac{6}{20}+\dfrac{10}{20}$を計算すると、この$3$枚分を2回数えてしまい、答えが大きくなりすぎます。
正しい考え方 一般の加法定理$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$を使います。$A$を「$3$の倍数」、$B$を「偶数」とすると、$A \cap B$(両方を満たす、つまり$6$の倍数)は$6,12,18$の$3$枚です。
$P(A \cup B) = \frac{6}{20} + \frac{10}{20} - \frac{3}{20} = \frac{13}{20}$
したがって、正しい答えは$\dfrac{13}{20}$です。
間違い7:独立試行の「ともに起こる」確率を、たし算で計算してしまう
よくある誤答例 問題:$1$枚のコインを$1$回投げて表が出る事象を$A$、$1$個のさいころを$1$回投げて$1$の目が出る事象を$B$とします。$A$と$B$がともに起こる確率を求めなさい。
誤答:$P(A)+P(B) = \dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{6} = \dfrac{2}{3}$
なぜ間違いなのか 「$A$と$B$がともに起こる」というのは、積事象$A \cap B$(AとBが同時に起こるという事象)のことです。コインを投げる試行とさいころを投げる試行は、お互いの結果に一切影響を与えない独立な試行なので、「ともに起こる」確率は、それぞれの確率をかけ合わせて求めます。
一方、たし算$P(A)+P(B)$を使ってよいのは、加法定理のところで確認したとおり「$A$または$B$が起こる確率」(しかも$A$と$B$が排反な場合)を求めたいときです。「ともに起こる(かつ)」の場面で「または」用のたし算を使ってしまったのが、この誤答の原因です。
正しい考え方 $A$と$B$は独立な試行の結果なので、
$P(A \cap B) = P(A) \times P(B) = \frac{1}{2} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{12}$
したがって、正しい答えは$\dfrac{1}{12}$です。
間違い8:反復試行の確率で、組合せの数をかけ忘れる
よくある誤答例 問題:$1$個のさいころを$4$回投げるとき、$1$の目がちょうど$2$回出る確率を求めなさい。
誤答:$\left(\dfrac{1}{6}\right)^{2}\left(\dfrac{5}{6}\right)^{2} = \dfrac{25}{1296}$
なぜ間違いなのか この式$\left(\dfrac{1}{6}\right)^{2}\left(\dfrac{5}{6}\right)^{2}$が表しているのは、あくまで「$4$回のうち、決まった順番(例えば$1$回目と$2$回目が$1$の目、$3$回目と$4$回目が$1$以外の目)」で$1$の目がちょうど$2$回出る、という1つの並び方だけの確率です。
しかし実際には、「$4$回のうちどの$2$回で$1$の目が出るか」という選び方が何通りもあります(例えば$1,2$回目、$1,3$回目、$2,4$回目、など)。これらの並び方をすべて合計しなければ、「ちょうど$2$回出る」確率にはなりません。この「並び方が何通りあるか」を数える部分が、組合せ${}_{4}\mathrm{C}_{2}$です。
正しい考え方 反復試行の確率の公式は、$1$回あたり事象が起こる確率を$p$、起こらない確率を$q=1-p$として、
$P(X=r) = {}_{n}\mathrm{C}_{r}\, p^{r} q^{n-r}$
です。この問題では$n=4$, $r=2$, $p=\dfrac{1}{6}$, $q=\dfrac{5}{6}$なので、
${}_{4}\mathrm{C}_{2} \times \left(\frac{1}{6}\right)^{2} \times \left(\frac{5}{6}\right)^{2} = 6 \times \frac{25}{1296} = \frac{150}{1296} = \frac{25}{216}$
したがって、正しい答えは$\dfrac{25}{216}$です。組合せの数${}_{4}\mathrm{C}_{2}$をかけ忘れると、答えがまったく違う値になってしまうことがわかります。
間違い9:条件付き確率で、分母にする確率を取り違える
よくある誤答例 問題:$1$から$10$までの数字が1つずつ書かれた$10$枚のカードから$1$枚を引きます。事象$A$を「引いたカードが偶数である」、事象$B$を「引いたカードが$3$の倍数である」とします。$A$が起こったとわかっているときに、$B$も起こっている条件付き確率$P_A(B)$を求めなさい。
誤答:分母を$P(B)$にしてしまい、$\dfrac{P(A \cap B)}{P(B)} = \dfrac{1/10}{3/10} = \dfrac{1}{3}$
なぜ間違いなのか 条件付き確率$P_A(B)$は、「$A$が起こったという条件のもとで、$B$が起こる確率」のことで、公式は
$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$
です。この式の分母は、必ず「条件として与えられているほう」、つまり$P_A(B)$の場合は$P(A)$でなければなりません。誤答のように分母を$P(B)$にしてしまうと、それは向きが逆の条件付き確率$P_B(A)$(「$B$が起こったという条件のもとで$A$が起こる確率」)を計算したことになってしまいます。$P_A(B)$と$P_B(A)$は一般には値が異なる別のものなので、どちらを求めたいのかを問題文でしっかり確認する必要があります。
正しい考え方 $A=\{2,4,6,8,10\}$の$5$枚、$B=\{3,6,9\}$の$3$枚、$A \cap B=\{6\}$の$1$枚です(偶数かつ$3$の倍数になるのは$6$だけです)。したがって、
$P(A) = \frac{5}{10}, \quad P(A \cap B) = \frac{1}{10}$
これらを、分母を$P(A)$にした正しい公式に代入すると、
$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} = \frac{1/10}{5/10} = \frac{1}{5}$
したがって、正しい答えは$\dfrac{1}{5}$です。ちなみに誤答で計算した$\dfrac{1}{3}$は、$P_B(A)$(「$3$の倍数とわかっているときに、偶数である確率」)の値としては正しい数値になっています。求めたい条件付き確率がどちら向きなのかを取り違えると、計算自体は合っていても答えとしては誤りになってしまうので注意しましょう。
間違い10:期待値の計算で、確率の重みを無視して単純平均をとってしまう
よくある誤答例 問題:赤玉$3$個、白玉$2$個が入った袋から玉を$1$個取り出します。赤玉が出たら$100$点、白玉が出たら$300$点もらえるとき、もらえる点数の期待値を求めなさい。
誤答:$2$つの点数をそのまま平均して、$\dfrac{100+300}{2} = 200$点
なぜ間違いなのか 期待値とは、「その値が起こる確率」を重みとして、すべての値を平均したものです。赤玉が出る確率$\dfrac{3}{5}$と白玉が出る確率$\dfrac{2}{5}$は等しくありません(赤玉のほうが出やすい)。起こりやすさが違うのに、$100$点と$300$点をただ単純に足して$2$で割ってしまうと、「赤玉のほうが出やすい」という情報がまったく反映されず、正しい期待値にはなりません。
正しい考え方 期待値$E$は、(値)$\times$(その値が起こる確率)を、すべての場合について足し合わせて求めます。赤玉が出る確率は$\dfrac{3}{5}$、白玉が出る確率は$\dfrac{2}{5}$なので、
$E = 100 \times \frac{3}{5} + 300 \times \frac{2}{5} = 60 + 120 = 180\text{点}$
したがって、正しい答えは180点です。単純平均の$200$点よりも小さい値になっているのは、点数の低い赤玉のほうが出やすいことが、正しく反映された結果です。
ここまで10個の間違いを見てきましたが、共通しているのは「公式そのものは知っているのに、どの場面でどの公式を使うのかを取り違えてしまう」というパターンです。問題を解くときは、公式に数字を当てはめる前に、「これは並べる問題か、選ぶだけの問題か」「事象は同時に起こりうるか」「求めたいのはどちら向きの確率か」といったポイントを、いったん言葉で確認する習慣をつけましょう。それだけで、ここに挙げたような間違いのかなりの部分を防ぐことができます。