数学III / 微分法
速度・加速度と近似式への応用
要点整理
直線上の運動の速度・加速度
数直線上を動く点の位置(座標)が、時刻 $t$ の関数として $x=x(t)$ と表されているとします。このとき、位置の変化の割合である速度は、位置を時刻 $t$ で微分したものです。
$v(t) = \frac{dx}{dt} = x'(t)$
速度 $v(t)$ は、正なら正の向きに、負なら負の向きに動いていることを表します。速度の大きさ $|v(t)|$ のことを速さといいます。
さらに、速度の変化の割合である加速度は、速度を時刻 $t$ でもう1回微分したもの(つまり、位置の第2次導関数)です。
$a(t) = \frac{dv}{dt} = v'(t) = x''(t)$
速度と加速度の符号の組み合わせから、運動の様子が読み取れます。
- 速度と加速度が同符号(両方正、または両方負)→ 速さが増している(加速)
- 速度と加速度が異符号 → 速さが減っている(減速)
平面上の運動の速度・加速度
平面上を動く点の位置が、媒介変数 $t$(時刻)を使って $x=x(t)$、$y=y(t)$ と表されているとします。このとき、速度は $x$ 方向・$y$ 方向それぞれの変化の割合を組にした速度ベクトルとして表されます。
$\vec{v} = \left(\frac{dx}{dt},\ \frac{dy}{dt}\right)$
このときの速さ(速度ベクトルの大きさ)は、三平方の定理の考え方を使って、
$|\vec{v}| = \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}$
と表されます。同じように、加速度もベクトルとして、位置を2回微分したものになります。
$\vec{a} = \left(\frac{d^2x}{dt^2},\ \frac{d^2y}{dt^2}\right)$
近似式
導関数の定義
$f'(a) = \lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$
を振り返ると、$h$ が $0$ に近いとき(ただし $0$ そのものではないとき)、左辺の極限の中身である $\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$ の値は、極限値 $f'(a)$ に近い値になっているはずです。つまり、
$\frac{f(a+h)-f(a)}{h} \approx f'(a)$
この式の両辺に $h$ を掛けて、$f(a+h)-f(a)$ について整理すると、
$f(a+h)-f(a) \approx f'(a)h \quad\Longrightarrow\quad f(a+h) \approx f(a)+f'(a)h$
という近似式が得られます。これは、「$x=a$ における接線を使って、$x=a+h$($a$ に近い点)での $f$ の値を近似する」という意味を持っています。$f(a)$ や $f'(a)$ が簡単に計算できる点 $a$ を選ぶことで、直接計算するのが面倒な値($\sqrt{4.02}$ など)のおおよその値を求めることができます。
例題
例題1(基本)
問題
数直線上を動く点の時刻 $t$($t\geq 0$)における位置が $x(t)=t^3-6t^2+9t$ で表されている。$t=0$ における速度・加速度を求め、このときの点の運動の様子(向き、速さが増しているか減っているか)を答えなさい。
解答・解説を見る
速度・加速度を求める
位置を1回微分して速度を求めます。
$v(t) = x'(t) = 3t^2-12t+9$
速度をもう1回微分して加速度を求めます。
$a(t) = v'(t) = 6t-12$
$t=0$ での値を求める
$v(0) = 3\times 0^2-12\times 0+9 = 9$
$a(0) = 6\times 0-12 = -12$
運動の様子を読み取る
$v(0)=9>0$ なので、点は正の向きに動いています。$a(0)=-12<0$ で、速度($+$)と加速度($-$)が異符号なので、速さは減っています(減速中)。
答え:$v(0)=9$、$a(0)=-12$。正の向きに動いているが、速さは減っている(減速中)。
例題2(標準)
問題
近似式を利用して、$\sqrt{4.02}$ のおおよその値を求めなさい。
解答・解説を見る
$f(x)=\sqrt{x}$ とおきます。$4.02=4+0.02$ と考えて、$a=4$、$h=0.02$ とします($a=4$ を選ぶのは、$\sqrt{4}=2$ ときれいな値になり、計算しやすいからです)。
$f'(x)$ を求めます。$f(x)=x^{\frac12}$ なので、
$f'(x) = \frac{1}{2}x^{-\frac12} = \frac{1}{2\sqrt{x}}$
$a=4$ での $f(a)$、$f'(a)$ を求めます。
$f(4) = \sqrt{4} = 2,\qquad f'(4) = \frac{1}{2\sqrt{4}} = \frac{1}{2\times 2} = \frac{1}{4}$
近似式 $f(a+h)\approx f(a)+f'(a)h$ に代入します。
$\sqrt{4.02} = f(4+0.02) \approx f(4)+f'(4)\times 0.02 = 2+\frac{1}{4}\times 0.02$
$= 2+0.005 = 2.005$
答え:$\sqrt{4.02}\approx 2.005$
(実際の値は $\sqrt{4.02}=2.0049938\ldots$ なので、近似式によってかなり正確な値が得られていることが分かります。)
例題3(応用)
問題
平面上を動く点の位置が、時刻 $t$ を用いて $x(t)=\cos t$、$y(t)=\sin t$ で表されている(単位円上を動く点の運動)。この点の速さが、時刻 $t$ によらず常に一定であることを示しなさい。また、加速度ベクトルの向きについて分かることを述べなさい。
解答・解説を見る
速度ベクトルと速さを求める
$x(t)$、$y(t)$ をそれぞれ $t$ で微分します。
$\frac{dx}{dt} = -\sin t,\qquad \frac{dy}{dt} = \cos t$
速さの公式に代入します。
$|\vec{v}| = \sqrt{(-\sin t)^2+(\cos t)^2} = \sqrt{\sin^2 t+\cos^2 t}$
三角関数の相互関係 $\sin^2 t+\cos^2 t=1$ より、
$|\vec{v}| = \sqrt{1} = 1$
これは $t$ の値によらず常に $1$ という一定の値なので、速さは時刻によらず常に一定である(等速で運動している)ことが示されました。
加速度ベクトルを求める
速度をさらにそれぞれ $t$ で微分します。
$\frac{d^2x}{dt^2} = -\cos t,\qquad \frac{d^2y}{dt^2} = -\sin t$
したがって、
$\vec{a} = (-\cos t,\ -\sin t)$
これは、位置ベクトル $(x(t),y(t))=(\cos t,\sin t)$ のちょうど $-1$ 倍になっています。つまり、
$\vec{a} = -(\cos t,\sin t) = -(x(t),y(t))$
位置ベクトルは原点から点までを結ぶ向きを表すので、その $-1$ 倍である加速度ベクトルは、常に原点(円の中心)の向きを向いていることが分かります。
答え:速さは常に $1$ で一定である(等速円運動)。加速度ベクトルは $\vec{a}=-(\cos t,\sin t)$ で、常に円の中心(原点)を向いている。
練習問題
問題1
数直線上を動く点の位置が $x(t)=t^3-3t^2$($t\geq 0$)で表されている。$t=2$ における速度・加速度を求めなさい。
答え
$v(t)=3t^2-6t$ より $v(2)=12-12=0$。$a(t)=6t-6$ より $a(2)=6$ です。
問題2
近似式を利用して、$\sqrt[3]{8.06}$ のおおよその値を求めなさい。
答え
$f(x)=x^{\frac13}$、$a=8$、$h=0.06$ とすると、$f(8)=2$、$f'(x)=\dfrac{1}{3}x^{-\frac23}$ より $f'(8)=\dfrac{1}{3}\times\dfrac{1}{4}=\dfrac{1}{12}$。近似式より $\sqrt[3]{8.06}\approx 2+\dfrac{1}{12}\times 0.06=2+0.005=2.005$ です。