数学B / 統計的な推測

よくある間違い

間違い1: 確率分布の確率の合計を確認しない

よくある誤答例

確率変数 $X$ が $0,1,2$ の値をとるとして、確率を $P(X=0)=0.3$、$P(X=1)=0.5$、$P(X=2)=0.3$ のように書いてしまい、そのまま答えにしてしまう。

なぜ間違いなのか

確率分布は、すべての確率を足し合わせると必ず $1$ になるという性質を持っています。上の例では $0.3+0.5+0.3=1.1$ となり、$1$ を超えてしまっています。これは、途中の計算のどこかに間違いがあることを示しています。

正しい考え方

確率分布の表を作ったら、必ず確率の合計を計算して、$1$ になっているかを確認する習慣をつけましょう。合計が$1$にならない場合は、どこかの場合の数や確率の計算にミスがあるはずなので、見直しましょう。

間違い2: 分散の公式で $E(X^2)$ と $\{E(X)\}^2$ を混同する

よくある誤答例

分散の公式 $V(X)=E(X^2)-\{E(X)\}^2$ を使うときに、$E(X)$ を求めた後、その値をそのまま「$E(X^2)$」の欄に書いてしまったり、逆に先に全部を足してから2乗してしまったりする。

なぜ間違いなのか

$E(X^2)$ は「それぞれの値を先に2乗してから、確率をかけて合計する」量です。式で書くと $E(X^2)=\displaystyle\sum x_i^2 P(X=x_i)$ です。一方、$\{E(X)\}^2$ は「先に期待値を計算してから、その結果を2乗する」量です。計算する順番がまったく違うので、この2つを混同すると正しい分散が求まりません。

正しい考え方

$E(X^2)=\displaystyle\sum x_i^2 P(X=x_i)$(2乗してから合計)と、$\{E(X)\}^2=\left(\displaystyle\sum x_i P(X=x_i)\right)^2$(合計してから2乗)を、それぞれ別の式として紙に書き出し、どちらを計算しているのか常に意識しましょう。

間違い3: 二項分布の分散で $(1-p)$ をかけ忘れる

よくある誤答例

二項分布 $B(n,p)$ の分散を求めるときに、期待値の公式 $E(X)=np$ と混同してしまい、分散も $V(X)=np$ だと思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

二項分布の期待値は $E(X)=np$、分散は $V(X)=np(1-p)$ という、似ているけれど別々の公式です。分散の公式には $(1-p)$ をかける部分があり、これを忘れると正しい値が求まりません。

正しい考え方

期待値と分散の公式は必ずセットで覚え、「分散には $(1-p)$ がもう1つかかっている」ことを意識しましょう。$p=0.5$ のときは $1-p=0.5$ で見た目が同じになりがちなので、それ以外の $p$ の値でも公式を確認しておくとよいです。

間違い4: $N(m,\sigma^2)$ の2番目の数を標準偏差だと思い込む

よくある誤答例

正規分布 $N(50,16)$ と書かれているのを見て、標準偏差を $16$ だと思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

正規分布の記号 $N(m,\sigma^2)$ の2番目の数は「分散」$\sigma^2$ であり、「標準偏差」$\sigma$ そのものではありません。標準偏差を求めるには、この数の平方根を取る必要があります。

正しい考え方

$N(50,16)$ であれば、分散は $\sigma^2=16$ なので、標準偏差は $\sigma=\sqrt{16}=4$ です。$N(m,\sigma^2)$ のかっこの中の2番目の数を見たら、反射的に「平方根を取る」というひと手間を忘れないようにしましょう。

間違い5: 標準化の式を掛け算にしてしまう

よくある誤答例

標準化の式を $Z=(X-m)\times\sigma$ のように、割り算ではなく掛け算で計算してしまう。

なぜ間違いなのか

標準化の式は $Z=\dfrac{X-m}{\sigma}$ という「割り算」の式です。平均からの差 $X-m$ を、標準偏差 $\sigma$ で割ることによって、単位やスケールをそろえて標準正規分布に対応させる、という意味を持っています。掛け算にしてしまうと、値のスケールがまったく変わってしまい、正規分布表が使えなくなります。

正しい考え方

標準化の式は必ず分数の形 $Z=\dfrac{X-m}{\sigma}$ で覚え、「引いてから割る」という順番を意識しましょう。

間違い6: 正規分布表の値を「ちょうどその値になる確率」だと誤解する

よくある誤答例

正規分布表に載っている $P(0\leq Z\leq2)=0.4772$ という値を、「$Z$ がちょうど $2$ になる確率」だと誤解してしまう。

なぜ間違いなのか

正規分布のような連続型確率変数では、「ちょうどある1つの値になる確率」は常に$0$として扱われます(1つの点には面積がないためです)。正規分布表の値は、あくまで「$0$以上$z$以下という範囲」に入る確率、つまりグラフの下側の面積を表しています。

正しい考え方

正規分布表の値は必ず「範囲」の確率(面積)であることを意識しましょう。求めたい範囲に応じて、標準正規分布の対称性や、片側の確率の性質($P(Z\geq z)=0.5-P(0\leq Z\leq z)$ など)を使って、表の値を組み合わせて計算します。

間違い7: 標本平均の標準偏差で根号を忘れる

よくある誤答例

標本平均の標準偏差を $\sigma(\overline{X})=\dfrac{\sigma}{n}$ のように、根号($\sqrt{\ }$)をつけずに計算してしまう。

なぜ間違いなのか

標本平均の分散は $V(\overline{X})=\dfrac{\sigma^2}{n}$ です。標準偏差は分散の正の平方根なので、$\sigma(\overline{X})=\sqrt{\dfrac{\sigma^2}{n}}=\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}$ となり、分母には $n$ ではなく $\sqrt{n}$ が入ります。根号を取る操作を忘れると、$n$ の扱いが変わってしまい、答えが大きくずれます。

正しい考え方

先に分散 $V(\overline{X})=\dfrac{\sigma^2}{n}$ を正確に求め、そのあとで全体の平方根を取って標準偏差にする、という順番を必ず守りましょう。

間違い8: 仮説検定で「棄却されない」ことを「正しいと証明された」と誤解する

よくある誤答例

仮説検定で、検定統計量 $Z$ の値が棄却域に入らなかったときに、「帰無仮説 $H_0$ が正しいことが証明された」と結論づけてしまう。

なぜ間違いなのか

仮説検定は、あくまで「帰無仮説が正しいと仮定したときに、今回のデータほど極端なことが起こる確率」を調べて、それが有意水準より小さいかどうかを判断する手法です。棄却域に入らなかったというのは、「帰無仮説を否定するだけの十分な証拠が、今回のデータからは得られなかった」ことを意味するにすぎず、「帰無仮説が正しいと積極的に証明された」わけではありません。標本の大きさが小さかったり、差が小さかったりして、たまたま検出できなかっただけという可能性も残っています。

正しい考え方

棄却域に入らなかった場合の結論は、「帰無仮説を棄却するには至らなかった」という表現にとどめ、「帰無仮説が正しいと証明された」とは書かないようにしましょう。