数学I / データの分析
データの代表値(平均・中央値・最頻値)
要点整理
この単元「データの分析」の最初のトピックです。特別な前提知識は必要なく、中学までに習った四則計算(たし算・ひき算・かけ算・わり算)ができれば十分に理解できます。
代表値とは何か
たとえば、あるクラス40人の数学のテストの点数が1人ずつバラバラに書かれた表を渡されても、「このクラスはだいたいどれくらいの点数なのか」をひと目で判断するのは大変です。そこで、データ全体の特徴をたった1つの数値で表したものを代表値と呼びます。代表値には、これから学ぶ「平均値」「中央値」「最頻値」の3種類があります。それぞれ計算方法も、得意な場面も異なるので、順番に見ていきましょう。
平均値(そのデータの合計を個数で割ったもの)
平均値は、中学校でも習った「平均」のことです。すべてのデータを足し合わせて、データの個数で割ることで求めます。式で書くと、次のようになります。
$\bar{x} = \frac{x_1 + x_2 + \cdots + x_n}{n}$
この式に出てくる記号の意味を1つずつ確認しましょう。
- $x_1, x_2, \cdots, x_n$ は、集めた個々のデータの値です(たとえば1人目の点数、2人目の点数、…、$n$人目の点数)。
- $n$ は、データの個数(何人分・何個分のデータか)です。
- $\bar{x}$ は「エックスバー」と読み、平均値を表す記号です。文字の上に横棒(バー)が付いているのが目印です。
たとえば、3人のテストの点数が $60, 70, 80$ だったとすると、平均値は
$\bar{x} = \frac{60 + 70 + 80}{3} = \frac{210}{3} = 70$
となります。合計を出してから、人数で割る。この2ステップだけです。
中央値(データを並べたときの真ん中の値)
中央値(メジアン) は、データを小さい順(または大きい順)に並べたときに、ちょうど真ん中に来る値のことです。平均値と違って、足し算・割り算は使いません。手順は次の2ステップです。
ステップ1:データを小さい順に並べ替える。
これを忘れると正しい中央値が求められないので、必ず最初に行いましょう。
ステップ2:データの個数 $n$ が奇数か偶数かで場合分けする。
- $n$ が奇数のとき:並べ替えたデータのちょうど真ん中の1つの値が中央値です。たとえば $n=5$ なら、小さい方から3番目の値が中央値になります。
- $n$ が偶数のとき:真ん中に来る値が2つになるので、その2つの値の平均(2つを足して2で割った値)が中央値です。たとえば $n=6$ なら、小さい方から3番目と4番目の値を足して2で割ります。
奇数のときの具体例として、$3, 8, 5$ というデータを考えてみましょう。まず小さい順に並べ替えると $3, 5, 8$ です。個数は $n=3$(奇数)なので、真ん中の1つ、つまり $5$ が中央値です。
偶数のときの具体例として、$3, 8, 5, 10$ というデータを考えてみましょう。小さい順に並べ替えると $3, 5, 8, 10$ です。個数は $n=4$(偶数)なので、真ん中の2つの値 $5$ と $8$ の平均を取り、
$\frac{5+8}{2} = \frac{13}{2} = 6.5$
が中央値になります。
最頻値(いちばん多く出てくる値)
最頻値(モード) は、データの中で最も多く現れている値のことです。たとえば $2, 3, 3, 3, 5$ というデータでは、$3$ が3回登場していて一番多いので、最頻値は $3$ です。
ここで注意しておきたい点が2つあります。
- データの中にすべて同じ回数しか出てこない値しかない場合(たとえば $1, 2, 3, 4, 5$ のようにすべて1回ずつしか出てこない場合)は、「最頻値なし」とすることが多いです。
- 最も多く出てくる値が2種類以上ある場合は、その両方が最頻値になります(最頻値が2つ以上存在する場合もあります)。
度数分布表からの平均値の求め方(応用)
実際のデータでは、1つ1つの値をすべて書き出すのではなく、「0点以上10点未満は何人」のように区間ごとの人数をまとめた度数分布表が使われることもあります。この区間のことを階級、区間の中央の値(代表として使う値)を階級値、それぞれの階級に入っているデータの個数を度数と呼びます。度数分布表から平均値を求めるときは、階級値を使って次の式で計算します。
$\bar{x} = \frac{x_1 f_1 + x_2 f_2 + \cdots + x_k f_k}{f_1 + f_2 + \cdots + f_k}$
ここで、$x_1, x_2, \cdots, x_k$ はそれぞれの階級の階級値、$f_1, f_2, \cdots, f_k$ はそれぞれの階級の度数(人数)です。つまり「(階級値)×(その階級の度数)」を全部の階級について足し合わせ、度数の合計(全体の人数)で割る、という考え方です。これは1人ずつのデータの代わりに、階級値を「その階級に入っている人たちの代表の値」とみなして平均を計算しているイメージです。
3つの代表値の使い分け
最後に、3つの代表値の特徴を比べておきましょう。
- 平均値は全データの値を使うので、データ全体のバランスを反映しますが、極端に大きい(または小さい)値である外れ値が1つ混ざっているだけで、大きく引っ張られてしまうという弱点があります。
- 中央値は真ん中の順位にある値だけで決まるので、外れ値があってもほとんど影響を受けません。
- 最頻値は「一番よくある値」を知りたいときに便利です(たとえば、一番売れているサイズの服は何かを知りたいときなど)。
この「外れ値に強いか弱いか」という違いは、例題3で実際の数値を使って確認します。
例題
例題1(基本)
問題
5人の生徒が受けた小テスト(10点満点)の得点は、次の通りでした。
$3点,\ 5点,\ 5点,\ 6点,\ 9点$
このデータについて、平均値・中央値・最頻値をそれぞれ求めなさい。
解答・解説を見る
平均値を求める
まず、5人の得点をすべて足し合わせます。
$3 + 5 + 5 + 6 + 9 = 28$
次に、データの個数 $n=5$ で割ります。
$\bar{x} = \frac{28}{5} = 5.6$
よって、平均値は $5.6$ 点です。
中央値を求める
まず、データを小さい順に並べ替えます。今回のデータ $3, 5, 5, 6, 9$ は、もとからすでに小さい順に並んでいます。
データの個数は $n=5$ で奇数なので、真ん中の1つの値、つまり小さい方から3番目の値が中央値です。小さい方から数えると、1番目が $3$、2番目が $5$、3番目が $5$ なので、中央値は $5$ 点です。
最頻値を求める
それぞれの値が何回出てくるかを数えます。$3$ は1回、$5$ は2回、$6$ は1回、$9$ は1回です。最も多く出てくるのは $5$(2回)なので、最頻値は $5$ 点です。
まとめ:平均値 $5.6$ 点、中央値 $5$ 点、最頻値 $5$ 点
例題2(標準)
問題
ある部活動員8人の年齢(歳)を調べたところ、次のようになりました(順不同で記録されています)。
$15,\ 12,\ 18,\ 12,\ 20,\ 14,\ 16,\ 12$
このデータについて、平均値・中央値・最頻値をそれぞれ求めなさい。
解答・解説を見る
平均値を求める
まず、8人分のデータをすべて足し合わせます。順番はどのように足しても合計は変わらないので、与えられた順のまま計算します。
$15+12+18+12+20+14+16+12$
左から順に計算していきます。
$15+12=27$
$27+18=45$
$45+12=57$
$57+20=77$
$77+14=91$
$91+16=107$
$107+12=119$
合計は $119$ です。データの個数は $n=8$ なので、
$\bar{x} = \frac{119}{8} = 14.875$
よって、平均値は $14.875$ 歳です。
中央値を求める
このデータは順不同で与えられているので、中央値を求める前に必ず小さい順に並べ替える必要があります。並べ替えると、
$12,\ 12,\ 12,\ 14,\ 15,\ 16,\ 18,\ 20$
となります(もとのデータには $12$ が3個、$14, 15, 16, 18, 20$ がそれぞれ1個ずつあります)。
データの個数は $n=8$ で偶数なので、真ん中に来る2つの値、つまり小さい方から4番目と5番目の値を使います。並べ替えたデータで数えると、4番目は $14$、5番目は $15$ です。この2つの平均を取ります。
$\frac{14+15}{2} = \frac{29}{2} = 14.5$
よって、中央値は $14.5$ 歳です。
最頻値を求める
並べ替えたデータを見ると、$12$ が3回、$14, 15, 16, 18, 20$ がそれぞれ1回ずつ出てきています。最も多く出てくるのは $12$(3回)なので、最頻値は $12$ 歳です。
まとめ:平均値 $14.875$ 歳、中央値 $14.5$ 歳、最頻値 $12$ 歳
例題3(応用)
問題
ある高校の部活動員5人の体重(kg)を調べたところ、4人分のデータは $55, 58, 62, 65$ とわかっており、5人の平均体重は $60$ kgでした。
(1) 残りの1人の体重を $x$ kgとして、$x$ の値を求めなさい。
(2) この5人の体重データの中央値を求めなさい。
(3) この5人に、体重 $90$ kgの新入部員が加わり6人になったとき、平均値と中央値はそれぞれどのように変化するか、理由とともに説明しなさい。
解答・解説を見る
(1) $x$ の値を求める
5人の平均値の公式に当てはめます。データは $55, 58, 62, 65, x$ の5個、平均は $60$ なので、
$\frac{55+58+62+65+x}{5} = 60$
この式は「5人分の合計を5で割ったら60になる」という意味です。両辺に $5$ を掛けて、割り算をなくします。
$55+58+62+65+x = 60 \times 5$
右辺を計算すると、
$55+58+62+65+x = 300$
左辺のうち $x$ 以外の4つの数を先に足しておきます。
$55+58=113,\quad 113+62=175,\quad 175+65=240$
よって、
$240+x=300$
両辺から $240$ を引くと、
$x = 300-240 = 60$
したがって、$x=60$ です。
(2) 中央値を求める
5人分のデータは $55, 58, 62, 65, 60$ です。中央値を求める前に、まず小さい順に並べ替えます。
$55,\ 58,\ 60,\ 62,\ 65$
データの個数は $n=5$ で奇数なので、真ん中の1つ、つまり小さい方から3番目の値が中央値です。数えると3番目は $60$ なので、中央値は $60$ kgです。
(3) 体重90kgの部員が加わったときの変化
平均値の変化
新しく加わった6人分の合計は、もとの5人分の合計 $300$ に $90$ を足したものです。
$300+90=390$
人数は $n=6$ になったので、新しい平均値は
$\frac{390}{6}=65$
よって、平均値は $60$ kgから $65$ kgへと、$5$ kg大きくなりました。
中央値の変化
6人分のデータを小さい順に並べ替えます。$90$ はもとのどの値よりも大きいので、一番最後に加わります。
$55,\ 58,\ 60,\ 62,\ 65,\ 90$
データの個数は $n=6$ で偶数なので、真ん中の2つ、つまり小さい方から3番目と4番目の値の平均を取ります。3番目は $60$、4番目は $62$ なので、
$\frac{60+62}{2}=\frac{122}{2}=61$
よって、中央値は $60$ kgから $61$ kgへと、$1$ kgしか大きくなりませんでした。
理由の説明
平均値は全員分の体重を足してから人数で割って求めるため、$90$ kgという極端に大きい値(外れ値)が加わると、その分だけ合計が大きく増え、平均値も大きく引き上げられます。一方で中央値は、データを並べたときの「真ん中の順位」だけで決まる値です。$90$ kgが加わっても、それは一番大きい値として端に追加されるだけで、真ん中付近の順位にはほとんど影響しません。そのため、中央値はわずかしか変化しないのです。このように、中央値は平均値に比べて外れ値の影響を受けにくいという性質があります。
練習問題
問題
7人が行った腕立て伏せの回数(回)は、次の通りでした。
$12,\ 15,\ 10,\ 18,\ 15,\ 20,\ 15$
このデータの平均値・中央値・最頻値をそれぞれ求めなさい。
答え
小さい順に並べ替えると $10, 12, 15, 15, 15, 18, 20$ です。
合計は $12+15+10+18+15+20+15=105$ なので、平均値は $\dfrac{105}{7}=15$ 回です。
データの個数は $n=7$(奇数)なので、中央値は小さい方から4番目の値、つまり $15$ 回です。
$15$ が3回出てきて最も多いので、最頻値も $15$ 回です。
平均値・中央値・最頻値のすべてが $15$ 回で一致します。