数学I / データの分析

データの相関と散布図

要点整理

前の単元「分散と標準偏差」では、1つの変量(例えばテストの点数だけ)について、平均値からどれくらいばらついているかを、偏差(平均値からのずれ)を使って調べました。この単元では、2つの変量を同時に見て、その2つの間にどんな関係があるかを調べていきます。例えば、「勉強時間が長い生徒ほど、テストの点数が高い傾向にあるかどうか」といったことです。

1. 散布図で関係を目で見る

2つの変量、例えば「1週間の勉強時間 $x$(時間)」と「テストの得点 $y$(点)」があるとします。5人分のデータが次のようになっていたとしましょう。

生徒 A B C D E
勉強時間 $x$(時間) 1 2 3 4 5
得点 $y$(点) 40 55 50 70 85

このデータの組 $(x, y)$ を、$x$ を横軸に、$y$ を縦軸にとった平面上に点として打っていったグラフを「散布図」といいます。実際に点を打ってみると、$x$ が大きくなるにつれて、点はだいたい右上がりに分布していきます。このように、一方が大きくなるほどもう一方も大きくなる傾向があるとき、この2つの変量には「正の相関」があるといいます。逆に、一方が大きくなるほどもう一方が小さくなる傾向があるときは「負の相関」があるといい、どちらの傾向もはっきり見られないときは「相関がない」といいます。

2. 傾向を数値で表す「共分散」

散布図を見れば正の相関か負の相関かはだいたいわかりますが、「どれくらい強い関係があるか」を数値で表したいときがあります。そこで使うのが「共分散」です。共分散は、$x$ の偏差と $y$ の偏差を1人分ずつかけ合わせて、それをデータ全体で平均した値です。式で書くと、次のようになります。

$s_{xy} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(x_i-\bar{x})(y_i-\bar{y})$

ここで、$n$ はデータの個数、$x_i$ と $y_i$ はそれぞれ $i$ 番目のデータの値、$\bar{x}$ と $\bar{y}$ はそれぞれ $x$ と $y$ の平均値を表します。$\sum_{i=1}^{n}$ は「$i=1$ から $i=n$ まで、うしろの式を全部たし合わせる」という意味の記号(前の単元の分散の式でも登場した記号です)です。

なぜこの式で関係の強さがわかるのか、先ほどの表のデータで実際に計算しながら確認してみましょう。

まず、$x$ の平均値 $\bar{x}$ を求めます。

$\bar{x} = \frac{1+2+3+4+5}{5} = \frac{15}{5} = 3$

次に、$y$ の平均値 $\bar{y}$ を求めます。

$\bar{y} = \frac{40+55+50+70+85}{5} = \frac{300}{5} = 60$

続いて、それぞれのデータについて $x$ の偏差 $x_i-\bar{x}$ と $y$ の偏差 $y_i-\bar{y}$ を求めます。

生徒 A B C D E
$x_i-\bar{x}$ $-2$ $-1$ $0$ $1$ $2$
$y_i-\bar{y}$ $-20$ $-5$ $-10$ $10$ $25$

ここで注目してほしいのは、$x$ の偏差がマイナスの生徒(A, B)は $y$ の偏差もマイナスになっていて、$x$ の偏差がプラスの生徒(D, E)は $y$ の偏差もプラスになっている、という点です。つまり「$x$ が平均より小さい人は $y$ も平均より小さく、$x$ が平均より大きい人は $y$ も平均より大きい」という傾向が、偏差の符号(プラスかマイナスか)の一致という形で現れているのです。

この2つの偏差を、生徒ごとに1つずつかけ合わせてみます。マイナス同士やプラス同士をかけると結果はプラスになることを思い出してください。

生徒 A B C D E
$(x_i-\bar{x})(y_i-\bar{y})$ $(-2)\times(-20)=40$ $(-1)\times(-5)=5$ $0\times(-10)=0$ $1\times10=10$ $2\times25=50$

正の相関があるデータでは、このように偏差の符号が一致する生徒が多くなるので、積はプラスになりやすくなります。この積を全部たし合わせると、

$40+5+0+10+50=105$

これをデータの個数 $5$ で割ったものが共分散です。

$s_{xy} = \frac{105}{5} = 21$

共分散が正の値になりました。このように、共分散が正のときは正の相関、共分散が負のときは負の相関、共分散が $0$ に近いときは相関がない(またはとても弱い)と判断できます。

3. 共分散の値そのものの大きさには注意が必要

共分散の符号(プラスかマイナスか)からは相関の向き(正か負か)がわかりますが、共分散の値の大きさそのものは、$x$ や $y$ の単位(何を基準にした数値か)によって変わってしまうという弱点があります。例えば $y$ を「点」ではなく「10点満点中の点数」に変えるだけで、共分散の値は大きく変わってしまいます。そのため、「相関の強さ」を単位に関係なく比べたいときは、共分散をそれぞれの標準偏差で割って調整した「相関係数」という量を使います。相関係数については、次の単元で詳しく学びます。

例題

例題1(基本)

問題

次の(1)〜(3)について、散布図の様子から読み取れる2つの変量の関係が「正の相関」「負の相関」「相関がない」のどれにあたるか答えなさい。

(1) ある月の毎日の気温 $x$ と、その日の清涼飲料水の売上額 $y$ について散布図をかいたところ、気温が高い日ほど売上額も大きくなる傾向がはっきりと見られた。

(2) 中古車の使用年数 $x$ と、その中古車の販売価格 $y$ について散布図をかいたところ、使用年数が長い車ほど販売価格が低くなる傾向がはっきりと見られた。

(3) ある高校の生徒の上履きのサイズ $x$ と、英語のテストの得点 $y$ について散布図をかいたところ、点がバラバラに散らばっていて、右上がりや右下がりといった特定の傾向は見られなかった。

解答・解説を見る

(1) 気温 $x$ が大きくなるほど、売上額 $y$ も大きくなる傾向があります。一方が大きくなるほどもう一方も大きくなる関係なので、これは「正の相関」があるといえます。

(2) 使用年数 $x$ が大きくなるほど、販売価格 $y$ は小さくなる傾向があります。一方が大きくなるほどもう一方が小さくなる関係なので、これは「負の相関」があるといえます。

(3) $x$ が大きくても $y$ が大きい場合も小さい場合もあり、特定の傾向が見られません。よって、これは「相関がない」といえます。

例題2(標準)

問題

ある5人について、「1日のスマートフォンの使用時間 $x$(時間)」と「その日の睡眠時間 $y$(時間)」を調べたところ、次のようになった。

生徒 A B C D E
$x$(時間) 1 2 3 4 5
$y$(時間) 7 6 5 4 3

このデータについて、$x$ と $y$ の共分散 $s_{xy}$ を求め、正の相関・負の相関のどちらがあるといえるか答えなさい。

解答・解説を見る

まず、$x$ の平均値 $\bar{x}$ を求めます。

$\bar{x} = \frac{1+2+3+4+5}{5} = \frac{15}{5} = 3$

次に、$y$ の平均値 $\bar{y}$ を求めます。

$\bar{y} = \frac{7+6+5+4+3}{5} = \frac{25}{5} = 5$

それぞれのデータについて、$x$ の偏差 $x_i-\bar{x}$ と $y$ の偏差 $y_i-\bar{y}$ を求めます。

生徒 A B C D E
$x_i-\bar{x}$ $-2$ $-1$ $0$ $1$ $2$
$y_i-\bar{y}$ $2$ $1$ $0$ $-1$ $-2$

この2つの偏差を生徒ごとにかけ合わせます。

生徒 A B C D E
$(x_i-\bar{x})(y_i-\bar{y})$ $(-2)\times2=-4$ $(-1)\times1=-1$ $0\times0=0$ $1\times(-1)=-1$ $2\times(-2)=-4$

これらをたし合わせると、

$-4+(-1)+0+(-1)+(-4)=-10$

これをデータの個数 $5$ で割ると、共分散が求められます。

$s_{xy} = \frac{-10}{5} = -2$

共分散が負の値になったので、$x$(スマートフォンの使用時間)が大きい生徒ほど $y$(睡眠時間)が小さくなる「負の相関」があるといえます。実際に表を見ても、スマートフォンの使用時間が長い生徒ほど睡眠時間が短くなっており、この結果と一致しています。

例題3(応用)

問題

ある地域の5つの月について、「アイスクリームの売上額 $x$(千円)」と「その月の水難事故の件数 $y$(件)」を調べたところ、次のようになった。

1 2 3 4 5
$x$(千円) 20 30 40 50 60
$y$(件) 1 2 3 5 4

(1) $x$ と $y$ の共分散 $s_{xy}$ を求めなさい。

(2) (1)の結果から、「アイスクリームの売上を減らせば、水難事故を減らすことができる」と結論づけてよいか、理由も含めて説明しなさい。

解答・解説を見る

(1)

まず、$x$ の平均値 $\bar{x}$ を求めます。

$\bar{x} = \frac{20+30+40+50+60}{5} = \frac{200}{5} = 40$

次に、$y$ の平均値 $\bar{y}$ を求めます。

$\bar{y} = \frac{1+2+3+5+4}{5} = \frac{15}{5} = 3$

それぞれのデータについて、偏差を求めます。

1 2 3 4 5
$x_i-\bar{x}$ $-20$ $-10$ $0$ $10$ $20$
$y_i-\bar{y}$ $-2$ $-1$ $0$ $2$ $1$

偏差の積を求めます。

1 2 3 4 5
$(x_i-\bar{x})(y_i-\bar{y})$ $(-20)\times(-2)=40$ $(-10)\times(-1)=10$ $0\times0=0$ $10\times2=20$ $20\times1=20$

これらをたし合わせると、

$40+10+0+20+20=90$

データの個数 $5$ で割ると、

$s_{xy} = \frac{90}{5} = 18$

共分散は正の値なので、アイスクリームの売上額と水難事故の件数の間には正の相関があります。

(2)

結論からいうと、「アイスクリームの売上を減らせば水難事故を減らせる」と結論づけることはできません。共分散や相関は、あくまで2つの変量が同じような動き方をする傾向があることを示しているだけで、一方が原因でもう一方が結果になっている(因果関係がある)ことまでは示していないからです。

この例では、実際には「気温が高くなる」という別の要因(第三の変量)が、アイスクリームの売上を増やす原因にも、海や川で泳ぐ人が増えて水難事故が起こりやすくなる原因にもなっていると考えられます。つまり、アイスクリームの売上と水難事故はどちらも気温の高さという共通の原因から生じた結果であって、アイスクリームの売上そのものが水難事故を引き起こしているわけではありません。

このように、2つの変量の間に相関が見られても、それだけでは因果関係(一方が原因で他方が結果であること)があるとは言い切れない、という点に注意する必要があります。

練習問題

問題

ある5人について、「1週間の読書時間 $x$(時間)」と「1週間のテレビ視聴時間 $y$(時間)」を調べたところ、次のようになった。

生徒 A B C D E
$x$(時間) 2 4 6 8 10
$y$(時間) 10 8 6 4 2

$x$ と $y$ の共分散 $s_{xy}$ を求め、正の相関・負の相関のどちらがあるかを答えなさい。

答え

$\bar{x} = \dfrac{2+4+6+8+10}{5} = 6$、$\bar{y} = \dfrac{10+8+6+4+2}{5} = 6$ です。

偏差はそれぞれ $x_i-\bar{x}$: $-4, -2, 0, 2, 4$、$y_i-\bar{y}$: $4, 2, 0, -2, -4$ となります。

偏差の積は $-16, -4, 0, -4, -16$ で、これらの和は $-40$ です。

$s_{xy} = \frac{-40}{5} = -8$

共分散が負の値なので、負の相関があるといえます(読書時間が長い生徒ほど、テレビ視聴時間が短くなる傾向があります)。