数学A / 数学と人間の活動(整数の性質)

よくある間違い

数学Aの「数学と人間の活動(整数の性質)」は、約数・倍数から、互除法(ユークリッドの互除法という、割り算を繰り返して最大公約数を求める方法)、不定方程式、n進法まで、「数そのものの仕組み」を扱う単元です。計算そのものは難しくないのに、言葉の意味や手順の順番を少し取り違えるだけで、答えが大きくズレてしまうことがとても多い単元でもあります。ここでは、この単元でよく見られる9個の間違いを、実際の誤答例と一緒に確認していきます。自分が同じ間違いをしていないか、チェックしながら読んでみてください。

間違い1: 約数の個数を求めるとき、素因数分解の指数をそのまま掛けてしまう

よくある誤答例

$12$ の正の約数(その数を割り切ることができる正の整数)の個数を求める問題を考えます。$12$ を素因数分解する(いくつかの素数の積の形に表す)と、

$12=2^2\times3^1$

となります。ここで、指数の部分($2$ と $1$)をそのまま掛け算して、

$2\times1=2$

だから約数の個数は $2$個である、と誤って答えてしまうことがあります。

なぜ間違いなのか

実際に $12$ の正の約数をすべて書き出してみると、

$1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 6,\ 12$

の $6$ 個あります。明らかに $2$ 個ではありません。誤答例では、指数をそのまま掛け合わせていますが、これは約数の個数を求める正しい手順ではありません。指数に $1$ を足すという操作を忘れてしまっているのが、この間違いの原因です。

正しい考え方

正の整数 $N$ を素因数分解して、

$N=p^a\times q^b$

($p$, $q$ は異なる素数、$a$, $b$ はそれぞれの指数)の形になったとき、$N$ の正の約数の個数は、

$(a+1)\times(b+1)$

で求められます。それぞれの指数に $1$ を足してから掛け合わせる、という点がポイントです。これは、約数を作るときに「$p$ を $0$個, $1$個, …, $a$個」の $(a+1)$ 通り、「$q$ を $0$個, $1$個, …, $b$個」の $(b+1)$ 通りから、それぞれ独立に選んで掛け合わせられるためです。

$12=2^2\times3^1$ の場合、指数は $a=2$, $b=1$ なので、

$(2+1)\times(1+1)=3\times2=6$

となり、先ほど書き出した $6$個と一致します。「指数をそのまま掛ける」のではなく、「指数に $1$ を足してから掛ける」と覚え直しましょう。

間違い2: 「倍数」と「約数」を入れ替えて言ってしまう

よくある誤答例

「$42$ は $6$ で割り切れる」という正しい事実から、「$42$ は $6$ の約数である」と表現してしまう誤りです。割り算ができることは合っているのに、それを言葉にするときに主語と目的語(どちらが「約数」でどちらが「倍数」か)を逆にしてしまいます。

なぜ間違いなのか

整数 $a$, $b$($b\neq0$)について、$a=b\times k$ となる整数 $k$ が存在するとき、

  • $a$ は $b$ の倍数である(大きい方、割られる方)
  • $b$ は $a$ の約数である(小さい方、割る方)

という2つの言い方が同時に成り立ちます。誤答例では、$42=6\times7$ という関係のうち、「割り切られる側」の $42$ に「約数」という言葉を使ってしまっています。約数とは「割る側(相手を割り切ることができる数)」を指す言葉なので、これは意味が逆になってしまっています。

正しい考え方

$42=6\times7$ という式を確認すると、

  • $42$ は $6\times7$ という積の形で表せるので、$42$ は $6$ の倍数であり、また $7$ の倍数でもある
  • $6$ は $42$ を割り切ることができるので、$6$ は $42$ の約数である。同様に $7$ も $42$ の約数である

となります。迷ったときは、$a=b\times k$ という割り算の式を実際に書いてみて、「割られる大きい方(積そのもの)が倍数」「割る小さい方(積を作る部品)が約数」と、式とセットで確認する習慣をつけましょう。

間違い3: 最大公約数と最小公倍数の積の関係を、3つ以上の数にもそのまま使ってしまう

よくある誤答例

2つの正の整数 $a$, $b$ については、最大公約数(2つの数に共通する約数のうち最大のもの)を $G$、最小公倍数(2つの数に共通する倍数のうち最小のもの)を $L$ とすると、

$G\times L=a\times b$

という関係が成り立ちます。これを覚えている生徒が、3つの整数 $4$, $6$, $8$ についても同じように、

$(4,6,8\text{の最大公約数})\times(4,6,8\text{の最小公倍数})=4\times6\times8$

が成り立つはずだ、と誤って考えてしまうことがあります。

なぜ間違いなのか

$4$, $6$, $8$ の最大公約数を実際に求めると $2$、最小公倍数を実際に求めると $24$ です。この2つを掛け合わせると、

$2\times24=48$

となります。一方、右辺の $4\times6\times8$ を計算すると、

$4\times6\times8=192$

となり、$48\neq192$ なので、この関係式は3つの数については成り立ちません。$G\times L=a\times b$ という美しい関係式は、ちょうど2つの数についてだけ成り立つ特別な性質であり、3つ以上の数には(そのままの形では)拡張できないのです。

正しい考え方

「最大公約数×最小公倍数=2数の積」という公式を使ってよいのは、対象がぴったり2つの整数のときだけである、と条件付きで覚えておきましょう。3つ以上の整数の最大公約数・最小公倍数を求めたいときは、この公式に頼らず、素因数分解して、各素因数について指数の最小値(最大公約数の場合)・最大値(最小公倍数の場合)を選ぶ、という基本の方法に戻って考える必要があります。

実際、$4=2^2$, $6=2^1\times3^1$, $8=2^3$ を素因数分解すると、$2$ の指数の最小値は $1$ なので最大公約数は $2^1=2$、$2$ の指数の最大値は $3$、$3$ の指数の最大値は $1$ なので最小公倍数は $2^3\times3^1=24$ となり、先ほどの値と一致します。

間違い4: ユークリッドの互除法で、「割る数」と「割られる数」を逆にしてしまう

よくある誤答例

$252$ と $105$ の最大公約数を、ユークリッドの互除法(大きい方の数を小さい方の数で割り、その余りでさらに割る、という操作を余りが $0$ になるまで繰り返して最大公約数を求める方法)で求める問題を考えます。最初のステップ

$252=105\times2+42$

までは正しく計算できても、次のステップで、直前に出てきた「割る数」である $105$ を新しい「割られる数」にする代わりに、うっかり大きさを気にせず

$42=105\times0+42$

のように、新しく出た余り $42$ の方を「割られる数」にしたまま計算を止めてしまい、話が先に進まなくなってしまう、という誤りがあります。

なぜ間違いなのか

ユークリッドの互除法は、「直前の割る数」を「新しい割られる数」に、「直前の余り」を「新しい割る数」にして、割り算を繰り返す手続きです。誤答例では、直前の余り $42$ を割られる数の位置に置いたまま動かしておらず、直前の割る数 $105$ を新しい割られる数として使う、という更新のルールが守られていません。その結果、計算が同じところで足踏みしてしまいます。

正しい考え方

正しい手順は、次のように「1つ前のステップで使った割る数」を、次のステップの「割られる数」に持ち上げていきます。

$252=105\times2+42$

次に、直前の割る数 $105$ を新しい割られる数、直前の余り $42$ を新しい割る数として、

$105=42\times2+21$

さらに、直前の割る数 $42$ を新しい割られる数、直前の余り $21$ を新しい割る数として、

$42=21\times2+0$

というように、余りが $0$ になったところで手順が終わり、そのときの「割る数」であった $21$ が、$252$ と $105$ の最大公約数です。ステップを1つ進めるごとに、「割る数だった数」が「割られる数」の位置に移動する、という更新の向きを意識しましょう。

間違い5: 1次不定方程式に整数解が存在するかどうかを確認せずに解こうとする

よくある誤答例

$6x+9y=10$ を満たす整数 $x$, $y$ の組(1次不定方程式:$x$, $y$ の1次式で表された、解が1つに定まらない方程式のうち、整数の解だけを求めるもの)を求める問題で、$x$ に $0,1,2,\dots$ を順に代入して $y$ が整数になる組を探そうとしますが、いくら探しても整数の組が見つかりません。それでも「自分の計算ミスだろう」と思い込み、同じ探し方を延々と繰り返してしまう、という誤りです。

なぜ間違いなのか

実は、この方程式 $6x+9y=10$ には、そもそも整数解が存在しません。$6$ と $9$ の最大公約数を求めると、

$6=2\times3,\qquad 9=3^2$

より、最大公約数は $3$ です。左辺の $6x+9y$ は、$6$ と $9$ がどちらも $3$ の倍数であることから、

$6x+9y=3(2x+3y)$

と変形でき、$x$, $y$ が整数であれば $2x+3y$ も整数なので、左辺は必ず $3$ の倍数になります。ところが右辺の $10$ は $3$ の倍数ではありません($10\div3$ は割り切れません)。左辺が $3$ の倍数、右辺が $3$ の倍数でない以上、この等式を満たす整数 $x$, $y$ は存在しないのです。それを確認せずに探し続けても、見つかるはずがありません。

正しい考え方

一般に、$a$, $b$, $c$ を整数とするとき、方程式 $ax+by=c$ が整数解を持つための条件は、

$a\text{ と }b\text{ の最大公約数が }c\text{ を割り切ること}$

です。解を探し始めるに、まずこの条件を確認する習慣をつけましょう。今回の例では、$6$ と $9$ の最大公約数 $3$ が $10$ を割り切らない(割り切れない)ので、この時点で「整数解は存在しない」と結論づけることができ、無駄な代入作業をせずに済みます。

間違い6: 1次不定方程式の一般解を作るとき、符号を間違えてしまう

よくある誤答例

$3x+5y=1$ を満たす整数 $x$, $y$ をすべて求める問題を考えます。まず、特殊解(1つだけ見つけた解)として $x=2$, $y=-1$ が見つかったとします(実際に $3\times2+5\times(-1)=6-5=1$ となり、正しい解です)。ここから、すべての整数解を表す一般解を作るときに、

$x=2+5t,\qquad y=-1+3t\qquad(t\text{は整数})$

のように、$x$ の式にも $y$ の式にも同じ符号($+$)を使ってしまう誤りがあります。

なぜ間違いなのか

試しに $t=1$ を代入してみると、$x=2+5\times1=7$, $y=-1+3\times1=2$ となります。これをもとの方程式に代入して確かめると、

$3\times7+5\times2=21+10=31$

となり、右辺の $1$ とはまったく一致しません。つまり、この式は $t=0$ のとき以外は正しい解になっておらず、一般解として成立していません。原因は、$x$ の増える量($5t$)に対して、$y$ の式の符号を反対向きにする、という調整を忘れてしまったことです。

正しい考え方

$ax+by=c$ の1つの解を $(x_0,y_0)$、$a$ と $b$ の最大公約数を $d$ とするとき、一般解は、

$x=x_0+\frac{b}{d}t,\qquad y=y_0-\frac{a}{d}t\qquad(t\text{は整数})$

の形になります。$x$ の式が $+t$ の向きに進むとき、$y$ の式は必ず $-t$ の向き(反対向き)に進む、という点が重要です。これは、$x$ を $\dfrac{b}{d}$ だけ増やすと、方程式の左辺を一定に保つために、$y$ を $\dfrac{a}{d}$ だけ減らす必要があるからです。

今回の例では $d=\gcd(3,5)=1$ なので、正しい一般解は、

$x=2+5t,\qquad y=-1-3t$

です。実際に確かめると、

$3(2+5t)+5(-1-3t)=6+15t-5-15t=1$

となり、$t$ の項がちょうど打ち消し合って、どんな整数 $t$ に対しても常に $1$ になることが確認できます。一般解を作るときは、$x$ の係数と $y$ の係数の符号を必ず逆向きにする、と覚えておきましょう。

間違い7: n進法から10進法に直すとき、位の重みを「等差」で増やしてしまう

よくある誤答例

$5$進法(使う数字が $0,1,2,3,4$ の5種類だけで、位が1つ上がるごとに $5$ 倍になる数の表し方)で表された数 $231_{(5)}$ を、普段使っている10進法の数に直す問題を考えます。10進法の感覚(一の位、十の位、百の位…と、$1,10,100,\dots$ のように位ごとに $10$ を足していくような感覚)を引きずってしまい、$5$進法でも同じように「一の位は $1$、次の位は $5$、その次の位は $10$」のように、$5$ ずつ足し算で増える重みだと勘違いして、

$2\times10+3\times5+1\times1=20+15+1=36$

と計算してしまう誤りです。

なぜ間違いなのか

位取り記数法(位置によって表す大きさが変わる数の表し方)では、位の重みは「足し算」ではなく「掛け算」で増えていきます。$5$進法の場合、一の位は $5^0=1$、次の位は $5^1=5$、その次の位は $5^2=25$ というように、1つ位が上がるごとに、底(この場合は $5$)を掛け合わせるという、掛け算(等比数列)の関係になっています。誤答例の「$1,5,10$」という重みは、$5$ を足しているだけの等差数列になってしまっており、掛け算のルールが反映されていません。

正しい考え方

$n$進法で表された数の各位は、右から順に $n^0$, $n^1$, $n^2,\dots$ という重みを持ちます。$231_{(5)}$ の場合、右から順に一の位が $1$、五の位が $3$、二十五の位が $2$ なので、

$231_{(5)}=2\times5^2+3\times5^1+1\times5^0$

となります。$5^2=25$, $5^1=5$, $5^0=1$ なので、これを代入すると、

$2\times25+3\times5+1\times1=50+15+1=66$

したがって $231_{(5)}=66$ です(先ほどの誤った計算の $36$ とは異なります)。位の重みは「$5$ ずつ足す」のではなく「$5$ を掛け続ける($1,5,25,125,\dots$)」であることを、指数の形($5^0,5^1,5^2,\dots$)とセットで覚えておきましょう。

間違い8: 10進法からn進法に直すとき、余りを求めた順番のまま並べてしまう

よくある誤答例

10進法の数 $66$ を $5$進法で表す問題を考えます。$66$ を $5$ で割り続けて、商と余りを次のように求めたとします。

$66\div5=13\ \text{あまり}\ 1$

$13\div5=2\ \text{あまり}\ 3$

$2\div5=0\ \text{あまり}\ 2$

ここで、出てきた余りを、求めた順番のまま並べて、

$132_{(5)}$

と答えてしまう誤りがあります。

なぜ間違いなのか

実際に $132_{(5)}$ を10進法に直して検算してみると、

$1\times5^2+3\times5^1+2\times5^0=1\times25+3\times5+2\times1=25+15+2=42$

となり、$42\neq66$ なので、この答えは間違っています。割り算を1回行うたびに得られる余りは、下の位(小さい位)から確定していきます。最初に求まる余りは一の位、次に求まる余りは五の位、というように、余りが出てくる順番と、位が並ぶ順番は逆になるのです。求めた順番のまま(上から下へ)並べてしまうと、位の順番が逆転してしまいます。

正しい考え方

商が $0$ になるまで割り算を続けたら、得られた余りを最後に求めたものが一番上の位(最も大きい位)になるように、下から上へ並べ直します。先ほどの計算で得られた余りは、上から順に $1,3,2$ でしたので、これを逆順にして、

$231_{(5)}$

が正しい答えです。実際に検算すると、先ほどの間違い7で確認したとおり $231_{(5)}=66$ となり、一致します。「割り算で先に出てくる余りほど、小さい位(下の位)である」という対応関係を、矢印を書いて逆順に並べ直す、という一手間を忘れないようにしましょう。

間違い9: 整数問題を積の形にした後、負の数どうしの組み合わせを見落としてしまう

よくある誤答例

$xy-2x-y=5$ を満たす整数 $x$, $y$ の組をすべて求める問題を考えます。両辺に $2$ を足して、

$xy-2x-y+2=7$

左辺を因数分解する(共通因数でくくって積の形にする)と、

$(x-1)(y-2)=7$

となります。ここで、$7$ が正の整数であることから、「$2$つの整数の積が $7$」となる組み合わせとして、正の約数の組である $(1,7)$ と $(7,1)$ だけを考え、

$x-1=1,\ y-2=7 \implies x=2,\ y=9$

$x-1=7,\ y-2=1 \implies x=8,\ y=3$

の2組だけを答えとして出してしまう、という誤りがあります。

なぜ間違いなのか

$2$つの整数を掛け合わせて正の数 $7$ になる組み合わせは、両方とも正の約数である場合($1\times7$, $7\times1$)だけでなく、両方とも負の約数である場合($(-1)\times(-7)$, $(-7)\times(-1)$)も存在します。負の数どうしを掛けても正の数になる、という掛け算の基本的な性質を見落としてしまうと、答えの半分を取りこぼしてしまいます。

正しい考え方

$7$ は素数なので、積が $7$ になる整数の組 $(x-1,\ y-2)$ は、正の約数の組だけでなく負の約数の組も含めて、次の $4$通りをすべて考える必要があります。

$(x-1,\ y-2)=(1,7),\ (7,1),\ (-1,-7),\ (-7,-1)$

それぞれの場合について $x$, $y$ を求めると、

  • $(1,7)$ のとき:$x=2$, $y=9$
  • $(7,1)$ のとき:$x=8$, $y=3$
  • $(-1,-7)$ のとき:$x=0$, $y=-5$
  • $(-7,-1)$ のとき:$x=-6$, $y=1$

試しに $(-7,-1)$ の場合を検算すると、$x=-6$, $y=1$ を元の式 $xy-2x-y$ に代入して、

$(-6)\times1-2\times(-6)-1=-6+12-1=5$

となり、確かに右辺の $5$ と一致します。積の形に因数分解して整数解を探す問題では、正の約数の組だけでなく、負の約数どうしの組も忘れずにすべて書き出すことが大切です。