数学III / 極限

関数の極限

要点整理

前のページまでは、数列 $\{a_n\}$ について $n\to\infty$(自然数 $n$ を無限に大きくする)ときの極限を考えてきました。ここからは、関数 $f(x)$ について、$x$ を実数の中で自由に動かしたときの極限を考えます。

関数の極限とは何か

関数 $f(x)$ において、$x$ が $a$ とは異なる値を取りながら $a$ に限りなく近づくとき、$f(x)$ の値がある一定の値 $\alpha$ に限りなく近づくならば、

$\lim_{x\to a} f(x) = \alpha$

と書きます。ここで大事なのは、「$x=a$ を代入したときの値」ではなく、「$x$ を $a$ に近づけていったときに $f(x)$ が近づく先」を考えている、という点です。$f(a)$ そのものが定義されていない($a$ が定義域に入っていない)場合でも、極限自体は考えることができます。

例えば $f(x) = \dfrac{x^2-4}{x-2}$ は $x=2$ で分母が $0$ になるため定義されていませんが、$x\neq 2$ の範囲で約分すると

$f(x) = \frac{(x-2)(x+2)}{x-2} = x+2\quad(x\neq 2)$

となるので、$x$ を $2$ に近づけると $f(x)$ は $2+2=4$ に近づきます。したがって

$\lim_{x\to 2}\frac{x^2-4}{x-2} = 4$

です($f(2)$ 自体は定義されていないことに注意しましょう)。

左極限と右極限

$x$ を $a$ に近づけるとき、$a$ より小さい方から近づく場合と、$a$ より大きい方から近づく場合とで、$f(x)$ の近づき先が違うことがあります。

  • $x$ が $a$ より小さい値を取りながら $a$ に近づくときの極限を左極限といい、$\lim_{x\to a-0} f(x)$ と書きます。
  • $x$ が $a$ より大きい値を取りながら $a$ に近づくときの極限を右極限といい、$\lim_{x\to a+0} f(x)$ と書きます。

$\lim_{x\to a} f(x)$ が存在する(1つの値に定まる)のは、左極限と右極限がともに存在し、しかもその2つの値が一致するとき、かつそのときに限ります。左極限と右極限が異なる値になる場合、「$x\to a$ での極限は存在しない」ということになります。

$x\to\infty$、$x\to-\infty$ の極限

数列のときと同じように、$x$ を限りなく大きくしたとき、あるいは限りなく小さくした(マイナス方向に大きくした)ときの関数の極限も考えます。

$\lim_{x\to\infty} f(x),\qquad \lim_{x\to-\infty} f(x)$

これらも、数列のときと同様に和・差・積・商の性質やはさみうちの原理が成り立ち、分数式であれば「最高次の項で分子・分母を割る」という同じテクニックが使えます。ただし、$x\to-\infty$ のときは $\sqrt{x^2}=|x|=-x$($x<0$ のため)となることに注意が必要です。これは例題3で確認します。

不定形の処理

$\dfrac{0}{0}$ の形(例:上の $\dfrac{x^2-4}{x-2}$ を $x=2$ に近づける場合)や、$\dfrac{\infty}{\infty}$、$\infty-\infty$ の形は、式をそのまま見ても極限の値が分かりません。これらを不定形と呼びます。不定形が出てきたときは、

  • 分数式なら因数分解して約分する
  • $\infty-\infty$ の形(根号を含む場合が多い)なら有理化する
  • 分数式で $x\to\pm\infty$ なら最高次の項で割る

といった式変形をしてから、あらためて極限を求めます。

例題

例題1(基本)

問題

次の極限を求めなさい。

$\lim_{x\to 3}\frac{x^2-9}{x-3}$

解答・解説を見る

$x\to 3$ とすると分子・分母がともに $0$ に近づくので、このままでは $\dfrac{0}{0}$ の不定形です。分子を因数分解します。

$x^2-9 = (x-3)(x+3)$

したがって、$x\neq 3$ の範囲では

$\frac{x^2-9}{x-3} = \frac{(x-3)(x+3)}{x-3} = x+3$

と約分できます。極限を考えるときの $x$ は $3$ に近づくだけで $3$ そのものにはならない($x\neq 3$)ので、この約分は正しく使えます。

$\lim_{x\to 3}\frac{x^2-9}{x-3} = \lim_{x\to 3}(x+3) = 3+3=6$

答え:$6$

例題2(標準)

問題

関数 $f(x)=\dfrac{|x-1|}{x-1}$ について、$\displaystyle\lim_{x\to 1-0} f(x)$ と $\displaystyle\lim_{x\to 1+0} f(x)$ をそれぞれ求め、$\displaystyle\lim_{x\to 1} f(x)$ が存在するかどうかを答えなさい。

解答・解説を見る

絶対値の中身の符号で場合分けをします。

(i) $x>1$ のとき(右極限、$x\to 1+0$)

$x>1$ なら $x-1>0$ なので、$|x-1|=x-1$ です。よって

$f(x) = \frac{x-1}{x-1} = 1$

$x$ の値によらず常に $1$ なので、

$\lim_{x\to 1+0} f(x) = 1$

(ii) $x<1$ のとき(左極限、$x\to 1-0$)

$x<1$ なら $x-1<0$ なので、$|x-1|=-(x-1)$ です。よって

$f(x) = \frac{-(x-1)}{x-1} = -1$

$x$ の値によらず常に $-1$ なので、

$\lim_{x\to 1-0} f(x) = -1$

(iii) 極限が存在するかの判定

右極限は $1$、左極限は $-1$ で、両者が一致しません。したがって、

$\lim_{x\to 1} f(x)\ \text{は存在しない}$

答え:右極限は $1$、左極限は $-1$。両者が一致しないため、$\displaystyle\lim_{x\to 1}f(x)$ は存在しない。

例題3(応用)

問題

次の極限を求めなさい。

$\lim_{x\to-\infty}\left(\sqrt{x^2+x}+x\right)$

解答・解説を見る

$x\to-\infty$ のとき、$\sqrt{x^2+x}\to\infty$(根号の中は正で無限に大きくなる)であり、$x\to-\infty$ なので、このままでは $\infty-\infty$ の不定形です(符号は逆ですが、大きさが両方無限大になる引き算という意味で不定形です)。分子を有理化します。$\sqrt{x^2+x}-x$ を分子・分母に掛けます。

$\sqrt{x^2+x}+x = \frac{\left(\sqrt{x^2+x}+x\right)\left(\sqrt{x^2+x}-x\right)}{\sqrt{x^2+x}-x} = \frac{(x^2+x)-x^2}{\sqrt{x^2+x}-x} = \frac{x}{\sqrt{x^2+x}-x}$

ここで分子・分母を $x$ で割りたいのですが、$x\to-\infty$ なので $x$ は負の数であることに注意します。根号の中を $x$ で割るときは、$\sqrt{x^2+x}=\sqrt{x^2\left(1+\dfrac{1}{x}\right)}=|x|\sqrt{1+\dfrac{1}{x}}$ とし、$x<0$ のときは $|x|=-x$ であることを使います。

$\sqrt{x^2+x} = -x\sqrt{1+\frac{1}{x}}\quad(x<0)$

これを使って、分母を $x$ で割ります。

$\frac{\sqrt{x^2+x}-x}{x} = \frac{-x\sqrt{1+\frac{1}{x}}-x}{x} = -\sqrt{1+\frac{1}{x}}-1$

分子は $\dfrac{x}{x}=1$ です。したがって、

$\frac{x}{\sqrt{x^2+x}-x} = \frac{1}{-\sqrt{1+\dfrac{1}{x}}-1}$

$x\to-\infty$ のとき $\dfrac{1}{x}\to 0$ なので、$\sqrt{1+\dfrac{1}{x}}\to\sqrt{1}=1$ となり、

$\lim_{x\to-\infty}\left(\sqrt{x^2+x}+x\right) = \frac{1}{-1-1} = \frac{1}{-2} = -\frac{1}{2}$

答え:$-\dfrac{1}{2}$

練習問題

問題1

次の極限を求めなさい。

$\lim_{x\to 2}\frac{x^2-x-2}{x-2}$

答え

分子を因数分解すると $(x-2)(x+1)$ なので、約分して $\lim_{x\to 2}(x+1)=3$ です。

問題2

次の極限を求めなさい。

$\lim_{x\to\infty}\frac{3x^2-2x}{x^2+1}$

答え

分子・分母を $x^2$ で割ると $\dfrac{3-\frac{2}{x}}{1+\frac{1}{x^2}}\to\dfrac{3}{1}$ となるので、答えは $3$ です。