数学III / 積分法
よくある間違い
間違い1: $\int\dfrac{1}{x}\,dx$ を $\log x+C$ としてしまう(絶対値を忘れる)
よくある誤答例
$\displaystyle\int\frac{1}{x}\,dx=\log x+C$ と、絶対値を付けずに答えてしまう。
なぜ間違いなのか
$\log x$ は $x>0$ の範囲でしか定義されていませんが、$\dfrac{1}{x}$ は $x<0$ の範囲でも定義されています。$x<0$ の場合もきちんとカバーするために、対数の中身には絶対値を付けて $\log|x|$ と書く必要があります。
正しい考え方
$\dfrac{1}{x}$ の不定積分は、必ず $\log|x|+C$ と書く、と徹底して覚えましょう。同じように、$\dfrac{g'(x)}{g(x)}$ の形の積分も $\log|g(x)|+C$ と、絶対値を付けるのが基本です。
間違い2: 置換積分で $dx$ を書き換えるのを忘れる
よくある誤答例
$\displaystyle\int(2x-1)^4\,dx$ を $u=2x-1$ と置換する際、$u$ と $x$ の対応だけ考えて、$\displaystyle\int u^4\,du$ としてしまう(正しくは $\displaystyle\int u^4\times\dfrac{du}{2}$)。
なぜ間違いなのか
置換積分では、$u=g(x)$ に対応して $dx$ の部分も $u$(または $du$)の式に書き換える必要があります。$\dfrac{du}{dx}=g'(x)$ の関係から $dx=\dfrac{du}{g'(x)}$ という対応を作らずに $dx$ を単に $du$ に置き換えてしまうと、答えが定数倍ずれてしまいます(この例では答えが $2$ 倍ずれてしまいます)。
正しい考え方
置換するときは、必ず $\dfrac{du}{dx}$ を計算し、そこから $dx$ を $du$ の式に直す、という手順を省略しないようにしましょう。
間違い3: 定積分の置換で、積分区間(上端・下端)を書き換え忘れる
よくある誤答例
$\displaystyle\int_0^1 x(x^2+1)^3\,dx$ を $u=x^2+1$ と置換したのに、積分区間を $0$ から $1$ のままにして、$u$ の式のまま計算してしまう。
なぜ間違いなのか
置換すると、積分区間も $x$ の範囲から $u$ の範囲に変わります。この問題では、$x=0$ のとき $u=1$、$x=1$ のとき $u=2$ になるので、正しい積分区間は $1$ から $2$ です。区間を書き換えずに $0$ から $1$ のまま計算すると、まったく違う範囲を積分してしまい、誤った値になります。
正しい考え方
定積分で置換をするときは、必ず $x$ の上端・下端に対応する $u$ の値を計算し直し、積分区間を $u$ の範囲に書き換えてから計算しましょう。
間違い4: 部分積分法で、$f$ と $g'$ の選び方を間違える
よくある誤答例
$\displaystyle\int x\log x\,dx$ を計算する際、$f(x)=x$、$g'(x)=\log x$ と選んでしまい、$\log x$ の原始関数($g(x)$)を求めるところでつまずいてしまう。
なぜ間違いなのか
部分積分法では、「微分すると簡単になる方を $f$、積分しやすい方を $g'$」に選ぶのが基本です。$\log x$ は、微分すると $\dfrac{1}{x}$ という非常にシンプルな形になりますが、積分すると $x\log x-x$ という複雑な形になります。$g'(x)=\log x$ を選んでしまうと、その時点で $g(x)$ を求める計算が難しくなってしまいます。
正しい考え方
$\log x$ を含む積分では、基本的に $\log x$ の方を $f(x)$(微分する側)に選びましょう。$x^n$ と $\log x$ の積の形では、「$f=\log x$、$g'=x^n$」と選ぶのが定石です。
間違い5: 面積を求めるときに、$x$ 軸の下にある部分の符号を無視してしまう
よくある誤答例
$y=\sin x$ と $x$ 軸で囲まれた $0\leq x\leq 2\pi$ の部分の面積を求める際、そのまま $\displaystyle\int_0^{2\pi}\sin x\,dx$ を計算して、答えを $0$ としてしまう。
なぜ間違いなのか
定積分の値は「符号付きの面積」であり、$x$ 軸より下にある部分は負の値としてカウントされます。$\sin x$ は $0\leq x\leq\pi$ で正、$\pi\leq x\leq 2\pi$ で負なので、単純に定積分すると、上側の面積と下側の面積(マイナスとしてカウントされる)が打ち消し合ってしまい、$0$ になってしまいます。しかし、実際の面積(正の量)は打ち消し合うはずがありません。
正しい考え方
面積を求める前に、まずグラフが $x$ 軸の上にあるか下にあるかを確認し、符号が変わる点で積分区間を分割してから、それぞれの絶対値を取って足し合わせましょう。
間違い6: 回転体の体積で、2乗するタイミングを間違える
よくある誤答例
2曲線 $y=f(x)$、$y=g(x)$ の間の部分を $x$ 軸のまわりに回転させた体積を求める際、$V=\pi\displaystyle\int\{f(x)-g(x)\}^2\,dx$ のように、先に引き算をしてから2乗してしまう。
なぜ間違いなのか
回転体の断面は、外側の円(半径 $f(x)$)から内側の円(半径 $g(x)$)をくり抜いた、ドーナツ状の形をしています。この断面積は、「大きい円の面積 $\pi\{f(x)\}^2$」から「小さい円の面積 $\pi\{g(x)\}^2$」を引いたもの、つまり $\pi\left(\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2\right)$ です。先に $f(x)-g(x)$ を計算してから2乗してしまうと、まったく違う(誤った)値になってしまいます。
正しい考え方
回転体の体積は、「それぞれの半径を先に2乗してから、円周率を掛け、最後に引き算する」という順番を徹底しましょう。$\{f(x)-g(x)\}^2\neq\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2$ であることを、常に意識することが大切です。
間違い7: 「道のり」を聞かれているのに「変位」を計算してしまう
よくある誤答例
速度 $v(t)$ から、ある時間内に実際に動いた距離(道のり)を求める問題で、そのまま $\displaystyle\int v(t)\,dt$ を計算してしまい、符号が変わっても絶対値を取らない。
なぜ間違いなのか
$\displaystyle\int v(t)\,dt$ が表しているのは「変位」(最初の位置と最後の位置の差)です。途中で運動の向きが変わった場合、行きと帰りの移動距離が正負で打ち消し合ってしまい、実際に動いた距離の合計(道のり)よりも小さい値になってしまいます。
正しい考え方
問題文が「道のり」を聞いているのか「変位」を聞いているのかを、まず正確に読み分けましょう。道のりを求める場合は、$v(t)$ の符号が変わる点で区間を分割し、それぞれの区間で絶対値 $|v(t)|$ を取ってから積分し、最後に足し合わせます。
間違い8: 区分求積法で、「幅」の部分を関数の一部だと勘違いする
よくある誤答例
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{n}f\left(\dfrac{k}{n}\right)$ の形の極限を定積分に直す際、$\dfrac{1}{n}$ を関数の一部だと勘違いして、$f(x)$ ではなく $\dfrac{f(x)}{x}$ のような、まったく違う関数を作ってしまう。
なぜ間違いなのか
区分求積法の式で、$\Sigma$ の前(または中)にある $\dfrac{1}{n}$ は、「細長い長方形の幅」に対応する部分であり、積分するべき関数 $f(x)$ そのものには含まれません。この役割を混同すると、まったく別の関数を積分してしまうことになります。
正しい考え方
和の式を見たら、まず「幅の役割をしている部分($\dfrac{1}{n}$ や $\dfrac{b-a}{n}$)」と「$f\left(\dfrac{k}{n}\right)$ の形をした部分」に分けて認識しましょう。幅の部分は $dx$ に、関数の部分はそのまま $f(x)$ に対応する、という構造を意識することが大切です。