数学I / 二次関数
よくある間違い
数学Iの「二次関数」の単元では、①関数とグラフの基本、②グラフと頂点(平方完成)、③平行移動・対称移動、④最大・最小、⑤定義域を制限したときの最大・最小、⑥解と判別式、⑦2次不等式の解き方、⑧グラフと2次不等式の関係、というように、少しずつ内容を積み重ねていきます。そのぶん、どこか1か所でつまずくと後の内容もつられて分からなくなりやすい単元でもあります。ここでは、実際によく見られる間違いを9個取り上げて、「どこがどう間違っているのか」「正しくはどう考えるのか」を1つずつ確認していきます。
間違い1: 平方完成で定数を「移動し忘れる」
よくある誤答例
$x^2+6x+5$ を平方完成しようとして、
$x^2+6x+5 = (x+3)^2+5$
としてしまう。
なぜ間違いなのか
$(x+3)^2$ を実際に展開すると、$x^2+6x+9$ になります。これはもとの式 $x^2+6x+5$ と定数項が違います($9$ と $5$)。つまり、$(x+3)^2$ という形を作るために、もとの式にはなかった $+9$ を勝手に足してしまったことになります。この余分な $+9$ を打ち消すために、あとで $-9$ を引いておかないと、もとの式と等しい式にはならないのです。
正しい考え方
$x^2+6x+5 = (x+3)^2 - 9 + 5 = (x+3)^2-4$
一般に、$x^2+bx+c$ を平方完成するときは、
$x^2+bx+c = \left(x+\frac{b}{2}\right)^2 - \left(\frac{b}{2}\right)^2 + c$
のように、「$\left(x+\dfrac{b}{2}\right)^2$ を作るために余分に足した分($\left(\dfrac{b}{2}\right)^2$)」を必ず引いておく必要があります。今回は $b=6$ なので $\dfrac{b}{2}=3$、余分に足した分は $3^2=9$ です。
間違い2: 頂点の座標の符号を逆にしてしまう
よくある誤答例
$y=(x-4)^2+1$ のグラフの頂点を、
$(-4,\ 1)$
と答えてしまう。
なぜ間違いなのか
頂点のx座標は、「かっこの中がちょうど $0$ になる $x$ の値」です。$(x-4)^2$ という式で、かっこの中 $x-4$ が $0$ になるのは $x=4$ のときです。式の中に $-4$ という数字が見えるからといって、そのまま頂点のx座標を $-4$ としてしまうのは、符号の意味を取り違えています。
正しい考え方
$y=(x-a)^2+q$ の形のグラフの頂点は $(a,\ q)$ です。$(x-4)^2$ は $(x-a)^2$ の $a$ が $4$ にあたる場合なので、頂点のx座標は $4$ になります。よって頂点は
$(4,\ 1)$
です。「かっこの中を $0$ にする $x$ の値」を探す、という手順を意識すると、符号の勘違いを防げます。
間違い3: 平行移動の符号を逆にしてしまう
よくある誤答例
$y=x^2$ のグラフをx軸方向に $-2$、y軸方向に $3$ だけ平行移動した式を、
$y=(x-2)^2+3$
としてしまう。
なぜ間違いなのか
「x軸方向に $p$ だけ平行移動する」というのは、もとのグラフ上の点のx座標を、すべて $p$ だけ増やす操作のことです。移動後の点を $(X,\ Y)$、移動前の点を $(x,\ y)$ とすると、
$X=x+p, \qquad Y=y+q$
という関係があります。もとの式 $y=f(x)$ にあてはめるには、この関係を逆向きに使って $x=X-p$、$y=Y-q$ を代入する必要があるので、移動後の式は
$Y-q=f(X-p)$
の形、つまり「$x$ を $x-p$ に置きかえる」形になります。ここで $p=-2$ なので、$x-p=x-(-2)=x+2$ となり、$x-2$ ではなく $x+2$ が正しいのです。「マイナス方向に動かすのだから、そのままマイナスの記号を使えばよい」という思い込みが、この間違いの原因です。
正しい考え方
$y=x^2 \ \text{を x軸方向に} -2 \text{、y軸方向に} 3 \text{だけ平行移動すると}$
$y-3=\bigl(x-(-2)\bigr)^2 \quad\Longrightarrow\quad y=(x+2)^2+3$
間違い4: 上に凸のグラフなのに「最小値」を求めてしまう
よくある誤答例
$y=-2x^2+8x-3$ を平方完成して頂点 $(2,\ 5)$ を求めたあと、「頂点があるから、最小値は $5$」と答えてしまう。
なぜ間違いなのか
$x^2$ の係数が $-2$ で負の数のとき、グラフは上に凸(山のような形)になります。上に凸のグラフでは、頂点が一番高い点になるので、そこでとるのは「最大値」であって「最小値」ではありません。$x$ をどんどん大きく(または小さく)していくと、$y$ の値はどこまでも小さくなっていくので、そもそも最小値というものが存在しないのです。
正しい考え方
まず $x^2$ の係数の符号を確認します。
- 係数が正(下に凸)$\Rightarrow$ 頂点で最小値をとる。最大値はない。
- 係数が負(上に凸)$\Rightarrow$ 頂点で最大値をとる。最小値はない。
$y=-2x^2+8x-3$ を平方完成すると、
$y=-2(x^2-4x)-3=-2\bigl[(x-2)^2-4\bigr]-3=-2(x-2)^2+5$
$x^2$ の係数が $-2<0$ なので上に凸のグラフです。よって頂点 $(2,\ 5)$ で最大値 $5$ をとり、最小値はありません。
間違い5: 定義域の外にある頂点を、そのまま最大値・最小値にしてしまう
よくある誤答例
$y=(x-3)^2-1$($0\le x\le 2$)の最大値・最小値を求める問題で、頂点 $(3,\ -1)$ を使って「最小値は $-1$」と答えてしまう。
なぜ間違いなのか
頂点のx座標は $3$ ですが、この問題の定義域(考えてよい $x$ の範囲)は $0\le x\le 2$ です。$x=3$ はこの範囲に含まれていません。最大値・最小値は「定義域の中で」考えるものなので、定義域の外にある頂点の値を、そのまま最大値や最小値として使うことはできません。
正しい考え方
まず、頂点のx座標($3$)が定義域($0\le x\le 2$)に入っているかどうかを確認します。今回は範囲の外(右側)にあります。頂点が定義域より右にあり、グラフは下に凸なので、$0\le x\le 2$ の範囲ではグラフは単調に減少します。このようなときは、定義域の両端の値を計算して比べます。
$x=0 \ \text{のとき} \quad y=(0-3)^2-1=9-1=8$
$x=2 \ \text{のとき} \quad y=(2-3)^2-1=1-1=0$
よって、最大値は $8$($x=0$ のとき)、最小値は $0$($x=2$ のとき)です。頂点が定義域に入っていないときは、頂点の値をそのまま答えにしないよう注意しましょう。
間違い6: 判別式の $b^2$ で符号を消してしまう
よくある誤答例
$x^2-4x+5=0$ の判別式を求めるとき、$a=1,\ b=-4,\ c=5$ として、
$D=b^2-4ac=-4^2-4\cdot1\cdot5=-16-20=-36$
としてしまう。
なぜ間違いなのか
$b=-4$ のとき、$b^2$ は「$-4$ を2乗したもの」なので、
$b^2=(-4)^2=(-4)\times(-4)=16$
になります。ところが誤答例では、$-4^2$ を「$4$ を2乗してから、あとでマイナスをつける」($-(4^2)=-16$)と計算してしまっています。負の数を2乗するときは、必ずかっこをつけて $(-4)^2$ の形で計算しないと、符号の扱いを間違えてしまいます。
正しい考え方
$D=b^2-4ac=(-4)^2-4\cdot1\cdot5=16-20=-4$
負の数を代入するときは、いつも $(\ )$ をつけてから2乗する、という習慣をつけましょう。
間違い7: 判別式の符号と解の個数の対応を逆に覚えてしまう
よくある誤答例
間違い6の続きで、$D=-4$ と正しく計算できたのに、「$D$ が負の数だから、実数解は $2$ つある」と答えてしまう。
なぜ間違いなのか
判別式 $D=b^2-4ac$ は、2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解の公式
$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
の、ルート($\sqrt{\ }$、平方根の記号)の中身にあたる部分です。ルートの中身が負の数だと、実数の範囲では「2乗してその数になる数(平方根)」が存在しないので、実数解自体が存在しなくなります。「$D$ が負だから解が $2$ つ」という覚え方は、この対応関係がちょうど逆になってしまっています。
正しい考え方
判別式 $D=b^2-4ac$ の符号と、実数解の個数の対応は次の通りです。
- $D>0$ のとき:異なる実数解が $2$ つ
- $D=0$ のとき:実数解は $1$ つ(重解)
- $D<0$ のとき:実数解はない
今回は $D=-4<0$ なので、この方程式に実数解はありません。「大きいほど解の数が多い」($D>0$ で2つ、$D=0$ で1つ、$D<0$ で0個)とイメージすると覚えやすくなります。
間違い8: 負の数で割る(掛ける)ときに、不等号の向きを変え忘れる
よくある誤答例
$-x^2+x+2>0$ を解くとき、$x^2$ の係数を正の数にしようとして両辺に $-1$ を掛け、
$x^2-x-2>0$
としてしまう(不等号の向きがそのまま $>$ になっている)。
なぜ間違いなのか
不等式の両辺に負の数を掛けたり、両辺を負の数で割ったりすると、不等号の向きは反転します。たとえば $2<3$ という正しい不等式の両辺に $-1$ を掛けると、$-2>-3$ となり、向きが $<$ から $>$ に変わります。$-x^2+x+2>0$ の両辺に $-1$ を掛けているのに不等号の向きを $>$ のままにしてしまうと、この「負の数を掛けたら向きが変わる」という規則を見落としたことになり、答えの範囲が変わってしまいます。
正しい考え方
$-x^2+x+2>0$
両辺に $-1$ を掛けて $x^2$ の係数を正にすると、不等号の向きが反転して、
$x^2-x-2<0$
となります。左辺を因数分解すると $(x-2)(x+1)<0$ なので、解は
$-1 です。 よくある誤答例 $(x-1)(x-2)<0$ を解くとき、「$<0$ だから、$x<1$ または $x>2$」と答えてしまう。 なぜ間違いなのか $y=(x-1)(x-2)$ は $x^2$ の係数が正なので下に凸のグラフで、x軸との交点(グラフが x軸と交わる点)は $x=1$ と $x=2$ です。下に凸のグラフは、2つの交点の間ではグラフがx軸より下側($y<0$)にあり、交点の外側ではx軸より上側($y>0$)にあります。「$x<1$ または $x>2$」という答えは、実はグラフが上側にある($y>0$ になる)範囲のことで、$y<0$ となる範囲(この不等式が求めている答え)とはちょうど逆になってしまっています。 正しい考え方 $y=(x-1)(x-2)$ のグラフ(下に凸で、x軸との交点が $1$ と $2$)を頭の中に思い浮かべます。交点の間でグラフがx軸より下側($y<0$)にあるので、 $(x-1)(x-2)<0 \iff 1 が正しい解です。逆に $(x-1)(x-2)>0$(グラフがx軸より上側にある範囲)の解は、$x<1$ または $x>2$ になります。「不等号の向き」と「解が交点の『間』になるか『外』になるか」のペアを、グラフの形とセットにして覚えるのがポイントです。間違い9: 「解と解の間」なのか「解の外側」なのかを逆にしてしまう