数学II / 図形と方程式
点と直線の距離
要点整理
前のページ「2直線の平行・垂直」では、2つの直線の位置関係を、傾きや一般形の係数から判定する方法を学びました。今回は、その垂直条件を使って、「点と直線の距離」を求める公式を作っていきます。
点と直線の距離とは
点 $\mathrm{A}$ から直線 $l$ までの距離とは、点 $\mathrm{A}$ から直線 $l$ 上のいろいろな点までの長さのうち、いちばん短いものを指します。そして、その最短の長さは、点 $\mathrm{A}$ から直線 $l$ に垂線(直線 $l$ と垂直に交わる線)を下ろしたときにできる線分の長さに一致することが分かっています。直線上の点をどこにとっても、垂線の足(垂線と直線の交点)までの距離がいちばん短くなる、とイメージしてください。
これから、点 $\mathrm{A}(x_1, y_1)$ と直線 $l: ax+by+c=0$($a, b$ は同時に $0$ にはならない定数)の距離 $d$ を求める公式を、途中の計算を1つも飛ばさずに導いていきます。
公式を導く準備:直線 $l$ に垂直な直線を作る
まず、点 $\mathrm{A}(x_1, y_1)$ を通り、直線 $l$ に垂直な直線 $m$ を作ります。ここで使うのが、前のページで学んだ「2直線の垂直条件(一般形)」です。2直線を $a_1x+b_1y+c_1=0$、$a_2x+b_2y+c_2=0$ とすると、
$(2直線が垂直) \iff a_1a_2+b_1b_2=0$
という条件でした。この条件を利用して、直線 $l: ax+by+c=0$ に垂直な直線を作ってみます。
点 $\mathrm{A}(x_1,y_1)$ を通り、次の式で表される直線 $m$ を考えます。
$m:\ b(x-x_1) - a(y-y_1) = 0$
まず、この直線 $m$ が本当に点 $\mathrm{A}(x_1,y_1)$ を通ることを確認しましょう。式に $x=x_1$, $y=y_1$ を代入すると、
$b(x_1-x_1) - a(y_1-y_1) = b\times0 - a\times0 = 0$
となり、確かに等式が成り立つので、直線 $m$ は点 $\mathrm{A}$ を通っています。
次に、直線 $m$ が直線 $l$ と垂直であることを確認します。$m$ の式 $b(x-x_1)-a(y-y_1)=0$ を展開すると、
$bx - by_1 - ay + ay_1 = 0$
$x$ と $y$ の項だけを見ると、$m$ は一般形 $a_2x+b_2y+c_2=0$ において $a_2=b$、$b_2=-a$ の直線だと分かります。一方、直線 $l$ は $a_1=a$、$b_1=b$ です。垂直条件 $a_1a_2+b_1b_2=0$ に当てはめてみると、
$a_1a_2+b_1b_2 = a\times b + b\times(-a) = ab-ab=0$
となり、確かに $0$ になったので、直線 $m$ と直線 $l$ は垂直です。これで、点 $\mathrm{A}$ を通り直線 $l$ に垂直な直線 $m$ が用意できました。
直線 $m$ 上の点を、動く数 $t$ を使って表す
直線 $m$ 上の点を、実数 $t$ を使って、次のように表すことができます。
$(x_1+at,\ y_1+bt)$
これが本当に直線 $m$ 上にあることを確認します。$m$ の式 $b(x-x_1)-a(y-y_1)=0$ に $x=x_1+at$, $y=y_1+bt$ を代入すると、
$b\big((x_1+at)-x_1\big) - a\big((y_1+bt)-y_1\big) = b(at) - a(bt) = abt - abt = 0$
となり、確かに $m$ の式を満たしています。また、$t=0$ を代入すると点は $(x_1, y_1)$、つまり点 $\mathrm{A}$ そのものになります。$t$ の値をいろいろ変えていくと、この点は直線 $m$ 上を動いていきます。
直線 $m$ と直線 $l$ の交点(垂線の足)を求める
点 $\mathrm{A}$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}$ とすると、$\mathrm{H}$ は直線 $m$(点$\mathrm{A}$を通り$l$に垂直な直線)と直線 $l$ の交点です。直線 $m$ 上の点は $(x_1+at,\ y_1+bt)$ の形で表せるので、これが直線 $l: ax+by+c=0$ を満たすような $t$ の値を求めれば、それが点 $\mathrm{H}$ に対応する $t$ になります。
代入します。
$a(x_1+at) + b(y_1+bt) + c = 0$
かっこをはずします。
$ax_1 + a^2t + by_1 + b^2t + c = 0$
$t$ を含む項をまとめます。
$(a^2+b^2)t + (ax_1+by_1+c) = 0$
$(ax_1+by_1+c)$ を右辺に移項します。
$(a^2+b^2)t = -(ax_1+by_1+c)$
$a, b$ は同時に $0$ にはならないので $a^2+b^2>0$ です。したがって、両辺を $a^2+b^2$ で割ることができます。
$t = -\frac{ax_1+by_1+c}{a^2+b^2}$
これが、垂線の足 $\mathrm{H}$ に対応する $t$ の値です。
点 $\mathrm{A}$ から $\mathrm{H}$ までの距離を計算する
点 $\mathrm{A}$ は $(x_1, y_1)$、点 $\mathrm{H}$ は $(x_1+at,\ y_1+bt)$ なので、$\mathrm{A}$ から $\mathrm{H}$ までの $x$ 座標の差は $at$、$y$ 座標の差は $bt$ です。2点間の距離の公式を使うと、
$\mathrm{AH} = \sqrt{(at)^2+(bt)^2}$
$(at)^2 = a^2t^2$、$(bt)^2=b^2t^2$ なので、
$\mathrm{AH} = \sqrt{a^2t^2+b^2t^2} = \sqrt{t^2(a^2+b^2)}$
$\sqrt{t^2} = |t|$(2乗してから平方根をとると絶対値になります)なので、
$\mathrm{AH} = |t|\sqrt{a^2+b^2}$
先ほど求めた $t = -\dfrac{ax_1+by_1+c}{a^2+b^2}$ を代入します。絶対値の中の $-1$ は絶対値には影響しない($|-k|=|k|$)ので、
$|t| = \frac{|ax_1+by_1+c|}{a^2+b^2}$
これを $\mathrm{AH}=|t|\sqrt{a^2+b^2}$ に代入します。
$\mathrm{AH} = \frac{|ax_1+by_1+c|}{a^2+b^2}\times\sqrt{a^2+b^2}$
ここで、$\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a^2+b^2} = \dfrac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}$ という関係(分母を $\sqrt{a^2+b^2}$ の2乗と見て、分子・分母を $\sqrt{a^2+b^2}$ で1回ずつ約分する関係)を使うと、
$\mathrm{AH} = \frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$
これで、点 $\mathrm{A}(x_1,y_1)$ と直線 $l: ax+by+c=0$ の距離 $d$($=\mathrm{AH}$)を求める公式が完成しました。
$d = \frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$
分子は「直線の式の左辺 $ax+by+c$ に点の座標を代入して、絶対値をとったもの」、分母は「$x$ の係数と $y$ の係数をそれぞれ2乗して足し、平方根をとったもの」と覚えるとよいでしょう。
具体例で確認する
点 $(0,0)$(原点)と直線 $x-y+1=0$ の距離を求めてみましょう。$a=1$, $b=-1$, $c=1$, $x_1=0$, $y_1=0$ を公式に代入すると、
$d = \frac{|1\times0+(-1)\times0+1|}{\sqrt{1^2+(-1)^2}} = \frac{|1|}{\sqrt{2}} = \frac{1}{\sqrt2} = \frac{\sqrt2}{2}$
となります。原点から直線 $x-y+1=0$(傾き $1$、$y$切片 $1$ の直線)までの距離は $\dfrac{\sqrt2}{2}$ です。
例題
例題1(基本)
問題
点 $(2, -1)$ と直線 $3x+4y-6=0$ の距離を求めなさい。
解答・解説を見る
点と直線の距離の公式 $d = \dfrac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ を使います。直線 $3x+4y-6=0$ より $a=3$, $b=4$, $c=-6$、点は $(x_1,y_1)=(2,-1)$ です。
まず、分子の絶対値の中身を計算します。
$ax_1+by_1+c = 3\times2+4\times(-1)+(-6)$
1つずつ計算します。$3\times2=6$、$4\times(-1)=-4$ なので、
$= 6-4-6 = -4$
絶対値をとります。
$|{-4}| = 4$
次に、分母を計算します。
$\sqrt{a^2+b^2} = \sqrt{3^2+4^2} = \sqrt{9+16} = \sqrt{25} = 5$
分子・分母をまとめると、
$d = \frac{4}{5}$
よって、求める距離は $\dfrac{4}{5}$ です。
例題2(標準)
問題
点 $(1, 4)$ と直線 $y=2x-3$ の距離を求めなさい。
解答・解説を見る
点と直線の距離の公式は、直線が一般形 $ax+by+c=0$ で表されているときに使う公式です。直線 $y=2x-3$ はまだ $y=(xの式)$ の形なので、先に一般形に直します。
右辺の $2x-3$ を左辺に移項します。
$-2x+y+3=0$
両辺に $-1$ をかけて、$x$ の係数を正の数にそろえます(かけなくても正解にはたどり着きますが、見やすくするための工夫です)。
$2x-y-3=0$
これで $a=2$, $b=-1$, $c=-3$ の一般形になりました。点は $(x_1,y_1)=(1,4)$ です。
分子の絶対値の中身を計算します。
$ax_1+by_1+c = 2\times1+(-1)\times4+(-3)$
1つずつ計算します。$2\times1=2$、$(-1)\times4=-4$ なので、
$= 2-4-3 = -5$
絶対値をとります。
$|{-5}|=5$
分母を計算します。
$\sqrt{a^2+b^2} = \sqrt{2^2+(-1)^2} = \sqrt{4+1} = \sqrt5$
分子・分母をまとめると、
$d = \frac{5}{\sqrt5}$
分母に根号が残っているので、有理化します(分母・分子に $\sqrt5$ をかけます)。
$d = \frac{5\times\sqrt5}{\sqrt5\times\sqrt5} = \frac{5\sqrt5}{5} = \sqrt5$
よって、求める距離は $\sqrt5$ です。
例題3(応用)
問題
2直線 $l_1: 3x+4y-2=0$、$l_2: 3x+4y+8=0$ は平行である。この2直線の距離を求めなさい。
解答・解説を見る
2直線が平行であるとき、「2直線の距離」は、一方の直線上の1点をとり、その点からもう一方の直線までの距離を計算すれば求められます(平行な直線どうしはどこをとっても離れ具合が同じなので、1点だけ調べれば十分です)。
ステップ1:直線 $l_1$ 上の点を1つ見つける
$l_1: 3x+4y-2=0$ に、計算しやすい $x$ の値を代入して、対応する $y$ の値を求めます。$x=2$ を代入すると、
$3\times2+4y-2=0$
左辺の数の部分を計算します。
$6+4y-2=0$
$4y+4=0$
両辺から $4$ を引きます。
$4y=-4$
両辺を $4$ で割ります。
$y=-1$
よって、点 $(2,-1)$ は直線 $l_1$ 上の点です。
ステップ2:点 $(2,-1)$ から直線 $l_2$ までの距離を求める
直線 $l_2: 3x+4y+8=0$ より $a=3$, $b=4$, $c=8$ です。点と直線の距離の公式に、点 $(x_1,y_1)=(2,-1)$ を代入します。
分子の絶対値の中身を計算します。
$ax_1+by_1+c = 3\times2+4\times(-1)+8$
1つずつ計算します。$3\times2=6$、$4\times(-1)=-4$ なので、
$=6-4+8=10$
絶対値をとります。
$|10|=10$
分母を計算します。
$\sqrt{3^2+4^2}=\sqrt{9+16}=\sqrt{25}=5$
分子・分母をまとめると、
$d=\frac{10}{5}=2$
よって、2直線 $l_1$ と $l_2$ の距離は $2$ です。
別解(定数項どうしの差を使う方法)
一般に、2直線が $ax+by+c_1=0$、$ax+by+c_2=0$($x,y$ の係数 $a,b$ が両方とも共通)という形で平行に表されているとき、その距離は
$d=\frac{|c_1-c_2|}{\sqrt{a^2+b^2}}$
という式でも求められます(これは、上のステップ1・2でやったことを、文字のまま計算しても同じ式が得られることから分かります)。今回は $c_1=-2$, $c_2=8$ なので、
$d=\frac{|(-2)-8|}{\sqrt{3^2+4^2}}=\frac{|-10|}{5}=\frac{10}{5}=2$
同じ答え $2$ が、点を探す手間をかけずに求められます。
練習問題
問題
点 $(-3, 2)$ と直線 $5x-12y+26=0$ の距離を求めなさい。
答え
$1$
簡単な解説
$a=5$, $b=-12$, $c=26$, $(x_1,y_1)=(-3,2)$ を公式に代入すると、分子は $|5\times(-3)+(-12)\times2+26|=|-15-24+26|=|-13|=13$、分母は $\sqrt{5^2+(-12)^2}=\sqrt{25+144}=\sqrt{169}=13$ となるので、$d=\dfrac{13}{13}=1$。