数学I / 数と式

頻出解法パターン

この単元(数学I「数と式」)では、因数分解・絶対値・根号・不等式・集合・命題と、扱う内容がたくさん出てきます。ここでは、それぞれのテーマで「この形を見たらこう動く」という頻出の解法パターンを8つにまとめました。問題を見て「あ、あのパターンだ」と気づけるようになることが目標です。

パターン1: 因数分解は「共通因数 → 公式 → たすき掛け」の順に試す

こんな問題で使う

「次の式を因数分解しなさい」という問題全般です。とくに、どの公式を使えばいいのか分からず手が止まってしまうときに、この順番通りに確認していくと迷わずに進められます。

解法の手順

  • まず、すべての項に共通する因数(数字や文字)がないかを探し、あればくくり出します。
  • 残った式が、乗法公式(展開の公式)の逆の形になっていないか確認します。たとえば $a^2-b^2=(a+b)(a-b)$ や $a^2+2ab+b^2=(a+b)^2$ のような形です。
  • どの公式にも当てはまらず、式が $ax^2+bx+c$ の形(2次式)であれば、たすき掛けを試します。たすき掛けとは、$x$の係数$b$と定数項$c$の組み合わせを、数を斜めに掛け合わせて条件(掛けて$ac$、足して$b$になる)を満たすように探していく因数分解の方法です。
  • 最後に、求めた答えをもう一度展開して、元の式に戻るかどうかを検算します。

具体例

問題:次の式を因数分解せよ。

$2x^2-8$

解答: まず共通因数の2をくくり出します。

$2x^2-8=2(x^2-4)$

$x^2-4$ は $x^2-2^2$ の形なので、公式 $a^2-b^2=(a+b)(a-b)$ が使えます。

$x^2-4=(x+2)(x-2)$

したがって、

$2x^2-8=2(x+2)(x-2)$

パターン2: 複雑な式の因数分解は「置換」で次数を下げる

こんな問題で使う

$(x^2+x)^2-8(x^2+x)+12$ のように、式の中に同じかたまりが繰り返し出てくるときや、次数が高くてそのままでは公式が使えないときに使います。

解法の手順

  • 式の中で繰り返し出てくる部分(共通するかたまり)を見つけます。
  • そのかたまりを $t$ など、新しい1つの文字で置き換えます。この操作を「置換」と言います。
  • 置き換えたあとの式を、$t$についての(元の式より次数の低い)式として、パターン1の手順で因数分解します。
  • 因数分解できたら、$t$を元の式に戻します。
  • 戻したあとの式が、さらに因数分解できないかも必ず確認します。

具体例

問題:次の式を因数分解せよ。

$(x^2+x)^2-8(x^2+x)+12$

解答: $t=x^2+x$ と置くと、式は次のようになります。

$t^2-8t+12$

掛けて12、足して$-8$になる2つの数は$-2$と$-6$なので、

$t^2-8t+12=(t-2)(t-6)$

$t$を元に戻します。

$=(x^2+x-2)(x^2+x-6)$

それぞれの部分がさらに因数分解できないか確認します。 $x^2+x-2$ は、掛けて$-2$、足して$1$になる数の組($2$と$-1$)を使って、

$x^2+x-2=(x+2)(x-1)$

$x^2+x-6$ は、掛けて$-6$、足して$1$になる数の組($3$と$-2$)を使って、

$x^2+x-6=(x+3)(x-2)$

したがって、答えは次の通りです。

$(x+2)(x-1)(x+3)(x-2)$

パターン3: 絶対値を含む方程式・不等式は、中身の符号で場合分けする

こんな問題で使う

$|x-3|=5$ や $|2x+1|<7$ のように、絶対値の記号 $|\ \ |$ が入った方程式や不等式を解く問題で使います。

絶対値とは、数直線上でその数と原点(0の点)との距離のことです。$|a|$は「$a$の絶対値」と読み、$a$が0以上のときは $|a|=a$、$a$が負のときは $|a|=-a$ となります。つまり、絶対値の記号を外すときは、中身が正か負かによって式の形が変わるので、必ず分けて考える必要があります。

解法の手順

  • 絶対値の中身(たとえば $x-3$)が0以上になる場合と、負になる場合の、2つの場合に分けます。
  • 中身が0以上のときは、絶対値の記号をそのまま外します。
  • 中身が負のときは、絶対値の記号を外すときに、中身全体に$-1$を掛けます(符号を反転させます)。
  • それぞれの場合について方程式・不等式を解いたあと、最初に立てた条件(中身が0以上か負か)と、求めた解の範囲がきちんと両立しているかを確認し、条件を満たす解だけを最終的な答えとして残します。

具体例

問題:方程式 $|x-3|=5$ を解け。

解答: (i) $x-3\geq0$、つまり $x\geq3$ のとき、絶対値の記号をそのまま外せます。

$x-3=5 \quad \Rightarrow \quad x=8$

$x=8$ は $x\geq3$ を満たすので、解として採用します。

(ii) $x-3<0$、つまり $x<3$ のとき、符号を反転させて絶対値の記号を外します。

$-(x-3)=5 \quad \Rightarrow \quad -x+3=5 \quad \Rightarrow \quad x=-2$

$x=-2$ は $x<3$ を満たすので、解として採用します。

(i)(ii)より、答えは $x=8,\ -2$ です。

パターン4: 二重根号は「足して○、掛けて□」になる組を探して外す

こんな問題で使う

$\sqrt{7+2\sqrt{10}}$ のように、根号の中にさらに根号が入っている式(二重根号と言います)を、根号が1つだけの、より簡単な形に直す問題で使います。

解法の手順

  • 根号の中の式を、$a+2\sqrt{b}$ の形(根号の前の係数がちょうど2になっている形)に整理します。
  • 足すと$a$、掛けると$b$になるような、2つの正の数 $p,q$($p>q$とします)を探します。
  • 見つかったら、次の公式を使って二重根号を外します。

$\sqrt{a+2\sqrt{b}}=\sqrt{p}+\sqrt{q}$

  • 根号の前の係数が2になっていない場合は、先に式を変形して係数を2にそろえてから、同じ手順を使います。

具体例

問題:$\sqrt{7+2\sqrt{10}}$ を簡単にせよ。

解答: 足して7、掛けて10になる2つの正の数を探すと、2と5が見つかります($2+5=7$、$2\times5=10$)。 したがって、

$\sqrt{7+2\sqrt{10}}=\sqrt{5}+\sqrt{2}$

(検算:$(\sqrt5+\sqrt2)^2=5+2\sqrt{10}+2=7+2\sqrt{10}$ となり、元の式と一致します。)

パターン5: 連立不等式や文章題の不等式は、数直線に図示して共通範囲を求める

こんな問題で使う

「$2x-1>3$ かつ $x+2\leq7$ を満たす $x$の範囲を求めよ」のような連立不等式や、個数・代金などの条件から不等式を立てて解く文章題で使います。

解法の手順

  • それぞれの不等式を1つずつ個別に解き、$x$の範囲を求めます。
  • 求めた範囲を、同じ1本の数直線の上に書き込みます。不等号の向き(以上・以下なのか、より大きい・より小さいなのか)に注意して、線分や矢印で表します。
  • 「かつ」でつながれた条件のときは、すべての範囲が重なっている部分(共通する部分)を読み取ります。「または」でつながれた条件のときは、範囲を合わせた部分を読み取ります。
  • 文章題の場合は、最後に求めた答えが問題の状況(個数なら自然数であることなど)に合っているかを必ず確認します。

具体例

問題:$2x-1>3$ かつ $x+2\leq7$ を満たす $x$の範囲を求めよ。

解答: 1つ目の不等式を解きます。

$2x-1>3 \quad \Rightarrow \quad 2x>4 \quad \Rightarrow \quad x>2$

2つ目の不等式を解きます。

$x+2\leq7 \quad \Rightarrow \quad x\leq5$

数直線の上に $x>2$ の範囲と $x\leq5$ の範囲を書き込み、両方が重なっている部分を読み取ると、答えは次の通りです。

$2

パターン6: 集合の要素の個数は、ベン図と公式 $n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B)$ で求める

こんな問題で使う

「1から100までの整数のうち、2の倍数または3の倍数である整数は何個あるか」のように、2つの条件のうち少なくとも一方を満たす要素の個数を求める問題で使います。

集合とは、ものの集まりのことです。集合$A$に含まれる要素の個数を $n(A)$ と書きます。$A\cup B$(和集合)は「$A$と$B$の少なくとも一方に入っている要素の集まり」、$A\cap B$(共通部分)は「$A$と$B$の両方に入っている要素の集まり」を表します。

解法の手順

  • 問題文の条件から、集合$A$、$B$を自分で決め、それぞれの要素の個数 $n(A)$、$n(B)$と、両方に共通する要素の個数 $n(A\cap B)$ を求めます。
  • ベン図(円を重ねて描いた図)をかき、「$A$だけ」「$B$だけ」「両方に重なる部分」のそれぞれに個数を書き込むと、頭の中が整理しやすくなります。
  • 次の公式を使って、少なくとも一方を満たす個数を求めます。単純に $n(A)+n(B)$ と足すと、両方に入っている要素を2回数えてしまうため、重なった分を1回分引きます。

$n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B)$

  • 「条件を満たさないものの個数」を聞かれている問題では、全体の集合を$U$として、補集合の公式 $n(\overline{A})=n(U)-n(A)$ も合わせて使います。

具体例

問題:1から100までの整数のうち、2の倍数または3の倍数である整数は何個あるか。

解答: $A$を2の倍数の集合、$B$を3の倍数の集合とします。 $n(A)$は1から100までの2の倍数の個数なので、$100\div2=50$ 個です。 $n(B)$は1から100までの3の倍数の個数なので、$100\div3=33.33\cdots$ より、33個です(割り切れない分は切り捨てます)。 $n(A\cap B)$は2の倍数かつ3の倍数、つまり6の倍数の個数なので、$100\div6=16.66\cdots$ より、16個です。 公式に当てはめます。

$n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B)=50+33-16=67$

したがって、答えは67個です。

パターン7: 必要条件・十分条件の判定は、集合の包含関係で考える

こんな問題で使う

「$p$は$q$であるための何条件か」と問われる問題で使います。命題「$p$ならば$q$」($p\Rightarrow q$と書きます)が正しいかどうかを調べて答えるタイプです。

命題「$p$ならば$q$」が正しいとき、$p$は$q$であるための「十分条件」、$q$は$p$であるための「必要条件」と言います。両方の向き($p\Rightarrow q$と$q\Rightarrow p$)が正しいときは、「必要十分条件」と言います。

解法の手順

  • 条件$p$を満たすもの全体の集合を$P$、条件$q$を満たすもの全体の集合を$Q$と考えます。
  • 「$p$ならば$q$」が正しいかどうかを、$P$が$Q$にすっぽり含まれるか($P\subset Q$)で確認します。$p$は満たすけれど$q$は満たさない具体例(反例)を1つでも見つけられれば、「$p$ならば$q$」は成り立たないと分かります。
  • 同じように、逆向きの「$q$ならば$p$」も成り立つかどうかを確認します。
  • 両方成り立てば必要十分条件、$p\Rightarrow q$だけが成り立てば「$p$は$q$の十分条件」(このとき同時に「$q$は$p$の必要条件」でもあります)、どちらも成り立たなければ「必要条件でも十分条件でもない」と判断します。

具体例

問題:$x=2$ は $x^2=4$ であるための何条件か。

解答: $p:x=2$、$q:x^2=4$ とします。 $p\Rightarrow q$ を確認します。$x=2$ ならば、$x^2=2^2=4$ となるので、これは成り立ちます。 $q\Rightarrow p$ を確認します。$x^2=4$ を解くと $x=2$ または $x=-2$ となります。$x=-2$ は$q$を満たしますが$p$は満たさないので、これは反例であり、$q\Rightarrow p$ は成り立ちません。 以上より、$x=2$ は $x^2=4$ であるための十分条件ですが、必要条件ではありません。

パターン8: 直接証明が難しい命題は、対偶を使って証明する

こんな問題で使う

「$n$を整数とする。$n^2$が偶数ならば、$n$は偶数である」ことを証明せよ、のように、そのままでは示しにくい「ならば」の形の命題を証明する問題で使います。

命題「$p$ならば$q$」に対して、「$q$でないならば$p$でない」という命題を、その対偶と言います。もとの命題と対偶は、真偽(正しいかどうか)が必ず一致するという性質があります。つまり、対偶が正しいことを示せれば、もとの命題が正しいことも示したことになります。

解法の手順

  • 証明したい命題を「$p$ならば$q$」の形で確認します。
  • 対偶「$q$でないならば$p$でない」を作ります。
  • 対偶の方が証明しやすそうであれば、対偶を証明します。「$q$でない」という仮定から出発し、式変形などを通じて「$p$でない」を導きます。
  • 対偶が正しく証明できれば、「もとの命題と対偶の真偽は一致する」という性質から、もとの命題も正しいと結論づけます。

具体例

問題:$n$を整数とする。$n^2$が偶数ならば、$n$は偶数であることを証明せよ。

解答: もとの命題は「$p$:$n^2$が偶数」ならば「$q$:$n$は偶数」という形です。 対偶を作ると、「$n$が偶数でない(つまり奇数である)ならば、$n^2$は偶数でない(つまり奇数である)」となります。

対偶を証明します。$n$が奇数のとき、ある整数$k$を用いて $n=2k+1$ と表せます。このとき、

$n^2=(2k+1)^2=4k^2+4k+1=2(2k^2+2k)+1$

$2k^2+2k$ は整数なので、$n^2$は「2×整数+1」の形になっており、これは奇数であることを意味します。

対偶「$n$が奇数ならば$n^2$は奇数である」が証明できたので、もとの命題「$n^2$が偶数ならば$n$は偶数である」も正しいと言えます。