数学B
共通テスト対策
この科目の共通テストでの傾向
共通テストの数学B(数列、統計的な推測など)は、多くの場合、いくつかの単元の中から出題される問題を選んで解答する形式になっています。教科書の章末問題のように「公式を知っていればすぐ解ける」というよりも、問題文が誘導(ヒント)の形で段階的に進んでいき、その流れに沿って空欄を埋めていくという出題スタイルが特徴的です。
たとえば数列の問題では、「まず $b_n=a_{n+1}-a_n$ とおくと、$b_n$ は等比数列になることを確認せよ」といった誘導のあとに、実際に一般項を求めさせる、という流れがよくあります。統計的な推測の問題でも、身近な題材(アンケート調査、製品の検査、スポーツの記録など)を使った文章題や、生徒どうしの会話形式の問題文の中に、母平均・母標準偏差・標本の大きさなどの必要な数値が埋め込まれていることが多いです。
そのため、共通テストで求められる力は、単に公式を暗記していることだけではなく、
- 問題文の誘導を正確に読み取り、今どの単元のどの公式を使うべきかを素早く判断する力
- 与えられた数値(正規分布表の値など)を、状況に応じて正しく組み合わせて使う力
- 途中の計算を素早く、かつ正確に行う力(マーク式・記述式どちらの場合も、計算ミスがそのまま失点に直結します)
です。日頃の学習では、公式を「使えるようにしておく」だけでなく、「なぜその公式を使うのか」を説明できるようにしておくことが、誘導形式の問題に対応するための一番の近道になります。
単元別の対策ポイント
数列
- 漸化式の問題では、いきなり一般項を求めようとせず、問題文の誘導(「$\{a_n+c\}$が等比数列であることを示せ」のような指示)に沿って、まず基本形(等差数列型・等比数列型・階差数列型)や特性方程式の考え方に帰着させることを意識しましょう。
- $\Sigma$の公式($\displaystyle\sum k$、$\displaystyle\sum k^2$、$\displaystyle\sum k^3$)は、電卓のように瞬時に使えるようにしておくと、計算時間を大きく短縮できます。
- 群数列の問題は、「第$n$群の最後までに何個並んでいるか」という累積の個数を求めることが最初の一歩になることを、パターンとして覚えておきましょう。
- 数学的帰納法は、答案の型(ステップ1・ステップ2・結論)が決まっているので、その型を崩さずに書く練習をしておくと、記述式でも減点されにくくなります。
統計的な推測
- 正規分布表は、問題ごとに使ってよい値が指定されていることがほとんどです。表の値が「$0$から$z$までの確率」であることを常に意識し、対称性や片側確率の考え方をすぐに使えるようにしておきましょう。
- 期待値・分散の公式(特に二項分布の $E(X)=np$、$V(X)=np(1-p)$、標本平均の $\sigma(\overline{X})=\sigma/\sqrt{n}$)は、問題文のどの数値がどの文字($n$、$p$、$\sigma$など)に対応するかを素早く見抜く練習をしておくとよいです。
- 信頼区間や仮説検定の問題は、会話文や文章題の中に「母標準偏差は○○であることが分かっている」「標本平均は○○であった」のように、必要な数値が散らばって書かれていることが多いです。読みながら、使う公式に必要な数値をメモしていく習慣をつけましょう。
- 仮説検定では、「帰無仮説」「対立仮説」「有意水準」「棄却域」という決まった手順(5ステップ)をそのまま守って答案を進めることが大切です。特に、対立仮説が「等しくない」なのか「大きい・小さい」なのかによって、両側検定と片側検定のどちらを使うかが変わる点に注意しましょう。
実戦問題
実戦問題1
ある美術品の価値は、年々上昇していくと予想されています。購入した年(1年目)の価値は $50$ 万円であり、$n$年目の価値を $a_n$(万円)とすると、
$a_1=50, \qquad a_{n+1}=2a_n-30$
という関係が成り立つとします。
(1) $a_2$、$a_3$ を求めなさい。
(2) 数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めなさい。
(3) この美術品の価値が初めて $1000$ 万円を超えるのは何年目か求めなさい。
解答・解説を見る
(1)について
漸化式 $a_{n+1}=2a_n-30$ に、$a_1=50$ を代入していきます。
$a_2 = 2\times50-30 = 100-30=70$
$a_3 = 2\times70-30 = 140-30=110$
(2)について
漸化式は $a_{n+1}=pa_n+q$ の形($p=2$、$q=-30$)です。特性方程式を作ります。
$\alpha = 2\alpha-30$
両辺から $2\alpha$ を引きます。
$-\alpha = -30$
$\alpha = 30$
もとの漸化式から特性方程式を引くと、
$a_{n+1}-30 = (2a_n-30)-(2\times30-30) = 2a_n-30-30 = 2a_n-60 = 2(a_n-30)$
したがって、数列 $\{a_n-30\}$ は公比$2$の等比数列です。初項は $a_1-30=50-30=20$ なので、
$a_n-30 = 20\times2^{\,n-1}$
$20=10\times2$ なので、$20\times2^{n-1}=10\times2^{n}$ と書き直せます。
$a_n-30 = 10\times2^{\,n}$
両辺に$30$を足します。
$a_n = 30+10\times2^{\,n}$
(確認: $a_1=30+10\times2=30+20=50$、$a_2=30+10\times4=30+40=70$、$a_3=30+10\times8=30+80=110$ となり、(1)の結果と一致します。)
(3)について
$a_n>1000$ となる最小の$n$を求めます。
$30+10\times2^{\,n} > 1000$
両辺から$30$を引きます。
$10\times2^{\,n} > 970$
両辺を$10$で割ります。
$2^{\,n} > 97$
$2^n$ の値を、$n$を増やしながら実際に計算してみます。$2^6=64$、$2^7=128$ です。$64<97$ ですが $128>97$ なので、この不等式を満たす最小の$n$は $n=7$ です。
念のため確認します。
$a_6 = 30+10\times2^6 = 30+640=670 \ (\text{まだ}1000\text{以下})$
$a_7 = 30+10\times2^7 = 30+1280=1310 \ (1000\text{を超えている})$
したがって、この美術品の価値が初めて $1000$ 万円を超えるのは7年目です。
実戦問題2
ある高校で、生徒の1日の睡眠時間を調べる調査を行いました。過去の大規模な調査から、生徒の睡眠時間の母標準偏差は $1.2$ 時間であることが分かっています。この高校の生徒$100$人を無作為に抽出して調べたところ、標本平均は $6.8$ 時間でした。
(1) 母平均を、信頼度95%で区間推定しなさい。
(2) 「この高校の生徒の平均睡眠時間は $7.0$ 時間である」という主張について、有意水準5%で両側検定し、結論を述べなさい。
解答・解説を見る
(1)について
信頼度95%の信頼区間の公式 $\overline{X}-1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} \leq m \leq \overline{X}+1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}$ を使います。$\overline{X}=6.8$、$\sigma=1.2$、$n=100$ を代入します。
$\frac{\sigma}{\sqrt{n}} = \frac{1.2}{\sqrt{100}} = \frac{1.2}{10} = 0.12$
$1.96\times0.12 = 0.2352$
これを信頼区間の公式に代入します。
$6.8-0.2352 \ \leq \ m \ \leq \ 6.8+0.2352$
$6.5648 \ \leq \ m \ \leq \ 7.0352$
したがって、母平均の信頼度95%の信頼区間は、$6.5648\leq m\leq7.0352$(時間)です。
(2)について
仮説: $H_0: m=7.0$、$H_1: m\neq7.0$(両側検定)。
検定統計量の公式 $Z=\dfrac{\overline{X}-m_0}{\sigma/\sqrt{n}}$ に、$\overline{X}=6.8$、$m_0=7.0$、$\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=0.12$((1)で求めた値)を代入します。
$Z = \frac{6.8-7.0}{0.12} = \frac{-0.2}{0.12} \approx -1.67$
両側検定・有意水準5%の基準値は $1.96$ です。$|Z|\approx1.67$ は $1.96$ より小さいので、棄却域に入りません。
したがって、帰無仮説を棄却するには至らず、「この高校の生徒の平均睡眠時間は $7.0$ 時間である」という主張を否定するだけの十分な根拠は得られなかった、と結論します。
(参考: (1)で求めた信頼区間 $6.5648\leq m\leq7.0352$ の中に $7.0$ が含まれていることからも、$m=7.0$ という主張が棄却されないことと整合していることが確認できます。)
実戦問題3
ある工場で生産される製品の不良率は $10\%$ であることが分かっています。この製品を$400$個検査するとき、不良品の個数を $X$ とします。
(1) $X$ の期待値 $E(X)$ と標準偏差 $\sigma(X)$ を求めなさい。
(2) 二項分布の正規近似(中心極限定理)を用いて、不良品の個数が $34$ 個以上 $52$ 個以下となる確率を求めなさい。ただし、$P(0\leq Z\leq1)=0.3413$、$P(0\leq Z\leq2)=0.4772$ とします。
解答・解説を見る
(1)について
$X$ は $n=400$、$p=0.1$ の二項分布 $B(400,0.1)$ に従います。期待値の公式 $E(X)=np$ に代入します。
$E(X) = 400\times0.1 = 40$
分散の公式 $V(X)=np(1-p)$ に、$1-p=0.9$ を代入します。
$V(X) = 400\times0.1\times0.9 = 36$
標準偏差は分散の正の平方根なので、
$\sigma(X) = \sqrt{36} = 6$
(2)について
二項分布 $B(n,p)$ は、$n$が十分大きいとき、正規分布 $N(np,\ np(1-p))$ で近似できます(これは中心極限定理の考え方によるものです)。(1)より、$X$ は近似的に正規分布 $N(40,36)$ に従うとみなせます。
$X=34$、$X=52$ をそれぞれ標準化します。標準偏差は $\sigma(X)=6$ です。
$X=34 \ \text{のとき}: \ z=\frac{34-40}{6} = \frac{-6}{6}=-1$
$X=52 \ \text{のとき}: \ z=\frac{52-40}{6} = \frac{12}{6}=2$
したがって、求める確率は $P(-1\leq Z\leq2)$ です。標準正規分布の対称性から $P(-1\leq Z\leq0)=P(0\leq Z\leq1)$ なので、
$P(-1\leq Z\leq2) = P(0\leq Z\leq1)+P(0\leq Z\leq2) = 0.3413+0.4772 = 0.8185$
したがって、不良品の個数が $34$ 個以上 $52$ 個以下となる確率はおよそ $0.8185$ です。