数学III
共通テスト対策
この科目の共通テストでの傾向
まず、正確な情報として知っておいてほしいことがあります。大学入学共通テストの数学は「数学I・A」「数学II・B・C」が出題範囲であり、数学IIIはその範囲に含まれていません。 数学IIIの内容(極限・微分法・積分法)は、主に国公立大学の二次試験(個別学力検査)や、私立大学の入試において、記述式(または一部マーク式)の問題として出題されます。
そのため、このページでは「共通テスト」というよりも、数学IIIを課す大学入試全般での出題傾向と対策を扱います。理系の受験では、数学IIIの微分・積分は最頻出の分野であり、次のような特徴があります。
- 1つの大問の中で、複数の単元が組み合わさって出題されることが非常に多いです。例えば、「関数の増減を調べる(微分法)→ その結果を使って面積を求める(積分法)→ パラメータを無限大に飛ばした極限を求める(極限)」のように、1つの問題の中で複数の技術を連続して使わせる構成がよく見られます。
- 記述式の答案では、計算過程をきちんと書くことが採点で重視されます。これは、このシリーズの教材で徹底してきた「途中式を省略しない」「用語の意味を確認しながら進める」という姿勢そのものが、そのまま入試対策になっている、ということでもあります。
- 序盤の小問でのケアレスミスが、後半の小問すべてに影響する構成になっていることが多いです。1つの大問が(1)(2)(3)と枝分かれしている場合、(1)の計算結果を(2)、(3)で使うことがほとんどなので、序盤で符号や計算のミスをしないことが極めて重要です。
単元別の対策ポイント
極限
不定形($\dfrac00$、$\dfrac{\infty}{\infty}$、$\infty-\infty$)が出てきたときに、慌てずに「有理化」「最高次の項で割る」「置換して基本公式を使う」といった正しい処理を、反射的に選べるようにしておきましょう。極限の計算は、多くの場合、大問の最後(パラメータを含む結果を$n\to\infty$や$x\to\infty$で評価する場面)に登場するため、それまでの計算が正しくないと、極限の計算自体は合っていても答案全体が誤りになってしまいます。
微分法
積・商の微分法、合成関数の微分法(連鎖律)を、意識せずに使えるくらい練習しておくことが大切です。ほとんどの問題で、微分の計算そのものがゴールなのではなく、「接線を求めるため」「増減を調べて極値を求めるため」「不等式を証明するため」といった次のステップのための道具として使われます。増減表を正確に、素早く作れるようにしておきましょう。
積分法
置換積分法・部分積分法の使い分け(パターンを見抜く力)がそのまま得点力に直結します。また、面積・体積を求める問題では、「符号(グラフが軸の上か下か)」と「2乗するタイミング(回転体)」を間違えないことが最重要です。計算量が多くなりがちな単元なので、日頃から最後まで計算をやりきる練習をしておきましょう。
実戦問題
実戦問題1
関数 $f(x)=xe^{-x}$($x\geq 0$)について、次の問いに答えなさい。
(1) $f(x)$ の増減を調べ、極大値を求めなさい。
(2) 曲線 $y=f(x)$ と $x$ 軸、直線 $x=a$($a>0$)で囲まれた部分の面積を $S(a)$ とするとき、$S(a)$ を求めなさい。
(3) $\displaystyle\lim_{a\to\infty} S(a)$ を求めなさい。
解答・解説を見る
(1) 増減を調べる
積の微分法(と合成関数の微分法)を使って $f'(x)$ を求めます。
$f'(x) = 1\times e^{-x}+x\times(-e^{-x}) = e^{-x}(1-x)$
$e^{-x}$ は常に正なので、$f'(x)$ の符号は $(1-x)$ の符号で決まります。$0\leq x<1$ で $f'(x)>0$(増加)、$x>1$ で $f'(x)<0$(減少)なので、$x=1$ の前後で符号が正から負に変わり、$x=1$ で極大になります。
$f(1) = 1\times e^{-1} = \frac{1}{e}$
(2) $S(a)$ を求める
$x\geq 0$ の範囲では $x\geq 0$、$e^{-x}>0$ なので $f(x)\geq 0$ です。したがって、そのまま定積分すれば面積が求まります。
$S(a) = \int_0^a xe^{-x}\,dx$
部分積分法を使います。$f(x)=x$、$g'(x)=e^{-x}$ とおくと、$f'(x)=1$、$g(x)=-e^{-x}$ です。
$\int xe^{-x}\,dx = x\times(-e^{-x}) - \int 1\times(-e^{-x})\,dx = -xe^{-x}+\int e^{-x}\,dx$
$= -xe^{-x}-e^{-x}+C = -(x+1)e^{-x}+C$
したがって、原始関数 $F(x)=-(x+1)e^{-x}$ を使って、
$S(a) = F(a)-F(0) = \left[-(a+1)e^{-a}\right] - \left[-(0+1)e^{0}\right]$
$= -(a+1)e^{-a} - (-1) = 1-(a+1)e^{-a}$
(3) $a\to\infty$ での極限
指数関数 $e^{-a}$ が $0$ に近づく速さは、多項式 $(a+1)$ が大きくなる速さを圧倒的に上回るため(指数関数的な減少は、どんな多項式の増加よりも強い、というよく知られた事実です)、
$\lim_{a\to\infty}(a+1)e^{-a} = 0$
したがって、
$\lim_{a\to\infty}S(a) = 1-0 = 1$
答え:(1) $x=1$ で極大値 $\dfrac1e$ (2) $S(a)=1-(a+1)e^{-a}$ (3) $1$
実戦問題2
(1) $x>0$ のとき、不等式
$\frac{x}{1+x} < \log(1+x) < x$
が成り立つことを証明しなさい。
(2) (1)の不等式を利用して、$\displaystyle\lim_{n\to\infty} n\log\left(1+\frac{1}{n}\right)$ を求めなさい。
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(1) 不等式の証明
右側($\log(1+x)
$g'(x) = 1-\frac{1}{1+x} = \frac{(1+x)-1}{1+x} = \frac{x}{1+x}$
$x>0$ のとき $g'(x)=\dfrac{x}{1+x}>0$ なので、$g(x)$ は $x>0$ で増加します。したがって $x>0$ のとき $g(x)>g(0)=0$、すなわち $x-\log(1+x)>0$、つまり $\log(1+x) 左側($\dfrac{x}{1+x}<\log(1+x)$)の証明:$h(x)=\log(1+x)-\dfrac{x}{1+x}$ とおくと、$h(0)=\log 1-0=0$ です。 $h'(x) = \frac{1}{1+x}-\frac{1\times(1+x)-x\times 1}{(1+x)^2} = \frac{1}{1+x}-\frac{1}{(1+x)^2}$ 通分します。 $h'(x) = \frac{(1+x)-1}{(1+x)^2} = \frac{x}{(1+x)^2}$ $x>0$ のとき $h'(x)=\dfrac{x}{(1+x)^2}>0$ なので、$h(x)$ は $x>0$ で増加します。したがって $x>0$ のとき $h(x)>h(0)=0$、すなわち $\log(1+x)-\dfrac{x}{1+x}>0$、つまり $\dfrac{x}{1+x}<\log(1+x)$ が成り立ちます。 以上より、$x>0$ のとき $\dfrac{x}{1+x}<\log(1+x) (2) 極限を求める $n$ は自然数なので、(1)の不等式に $x=\dfrac1n$($>0$)を代入します。 $\frac{\frac1n}{1+\frac1n} < \log\left(1+\frac1n\right) < \frac1n$ 左辺を整理します。分子・分母に $n$ を掛けます。 $\frac{\frac1n}{1+\frac1n} = \frac{1}{n+1}$ したがって、 $\frac{1}{n+1} < \log\left(1+\frac1n\right) < \frac1n$ 各辺に、正の数 $n$ を掛けます。 $\frac{n}{n+1} < n\log\left(1+\frac1n\right) < 1$ 左端の極限を求めます。 $\lim_{n\to\infty}\frac{n}{n+1} = \lim_{n\to\infty}\frac{1}{1+\frac1n} = \frac{1}{1+0} = 1$ 右端は常に $1$ です。両端がともに $1$ に収束するので、はさみうちの原理より、 $\lim_{n\to\infty} n\log\left(1+\frac1n\right) = 1$ 答え:(1) 上記の通り (2) $1$ (この結果は、ネイピア数 $e$ の定義 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac1n\right)^n=e$ と本質的に同じ内容を表しています。)
実戦問題3
半径 $2$ の円の上半分を表す曲線 $y=\sqrt{4-x^2}$($-2\leq x\leq 2$)について、次の問いに答えなさい。
(1) この曲線と $x$ 軸で囲まれた部分を、$x$ 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
(2) この曲線は、媒介変数を用いて $x=2\cos t$、$y=2\sin t$($0\leq t\leq\pi$)とも表せる。これを利用して、この曲線の長さを求めなさい。
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(1) 体積を求める
この立体は、半径 $2$ の球そのものになります。$x$ 軸のまわりの回転体の公式に、$\{f(x)\}^2=y^2=4-x^2$ を使います。
$V = \pi\int_{-2}^{2}(4-x^2)\,dx$
被積分関数 $4-x^2$ は偶関数($(-x)^2=x^2$ より)なので、
$V = 2\pi\int_0^2(4-x^2)\,dx$
原始関数を求めて代入します。
$2\pi\left[4x-\frac{x^3}{3}\right]_0^2 = 2\pi\left(8-\frac{8}{3}\right) = 2\pi\times\frac{16}{3} = \frac{32\pi}{3}$
答え(1):$\dfrac{32\pi}{3}$
(検算:半径 $r$ の球の体積の公式 $\dfrac43\pi r^3$ に $r=2$ を代入すると $\dfrac43\pi\times 8=\dfrac{32\pi}{3}$ となり、一致します。)
(2) 曲線の長さを求める
$x(t)=2\cos t$、$y(t)=2\sin t$ をそれぞれ $t$ で微分します。
$x'(t) = -2\sin t,\qquad y'(t) = 2\cos t$
曲線の長さの公式(媒介変数表示)に代入します。
$L = \int_0^{\pi}\sqrt{(-2\sin t)^2+(2\cos t)^2}\,dt = \int_0^{\pi}\sqrt{4\sin^2 t+4\cos^2 t}\,dt$
$4$ でくくり、$\sin^2t+\cos^2t=1$ を使います。
$= \int_0^{\pi}\sqrt{4(\sin^2t+\cos^2t)}\,dt = \int_0^{\pi}\sqrt{4}\,dt = \int_0^{\pi}2\,dt$
$= 2\big[t\big]_0^{\pi} = 2\pi$
答え(2):$2\pi$
(検算:半径 $2$ の円周全体の長さは $2\pi\times 2=4\pi$ なので、その半分である半円の弧の長さは $2\pi$ となり、一致します。)