数学I
共通テスト対策
この科目の共通テストでの傾向
大学入学共通テストの「数学I」は、数学Aと合わせて解答する「数学I・数学A」という形で受験する人がほとんどです(数学Iだけを単独で受験することも制度上は可能です)。試験時間はいずれも70分で、大問(だいもん、というのは「大きな問題のまとまり」という意味です)ごとに、数学Iの範囲である「数と式」「図形と計量」「二次関数」「データの分析」の内容がほぼ毎年まんべんなく出題されます。
共通テストには、次のような特徴があります。
- 文章量が多い。 会話文形式(太郎さんと花子さんが話し合いながら問題を進めていく形式)や、日常生活・社会の場面設定を伴う問題が多く出されます。数式だけでなく、日本語の文章を正確に読み取る力が必要です。
- 誘導形式である。 「まず(1)でこれを求め、その結果を使って(2)を考える」というように、小問が階段のようにつながっています。前の小問で計算した値を、後の小問でそのまま使う場面が非常に多いので、途中の計算はメモを残しながら進めることが大切です。
- 空欄補充形式である。 解答は「ア」「イ」「ウ」のような記号が振られた空欄に、数値や符号、あるいは選択肢の番号を当てはめる形で答えます。そのため、記述式のように自分で答案を組み立てる練習だけでなく、「正しい式・値をすばやく選び取る」練習も必要です。
- 計算量よりも「考え方」が問われる。 複雑な計算を要求する問題は少なく、その代わりに「なぜその公式を使うのか」「場合分けの境目はどこか」といった、考え方の筋道を問う問題が多く出されます。
単元別に見ると、次のような傾向があります。
- 数と式からは、集合と命題(必要条件・十分条件の判定)や、因数分解・展開の考え方を使った文字式の処理が、他の単元の前提知識として頻出です。単独の大問としてよりも、他単元の問題文の中に自然に組み込まれることが多い単元です。
- 図形と計量からは、三角比の値を求める問題や、正弦定理・余弦定理を使って辺の長さや角度、面積、外接円の半径を求める問題がほぼ毎年出題されます。測量や建築など、身近な場面設定がよく使われます。
- 二次関数からは、グラフの頂点を求める平方完成(へいほうかんせい、式を $\left(x-p\right)^2+q$ の形に変形すること)や、定義域(変数 $x$ が動くことのできる範囲)を制限したうえでの最大値・最小値を、文字定数の値によって場合分けして求める問題が定番です。
- データの分析からは、平均値・中央値・分散・標準偏差・相関係数・箱ひげ図・仮説検定など、複数の道具を組み合わせて、与えられた資料(データの表やグラフ)を読み取る問題が出されます。計算そのものは易しめですが、「この数値は何を意味しているのか」という解釈を問われる点に注意が必要です。
以上を踏まえて、次の章では単元ごとの具体的な対策ポイントを整理します。
単元別の対策ポイント
数と式
- 展開の公式・因数分解の公式は、共通テストでは単独の大問になるよりも、他の単元(二次関数やデータの分析など)の計算の途中で「当然使えるもの」として登場します。公式を見た瞬間に使える状態にしておきましょう。
- 集合の問題では、ベン図(集合の関係を円の重なりで表した図)を実際に自分の手でかいてみることが、状況を正しく把握する一番の近道です。
- 「必要条件」「十分条件」「必要十分条件」の判定は、$p \Rightarrow q$($p$ ならば $q$、という意味の記号です)が正しいかどうかを、反例(条件を満たすのに結論が成り立たない具体例)を探しながら確認する練習をしておきましょう。
- 絶対値を含む方程式・不等式は、絶対値の中身の符号で場合分けをする、という基本の型を崩さずに使うことが大切です。
図形と計量
- 三角比の値(たとえば $\sin 30^{\circ}$, $\cos 60^{\circ}$, $\tan 45^{\circ}$ など)は、共通テストでは即座に使える前提で問題が作られています。有名角の三角比の値は暗記しておきましょう。
- 正弦定理・余弦定理は「どちらを使うべきか」を判断する練習が重要です。目安として、辺2つと角1つ(その間の角)が分かっているときは余弦定理、角と、その対辺を含む比の関係を作りたいときは正弦定理を使うことが多いです。
- 三角形の面積公式 $S = \dfrac{1}{2}ab\sin C$(2辺の長さ $a$, $b$ と、その間の角 $C$ から面積を求める公式です)は、余弦定理とセットで出題されることが非常に多いです。
- 空間図形の問題では、立体をどの平面で切って考えるかを見抜くことがポイントです。見取り図の中に、実際に三角形を1つ取り出して平面図として描き直す練習をしておくと、格段に解きやすくなります。
二次関数
- 平方完成(式を $\left(x-p\right)^2+q$ の形にする変形)は、二次関数のすべての問題の出発点です。符号のミスが起きやすいところなので、係数が1でない場合(たとえば $2x^2+4x+3$ のような式)の練習も欠かさないようにしましょう。
- 定義域に制限がある最大値・最小値の問題では、「頂点の $x$ 座標が定義域の中に入っているかどうか」で場合分けの方針が変わります。まずグラフを実際に描いて、頂点と定義域の位置関係を目で確認する習慣をつけましょう。
- 文字定数(たとえば $a$)が動くと、グラフの位置や定義域との関係も動きます。場合分けの「境目」になる $a$ の値(頂点が定義域の端に重なる瞬間や、2つの候補の値が等しくなる瞬間)を、自分で式を立てて求められるようにしておくことが得点の分かれ目です。
- 2次方程式の解や2次不等式の解と、2次関数のグラフ($x$ 軸との交点や、$x$ 軸より上・下にある範囲)は表裏一体です。判別式(2次方程式が実数解をいくつ持つかを判定する式、$D = b^2-4ac$)の符号とグラフの形を、必ずセットで覚えておきましょう。
データの分析
- 平均値・中央値・最頻値はそれぞれ意味が異なります。極端に大きい(または小さい)値が1つ混ざっているとき、どの代表値が影響を受けやすいかを説明できるようにしておきましょう。
- 分散 $s^2$ と標準偏差 $s$ は、$s^2 = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\left(x_i-\bar{x}\right)^2 = \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n}x_i^2 - \bar{x}^2$(この2つの式は必ず同じ値になります)という、2通りの計算方法を両方使えるようにしておくと、問題文でどちらの情報(各データの値そのものか、2乗の和 $\displaystyle\sum x_i^2$ か)が与えられても対応できます。
- 箱ひげ図(データを最小値・第1四分位数・中央値・第3四分位数・最大値の5つの値で要約した図)は、ヒストグラム(データの分布を柱状のグラフで表したもの)と対応させて読む練習をしておくと、「この箱ひげ図に対応するヒストグラムはどれか」というタイプの問題に対応できます。
- 相関係数(2つの変量の間にどれくらい直線的な関係があるかを、$-1$ から $1$ までの数値で表したもの)は、散布図(2つの変量の値の組を点で表した図)の形と結びつけて理解しておきましょう。値が $1$ に近いほど右上がりの直線に近い分布、$-1$ に近いほど右下がりの直線に近い分布になります。
- 仮説検定(かせつけんてい、ある主張が正しいと言えるかどうかを、データにもとづいて統計的に判断する方法)の問題では、「基準となる確率(有意水準)より、実際に起きた出来事の起こりやすさが小さいかどうか」という判断の流れそのものを問われます。計算よりも、判断の手順を言葉で説明できるようにしておきましょう。
実戦問題
実戦問題1
問題
三角形 $ABC$ において、$AB = 5$、$AC = 3$、$\angle A = 60^{\circ}$ とする。太郎さんは、この三角形の辺 $BC$ の長さ、面積、そして外接円(三角形のすべての頂点を通る円のことです)の半径を求めようとしている。次の問いに答えよ。
(1) 辺 $BC$ の長さを求めよ。
(2) 三角形 $ABC$ の面積を求めよ。
(3) 三角形 $ABC$ の外接円の半径 $R$ を求めよ。
解答・解説を見る
(1) 辺 $BC$ の長さ
2辺の長さ($AB$ と $AC$)と、その間の角($\angle A$)が分かっているので、余弦定理を使います。余弦定理とは、三角形の1つの角とその両側の2辺の長さから、残りの1辺の長さを求めることができる定理で、次の式で表されます。
$BC^2 = AB^2 + AC^2 - 2 \cdot AB \cdot AC \cdot \cos A$
この式の右辺に、$AB=5$、$AC=3$、$\angle A = 60^{\circ}$ を代入します。$\cos 60^{\circ} = \dfrac{1}{2}$ であることを使うと、
$BC^2 = 5^2 + 3^2 - 2 \times 5 \times 3 \times \cos 60^{\circ}$
まず、$5^2=25$、$3^2=9$ をそれぞれ計算します。
$BC^2 = 25 + 9 - 2 \times 5 \times 3 \times \frac{1}{2}$
次に、$2 \times 5 \times 3 \times \dfrac{1}{2}$ を計算します。$2$ と $\dfrac{1}{2}$ が掛け合わさって $1$ になるので、この部分は $5 \times 3 = 15$ となります。
$BC^2 = 25 + 9 - 15$
最後に、$25+9=34$ なので、
$BC^2 = 34 - 15 = 19$
$BC$ は辺の長さなので正の数です。したがって、
$BC = \sqrt{19}$
(2) 三角形 $ABC$ の面積
2辺の長さとその間の角が分かっているときの三角形の面積公式を使います。この公式は、2辺の長さを $b$, $c$、その間の角を $A$ とすると、
$S = \frac{1}{2}bc\sin A$
という形で表されます。ここでは $b=AC=3$、$c=AB=5$、$\angle A = 60^{\circ}$ を代入します。$\sin 60^{\circ} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ であることを使うと、
$S = \frac{1}{2} \times 3 \times 5 \times \sin 60^{\circ} = \frac{1}{2} \times 3 \times 5 \times \frac{\sqrt{3}}{2}$
分子どうし、分母どうしを掛け合わせます。分子は $3 \times 5 \times \sqrt{3} = 15\sqrt{3}$、分母は $2 \times 2 = 4$ となるので、
$S = \frac{15\sqrt{3}}{4}$
(3) 外接円の半径 $R$
正弦定理を使います。正弦定理とは、三角形のある角の大きさとその対辺(向かい合う辺)の長さの比が、外接円の直径 $2R$ に等しくなるという定理で、次の式で表されます。
$\frac{BC}{\sin A} = 2R$
(1)で求めた $BC=\sqrt{19}$ と、$\sin A = \sin 60^{\circ} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を代入します。
$\frac{\sqrt{19}}{\dfrac{\sqrt{3}}{2}} = 2R$
左辺は「分数で割る」計算なので、割る数の分母と分子を入れ替えて掛け算に直します。
$\sqrt{19} \times \frac{2}{\sqrt{3}} = 2R$
$\frac{2\sqrt{19}}{\sqrt{3}} = 2R$
両辺を $2$ で割ります。
$R = \frac{\sqrt{19}}{\sqrt{3}}$
分母に根号が残っているので、分母を有理化します。分母・分子の両方に $\sqrt{3}$ を掛けます。
$R = \frac{\sqrt{19} \times \sqrt{3}}{\sqrt{3} \times \sqrt{3}} = \frac{\sqrt{57}}{3}$
したがって、外接円の半径は $R = \dfrac{\sqrt{57}}{3}$ です。
実戦問題2
問題
$a$ を正の定数とする。関数 $f(x) = x^2 - 4x + 5$ の定義域を $0 \leq x \leq a$ とするとき、$f(x)$ の最大値と最小値を、$a$ の値の範囲によって場合分けして求めよ。
解答・解説を見る
方針を立てる
まず、$f(x)$ を平方完成(式を $\left(x-p\right)^2+q$ の形に変形すること)して、放物線の頂点の位置を調べます。
$f(x) = x^2 - 4x + 5$
$x^2-4x$ の部分を $\left(x-2\right)^2$ の形にすることを考えます。$\left(x-2\right)^2 = x^2-4x+4$ なので、$x^2-4x = \left(x-2\right)^2 - 4$ と書き直せます。これを元の式に代入すると、
$f(x) = \left(x-2\right)^2 - 4 + 5$
$f(x) = \left(x-2\right)^2 + 1$
この式から、$f(x)$ のグラフは頂点 $\left(2,\ 1\right)$ を持ち、$x^2$ の係数が $1$ で正の数なので、下に凸(グラフが下向きに膨らんだ形)の放物線であることが分かります。下に凸の放物線は、頂点から左右に離れるほど値が大きくなります。つまり、$x<2$ の範囲では $x$ が大きくなるほど $f(x)$ は小さくなり(減少)、$x>2$ の範囲では $x$ が大きくなるほど $f(x)$ は大きくなります(増加)。
定義域は $0 \leq x \leq a$ で、$a>0$ です。この定義域の中に頂点の $x$ 座標である $x=2$ が含まれるかどうかで、$f(x)$ の様子が変わります。そこで、$a$ と $2$ の大小関係で場合分けをします。
場合1: $0 < a \leq 2$ のとき
このとき、定義域 $0 \leq x \leq a$ は、頂点の $x$ 座標である $2$ 以下の範囲にすべて収まっています。この範囲では $f(x)$ はずっと減少しているので、$x$ が最も小さい $x=0$ で $f(x)$ は最大になり、$x$ が最も大きい $x=a$ で $f(x)$ は最小になります。
最大値は、
$f(0) = 0^2 - 4\times0 + 5 = 5$
最小値は、
$f(a) = a^2 - 4a + 5$
場合2: $2 < a \leq 4$ のとき
このとき、定義域 $0 \leq x \leq a$ の内部に頂点の $x$ 座標 $x=2$ が含まれます。下に凸の放物線なので、頂点で $f(x)$ は定義域全体の中で最も小さい値をとります。
最小値は、
$f(2) = \left(2-2\right)^2 + 1 = 1$
最大値については、定義域の両端である $x=0$ と $x=a$ のうち、$f(x)$ の値が大きい方を選ぶ必要があります。そこで、$f(a)$ と $f(0)$ の差を計算して比べます。
$f(a) - f(0) = \left(a^2-4a+5\right) - 5 = a^2 - 4a$
右辺を因数分解すると、
$f(a) - f(0) = a\left(a-4\right)$
実戦問題3
問題
ある高校の1年生のクラスで実施した小テスト(10点満点)を、8人の生徒が受験した。8人の得点(単位:点)を小さい順に並べたものが、次のデータである。
$4,\ 5,\ 6,\ 6,\ 7,\ 7,\ 8,\ 9$
(1) このデータの平均値 $\bar{x}$ を求めよ。
(2) このデータの中央値(データを大きさの順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値のことです)を求めよ。
(3) このデータについて、各データの値を2乗してすべて足し合わせた値 $\displaystyle\sum_{i=1}^{8} x_i^2$(記号 $\Sigma$ は、右下の $i=1$ から右上の $8$ まで、番号を1つずつ変えながらすべて足し合わせるという意味の記号です)が $356$ であることが分かっている。このことを用いて、このデータの分散 $s^2$ と標準偏差 $s$ を求めよ。
解答・解説を見る
(1) 平均値 $\bar{x}$
平均値は、すべてのデータの値を足し合わせて、データの個数で割ることで求められます。データの個数は $8$ 人分なので $n=8$ です。まず、8人分の得点をすべて足し合わせます。
$4+5+6+6+7+7+8+9$
左から順に計算していきます。
$4+5=9$
$9+6=15$
$15+6=21$
$21+7=28$
$28+7=35$
$35+8=43$
$43+9=52$
したがって、合計は $52$ 点です。これをデータの個数 $8$ で割ると、平均値が求まります。
$\bar{x} = \frac{52}{8} = 6.5$
したがって、平均値は $6.5$ 点です。
(2) 中央値
中央値を求めるには、まずデータを大きさの順に並べます。今回はすでに小さい順に並んでいるので、そのまま使えます。
$4,\ 5,\ 6,\ 6,\ 7,\ 7,\ 8,\ 9$
データの個数は $n=8$ で、偶数です。データの個数が偶数のときは、中央値はちょうど真ん中に来る2つの値の平均で求めます。8個のデータの場合、真ん中に来るのは4番目と5番目の値です。
前から数えて、1番目は $4$、2番目は $5$、3番目は $6$、4番目は $6$、5番目は $7$ です。したがって、4番目の値は $6$、5番目の値は $7$ です。
$\text{中央値} = \frac{6+7}{2} = \frac{13}{2} = 6.5$
したがって、中央値は $6.5$ 点です。今回はたまたま平均値と同じ値になりましたが、これは偶然であり、一般には平均値と中央値は異なる値になります。
(3) 分散 $s^2$ と標準偏差 $s$
分散とは、それぞれのデータの値が平均値からどれくらい離れているかを表す量で、次の式で定義されます。
$s^2 = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}\left(x_i-\bar{x}\right)^2$
この式は、次のように書き換えることができることが知られています。
$s^2 = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}x_i^2 - \bar{x}^2$
つまり、「2乗の平均」から「平均の2乗」を引いた値が分散に等しくなります。今回の問題では、$\displaystyle\sum_{i=1}^{8}x_i^2 = 356$ が最初から与えられているので、この書き換えた式を使うと計算が楽になります。
$n=8$、$\displaystyle\sum_{i=1}^{8}x_i^2=356$、そして(1)で求めた $\bar{x}=6.5$ を代入します。
$s^2 = \frac{356}{8} - 6.5^2$
まず、$\dfrac{356}{8}$ を計算します。
$\frac{356}{8} = 44.5$
次に、$6.5^2$ を計算します。$6.5^2 = 6.5 \times 6.5$ なので、
$6.5 \times 6.5 = 42.25$
したがって、
$s^2 = 44.5 - 42.25 = 2.25$
分散は $s^2 = 2.25$ です。
標準偏差 $s$ は、分散の正の平方根で求められます。
$s = \sqrt{s^2} = \sqrt{2.25}$
ここで、$1.5^2 = 1.5 \times 1.5 = 2.25$ であることに気づけば、
$s = 1.5$
したがって、標準偏差は $s=1.5$ 点です。標準偏差は元のデータと同じ単位(この場合は「点」)を持つ量で、データが平均値のまわりにどれくらいばらついているかの目安になります。