公式の証明・導出
3乗の展開・因数分解公式の導出
関連単元: 数学I 数と式
証明する内容
次の4つの公式が成り立つことを証明します。
$(a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3$
$(a-b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3$
$a^3+b^3 = (a+b)(a^2-ab+b^2)$
$a^3-b^3 = (a-b)(a^2+ab+b^2)$
これらはどれも、文字式の展開(かっこを外して整理すること)を実際に手を動かして行えば確かめられる公式です。上の2つは「3乗を展開すると何が出てくるか」を表す公式で、下の2つは「3乗の和・差を2つの式の積の形に分解する」公式です。下の2つの公式は、上の2つの公式を逆向きに読むことで得られます。
証明
1. $(a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3$ の証明
まず、$(a+b)^3$ とは何を意味するかを確認します。これは $(a+b)$ を3回かけ合わせたものなので、次のように書き直せます。
$(a+b)^3 = (a+b) \times (a+b) \times (a+b) = (a+b)^2 \times (a+b)$
このように、まず $(a+b)^2$ を先に計算してから、最後にもう一度 $(a+b)$ をかけるという手順で進めます。
ステップ1:$(a+b)^2$ を計算する
$(a+b)^2 = (a+b)(a+b)$ です。これを展開するには、分配法則(かっこの中の各項に、もう一方のかっこの中の各項をそれぞれかけて、すべて足し合わせるという計算規則)を使います。
$(a+b)(a+b) = a \times a + a \times b + b \times a + b \times b$
ここで、$a \times a = a^2$、$b \times b = b^2$ であり、また $a \times b$ と $b \times a$ は同じものなので、$a \times b + b \times a = 2ab$ となります。よって、
$(a+b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$
が得られます。
ステップ2:$(a+b)^2$ にもう一度 $(a+b)$ をかける
先ほど求めた $(a+b)^2 = a^2+2ab+b^2$ を使って、
$(a+b)^3 = (a^2+2ab+b^2)(a+b)$
を計算します。これも分配法則を使い、かっこの中の $a^2$、$2ab$、$b^2$ のそれぞれに、もう一方のかっこの中の $a$ と $b$ をかけて、全部を足し合わせます。
まず、$a^2$ に $a$ と $b$ をかけると、
$a^2 \times a = a^3, \qquad a^2 \times b = a^2 b$
次に、$2ab$ に $a$ と $b$ をかけると、
$2ab \times a = 2a^2 b, \qquad 2ab \times b = 2ab^2$
最後に、$b^2$ に $a$ と $b$ をかけると、
$b^2 \times a = ab^2, \qquad b^2 \times b = b^3$
以上の6つの項をすべて足し合わせると、
$(a+b)^3 = a^3 + a^2b + 2a^2b + 2ab^2 + ab^2 + b^3$
となります。ここで、同じ種類の項(同類項)をまとめます。$a^2b$ の項は $a^2b + 2a^2b = 3a^2b$ となり、$ab^2$ の項は $2ab^2 + ab^2 = 3ab^2$ となります。したがって、
$(a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3$
が得られました。これで1つ目の公式が証明できました。
2. $(a-b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3$ の証明
この公式は、先ほど証明した $(a+b)^3 = a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$ において、$b$ という文字のところに $-b$ を代入することで得られます。文字式の公式は、どんな数(や式)を代入しても成り立つので、$b$ の代わりに $-b$ を入れても等式は成り立ちます。
左辺は、$b$ を $-b$ に置き換えると、
$(a+(-b))^3 = (a-b)^3$
となります。
右辺は、$b$ を $-b$ に置き換えると、
$a^3 + 3a^2(-b) + 3a(-b)^2 + (-b)^3$
となります。ここで、それぞれの項を丁寧に計算します。
- $3a^2(-b) = -3a^2b$
- $(-b)^2 = (-b)\times(-b) = b^2$ なので、$3a(-b)^2 = 3ab^2$
- $(-b)^3 = (-b)\times(-b)\times(-b)$ です。$(-b)\times(-b) = b^2$ で、さらに $b^2 \times (-b) = -b^3$ となるので、$(-b)^3 = -b^3$
これらを代入すると、右辺は
$a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3$
となります。左辺と右辺をあわせると、
$(a-b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3$
が得られました。これで2つ目の公式も証明できました。
3. $a^3+b^3 = (a+b)(a^2-ab+b^2)$ の証明
この公式は、右辺 $(a+b)(a^2-ab+b^2)$ を実際に展開して、それが左辺 $a^3+b^3$ に一致することを確かめれば証明できます。
分配法則を使って、$(a+b)$ の中の $a$ と $b$ のそれぞれに、$(a^2-ab+b^2)$ の中の $a^2$、$-ab$、$b^2$ をかけていきます。
まず、$a$ をかける部分です。
$a \times a^2 = a^3, \qquad a \times (-ab) = -a^2b, \qquad a \times b^2 = ab^2$
次に、$b$ をかける部分です。
$b \times a^2 = a^2b, \qquad b \times (-ab) = -ab^2, \qquad b \times b^2 = b^3$
以上の6つの項をすべて足し合わせると、
$(a+b)(a^2-ab+b^2) = a^3 - a^2b + ab^2 + a^2b - ab^2 + b^3$
となります。ここで、$-a^2b$ と $+a^2b$ は打ち消し合って $0$ になり、$+ab^2$ と $-ab^2$ も打ち消し合って $0$ になります。したがって、残るのは
$(a+b)(a^2-ab+b^2) = a^3 + b^3$
だけです。これで、
$a^3+b^3 = (a+b)(a^2-ab+b^2)$
が証明できました。
4. $a^3-b^3 = (a-b)(a^2+ab+b^2)$ の証明
同じように、右辺 $(a-b)(a^2+ab+b^2)$ を展開します。
まず、$a$ をかける部分です。
$a \times a^2 = a^3, \qquad a \times ab = a^2b, \qquad a \times b^2 = ab^2$
次に、$-b$ をかける部分です。
$(-b) \times a^2 = -a^2b, \qquad (-b) \times ab = -ab^2, \qquad (-b) \times b^2 = -b^3$
以上の6つの項をすべて足し合わせると、
$(a-b)(a^2+ab+b^2) = a^3 + a^2b + ab^2 - a^2b - ab^2 - b^3$
となります。ここで、$+a^2b$ と $-a^2b$ は打ち消し合って $0$ になり、$+ab^2$ と $-ab^2$ も打ち消し合って $0$ になります。したがって、残るのは
$(a-b)(a^2+ab+b^2) = a^3 - b^3$
だけです。これで、
$a^3-b^3 = (a-b)(a^2+ab+b^2)$
が証明できました。
以上で、4つの公式すべての証明が完了しました。
この証明のポイント
展開公式は「実際に分配法則を使って丁寧にかけ算をし、同類項をまとめる」ことで必ず確かめられます。また、$(a-b)^3$ のように符号が変わっただけの公式は、すでに証明した公式の文字に $-b$ を代入するだけで新しい公式が得られるという考え方も、様々な公式の導出で応用できる便利なテクニックです。