公式の証明・導出
積の微分公式の証明
関連単元: 数学III 微分法
証明する内容
2つの関数 $f(x)$、$g(x)$ がともに微分可能であるとき、それらの積 $f(x)g(x)$ も微分可能であり、その導関数は
$ \{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x) $
となります。つまり、積を微分するときは、「前の関数だけを微分してもとの後ろの関数をかけたもの」と「もとの前の関数と、後ろの関数だけを微分したものをかけたもの」を足し合わせればよい、という公式です。
証明
ステップ1: 微分の定義を書く
$F(x)=f(x)g(x)$ とおきます。導関数の定義から、
$ F'(x) = \lim_{h\to 0}\frac{F(x+h)-F(x)}{h} = \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h} $
を計算すればよいことになります。
ステップ2: 分子に工夫を加える
このままでは分子をうまく変形できないので、分子に $-f(x+h)g(x) + f(x+h)g(x)$、つまり「同じものを引いて足す」という操作を加えます。これは値としては $0$ を足しているだけなので、式全体の値は変わりません。
$ f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x) = f(x+h)g(x+h) - f(x+h)g(x) + f(x+h)g(x) - f(x)g(x) $
この右辺を、2つのグループに分けて整理します。1番目と2番目の項からは $f(x+h)$ を、3番目と4番目の項からは $g(x)$ をくくり出します。
$ = f(x+h)\left(g(x+h)-g(x)\right) + g(x)\left(f(x+h)-f(x)\right) $
ステップ3: 分数の形に戻して極限を考える
ステップ2の結果を、もとの分数に代入します。
$ F'(x) = \lim_{h\to 0} \frac{f(x+h)\left(g(x+h)-g(x)\right) + g(x)\left(f(x+h)-f(x)\right)}{h} $
分子が2つの項の和になっているので、分数全体をそれぞれの項ごとの分数の和に分けます。
$ F'(x) = \lim_{h\to 0} \left[ f(x+h)\cdot\frac{g(x+h)-g(x)}{h} + g(x)\cdot\frac{f(x+h)-f(x)}{h} \right] $
ステップ4: それぞれの極限を求める
この式は4つの部分、すなわち $f(x+h)$、$\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}$、$g(x)$、$\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ の積の和になっています。極限は、それぞれの部分の極限が存在するならば、積や和についてそのまま計算できる(極限の性質)ので、それぞれの部分の $h\to 0$ における極限を調べます。
(a) $f(x+h)$ の極限: $f(x)$ は微分可能であると仮定されていますが、微分可能な関数は必ず連続である(微分可能ならば連続であるという事実)ため、$h\to 0$ のとき $f(x+h)\to f(x)$ となります。
(b) $\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}$ の極限: これは、$g(x)$ の導関数の定義そのものなので、$h\to 0$ のとき
$ \frac{g(x+h)-g(x)}{h} \to g'(x) $
(c) $g(x)$ の極限: これは $h$ を含まない定数なので、そのまま $g(x)$ です。
(d) $\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ の極限: これも、$f(x)$ の導関数の定義そのものなので、$h\to 0$ のとき
$ \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \to f'(x) $
以上の4つの極限を、ステップ3の式に代入します。
$ F'(x) = f(x)\cdot g'(x) + g(x)\cdot f'(x) $
すなわち、
$ F'(x) = f'(x)g(x) + f(x)g'(x) $
これで、
$ \{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x) $
が示されました。
この証明のポイント
分子に「同じ値を引いて足す」という一見不思議な工夫を加えることで、変化しにくい形の式を、それぞれの関数の導関数の定義の形に分解できる、という点がこの証明の核心です。この「引いて足す」というテクニックは、合成関数の微分や、他の複雑な極限の計算でもたびたび使われる、覚えておくと便利な発想です。