公式の証明・導出

因数定理の証明

関連単元: 数学II いろいろな式

証明する内容

$P(x)$を整式(多項式)とし、$a$を定数とします。このとき、次のことが成り立ちます。

$x-a \text{ が } P(x) \text{ の因数である} \iff P(a) = 0$

ここで「$x-a$が$P(x)$の因数である」とは、ある整式$Q(x)$を使って $P(x)=(x-a)Q(x)$ と、余りなくきっちり割り切れる形に書けることを意味します。また、記号$\iff$は「同値である」、つまり「左側が成り立つならば右側も成り立ち、右側が成り立つならば左側も成り立つ」という意味です。

これが因数定理です。直感的には、「整式$P(x)$に$x=a$を代入した値が$0$になるかどうかを調べるだけで、$P(x)$が$(x-a)$で割り切れるかどうかが分かる」ということを意味しています。

この証明では、先に「剰余の定理」と呼ばれる次の事実を証明し、そこから因数定理を導きます。

剰余の定理:整式$P(x)$を$x-a$で割ったときの余りは、$P(a)$に等しい。

証明

ステップ1:剰余の定理を証明する

整式の割り算(整式の除法)についての基本的な事実として、次のことが成り立ちます。整式$P(x)$を、1次式$x-a$で割ったとき、商となる整式を$Q(x)$、余りを$R$とすると、

$P(x) = (x-a)Q(x)+R$

という関係が必ず成り立ちます。ここで、余り$R$は、割る式$x-a$の次数(1次)よりも低い次数の整式でなければならないので、$R$は$x$を含まない定数です。

この等式は、$x$にどんな値を代入しても成り立つ、$x$についての恒等式です。そこで、この等式に $x=a$ を代入してみます。

$P(a) = (a-a)Q(a)+R$

$a-a=0$ なので、右辺の $(a-a)Q(a)$ の部分は、$Q(a)$がどんな値であっても

$(a-a)Q(a) = 0\times Q(a) = 0$

となります。したがって、

$P(a) = 0+R = R$

つまり、

$R = P(a)$

が得られました。これは、「$P(x)$を$x-a$で割った余り$R$は、$P(a)$に等しい」ということを示しており、剰余の定理が証明できました。

ステップ2:剰余の定理から因数定理を導く

同値であることを証明するには、「$\Rightarrow$」の向きと「$\Leftarrow$」の向きの両方を示す必要があります。

($\Rightarrow$)$x-a$が$P(x)$の因数ならば、$P(a)=0$である

$x-a$が$P(x)$の因数であるとは、$P(x)$を$x-a$で割ったときに余りが出ない(余りが$0$である)ということです。ステップ1で示した剰余の定理より、この余りは$P(a)$に等しいので、

$P(a) = 0$

が成り立ちます。

($\Leftarrow$)$P(a)=0$ならば、$x-a$は$P(x)$の因数である

$P(x)$を$x-a$で割ったときの商を$Q(x)$、余りを$R$とすると、ステップ1と同じく、

$P(x) = (x-a)Q(x)+R$

が成り立ち、剰余の定理より $R=P(a)$ です。いま $P(a)=0$ と仮定しているので、

$R = 0$

これを先ほどの式に代入すると、

$P(x) = (x-a)Q(x)+0 = (x-a)Q(x)$

これは、$P(x)$が$(x-a)$と$Q(x)$の積として、余りなくきっちり書けているということなので、$x-a$は$P(x)$の因数です。

以上で、「$\Rightarrow$」と「$\Leftarrow$」の両方の向きが証明できたので、

$x-a \text{ が } P(x) \text{ の因数である} \iff P(a)=0$

が成り立つことが証明されました。

検算

$P(x)=x^3-6x^2+11x-6$ という整式で確かめます。$P(1)$を計算すると、

$P(1) = 1^3-6\times1^2+11\times1-6 = 1-6+11-6 = 0$

$P(1)=0$ なので、因数定理より、$x-1$は$P(x)$の因数であるはずです。実際、

$x^3-6x^2+11x-6 = (x-1)(x^2-5x+6) = (x-1)(x-2)(x-3)$

と因数分解でき、確かに$(x-1)$が因数になっていることが確認できます。

また、剰余の定理も確かめておきます。$P(x)=x^3+2x^2-5x+7$ を$x-2$で割ったときの余りは、剰余の定理によれば$P(2)$に等しいはずです。

$P(2) = 2^3+2\times2^2-5\times2+7 = 8+8-10+7=13$

実際に整式の割り算を行うと、商は$x^2+4x+3$、余りは$13$となり(検算すると $(x-2)(x^2+4x+3)+13 = x^3+4x^2+3x-2x^2-8x-6+13 = x^3+2x^2-5x+7$ となって、確かにもとの$P(x)$に一致します)、余りが$13=P(2)$と一致していることが確認できます。

この証明のポイント

「割り算の余りを直接計算しなくても、代入した値を調べるだけで余りが分かる」という剰余の定理は、整式の割り算という手間のかかる計算を、代入という簡単な計算に置き換えられる強力な道具です。そして、余りが$0$になる特別な場合を考えることで、「割り切れるかどうか」という因数分解に関する問題を、「代入した値が$0$になるかどうか」という問題に翻訳できるという発想は、高次方程式の解を探したり、整式を因数分解したりする際に繰り返し使われる基本テクニックです。